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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表

In Air Quality, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, 測定 by Pieter

Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表
– これまでで最もシンプルな空気質モニター
セーフキャストが10周年記念イベントのライブストリーミングで
Airnoteデバイスを福島に設置

マサチューセッツ州ボストン & 東京 – 2021年3月9日 –
オープンな環境データの世界的リーダーであるセーフキャストと、IoTクラウドセルラーソリューションのリーディングカンパニーであるBlues Wirelessは、
本日、これまでで最もシンプルで費用対効果の高い空気質デバイスであるAirnoteを発表しました。Airnoteは、複雑さと使用の障壁を取り除くことで、市場に出回っている他の製品に比べて約半分のコストで、空気質センサーの大量導入を簡素化します。これにより、個人、企業、自治体は正確な粒子状物質データを収集し、より健康的な環境のためのより良い意思決定を行うことができます。

“10年前の福島の危機を契機に世界中から多くの有能な人材が集まり、共通の目的を果たすこととなりました。”
非営利団体Safecast、Blues Wireless、そして最終的にAirnoteデバイスは、すべてこのコラボレーションの結果として生まれました。

これまでのところ、空気の質、水質、放射線などの環境面では、高額な機器の費用面や、デバイスを配置するための慎重な設置、信頼性の高い屋外ネットワーク接続といった課題がありました。Airnoteは、日当たりの良い窓の外側に簡単に取り付けることができる、完全に統合されたゼロセットアップの太陽光発電装置です。Airnoteは、130カ国以上のセルラーネットワークを使用して、定期的に空気質データを自動的にアップロードします。Airnoteには、Bluesのノートカード通信モジュールが搭載されており、プリペイド/プリアクティベートデータプランが含まれています。
Airnoteは、ディスプレイに情報を表示したり、ユーザーがQRコードをスキャンしてオンラインでチャートやグラフを表示したりすることができます。
PM1、PM2.5、PM10の粒子状物質の温度、湿度、気圧、密度を測定できます。

Airnote_Rear

The Airnote rear features a display showing the air quality, viewable from the inside

Airnoteデバイスがアップロードしたデータは、はじめからパブリックドメインに指定されており、全ての人に利益をもたらします。BlueのリアルタイムデータルータであるNotehubやセーフキャストのデータベースや地図を介して、データは世界中で分析、教育、さらには商業利用のために利用できます。
データはデフォルトでは匿名ですが、デバイスの所有者はオプションでデバイスを主張し、データのアップロードのためにクレジットされることができます。

“福島は紛れもなく災害でしたが、このイベントは私たちの環境の将来と安全性をより良く計画する機会を与えてくれました“
と、Safecastの共同創設者であり日本のディレクターでもあるピーテル・フランケン氏は述べています。
“私たちがAirnoteから受け取るグローバルデータは、市民主導のオープンデータのペースを加速させ、より健康的な地球環境に向けて私たちを前進させると同時に、将来の危機へのより迅速で効率的な対応を可能にしてくれます。…

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亜硫酸ガスの燃焼:その測量法とその意義

In Air Quality by levi

ロイター提供による工場噴煙の写真

人為的公害について報道される際、二酸化炭素が取り上げられる事が常だが、実は過去300年の大気汚染量は 倍にもなっていない。 ところが亜硫酸ガスの排出量は何と100倍になっている。 亜硫酸ガスは主に石炭や石油の燃焼の副産物として、また、硫酸を生産する過程で排出される工業産出のガスである。そして亜硫酸ガスは水蒸気などの存在下で酸化され硫酸となり、酸性雨となる。 つまり、これこそが産業廃棄ガスなのだ。 それは、工業施設で生成された大気中の亜硫酸ガスが水蒸気に反応して硫酸を生み出すことで、酸性雨の原因ともなる。呼吸器を刺激することで喘息や他の呼吸器官系疾病の症例が増加しているということが、都市近郊の工業地帯に集中して多く見られる。

米国本土に於ける亜硫酸ガスの地面排出量密度について

そこで私たちは以下の基準を満たす亜硫酸ガスの測定器(センサー)を探すことにした。
1)10億分の1の単位(1ppb)までも測定可能。何故なら0.03ppm以上の長期に渡る曝露による健康被害が報告されているので。
2)耐腐食性。亜硫酸は数ヶ月で測定器の部品を腐食させる。
3)安定性。多種多様なガスを測定する際に再現性の高い、信頼性のあるデータの収集を目指している。警報器システムなどに使われる多くのセンサーは、濃度変化に関しては問題ないが濃度の絶対値ではデータにばらつきがある。これらの基準を念頭に私たちは Alphasense社の亜硫酸ガスセンサー を大気測定装置として導入する事にした。これにより更なる最新データを共有出来ることを期待している。
(翻訳: Mikka Chen)…

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Air Prototype Show & Tell

In Air Quality, Hardware by sean

Last night at the weekly Crash Space meeting, Naim showed off the current, working, Safecast Air prototype during show & tell, as well as an example of a possible housing using plates. We’re calling the device the “canAIRe” and may …

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日本に於けるCOVID-19コロナ・ウィルス患者数が表す意味

In COVID19, featured, ニュース, 主要記事 by exporter

2020年3月24日Azby Brown著

Reiko Mori, Yoshida Suzuka, Tatsumi Baba, Ryuichi Anbo, Mami Yahiro, Momoha Koya (Furuhashi Lab., Aoyama Gakuin Univ.) 翻訳

 

先週、私はセーフキャストの一員として日本のCOVID-19コロナ・ウィルスの検査についての記事を書きました。

さて、ここCOVID-19コロナ・ウィルスに関する正確な情報の伝達が乏しく、最近では検査基準を満たしている人が検査を断られる事例が増加し、国民の間で不満や疑惑の声が挙がっています。これは政府による政策が原因ですが、検査することを重要視している韓国、台湾やシンガポールなどの国は感染者の数値が緩和し始めたのに対し、日本ではそれらの国と大幅に異なり検査数が少ない状況です。

今後一体どういうことが起こるのでしょうか?

日本国内では、普段の生活に於いて肉体的な距離を保つ傾向を筆頭に、マスクの着用や優れた衛生環境、握手による挨拶が少ない、などの要因を基にCOVID-19コロナ・ウイルスに打ち勝ったという話が最近様々な所広まってきています。セーフキャストでは「マスクの着用」や「規則正しい手洗い」は、肌の接触を減らすのと同等に重要視しており、ここまでの接触感染率の低さを保っているのは恐らくそのお陰なのではないかと思います。

しかし、学校の閉鎖や開催予定であった大きなイベントのキャンセル、そしてなるべく多くの人々が在宅ワークを行っているにも関わらず、文化的背景に基づいた日々の社会的な距離だけでは強制力がとても弱い可能性も出てきています。例えば、公園では毎日のように花見をしに来た人々で埋め尽くされ、電車も常に満員です。バーなどの飲み屋、またレストランなどの飲食店も同じ状況です。私達は今までラッキーだったのでしょうか。

その一方、感染者数は国民全般に於ける検査の不足、そして、誤った分類による単純肺炎で亡くなった方と、COVID-19コロナ・ウイルスで亡くなった方との区別が曖昧で、疑いが晴れないでいる現状も存在します。

日本の各都道府県や地方自治体は、緊急事態時には自主的に対応を行える権限を保持しています。例えば、最近のニュースでは

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COVID-19 testing, putting a face to the numbers

In COVID19, ニュース, マップ by exporter

SAFECASTでは先日、新型コロナ・ウイルスのテスト・マップを発行し、ウィルスの現状と猛威を示す情報がアジア、北アメリカ、そしてヨーロッパから寄せられました。

2011311日。

今回の対応について語る前に、2011/3/11について多少触れさせて下さい。

SAFECAST放射能や空気汚染などのテーマを扱い、各地域に携わる地元市民が自分達の生活、即ち「ストーリー」に密着することにより、地域独自にコントロールできるプラットフォーム作りをしてきました。

例えば原子力発電による放射能被害が深刻な福島では、現地で生活する方々に情報を提供とストーリーを提供頂くことにより、メディアが目玉集めのために誘導しがちな放射能の捨て場所ではなく、地元の方々が実際に元気に生活し、彼らの未来を描く現状を提供することを提示できました。

地元の方々が自分の土地の放射能を計測してそれを公表することにより、他人やメディア任せでストーリーを展開させるのではなく、地元の現状を素直にコントロールできるようになりましたまた、福島県と同様の現象世界中の他地域でも見られますが、同様に他地元

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日本の緊急事態に関する解説

In COVID19, ニュース, マップ, 論説 by exporter

2020年4月8日、アズビー・ブラウンによって公開

昨日(4月7日)、ようやく安部総理大臣によって、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡を対象とした緊急事態宣言が出され、日本のCOVID-19パンデミックへの対応は新たな局面に入りました。多くの人が指摘するように、この新たな「封鎖(ロックダウン)」は諸外国で実施されているような法的強制力を持ったものではなく、自宅待機の要請に従わなくても罰則が課せられることはありません。

現在の日本の法制度では、そのような強制的な指令を施行することはほぼ不可能なのです(第二次世界大戦前、および戦時中に国全体が非常に無意味な自己犠牲を強いられたからなのですが)。その代わり、政府は来月に向けて、これまでの要請よりも広範囲にわたる社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンス)を自主的にとるよう求めています。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、診療所や病院、ホテル、製造業などの「必要不可欠」と見なされるサービス業は、引き続き営業するように求めていますが、バーやクラブ、ライブハウス、カラオケなど大人数が集まる場所は避け、外食しなければならない場合は大人数での利用を避けるよう、引き続き呼び掛けています。奇しくも、公衆浴場は営業を継続するよう求められているようです。都内の映画館、博物館、図書館、デパートなどの多くの公共施設は、先に受けたソーシャル・ディスタンスの要請に応じて、すでに一時的に閉鎖されており、今後も営業停止を継続するよう求められるかもしれません。そうは言っても、誰かに何かを強制することはできず、また、要請を拒否することもできるのが現状です。現在のところ、この命令が適用されるのは国内43都道府県のうち7県(正確には1都1府5県)にのみ限定されています。憂慮すべきことに、緊急規制を回避するために東京から多くの人が圏外に脱出したとの報告も多数受けています。中国やイタリアなどでは、部分的な閉鎖を行ったものの旅行者を効率的に監視しなかったため、感染者たちが国内外に新たな集団感染の種を拡散させる結果となり、事態を計り知れないほど悪化させました。

新たな非常事態宣言に含まれる7つの都道府県。出典:NHK

安倍総理大臣は、「私たち全員が努力して人と人との接触を70%、できれば80%減らすようにすれば、感染症の増加は2週間後にピークを迎え、その後減少に転じるだろう」と言及しています。この発言内容に関しては不確かな部分も多く、特に自主的に要請に応えるというのは、今までのところ日本でもちらほら見受けられました。数週間前に、もっと強力で拘束力のある措置が講じられ、より強制力のあるメッセージを訴えてくれていたならば、と私たちは思うのです。

Agence France Presseの編集者リチャード・カーター氏がツイートしました:

一方、2011年3月の大震災後、日本人は必要なことと判断すれば、不便な緊急措置であっても容易に協力してきました。 2011年には、店舗の照明を半減させたり、駅やビルの外壁のイルミネーション広告を消し、エスカレーターを停止させたり、家庭での消費電力を抑えたりなど、全国的に広がった自主的な省エネ(節電)のおかげで、全体の電力消費量は約2割減少しました。自主規制(自粛)は、お祝いごと、その他の大規模な懇親会、一般的な贅沢などを自粛するよう求められ、人々はそれに従ったのです。

これはある意味、緩やかな犠牲が求められたという最近の前例と言えるでしょう。数日前、TBSが発表した世論調査の結果によると、約80%が緊急宣言の発令に賛成していました。しかし、実際に人々は従うのでしょうか? 一週間後には分かることですが、政府は足固めに必要な準備を整えていないようですし、国民とのコミュニケーションも図れていないように思います。これには追加として、無料託児所の提供や自宅待機しなければならない従業員とその雇用者への助成金、オンラインでの書類提出を困難にする官僚的規制の緩和などが含まれます。多くの企業、大学などでは、今でも大半の従業員は、紙の書類に印鑑を押すために現場に立ち会う必要があります。現在、健康への危機が懸念される中、このような行為は野蛮とも言えます。諸々の関連支援策について話し合いが持たれ、約束されていますが、どれも実施されるに至っていません。先週の日曜日、シンガポール政府は、感染症の「第二の波」(現在、香港でも経験していること)に対応するため、非常に強力な拘束力のある対策を発表しまました。これらのガイドラインは、メディアだけでなく、政府による広報チャネルを使って明確に伝えられており、ベストプラクティスと捉えるべきでしょう。

4月6日現在の日本の症例データ。出典:NHK

3月下旬以降、東京を筆頭に日本全体でCOVID-19の感染者数は明らかに増加しています。これは、3週間前にさかのぼりますが、中途半端な形でソーシャル・ディスタンスを公式に要請したにもかかわらず、お花見で大勢の人が公園に集まり、お互いに感染したのが原因ではないかと大かた意見が一致しています。重要な点が不明確なままで、中央政府によるコミュニケーションへの取り組みは依然としてお粗末ですが、日本でのデータの公開状況はここ数週間で全体的に改善しています。東京都の多言語版COVID-19 ウェブサイトは、政府が提供してきたものよりもはるかに明確で有益な公式情報源となっています。今日現在(4月8日)、東京都の陽性者数は1196人で、2週間前から急激な増加傾向にあり、先週末には1日あたり100人を超える新規感染が発生しました。その後2日間でやや減少し、今日は144例に達しています。現在、全国で累積陽性者数が4480人を超えました。4月6日の感染者数は241人でしたが、4月3日以降は、連日300人を超える感染者数が報告されています。非常によく運営されている独立型のバイリンガルサイト、Japan COVID-19 Coronavirus Tracker,(日本新型コロナウィルス・トラッカー)は、都道府県ごとの詳細なオープンデータベースを提供しており、日本での検査済み症例数データに関して信頼できる情報源になっています。

出典:Japan COVID-19 Coronavirus Tracker (日本新型コロナウィルス・ストラッカー)

以前の記事で述べたように、多くの人々は日本での大規模な検査が行われていないために、COVID-19の実際の症例数や感染率が著しく過小評価されていると結論づけています。昨日のワシントン・ポスト紙に引用されていた、ロンドンのキングスカレッジ・ポピュレーションヘルス研究所所長の渋谷健司教授によると、「遅すぎる・・・。東京はすでに爆発的な感染者数増加の段階に入っており、医療崩壊を止めるためには一日も早く首都封鎖を実施しなければならない」と語っています。渋谷教授は、この1週間での急激な感染者数の増加は、日本の限られた検査戦略が失敗していたことを示す明らかな証拠であり、検査と発見の規模が大きくなればなるほど、そのことがより明白になるとの見解を示しています。

日本での検査数は増加していますが、発生曲線の平坦化に成功したどの国よりもはるかに遅れをとっています。数日前、首相は検査能力を1日あたり7,500人から2万人に拡大すると発表しましたが、いつ頃から実施可能となるかに関しては言及しませんでした。4月7日現在、日本では合計5万5311人が検査を受けていますが、ほぼ毎日検査が実施されていることを考慮すると、現在公表されている1日7,500人の検査能力の半分以下しかないことになります。これとは対照的に、ドイツでは週に50万人が検査を受けています。

日本では他の国と同様、肺炎のような呼吸不全による死亡者全員に対し検査を実施していないため、COVID-19の症例数が過少報告されている可能性があります。逆に、すべての死亡症例がCOVID-19に起因するという分類法は、世界的に広く行われているのですが、これはCOVID-19に起因する死の過大評価につながりうるとして批判されています。しかし、多くの国では、通常の季節性インフルエンザに罹患している間に死亡した人々は、健康上、他に問題があったとしても、インフルエンザによる死亡として記録されていることが指摘されています。特に問題視されるような慣行ではないのかもしれませんが、感染症例の重症度を追跡する上で、この意味合いを念頭に入れておく必要があります。全体として、パンデミックの規模や拡大を過小評価することの方が、過大評価することよりも公衆衛生上のリスクははるかに大きいことは明らかです。

日本のCOVID-19症例の重症度内訳。出典:NHK

日本政府や医療専門家の間では、現在のペースで重症患者数が増え続けると、集中治療室の病床が十分に確保できなくなるのではないかという深刻な懸念が上がってきています。人口10万人当たりのICU病床数の割合は、他の多くの先進国に比べてはるかに低いからです(日本は10万人当たり5床、イタリアは12床、ドイツは約30床)。この単独サイトでは、各都道府県のICUベッドの空き状況の現状を示しています。東京都を含む、少なくとも5つの都道府県では、COVID-19の症例数はすでにICU病床数を上回っています。 NHKによると、COVID-19感染者のうち、ICUでの治療が必要なほど重症化した症例は4%程度にとどまっていますが、重症化した症例がICUのベッド数を上回る可能性が出てきているとのことです。

これを受けて、政府は軽症患者が利用できるよう、東京に約10,000室、関西に3,000室、東京オリンピック村に800室を提供するとの協力をホテルから得たと報告されています。昨日から東京都中央区のホテルに患者の移動が始まりました。 3月24日にお伝えしたように、それまでCOVID-19の数値が比較的低く抑えられていたのは、マスク着用や手洗いなど日本人の様々な生活習慣のおかげだと多くの人が信じていますが、単純に運も一役買っていたのではないかと感じます。では、今後どうなるのでしょうか? 日本は引き続き幸運に恵まれ続けるかもしれません。現在の陽性患者の急増は異常だと分かってくるかもしれないですし、新たな自主的措置は、感染者急増の芽を摘み取るのに十分なほど受け入れられ、広がっていくかもしれません。しかしながら、現在の緊急事態宣言発表に影響を与えたとされる最近の調査では、無視してはならない悲惨な最悪のシナリオも想定されています。自主的措置を要請しても、自宅からの外出を60%以上を削減できなかった場合、ICUのキャパシティ不足によって、4月26日頃に医療システムが崩壊し、50万人が死亡すると著者は結論付けていました。 その一方で、3月2日以降の学校閉鎖により、子どもの接触頻度が40%減少し、2月27日以降の自主的なイベント中止により、大人の接触頻度が50%減少したことを示す未発表の研究に言及しており、外出を60%を減少させることができると期待しています。

あらゆる研究に言えることですが、全てが正確ということはありえませんし、不確実性が内在する中国のデータを基にしているので、このモデルはあくまでも基本的な想定をしているだけに過ぎません。首相は来月から1ヶ月間、ソーシャル・ディスタンスを7、8割減らすように国民に要請しています。しかし、企業が経済的苦境に陥ることなく、従業員が自宅に留まることを認める明確な補償がなければ、これらの目標を達成するのは難しいと言えるでしょう。世界の他の地域で実施されているように、日本でも数週間前から、もっと強制力、拘束力のある措置を講じて、より強力なメッセージを投げかけていたならば、もう少し効果をあげることができたのではないでしょうか。今のところ、私たちは運に頼り過ぎてしまっているようです。…

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COVID-19 検査マップ」発表

In COVID19, ニュース, マップ by sean

 

2020323日 by Sean Bonner

本日、私達はCOVID-19検査状況を見つける際に、その状況を文書化できるようなクラウドソース・マップを立ち上げました。
セーフキャスト設立の信念の1つは、人々が自分自身と友人や家族の安全性について判断を下すために、信頼できる正確な情報にアクセスできる必要があるということです。 これらのリスクに関する独立した信頼できる情報源を提供するために、クラウドソーシングされた放射線と大気質のデータを公開し始めました。

COVID-19はすでに世界中のコミュニティに壊滅的な影響を及ぼしています。
人々は今後の準備をする必要があり、そのためには良い情報が必要です。 また、検査に関する情報を簡単に入手でき、自分の健康と安全性について安心感を与え、この世界的な緊急事態の際により良い判断を下せるようにする必要があると考えています。

しかしながら、現在、世界中の多くの場所で、COVID-19の公式の検査情報はあいまい、かつ不完全であり、人々は関連性も信頼性もない公式情報源に依存しています。必要な場所に検査キットが届かなかった、不完全な検査キットの配達、過度に複雑な承認プロセス、あるいは不公平な優先順位のために、政府が発表する検査の有効性と実際の検査受診の可能性の間に一部の地域でギャップがあることが明らかになりました。
この状況は、3/11以降に私たちが見てきたものを不穏なまでに思い起こさせます。これについては、ここで詳しく説明しました。世界中の人々の助けや意見により、このマップは、さまざまな地域での検査受信の難易度状況に関する情報を提供できることを期待します。信頼できるクラウドソーシングされた情報を提供することにより、このマップが情報をより的確にターゲティングし、政府や当局の説明責任を果たすのに役立つツールになることを願っています。

地図は covid19map.safecast.orgで利用できます。

地図の利用方法:

  • 1.左側のメニュー/ナビゲーションに、マップ上の色付きのマーカーに対応する「無症状で検査拒否された(黄色
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「信号機は放射性がないんだ!」―Safecastのフィールドトリップで東京インターナショナルプログレッシブスクールの生徒達が発見したクールなこと

In Events, ニュース by marc_prosser

2022年3月16日午後1時半~午後3時半 東京、渋谷のSafecastオフィスおよびFabCafe MTRLにて

写真提供: Kelsie Stewart

すべての人にオープンな環境データを

Safecastは環境に関するデータで人々の生活に寄与することを目的としたボランティア中心のグロバールな市民科学プロジェクトです。私たちは、より多くの利用可能なオープンデータを提供することは、すべての人にとって良いことだと信じています。私たちの活動は、データやデータ収集のノウハウを世界中の人々に提供することを目的としています。

― Safecastのウェブサイトより

Safecast は、有益でアクセスしやすい粒度の環境データを作成することを目的とした、グローバルなボランティア主導の非営利団体です。SafecastのデータはすべてCC0によってパブリックドメインとして無料で公開されています。

市民科学とは何か?オープン・ソース、あるいはオープン・データとは?コミュニティ主導の環境データ構築が私たちの未来にとって必要な理由は何か?―東京インターナショナルプログレッシブスクール(TIPS)の生徒たちがSafecastのフィールドトリップでこうした疑問の解明に取り組みました。

TIPSの生徒達によるSafecast x 市民科学 x 環境正義に関するブレインストーミング・セッション Photo credit: Kelsie Stewart

フィールドトリップは三部構成で、第二部と第三部で生徒たちは2つのグループに分けられました。第一部ではSafecastメンバーのAzby BrownとJoe Moross、Kelsie Stewartが全生徒を対象にブレインストーミング・セッションを行い市民科学と環境正義の公開性の重要性について掘り下げました。

Safecast x 市民科学 x 環境正義 ブレインストーミング・シェアリングセッション Photo credit: Kelsie Stewart

SafecastリードリサーチャーAzby BrownがSafecastを紹介している様子- “Yes, We’re

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E2D3 x Safecast 環境データの可視化ハンズオン (2016/11/03 13:00〜)

In Events by Rob Oudendijk

E2D3 x Safecast 環境データの可視化ハンズオン (2016/11/03 13:00〜)

環境オープンデータを使って、よりわかりやすい・伝わりやすい情報の表現方法を試してみよう.

誰もがデータを見てさわって楽しめることを目標に活動している、グラフ共有コミュニティE2D3(Excel to D3.js)は、様々な企業や団体との協力イベントを開催しています。

今回は、環境データを提供することで、人々に力を与える活動を行う世界的な市民科学のボランティア・グループ、セーフキャスト(Safecast)とのコラボイベントです。

セーフキャストが集めた環境データをE2D3で表現してみる体験会を実施します。ご自分のPCをご持参の上、ご参加ください。

http://e2d3.connpass.com/event/42517/

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Safecast 京都初のワークショップ 23-10-2016

In Events, ニュース by Rob Oudendijk

 

【知る・つくる・測る。放射線との正しいつきあい方を学ぼう】

東京を拠点に活動する多国籍ボランティアチーム SAFECAST が MTRL KYOTO に特別出張。

さまざまな身近なサンプルを実際に測りながら放射線を体験し、学ぶワーク、ガイガーカウンターを作る電子工作ワーク、市民活動の意義とインパクトを考えディスカッションするワークの3つを体験する盛りだくさんなワークショップを開催します。

——————
日 時 2016/10/23(日) 13:00~18:30 (12:45 OPEN)
場 所 MTRL KYOTO
参加費 1,500円
定 員 24名
企 画 Safecast / MTRL KYOTO

https://www.facebook.com/material.kyoto/posts/577887132409664

 …

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セーフキャスト 3周年イベント

In Events, ニュース by sean

セーフキャスト設立のきっかけとなった、東北地方太平洋沖地震と津波そして福島第一原発のメルトダウンから3年をしのび、3/15(土)、16(日)に、イベントを開催します。2日間のプログラムは、議論と実践的なイベントとなります。15日(土)には東京大学で「これからの3年間」というこれまで起きたことを見つめ直し、未来に向かって期待できることについてのディスカッションを予定しています。プログラムと哲学と同様に、ポリシーや活動について議論する予定です。質疑応答とあわせ個別の講演(講演者リストはまもなく発表します。)を含んでいます。これらのイベントはライブ中継したいと考えています。15日は東京大学でのレセプションで終了予定です。

15日の夕方より16日の夕方まで、セーフキャストのウェブサイトに関するグローバルハッカソンを実施します。これは、皆さんの協力をお願いする機会となる膨大なプロジェクトです。コピーライター、翻訳者、デザイナー、開発者など多くの方を歓迎します。もし、ご興味ありましたら、さらなる詳細についてハッカソンのメーリングリストにご参加ください。実際に、サイトを見てセクション毎に再考していきます。そして、改善がみられるよう、APIや地図についても見ていきます。世界中の人々から私達が直面している課題に立ち向かうのを遠隔で助けてもらえるよう招待していますが、16日はハックするために道玄坂のオフィス(1FがFabCafe、ロフトワーク)にて実際にお会いしましょう。その日はいくつかの大きな改善を行って終了したいと思っております。

両日ともイベントは一般に公開されています。

「フクシマ ~ これからの3年間:現状と展望について」

セミナー開催日:2014年3月15日

時間:午後1時 – 5時まで

場所:東京大学駒場キャンパス 総合研究実験棟(An棟) 2階コンベンションホール

http://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_04_09_j.html

このイベントは USTREAMで生中継されます。

USTREAM専用リンクはこちら:

USTREAM http://www.ustream.tv/channel/safecast-live/

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プログラム予定表

12:30 開場

13:00 セーフキャスト-これからの3年間:

『開幕のあいさつ』
伊藤穣一(セーフキャスト共同創設者、MITメディアラボ研究所長)

『セーフキャスト~現状と今後の展望』
ショーン・ボナー(セーフキャスト)
ピーター・フランケン(セーフキャスト)
カリン・コズハロフ (セーフキャスト)

続いて『質疑応答』

14:00 海洋生物、食品、人体への放射能汚染状況について

『クラウドソースによる新しい海洋生物の放射能汚染研究について』
ケン・ブッセラー(ウッズホール海洋研究所)

『安全な食品の未来について』…

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Vice Japan がbGeigie のイベントに!

In Events, Hardware, センサーネットワーク, ニュース by sean

SAFECAST は、10月、DIYタイプのガイガーカウンター bGeigie Nano のワークショップを、東京・渋谷で行いました。

当日は、Vice Japan (バイス・ジャパン)の内田有香さんも、お忙しい中、参加してくださいました。
このビデオは、ジョージ・ジョセフ氏のプロデュースによるものです。
bGeigieを自分で作ることで、ガイガーカウンターをより理解できるようになることが、
この映像からもわかります。

イベントの模様は、YouTubeリンクからご覧いただけます。…

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セーフキャスト・エア・フォース(無人飛行機プログラム)

In Events, Hardware, 主要記事 by sean

上のビデオは、bGeigie Nanoを搭載し、飛行中に放射線測定とwifiを利用して生中継を行うhexacopterのものです。これは、5月上旬、マサチューセッツ州ケンブリッジで行われた一週間に渡るSafecastハッカソンの成果です。

このハッカソンの期間、無人飛行機に注力する理由は数多くありました。もちろん、無人飛行機はカッコ良く、興奮させるものであり、人々が関心を持ち続けるのに役立っています。実用レベルでは、例えば、急勾配の坂や汚染地域といった、あまりに危険だったり、単に立ち寄れない地域での測定を可能としたりといったニーズもあります。私たちは、飛行経路を計画し、無人飛行機に広大な範囲を、その地域を案内出来る人よりも早く測定することができます。無人飛行機に関して私たちのデータについて考えてみると、私たちは様々な側面から存在する課題を考え、新たな活力で取り組めるのです。

セーフキャスト・エア・フォースのコンセプト( これは、たくさんの互換性のある要素でできた、組立式無人飛行機プラットフォームなのですが )は、 当初はRay Ozzieから提案があり、1週間を通じてセーフキャスターのNaim Busek、Joe Moross、Pieter Franken、Steven Wright、 Ariel Levi Simons、 Haiyan Xhang、 Paul Cambell、 Anthony DeVincenzi、 Samuel Luescher と私がアイデアを現実のものとしました。

私たちは、3D Robotics社から組立済みのHexacopeterで始め、モーターとブレードをアップグレードし、より丈夫な DJI Flame Wheel Frameにもしました。Ardupilot(オープンソース arduinoベースの自動操縦システム)により頭脳を、セーフキャストにより観測機器が用意され、私たちは特長のある飛行機を組み立てました。

これは今のところ確実に私たちの主要案件であり、私たちは Parrot AR.Drone 2.0

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Tokyo Hackathon Roundup

In Events, ニュース by sean

Earlier this year we held what will hopefully be the first of many Safecast Hackathons. Since Safecast has such a fantastic team of volunteers working together, we thought it might be beneficial to bring everyone together in one city for …

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Safecast Code

In FAQ, ニュース, 論説 by sean

We’ve been thinking about what describes the Safecast project as a whole, and came up with a list of 10 things that we try to incorporate into all of our efforts. This is something like our code of conduct, what …

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「安全ですか?」は、そんなに難しい質問でしょうか?

In FAQ, 主要記事, 放射線, 論説 by kalin

Top or bottom? Safe or not?

私達のもとにはinfo@safecast.org宛やセーフキャストグループを通じてつながりを持った人達からたくさんの質問が寄せられます。みんな放射線のあらゆる面について理解しようとしています。
そして、もちろん、多くの人が似たような質問をしますが、疑いなく最も頻繁に聞かれる質問は「~~は大丈夫?(安全ですか?)」 といった類のものです。 信じられないかもしれませんが、私たちの放射線FAQのページには答えが準備されているにもかかわらず みんな質問し続けるのです。

最近、九州で数ヶ月過ごす予定だった人から当地での汚染について質問がありました。彼は放射線レベルについての情報を得、現在の放射線レベルは3.11以前よりも高いと最終的に結論づけました。
彼はそれがセシウムやストロンチウム汚染によるものなのか質問しました。実際、彼は別々に収集された異なるデータセットを比較していました。 私は彼にユーザが矛盾のない測定データを全国にわたって自由にダウンロードでき、時間の経過に伴い変化を比較することができる DPNSNNEを教えてあげました。そのデータによると九州における空間線量レベルは(原発)事故の前後で全く同じであることが示されています。 フォーラムやメーリングリストでしばしばあることですが、いったん質問に対する返答があると、議論は(自然に発生している)ラドンと(人口の)セシウムやストロンチウムの危険性の違いにシフトします。

そして、すぐにラドン、セシウム137、ストロンチウム90の半減期(一定量の放射性同位体が半減するのにかかる時間)についてのデータが“証拠”として俎上に載せられ、半減期と生物学的な半減期の違いについて議論がされ、その結果、質問は以下のことに形を変えてしまうのです。

  • セシウム134/137は生物学的半減期(70日で体内から半分が消滅する)、ストロンチウムは18年間であるのに対してラドンの半減期はたったの4日であるため、ラドンは他とくらべて危険が少ないのではないか?

私はこれについてよく考えてみましたが、次のような例を上げることで説明できるのではと考えました。その例とはこのブログポストにまとめられた例のことです。(ここで私のとりとめのない書き物を外に出すように促してくれたアズビー、ジョー(JAM)、そしてみんなに感謝したいと思います。)…

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質問:東京へ行くことは安全ですか?日本の他の地域はどうですか。

In FAQ by admin

回答: 来日に関する決断について、人々に助言することを避けてきましたが、私達は皆、東京で快適に生活し働いています。しかしその一方で、私達の知り合いや尊敬する、かなり多くの人達が、熟考の末、日本を離れるという決断をしました。汚染は様々な量で、ほとんどどこででも広がってますが、福島とその近県(栃木県、茨城県、群馬県)の外側では、ごく僅かな汚染量となっています。私達の知っている人は誰一人として、名古屋や大阪といった日本の南部が生活するのにリスクのある場所とは考えていないと言っていいくらいです。…

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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戦争と断片的なデータ

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

昨年のちょうどこの頃、Safecast設立10周年を記念して、福島の現状を伝えるべく生放送で16時間に及ぶ世界配信を行いました。大地震、津波そして福島第一原発事故という2011年3月の多重災害からも10年の節目でした。それからたった一年、これほど状況が変わるとは誰にも予想できなかったことでしょう。

福島において原発事故後の緊急事態であるという感覚は数年前に無くなり、代わりにこの大規模災害の長期的な環境および社会影響に対する理解が深まりました。言わば緊急事態に対する応急処置から、Safecastおよび社会全体の姿勢も長期的な視点へと移行していたのです。しかしロシアによる一方的なウクライナ侵攻により、情報の収集、信頼度の検証、再発信という、原発事故後のような「迅速な対応」が必要な態勢に引き戻されてしまいました。

壊滅的な戦争により、再びこの様な対応が必要になってしまったことは大変残念です。現時点で既に原子力施設の安全性や核の保安を脅かす事象が数件が起きており、世界的に注目を集めています。チェルノブイリが占領されたときに放射線量の増加はあったのか、電力供給が止まってしまったら放射線量が増加するのか、原発がミサイルなどによって攻撃を受けたらどうなってしまうのか、など多くの不安や疑問が呈されました。

福島原発事故後に示されたように、信頼できる情報源から一貫したデータを自由に入手できることは、人々の無力感を和らげ、多少なりとも安心感につながります。Safecastは設立当初より、人々に信頼され活用できるデータを提供するためには、特定の政府や企業に影響を受けていない独立した情報源であること、誰もが活用できるオープンソースであること、また全ての人に行きわたるよう情報の一点集中を避けることを重視してきました(「DeDa」参照)。この原則は、現在のような危機的な状況下で特に重要だと考えます。

現在もSafecastではTwitterやブログを通して、現状の分析を逐次発信しています。我々のこの活動は、一般に公開されている情報を活用し、最前線で何が起こっているかを明らかにしようとする多くの人々の活動と重なります。放射線分場におけるモニタリングネットワークおよび情報発信の経験を生かして貢献をしてきましたが、残念ながら我々でも断片的な情報しか得られていないのが現状です。

2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所および立ち入り禁止区域を占拠したとの情報を受け、Safecastでは直ちに入手可能な放射線量に関するデータの収集を開始しました。我々のデータベースの大部分はボランティアの方々がbGeigieを使って自ら測定したものです。そのため、特定の時点でのデータはあっても、現場からリアルタイムで放射線量の変化を感知できる定点センサーはありません。

予想通りウクライナの公式放射線量データは、インターネットで情報を公開し続けることが困難な状況に陥っていますが、その中でも得られた情報はあります。例えば、欧州委員会共同研究センター(JRC)の放射能環境モニタリング(REM)グループのホームページには、ウクライナ水文気象センターからの測定値が掲載されており、ウクライナの非営利団体SaveEcoBotでは、多くの政府システムから入手可能なデータを集約し、発信しています。

しかしながらロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナにおける多くの有用なモニタリングネットワークは断続的で不安定な状態に陥っています。また時間が経つにつれ、ウクライナ政府の公式ホームページの全ての放射線量データもアクセス不能になってしまいました。さらにはロシアによるサイバー攻撃(DDOSなど)、電力網破壊によるサーバーの停電、電波塔の破壊による通信回線の切断なども報告されています。

ウクライナ当局は、猛烈な攻撃を受けながらも、懸命に情報提供活動を行っています。ウクライナのエネルギー省は、安全確保のためにシステムをオフラインにするという苦渋の決断を迫られ、現在も続行中です。戦争によって国民への公的な情報供給の手段は阻まれ、現在は政府が収集した情報を、NPO法人SaveEcoBotが提供しています。これは歴史的な出来事であり、SaveEcoBotは非常に重要な役割を果たしています。

当然ながら、ウクライナにおけるモニタリングおよび情報公開システムは戦争を想定していなかったため、ロシアの攻撃は直接公式情報の消失を引き起こしています。しかしながら今回の経験が、モニタリングシステムの過度な一極集中化や、チョークポイントおよび単一障害点など、緊急時に簡単に不能化されてしまうリスクを避けた、より強固なシステム設計に活かされることを願っています。政府などが人為的なミス、あるいは故意に公共なモニタリングデータへのアクセスを遮断することは、あってはならない事態です。特に現在のウクライナのように国民がこのような情報を必要としている状態においては、武力行使が行われる戦争下においても耐久可能な強靭なシステムが必要です。

Safecastのシステムは初めから冗長性およびオープンデータであることを重視して設計されています。我々のデータベースは全て特別な許可なしにダウンロードが可能です。サーバーの損失やインターネットアクセスの拒否が発生した場合でも迅速にデータを再構築できるよう、世界中に複数のコピーを保存することを可能にしています。放射線量のリアルタイムモニタリングデータは2つのデータベースに保存され、スタンバイ状態のクラウドサーバーも必要に応じて数分で立ち上げられる状態になっています。またSafecast内部でも、数年分のデータを保存するためのキャパシティーが確保されています。データの通信手段としてはWiFi、LoRa、携帯回線など、様々な方式を試験的に導入してきましたが、コストと汎用性から現在は携帯回線を採用しています。ウクライナで発生した公共データの損失は、携帯電話回線の混乱が大きな要因であるため、現在は我々のシステムの生存率およびデータの取得を最大化することに注力しています。

いつもながら、多くのボランティアの方々や専門家の方々の支えがあってこそ我々はこのような活動を続けることができています。福島とウクライナには多くの共通点があり、ウクライナの方の多くは、チェルノブイリのグループと長期にわたって協力してきました。現地の人々は彼らが直接見聞きしている現状を訴えています。我々は彼らの安全を非常に心配しており、これらの情報を公開し、発信していくことにより少しでも支援できることを願っています。

何百万人もの人々が生存を懸けて必死になっているこのような戦時下が、公共の放射線モニタリングシステムの脆弱性について議論するのに適切であるのかという疑問はあるかもしれません。残念ながら喫緊の戦況により核の使用の可能性が否定できなくなってきているため、放射線量のモニタリングデータが、現在進行中の情報戦の一部になってしまっているという状況なのです。ロシアによるウクライナの原子力施設に対する躊躇ない攻撃は、大規模な放射線放出の恐怖を世界に広めました。ロシアはこの「恐怖」そのものを武器として展開しており、我々は信頼できる情報をリアルタイムで必要とするすべての人々に届けることがこの状況下における唯一の対抗策だと考えます。

現在ウクライナの人々は、世界が信頼できる情報を入手し、それに基づいて行動できるよう、情報のオンライン共有を維持するために奮闘しています。幸いなことに、いくつかの原子力施設が攻撃されたにもかかわらず、これまでのところ大規模な放射能放出は回避されています。 我々はオープンデータを武器に、真実によって勝利すべき情報戦の中にいるのです。

— SAFECAST チーム…

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福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

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2021424

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー

翻訳:長岡英美, 宮下(オースターマン) 絵夢フェリチタス, 為本 晃弘 


以下内容の主要部分はJapan Timesの署名入り記事に掲載されました。英語による注釈付きの記事は2021年5月6日Safecast Blogで公開されました:  

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

 



政策の分析

413日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。1

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10

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SAFECAST 10 – 世界中から考えるフクシマの現在

In featured, Uncategorized, ニュース by azby

 

SAFECAST 10周年記念イベント 2021313日(土)

本年は2011311日の福島原発事故から10年目であると同時に、SAFECAST設立から10周年を迎えます。この節目を機に、SAFECAST2021313日および14日に過去10年間でのプロジェクトの活動を振り返り、福島の最新情報を提供するとともに、オープンデータの重要性、新たな挑戦および過去10年間の経験で得られた学びについて発信するオンラインイベントの開催を計画しています。

このイベントはSAFECAST…

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日本のCOVID-19のデータの不正確さについて

In featured, ニュース, マップ, 主要記事 by azby

2020年4月28日、アズビー・ブラウンによって公開

以前の記事(こちらこちら)で、COVID-19の検査に関して日本で実際に決められている方針を整理しようと試みました。私たちはデータに一貫性がなく他の公式データにも問題があり、実際に検査が行われた数と感染の可能性がある人数を一般の人がうまく把握できなくなっていることを指摘しました。このデータ問題について私たちが記事を公開してから4週間が経ちました。4週間前の当時は、20,340件の検査が日本で報告され、全国で1214名が陽性、そのうち東京都の陽性患者が171名でした。国内の新しい陽性患者数は1日100名以下でした。(この記事を書く)現在では、一番最近のデータによれば、150,692名の方が検査を行い、国内で13,448名の方が陽性、そのうち東京都だけで3,908名となっています。新規に陽性判定された人数は1日平均で現在約400名ですが、最高値は4月11日に記録され、700名の方が陽性判定されました。

これらの数値は、もちろん、2月から3月にかけての明らかな感染の増加を示しており、日本はすでにコロナウイルスを「克服」したと主張する声を抑えたに違いありません。当時、感染者の増加割合は大きく、医療機関も過剰負荷に対する混乱のサインを既に示していましたが、我が国では、指数関数的に患者数が増えるフェーズにはまだ到達していなかったように見えます。私達が何度も指摘しているように、日本では症状の発生している方々さえ検査を受けるのは非常に困難です。私たちはこの問題に皆さんが非常に感心を持たれていると気づいたので、自分達で感染に関する実態を報告できるオンラインマップを作成しました。検査が行われた人口比率(約0.008%)を調べた通り、少数の検査しか行われていないことを考えると、より大規模な感染拡大についてどれだけ早く知ることが出来るのでしょうか。私たちは3月にしたのと同じ質問をしなくてはいけません。意図的に検査を絞る現状の「クラスター対策」のアプローチで見落としている感染者はどれくらいいるのでしょうか。特に無症候または発症前(そして現状のガイドラインでは検査対象外とされる人)の方を中心に、もっと多くのCOVID-19陽性の人達がいるにも関わらず、彼らが特定されず速やかに隔離されず、ウイルスの感染拡大を抑えられない場合、どれだけ危険な状況になりそうでしょうか。

英国キングスカレッジのPopulation Health研究所長を務める渋谷健司教授(以下、渋谷氏)が先週、東京の外国人記者クラブ(FCCJ)向けにオンラインの記者発表を行ないましたが、公開データを踏まえて考えを述べ、気がかりな地域を明らかにしました。私達が先述した通り、渋谷氏は「クラスター対策」のアプローチのみに委ねることのリスクについて警鐘を鳴らしており、日本でさらに検査数が急増する危険があると警告しました。皆さんには、彼の記者発表ビデオをご覧いただきたいと思います。具体的には、多くの理由を元に、日本の実際の感染者数は、公的機関を介して発表されている現在の人数の少なくとも10倍はいるだろうと渋谷氏は試算しました。翌日、厚生労働省の主要メンバーの一人である北海道大学の西浦博教授(以下、西浦氏)は、東京で記者会見を行い、渋谷氏の試算と同じ見解を示し、実際は10倍以上かも知れないと付け加えました。同時に、西浦氏は、データは現在、全国の感染者は減少傾向を示していることを何度か繰り返し述べました。直近のグラフデータも同様の傾向を示しているようです。

22020年4月27日付の日本全国の感染者件数(参照:https://covid19japan.com/)

2020年4月27日付の東京都内のCOVID-19感染者データ
(参照:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/en/)

渋谷氏が彼の記者発表で指摘したように、日本政府の資料から報告された件数を見る際には注意しなければいけない点が沢山あります。いくつかの理由から、確認できるデータを元にしっかりとした疫学的な結論を導くことは難しいはずだと渋谷氏は考えています。COVID-19に感染してから、重症化し、日本の厳しいPCR検査の基準を満たすまでには約2週間かかることが非常に重要で、理解しなくてはいけません。私達が目にする一日の陽性患者数は、数週間の間にすでに存在していた感染者をデータを編集した日時に報告しているに過ぎません。これらの件数は、時差のある指標であり、2週間前の感染拡大のごく狭い一部を捉えたものです。渋谷氏によれば、仮に、特に発症前、無症候の感染者に対して、さらに広範囲に検査の実施を行えるなら、最新の感染拡大の全体像をより捉えることが出来るだろうとのことです。

もう1つ注意しなくてはいけない点としては、報告の遅れとデータの一貫性の無さから、民間の研究所で実施された検査結果が完全には公開されていないということです。例えば、東京都が提供する二か国語対応のwebサイトは、公に行われている取り組みの中でも良いものの1つですが、公的機関の報告は毎日更新しているのに対して、民間の研究所からのデータは毎週金曜日に週ごとのデータが更新されるだけになっています。その結果、サイトに公開されている感染者数が、毎週金曜日に不思議な増え方を見せています。似たような増え方が検査数の合計グラフにも影響しています。これに関する説明は東京都のwebサイトのどこにも明らかになっていません。

日本の検査システム、感染者報告システムのほとんどは自動化あるいは完全なオンライン化がなされていません。信じられないことですが、全てのデータはまだファックスで送られており、手入力で転記し、編集しなければなりません。このことが不要な遅延を招き、データ入力エラーの可能性を高めています。非効率なデータ編集プロセスや、実際にデータのカテゴリーが表しているものが元の印象に対して違うこと、そして、報告されている検査数が引き続き一致しないことを考えると、これらの数値のみに基づいて実際に何が起きているのか評価することは難しいのです。最も気がかりなことは、このデータがどれも一般利用が出来ないので、外部の研究者が独自に検証し、複製し、評価する方法が無いことです。渋谷氏は、国立感染症研究所(NIID)からCOVID-19に関するデータを取得し、分析しようと試みた経験について語りましたが、特に彼の立場と評判であれば、非常に簡潔なプロセスであったに違いありません。渋谷氏は特定の申請書類を記入する必要があり、申請プロセスは数ヶ月かかると言われたそうです。国立感染症研究所(NIID)が持っている背景データにアクセス出来ない限り、私たちは一般利用のデータからはほとんど何も述べることが出来ません。

(イタリア)ロンバルディア州からの大規模なイタリア人データサンプルに基づく最近の研究によれば、現地で見られたCOVID-19の感染の43%は無症候感染から由来するものでした。さらに、新規の感染のほとんどはロックダウンの前に発生し、同じ家庭内の無症候感染に由来していました。他の研究は、人口内に無症候感染者が優勢であることに関する似たような結論に至りました。最近の日本の感染者数のグラフは安心するようなカーブの描き方をしていますが、現在の国の疾病監視システムではまだ検出出来ていないCOVID-19の感染拡大のフェーズに日本が既に入ってしまっている可能性が強く残っています。無症候感染や発症前の件数が大半を占める中で、検査の基準からほぼ全て除外されているからです。COVID-19のスクリーニングを受けた呼吸器と関係ない理由で来院した67名の患者のうち4名(6%)が陽性であることが判明したという慶應大学病院の最近の報告はこの考えを裏付けています。渋谷氏やその他の関係者は、この慶應大学病院の件は大きいサンプルにも代表的なサンプルにもなり得ないが、有病率は非常に高く無視すべきではないと指摘しました。

既に知られている他国における無症候/症候ありの比率を元に、渋谷氏と西浦氏は二人とも、他国では20~50倍になっていると指摘した上で、実際の感染者数を少なく見積もっても日本で報告されている感染者数の10倍になると考えています。慶應大学病院での6%の有病率は過大評価だが、他のエビデンスから東京の人口の3~4%の感染率がもっともらしいと想定して、渋谷氏は「単純計算すればちょうど今何人感染しているか分かる」と述べています。1300万人を東京都の人口とした場合、3%は39万人です。ここでの述語は「もっともらしい」です。2週間前に報告された西浦教授によるモデリング結果では、厳しい対策を行わない場合、日本におけるCOVID-19の重症患者の人数は85万人、死者合計で40万人に上る可能性があると見積もっています。これら2つの見積もりは、アウトブレイクの可能性に関して一般的に認められていることです。自発的にソーシャルディスタンスを行ったり、これまで取られてきたその他の対策の効果は、相対的には不確定要素のままです。

しかし、大多数の死者はまだ明らかになっていないように見えます。検査の実施が足りないことで、関心を持っている多くの方が、単に肺炎と報告されている死が実はCOVID-19によるもので、その結果適切にカウントするのを「隠している」のではないかと疑っていると以前私達は指摘しました。沢山の疾患の種類、合併症、その他の関係要因から、インフルエンザの死亡率は通常の状況でさえ定量化することは難しいと渋谷氏は指摘します。様々な理由から、またそのどれも重複しないことから、伝染病による死はしばしば過小評価されています。インフルエンザの場合、全員に検査をすることは不可能なため、私達は代わりに死亡率の過剰分がどの程度か見積もるプロセスにしばしば頼らなくてはなりません。東京大学の研究者による最近の論文

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日本に於けるCOVID-19コロナ・ウィルス患者数が表す意味

In COVID19, featured, ニュース, 主要記事 by exporter

2020年3月24日Azby Brown著

Reiko Mori, Yoshida Suzuka, Tatsumi Baba, Ryuichi Anbo, Mami Yahiro, Momoha Koya (Furuhashi Lab., Aoyama Gakuin Univ.) 翻訳

 

先週、私はセーフキャストの一員として日本のCOVID-19コロナ・ウィルスの検査についての記事を書きました。

さて、ここCOVID-19コロナ・ウィルスに関する正確な情報の伝達が乏しく、最近では検査基準を満たしている人が検査を断られる事例が増加し、国民の間で不満や疑惑の声が挙がっています。これは政府による政策が原因ですが、検査することを重要視している韓国、台湾やシンガポールなどの国は感染者の数値が緩和し始めたのに対し、日本ではそれらの国と大幅に異なり検査数が少ない状況です。

今後一体どういうことが起こるのでしょうか?

日本国内では、普段の生活に於いて肉体的な距離を保つ傾向を筆頭に、マスクの着用や優れた衛生環境、握手による挨拶が少ない、などの要因を基にCOVID-19コロナ・ウイルスに打ち勝ったという話が最近様々な所広まってきています。セーフキャストでは「マスクの着用」や「規則正しい手洗い」は、肌の接触を減らすのと同等に重要視しており、ここまでの接触感染率の低さを保っているのは恐らくそのお陰なのではないかと思います。

しかし、学校の閉鎖や開催予定であった大きなイベントのキャンセル、そしてなるべく多くの人々が在宅ワークを行っているにも関わらず、文化的背景に基づいた日々の社会的な距離だけでは強制力がとても弱い可能性も出てきています。例えば、公園では毎日のように花見をしに来た人々で埋め尽くされ、電車も常に満員です。バーなどの飲み屋、またレストランなどの飲食店も同じ状況です。私達は今までラッキーだったのでしょうか。

その一方、感染者数は国民全般に於ける検査の不足、そして、誤った分類による単純肺炎で亡くなった方と、COVID-19コロナ・ウイルスで亡くなった方との区別が曖昧で、疑いが晴れないでいる現状も存在します。

日本の各都道府県や地方自治体は、緊急事態時には自主的に対応を行える権限を保持しています。例えば、最近のニュースでは

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日本のCOVID-19テスト:状況と影響

In featured, Uncategorized by exporter

 

情報元: VOX

2020316日現在:COVID-19検査者数:

  • 検査済: 13,026

  • 感染者数: 1,496 (未発症者・発症者共に含む)

  • 死者数: 24

情報元ToyokeizaiMHLWJapan TimesVox

韓国など集中的なCOVID-19集団検診および検査プログラムを展開している国と比較して、日本はこれまでのところ、多くの検査を実施していません。韓国の20万人以上と比較して、日本では厚生労働省によると、3

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表

In Air Quality, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, 測定 by Pieter

Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表
– これまでで最もシンプルな空気質モニター
セーフキャストが10周年記念イベントのライブストリーミングで
Airnoteデバイスを福島に設置

マサチューセッツ州ボストン & 東京 – 2021年3月9日 –
オープンな環境データの世界的リーダーであるセーフキャストと、IoTクラウドセルラーソリューションのリーディングカンパニーであるBlues Wirelessは、
本日、これまでで最もシンプルで費用対効果の高い空気質デバイスであるAirnoteを発表しました。Airnoteは、複雑さと使用の障壁を取り除くことで、市場に出回っている他の製品に比べて約半分のコストで、空気質センサーの大量導入を簡素化します。これにより、個人、企業、自治体は正確な粒子状物質データを収集し、より健康的な環境のためのより良い意思決定を行うことができます。

“10年前の福島の危機を契機に世界中から多くの有能な人材が集まり、共通の目的を果たすこととなりました。”
非営利団体Safecast、Blues Wireless、そして最終的にAirnoteデバイスは、すべてこのコラボレーションの結果として生まれました。

これまでのところ、空気の質、水質、放射線などの環境面では、高額な機器の費用面や、デバイスを配置するための慎重な設置、信頼性の高い屋外ネットワーク接続といった課題がありました。Airnoteは、日当たりの良い窓の外側に簡単に取り付けることができる、完全に統合されたゼロセットアップの太陽光発電装置です。Airnoteは、130カ国以上のセルラーネットワークを使用して、定期的に空気質データを自動的にアップロードします。Airnoteには、Bluesのノートカード通信モジュールが搭載されており、プリペイド/プリアクティベートデータプランが含まれています。
Airnoteは、ディスプレイに情報を表示したり、ユーザーがQRコードをスキャンしてオンラインでチャートやグラフを表示したりすることができます。
PM1、PM2.5、PM10の粒子状物質の温度、湿度、気圧、密度を測定できます。

Airnote_Rear

The Airnote rear features a display showing the air quality, viewable from the inside

Airnoteデバイスがアップロードしたデータは、はじめからパブリックドメインに指定されており、全ての人に利益をもたらします。BlueのリアルタイムデータルータであるNotehubやセーフキャストのデータベースや地図を介して、データは世界中で分析、教育、さらには商業利用のために利用できます。
データはデフォルトでは匿名ですが、デバイスの所有者はオプションでデバイスを主張し、データのアップロードのためにクレジットされることができます。

“福島は紛れもなく災害でしたが、このイベントは私たちの環境の将来と安全性をより良く計画する機会を与えてくれました“
と、Safecastの共同創設者であり日本のディレクターでもあるピーテル・フランケン氏は述べています。
“私たちがAirnoteから受け取るグローバルデータは、市民主導のオープンデータのペースを加速させ、より健康的な地球環境に向けて私たちを前進させると同時に、将来の危機へのより迅速で効率的な対応を可能にしてくれます。…

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新しいデバイス「ソーラーキャストナノ」を紹介します

In Hardware, センサーネットワーク, ニュース by sean

By ショーン・ボナー

セーフキャストは2017年の初め、新しいソーラーキャスト(Solarcast)デバイスの製作をすすめることお知らせしました。

そもそもソーラーキャストは大気汚染を測定できる機能を搭載した最初の、そして3G接続およびソーラー電源という機能も持ったデバイスでしたが、その機能の特性から外部の電源や、マニュアルでのデータ取得が不要になり、いわゆる“置いたらほったらかし”での測定が可能となりました。

このことはセーフキャストにとって非常に重要な進歩であり、今後このような方法が主要な測定方法になっていくことは間違いありません。その後アメリカワシントン州ハンフォードの核施設トンネル崩壊の事故が発生し、まさに開発したデバイスがこのような状況に最適であることを強く認識させられました。

しかし、ソーラーキャストにはその利点はありながらも、そのコストおよび制作に時間がかかってしまうという欠点がありました。それに加え、大気汚染センサーの搭載は私たちが時間をかけて取り組んできたものではありましたが、実はハンフォードのような緊急性の高い放射線測定を必要とする状況のモニタリングでは、それほど必要性は高くないこともわかりました。

その反面、セーフキャストが広く利用しているデバイスであるbGeigie Nano(ビーガイギーナノ)は上記のような迅速に行う測定にすぐれていますが、実際にデバイスを持ち歩き、データをアップデートする必要があり、コンパクトかつ自動で動作するデバイスがやはり必要となっていました。

そこで、私たちはそのようなデバイスをデザインし、なんとか2017年末にソーラーキャストナノの完成を発表することができたわけです。このことを大変うれしく思っています。

ソーラーキャストナノを誇らしげに見せるショーン(写真:ピーター・フランケン)

 

ソーラーキャストナノ(Solarcast Nano)は、絶え間ないデバイスのニーズについての議論や技術的な可能性を検討し続けた結果生まれたものです。前モデルのソーラーキャストはレイ・オジー氏がデザイン面をリードし、ソフトウェアの作成を行いました。

ソーラーキャストの大気汚染センサーパーツは多くの電力を必要とするので、それらを取り外し、ビーガイギーに似たより小さいケースに小さいサイズのソーラーパネルを設置しすることで、必要な機能を搭載したソーラーキャストナノを作ることができるようになりました。

トイビルダーラボのジョセフ・チューを3Dモデリングおよびボードデザインのために迎え、ペリカンケース1040(ビーガイギーナノに試用された1010の二倍のサイズでありながら、ソーラーキャストよりかなり小型化されたサイズ)にすべてが収まるようその製作を依頼し、2017年12月19日、ついにソーラーキャストナノが完成したのです。

ソーラーキャストナノのディスプレイはビーガイギーのデザインを引き継いだものとなっています。

ソーラーキャストナノはビーガイギーのDNAを受け継いでいることがうかがえる

スペック詳細は下記の通りです。

  • “置いたらほったらかし”の測定 : ソーラーキャストナノはコンパクト、ワイヤレス、持ち歩き可能で自動で動作するため、3Gさえあれば世界中どこでも簡単に設置可能
  • 自動設定: 自動でセーフキャストのクラウドサービスに接続
  • 低消費電力:ソーラーバッテリーを使い、長期にわたって自動運転ができるよう最適化済み
  • 放射線測定機能: 二つの放射線センサーによってアイソトープを検知・測定
  • 耐性: 長期にわたった屋外での使用にも耐えられるデザイン
  • 小型でカバンにも収まるサイズ
  • 通信: 3G セルラー
  • 位置測定:加速度計つきGPS搭載、これによって測定器が動いた場合位置を再計測可能
  • 電源: ソーラーパネル、バッテリー、内蔵タイプのマイクロUSBチャージャー、リモート・クラウドでの電圧・電流の計測可能
  • バッテリーは着脱可能、18650サイズを標準としているためシッピングが可能
  • 内蔵型SWD“ドラッグ&ドロップ”ファームウェア、その他のソフトウェアは動作に不要
  • 無線アップデート
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bGeigie Nanoの使用説明-YouTube動画

In Hardware, 放射線, 測定 by kiki

セーフキャストが開発した組立式放射線計測機器 bGeigie Nano(ビーガイギーナノ) の使い方が簡単にわかるよう、ビデオで説明しました。
bGeigie Nano 基本説明
計測の仕方
充電の方法
付属品を使っての計測

 …

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bGeigie Nano レビュー

In Hardware by sean

Wise Time Arduinoに触発されて、ゼロからからbGeigie Nanoを作成した人達がいます。彼らはキットを購入せず、設計図を見て作りました。つまり、自分達ですべての部品を調達して作ったのです。これは、いくらかオープンな設計が可能となったことを示します。彼らは過程や型のレビューを書きとめながら、bGeigie Nanoを組み立てることを楽しんでいました。彼らの作成したbGeigie Nanoからデータがアップロードされるのが待ち遠しいですね!

翻訳: Kohei Watanabe, Mikiya Inoue…

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Vice Japan がbGeigie のイベントに!

In Events, Hardware, センサーネットワーク, ニュース by sean

SAFECAST は、10月、DIYタイプのガイガーカウンター bGeigie Nano のワークショップを、東京・渋谷で行いました。

当日は、Vice Japan (バイス・ジャパン)の内田有香さんも、お忙しい中、参加してくださいました。
このビデオは、ジョージ・ジョセフ氏のプロデュースによるものです。
bGeigieを自分で作ることで、ガイガーカウンターをより理解できるようになることが、
この映像からもわかります。

イベントの模様は、YouTubeリンクからご覧いただけます。…

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セーフキャスト・エア・フォース(無人飛行機プログラム)

In Events, Hardware, 主要記事 by sean

上のビデオは、bGeigie Nanoを搭載し、飛行中に放射線測定とwifiを利用して生中継を行うhexacopterのものです。これは、5月上旬、マサチューセッツ州ケンブリッジで行われた一週間に渡るSafecastハッカソンの成果です。

このハッカソンの期間、無人飛行機に注力する理由は数多くありました。もちろん、無人飛行機はカッコ良く、興奮させるものであり、人々が関心を持ち続けるのに役立っています。実用レベルでは、例えば、急勾配の坂や汚染地域といった、あまりに危険だったり、単に立ち寄れない地域での測定を可能としたりといったニーズもあります。私たちは、飛行経路を計画し、無人飛行機に広大な範囲を、その地域を案内出来る人よりも早く測定することができます。無人飛行機に関して私たちのデータについて考えてみると、私たちは様々な側面から存在する課題を考え、新たな活力で取り組めるのです。

セーフキャスト・エア・フォースのコンセプト( これは、たくさんの互換性のある要素でできた、組立式無人飛行機プラットフォームなのですが )は、 当初はRay Ozzieから提案があり、1週間を通じてセーフキャスターのNaim Busek、Joe Moross、Pieter Franken、Steven Wright、 Ariel Levi Simons、 Haiyan Xhang、 Paul Cambell、 Anthony DeVincenzi、 Samuel Luescher と私がアイデアを現実のものとしました。

私たちは、3D Robotics社から組立済みのHexacopeterで始め、モーターとブレードをアップグレードし、より丈夫な DJI Flame Wheel Frameにもしました。Ardupilot(オープンソース arduinoベースの自動操縦システム)により頭脳を、セーフキャストにより観測機器が用意され、私たちは特長のある飛行機を組み立てました。

これは今のところ確実に私たちの主要案件であり、私たちは Parrot AR.Drone 2.0

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Air Prototype Show & Tell

In Air Quality, Hardware by sean

Last night at the weekly Crash Space meeting, Naim showed off the current, working, Safecast Air prototype during show & tell, as well as an example of a possible housing using plates. We’re calling the device the “canAIRe” and may …

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“bGeigies for Ukraine “発表のお知らせ 2022年7月20日公開 by アズビー・ブラウン

In Uncategorized by azby

今日は、#bgeigies4ukraineイニシアティブによる「ウクライナのためのbGeigies」についてお知らせします。

チェルノブイリ原子力発電所(CHNPP)やザポリージャ原子力発電所(ZNPP)など、ウクライナの核施設でのロシア軍の無謀で危険な行動は、ウクライナ国内、近隣諸国だけではなく、世界中を恐怖に陥れ、懸念をもたらしました。これを受けて、Safecastをはじめ、SaveDniproチェコ国立放射線防護研究所(SÚRO)、およびチェルノブイリ放射線生態生物圏保護区が協力し合い、チェルノブイリをはじめとするウクライナの各地で、最新、かつ正確な放射線モニタリングが実施されることになりました。これは、軍事攻撃を受けている国が、信頼のおける、独立した第三機関からの公的データを必要としたことによって促された前例のない取り組みです。このイニシアティブのもと、すでにかなりの有益な情報がデータセットが蓄積されており、現在我々のウエブサイトで一般公開されています。

Safecast radiation map of the Chornobyl region, showing data gathered by #bgeigiesforukraine volunteers between May 3 and July 15, 2022

2022年5月3日から7月15日の間に#bgeigies4ukraineのボランティアが収集したデータを示すチェルノブイリ地域のSafecast放射線マップ。

本稿執筆時点では、#bgeigies4ukraineのデータセットがチェルノブイリ地区を広域にわたってカバーしており、最新の放射線状況を知らせる唯一の公開情報源となっています。リアルタイムモニタリングは地元当局によっても行われていまるとのことですが、そのデータはまだオンライン上で公開されていません。同様に、IAEAが2022年4月下旬にチームを派遣して行った限定地区での測定結果のうちこれまでに公表されたデータは、26ページの報告書内で1行のみで、有益な情報とは言えない状態です。独立した検証可能な公式情報がないことが、人々の不信感を助長しています。Safecastとそのパートナーは、ロシア政府のウクライナ侵攻による環境戦争犯罪について、ウクライナ国民がより完全な形で透明性の高い説明を期待し当然この情報を受け取る権利があると考えています、これが私たちの根底にある、このイニシアティブの主な動機です。

2022年2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域(CEZ)を強制占領した直後に、このプロジェクトの準備は静かに始まりました。CEZ立ち入り禁止区域へのアクセスが回復し次第、迅速かつオープンな放射線モニタリングを行えるよう、できる限りの支援を提供することが不可欠だと考えました。以前のブログ記事で述べたように、Safecast のボランティアは、侵攻前の数年間に、かなりの量の放射線データをチェルノブイリ地域から収集しています。この侵攻以前のデータは、ロシアの戦時中の行動が放射線レベルの有意な変化を引き起こしたかどうかを識別するため有用な指標となります。

Comparison of data gathered at the site of the infamous Russian "trench area" at Chornobyl in 2019 (left) with data from May, 2022, after the departure of Russian troops (right)

2019年にチェルノブイリの悪名高いロシア軍の「塹壕地区」(通称、「赤い森」)跡地で収集したデータ(左)と、ロシア軍撤退後

の2022年5月のデータ(右)の比較。

このデータの収集範囲は、塹壕エリア沿いの道路のみで、塹壕そのものは対象外です。道路上の線量に大きな変化は見られませんが、ロシア軍が塹壕を掘ったことで、より高い線量率の物質が露出したことはほぼ確実であり、今後の綿密な調査で明らかになっていくでしょう。

2022年3月31日に侵攻軍がチェルノブイリ地域を去り、5月3日にその地域から侵攻後初のSafecastデータが公開されました。プラハの同僚からウクライナにbGeigiesを送り、現地プロジェクト参加者に届けるという、物流面で少し面倒な努力を要することもありましたが、それ以降、#bgeigies4ukraineのボランティアは、着実に、かつ静かにウクライナ全土の背景放射線のマッピングを続けています。こうした努力のおかげで、今年の5月以降、ウクライナの9万件を超える新しい放射線測定データがSafecastのデータベースとオンラインマップにアップロードされ、世界中の誰もが簡単にアクセスできるようになりました。これにはCEZやウクライナの他の地域からのデータも含まれており、非常に有益なものです。2022年5月5日から7月17日までの間に収集されたデータは、こちらからご覧いただけます。データ収集は、今現在も継続して行われています。

Safecast radiation map of Ukraine, showing data gathered by #bgeigiesforukraine volunteers between May 3 and July 15, 2022

2022年5月3日から7月15日の間に#bgeigies4ukraineのボランティアが収集したデータを示すウクライナのSafecast放射能マップ。

Safecastの目的は、ひとりひとりの参加を通して放射線や他の独立した検証可能な環境データを収集することで、様々な立場にいる人々に力を与えることです。これは#bgeigies4ukraineイニシアティブの意図でもあり、他の取り組みとは一線を画しています。 #bgeigies4ukraineの参加者には、経験豊富な研究者、環境科学者、データ専門家、そしてドライバーやその他の活動をしている方たちが含まれています。セーフキャストは、私たちのビジョンを共有する多くの貴重な仲間に恵まれていることに大変感謝しています。また、各参加機関は、この取り組みに多大なる専門知識を提供し、多くの関係者が前向きな機知と積極性をシェアしています。このプロジェクトは必要な限り継続されていくことになるでしょう。これから数週間のうちに、#bgeigies4ukraineと、その主要参加機関について、さらに詳しい情報をお伝えしていきます。皆さまの変わらぬご支援に感謝いたします。

A #bgeigiesforukraine bGeigie Nano in the field.

#bgeigies4ukraineイニシアティブのもと、ウクライナの現場で使われているbGeigie Nano

 


Participating organizations:

 

Czech National Radiation

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SAFECAST 10 – 世界中から考えるフクシマの現在

In featured, Uncategorized, ニュース by azby

 

SAFECAST 10周年記念イベント 2021313日(土)

本年は2011311日の福島原発事故から10年目であると同時に、SAFECAST設立から10周年を迎えます。この節目を機に、SAFECAST2021313日および14日に過去10年間でのプロジェクトの活動を振り返り、福島の最新情報を提供するとともに、オープンデータの重要性、新たな挑戦および過去10年間の経験で得られた学びについて発信するオンラインイベントの開催を計画しています。

このイベントはSAFECAST…

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日本のCOVID-19テスト:状況と影響

In featured, Uncategorized by exporter

 

情報元: VOX

2020316日現在:COVID-19検査者数:

  • 検査済: 13,026

  • 感染者数: 1,496 (未発症者・発症者共に含む)

  • 死者数: 24

情報元ToyokeizaiMHLWJapan TimesVox

韓国など集中的なCOVID-19集団検診および検査プログラムを展開している国と比較して、日本はこれまでのところ、多くの検査を実施していません。韓国の20万人以上と比較して、日本では厚生労働省によると、3

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表

In Air Quality, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, 測定 by Pieter

Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表
– これまでで最もシンプルな空気質モニター
セーフキャストが10周年記念イベントのライブストリーミングで
Airnoteデバイスを福島に設置

マサチューセッツ州ボストン & 東京 – 2021年3月9日 –
オープンな環境データの世界的リーダーであるセーフキャストと、IoTクラウドセルラーソリューションのリーディングカンパニーであるBlues Wirelessは、
本日、これまでで最もシンプルで費用対効果の高い空気質デバイスであるAirnoteを発表しました。Airnoteは、複雑さと使用の障壁を取り除くことで、市場に出回っている他の製品に比べて約半分のコストで、空気質センサーの大量導入を簡素化します。これにより、個人、企業、自治体は正確な粒子状物質データを収集し、より健康的な環境のためのより良い意思決定を行うことができます。

“10年前の福島の危機を契機に世界中から多くの有能な人材が集まり、共通の目的を果たすこととなりました。”
非営利団体Safecast、Blues Wireless、そして最終的にAirnoteデバイスは、すべてこのコラボレーションの結果として生まれました。

これまでのところ、空気の質、水質、放射線などの環境面では、高額な機器の費用面や、デバイスを配置するための慎重な設置、信頼性の高い屋外ネットワーク接続といった課題がありました。Airnoteは、日当たりの良い窓の外側に簡単に取り付けることができる、完全に統合されたゼロセットアップの太陽光発電装置です。Airnoteは、130カ国以上のセルラーネットワークを使用して、定期的に空気質データを自動的にアップロードします。Airnoteには、Bluesのノートカード通信モジュールが搭載されており、プリペイド/プリアクティベートデータプランが含まれています。
Airnoteは、ディスプレイに情報を表示したり、ユーザーがQRコードをスキャンしてオンラインでチャートやグラフを表示したりすることができます。
PM1、PM2.5、PM10の粒子状物質の温度、湿度、気圧、密度を測定できます。

Airnote_Rear

The Airnote rear features a display showing the air quality, viewable from the inside

Airnoteデバイスがアップロードしたデータは、はじめからパブリックドメインに指定されており、全ての人に利益をもたらします。BlueのリアルタイムデータルータであるNotehubやセーフキャストのデータベースや地図を介して、データは世界中で分析、教育、さらには商業利用のために利用できます。
データはデフォルトでは匿名ですが、デバイスの所有者はオプションでデバイスを主張し、データのアップロードのためにクレジットされることができます。

“福島は紛れもなく災害でしたが、このイベントは私たちの環境の将来と安全性をより良く計画する機会を与えてくれました“
と、Safecastの共同創設者であり日本のディレクターでもあるピーテル・フランケン氏は述べています。
“私たちがAirnoteから受け取るグローバルデータは、市民主導のオープンデータのペースを加速させ、より健康的な地球環境に向けて私たちを前進させると同時に、将来の危機へのより迅速で効率的な対応を可能にしてくれます。…

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新しいデバイス「ソーラーキャストナノ」を紹介します

In Hardware, センサーネットワーク, ニュース by sean

By ショーン・ボナー

セーフキャストは2017年の初め、新しいソーラーキャスト(Solarcast)デバイスの製作をすすめることお知らせしました。

そもそもソーラーキャストは大気汚染を測定できる機能を搭載した最初の、そして3G接続およびソーラー電源という機能も持ったデバイスでしたが、その機能の特性から外部の電源や、マニュアルでのデータ取得が不要になり、いわゆる“置いたらほったらかし”での測定が可能となりました。

このことはセーフキャストにとって非常に重要な進歩であり、今後このような方法が主要な測定方法になっていくことは間違いありません。その後アメリカワシントン州ハンフォードの核施設トンネル崩壊の事故が発生し、まさに開発したデバイスがこのような状況に最適であることを強く認識させられました。

しかし、ソーラーキャストにはその利点はありながらも、そのコストおよび制作に時間がかかってしまうという欠点がありました。それに加え、大気汚染センサーの搭載は私たちが時間をかけて取り組んできたものではありましたが、実はハンフォードのような緊急性の高い放射線測定を必要とする状況のモニタリングでは、それほど必要性は高くないこともわかりました。

その反面、セーフキャストが広く利用しているデバイスであるbGeigie Nano(ビーガイギーナノ)は上記のような迅速に行う測定にすぐれていますが、実際にデバイスを持ち歩き、データをアップデートする必要があり、コンパクトかつ自動で動作するデバイスがやはり必要となっていました。

そこで、私たちはそのようなデバイスをデザインし、なんとか2017年末にソーラーキャストナノの完成を発表することができたわけです。このことを大変うれしく思っています。

ソーラーキャストナノを誇らしげに見せるショーン(写真:ピーター・フランケン)

 

ソーラーキャストナノ(Solarcast Nano)は、絶え間ないデバイスのニーズについての議論や技術的な可能性を検討し続けた結果生まれたものです。前モデルのソーラーキャストはレイ・オジー氏がデザイン面をリードし、ソフトウェアの作成を行いました。

ソーラーキャストの大気汚染センサーパーツは多くの電力を必要とするので、それらを取り外し、ビーガイギーに似たより小さいケースに小さいサイズのソーラーパネルを設置しすることで、必要な機能を搭載したソーラーキャストナノを作ることができるようになりました。

トイビルダーラボのジョセフ・チューを3Dモデリングおよびボードデザインのために迎え、ペリカンケース1040(ビーガイギーナノに試用された1010の二倍のサイズでありながら、ソーラーキャストよりかなり小型化されたサイズ)にすべてが収まるようその製作を依頼し、2017年12月19日、ついにソーラーキャストナノが完成したのです。

ソーラーキャストナノのディスプレイはビーガイギーのデザインを引き継いだものとなっています。

ソーラーキャストナノはビーガイギーのDNAを受け継いでいることがうかがえる

スペック詳細は下記の通りです。

  • “置いたらほったらかし”の測定 : ソーラーキャストナノはコンパクト、ワイヤレス、持ち歩き可能で自動で動作するため、3Gさえあれば世界中どこでも簡単に設置可能
  • 自動設定: 自動でセーフキャストのクラウドサービスに接続
  • 低消費電力:ソーラーバッテリーを使い、長期にわたって自動運転ができるよう最適化済み
  • 放射線測定機能: 二つの放射線センサーによってアイソトープを検知・測定
  • 耐性: 長期にわたった屋外での使用にも耐えられるデザイン
  • 小型でカバンにも収まるサイズ
  • 通信: 3G セルラー
  • 位置測定:加速度計つきGPS搭載、これによって測定器が動いた場合位置を再計測可能
  • 電源: ソーラーパネル、バッテリー、内蔵タイプのマイクロUSBチャージャー、リモート・クラウドでの電圧・電流の計測可能
  • バッテリーは着脱可能、18650サイズを標準としているためシッピングが可能
  • 内蔵型SWD“ドラッグ&ドロップ”ファームウェア、その他のソフトウェアは動作に不要
  • 無線アップデート
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セーフキャストとシャトルワース財団

In センサーネットワーク, ニュース, 主要記事, 測定 by sean

[:ja]ご存知の方もいるとは思いますが、南アフリカを拠点とするシャトルワース財団 がセーフキャストを支援してくれていて、私たちの4周年イベントの開催も可能にしてくれました。シャトルワースの特別研究員の一人として(ショーン・ボナーはシャトルワース財団の一員である)、セーフキャストと同じように透明性を重んじ、世界を変える可能性を秘めたプロジェクトに取り組んでいる世界各地の素晴らしい人々と出会い、一緒に働いていることを幸せに感じています。
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Vice Japan がbGeigie のイベントに!

In Events, Hardware, センサーネットワーク, ニュース by sean

SAFECAST は、10月、DIYタイプのガイガーカウンター bGeigie Nano のワークショップを、東京・渋谷で行いました。

当日は、Vice Japan (バイス・ジャパン)の内田有香さんも、お忙しい中、参加してくださいました。
このビデオは、ジョージ・ジョセフ氏のプロデュースによるものです。
bGeigieを自分で作ることで、ガイガーカウンターをより理解できるようになることが、
この映像からもわかります。

イベントの模様は、YouTubeリンクからご覧いただけます。…

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放射性下降物の減衰を測定

In センサーネットワーク, 主要記事, 測定, 移動測定報告 by levi

セーフキャストプロジェクトの素晴らしい利用法の一つは、前例のない規模で環境データを収集し分析できることです。セーフキャストでは、2年間にわたって日本における放射線データを収集してきました。今こそ日本の異なる地域横断での放射線変化を振り返ることができます。

Radioactivity in Inzai, Japan

Radioactivity in Inzai, Japan. 18 months worth of data.

Safecast data from Iitate, Japan.

Radioactivity in Iitate, Japan. 24 months worth of data.

2つの街での計測

福島第一原発の事故が日本全国で放射線について共通の認識をするようにいたった間、私達は国内の広い範囲にわたって十分な計測を続けてきました。国内のほとんどの場所は、311以前と背景の放射線量があまり変わっていません。(一分間に約30~40カウント)。 この事の一例として印西市があります。印西市は東京と成田空港の間に位置し、メルトダウン地点から193km南西の場所に位置します。最初のグラフはバックグラウンドレベルがわずかに通常考えられるよりも高いことを示していますが、放射線の観点では、2011年の半ばから2012年の終わりまであまり変化はありません。

次の研究対象の街は、福島第一原発から北西に約38kmのところに位置する飯舘市です。かなりの被ばくと顕著な減衰曲線を示しています。減衰曲線で注目に値する点は、半減期が指数関数的減衰関数に適合して妥当な精度で推定できていることです。この方法により私たちは表面放射能の減衰半減期が2011年半ばに始めた2年間からわずかに1年であることを推定することができました。これは2つの主要な放射性同位元素であるCs134とCS137の減衰半減期が、それぞれ2年と30年なので、注目に値するのです。このことは、追加のメカニズムが飯館村には作用していて、放射性物質が表面から離れていることを示しています。たとえば、侵食や新しい表土の堆積といったものにより表面の測定可能な放射線減衰を加速させているのです。

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bGeigie Nano Kit(bガイギー・ナノ・キット)発売開始

In Hardware, センサーネットワーク, 主要記事, 放射線, 移動測定報告 by Pieter


Safecast(セーフキャスト)が常に直面していた問題は、デバイスに限りがあるため、計測値の収集に制限があることでした。bガイギーのデザインは素晴らしいのですが、1つにかかるコストが1000ドルもする上、作るのに相当の時間も必要です。(1つのデバイスを作るのに丸々1週間はかかる。)そのため、限られた台数しか使えないという状況が続いていました。また、今や私達の周囲には、bガイギーを使いたいという人は数多くいて、その数は実際の台数をずっと上回っていました。
この問題を解決するために、私達はbガイギー・ナノを作り、さらにbガイギー・ナノ・キットを開発しました。ご想像の通り、ナノとは小さいバージョンで、持ち運びが便利にな上、従来のbガイギー以上の機能を搭載しています。
多くのSafecastのチームメンバーもナノを持ち、持ち運んでいます。コンパクトサイズなので、移動の負担にもなりません。

さらに重要なのは、ナノが自分で組み立てられるキットだということです。
もしはんだ付けの方法を知っていれば、ナノ・キットを一晩で作り(はんだ付けは10分で習えます。)、翌日からセーフキャスティング(Safecastの造語で、放射線計測をし、データをアップロードすること)することもできます。bガイギー・ナノ・キットを使って個々のポイントの計測もできますし、車に搭載して運転しながらジオタグ付きの放射線データを収集し、セーフキャストサイト内にあるアップロードページからデータアップすることもできます。使用法は通常のbガイギーと全く同じです。
ハードウェアもソフトウェアもデザインは通常のセーフキャストの方針通り、オープンソースですので、皆さんが自分で部品を買って作ることもできます。
しかし、今回、皆さんが自分で簡単に組み立てられるよう、キットとしてインターナショナル・メドコム社と共同で開発しました。bガイギー・ナノ・キットは1台450ドル(日本販売価格未設定で発売。)で、先着順で販売となります。
ご希望の方は、フォームにご記入ください。

他の写真や技術詳細はジャンプ後

[写真は Pieter Franken 撮影]

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情報、誤報、偽情報(または『これはおまえさんたちが探しているドロイドではないぞ』――スター・ウォーズ エピソードIV/新たなる希望より)パート1

In Hardware, センサーネットワーク, ニュース, 主要記事, 放射線, 測定 by azby

Whose job is it to make this stuff easy to understand?

「探しものが必ずしも見つかるとは限りません… 」

[パート2へ移動]

セーフキャストでは、当初から、収集するデータは正確で分かりやすく、有益かつ上手に可視化され、誰もが簡単にデータ・アクセスできるべきだと考えてきました。これは多くの点で、情報デザイン、並びに社会的責任を果たすというビジョンにおいて、模範事例(ベストプラクティス)となっているかと思います。

その際、セーフキャストのデータのオープン化と透明性が最重要とされてきています。我々のデータの表示方法は、直観的かつ、思慮深さがあること、コンテクスト(背景情報)も提供することを原則としており、さらに、デザイン的な美しさも追求しています。

求めている情報が誰にでも簡単に見つけられるように、内容もできるだけ分かりやすく伝えられるよう心がけてきました。このような価値観と相反する形で、諸公機関から公式情報が発表されるたびに、私たちは戸惑いを覚えます。

率直な感想として、原発事故が起きてからの最初の数週間、政府は失策を続け、全くと言っていいほど情報が欠如した状態が続いたので、一般市民は政府が発表する情報の質やアクセスしやすさといった点では、かなり妥協せざるを得ませんでした。政府による情報提供は当然の義務であり、法的にも義務付けられているはずなのですが、結論から言うと、私たちセーフキャストの多くは一生懸命に放射能情報を収集し、事実確認を重ねてきました。まずここでは簡単な近況報告をします。

(1)政府は予想以上に多くの情報を持っている(以前は私たちが全く期待していなかったのですが…)

(2)しかし、依然として情報の内容確認、事実確認が必要で、政府サイドではない第三者による調査が必要である

(3)何カ月もかけて調査しても、依然として情報収集のためにすら近づけない地域がある

さしあたって(2)と(3)については仕方がないとしましょう。つまり、セーフキャストは今後も引き続き調査していかなければならないということになるのですが、こういった調査は得意としていますし、モチベーションの高いメンバーが揃っているので、今のところさほど大変なことではありません。調査も精度を増し、信頼も築きあげ、かつては敵対した立場にあった人たちとも同志となりました。

しかし、そうは言っても、(1)に関しては、セーフキャストとしても、今後どのように対応していけばいいのか非常に悩むところです。様々な公式情報が入手可能となりました。また、その多くは信頼できる内容です。

しかし、分かりやすく有益な情報に簡単にアクセスできるようになったとまでは言えないのが現状です。今のご時勢、腕の良いウェブ・デザイナーや有益な情報を見つけるのは容易なはずですが、文部科学省(以下、文科省)のウェブサイトは利用者にとって、「できるだけ難しく、使いにくい」(as difficult as possible – 略して “ADAP”)作りになっています。ですので、そこから情報を見つけたり、データを使用することが非常に難しくなっています。ウェブサイトの担当者が良い仕事をしようと心掛けてくれれば、もっと上手な形で情報公開できるはずなのですが…。…

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情報、誤報、偽情報(または『これはおまえさんたちが探しているドロイドではないぞ』 - スター・ウォーズ エピソードIV/新たなる希望より)パート2

In Hardware, センサーネットワーク, ニュース, 主要記事, 放射線, 測定 by azby

文部科学省の放射線モニタリングポスト、通称「ドロイド」。この写真のドロイドはNEC製造でごく一般的なタイプです。これは会津美里町の旧赤沢小学校前に設置されているものです。

政府のモニタリングポスト

[パート1へ]
ここ数ヵ月、福島県内および福島隣県に設置された放射線モニタリングポストの精度について活発な議論が交わされていますが、セーフキャストは、この件に関して2012年7月の時点で既にブログ記事を執筆しています。

“改善された”モニタリングポストで 放射線・線量レベルをごまかす東京電力(TEPCO)

約2700基のモニタリングポスト(現時点では675基が確認済み)が設置されています。見た目がスター・ウォーズのR2D2に似ていることから、セーフキャストのメンバー間では親しみをこめて「ドロイド」と呼んでいます(上記写真を参照)。電源は装備された太陽光パネルと内蔵バッテリーから供給されます。文部科学省を介し、政府は巨額を投資して(正確な金額は定かではありませんが)モニタリングポストを設置し、更に資金を投入して空間放射線量測定値が閲覧できる専用ウェブサイトを作りました。

リンク:文部科学省 リアルタイム線量測定システム 環境放射能水準調査結果のページへ

このウェブサイト、見た目はなかなかの出来です。サイト利用者は知りたい県をクリックし、更に特定地区をクリックすると、各地方自治体を選べるようになっています。スクロール・リストが右側に現れるので、特定のモニタリングポストを選べば、その地点の測定線量値を確認することができます。(例えば、福島県郡山市の場合、393基のモニタリングポストがスクローリング・リストに表示されます。) ズームイン、ズームアウト、また、スクロールもできるGoogle Fusionマップも現れ、各モニタリングポストが丸い彩色点で表示されます。この青い点をクリックすれば、現時点での各地点の放射線量を確かめることができます。線量は10分ごとに更新されており、1ヶ月分のデータをまとめてダウンロードすることもできます。このようなデータを文部科学省(以下、文科相)が提供してくれるというのは、ありがたいことです。

その一方で、このシステムは呆れてしまうぐらい問題を抱えています。文部科学省のモニタリングポスト測定値とセーフキャストの測定値の比較調査をしていて分かったのは、このシステムでは、1回のサーチでは福島県内のごく限られた1地点の情報しか分からないという点です。ある特定の場所の情報を捜し出すにはかなりの時間がかかってしまい、イライラします。累積時間によるデータ推移を知りたくても、過去のデータにさかのぼれません。また、ダウンロードできるデータには様々な制約がついていたり、効率よく探したい場所の測定値を探し出すのが難しい作りになっているのです。そうなのです、文科省はこのシステムを 「出来るだけ使いにくいように」(ADAP:As Difficult As Possible)作っているのです。…

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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「信号機は放射性がないんだ!」―Safecastのフィールドトリップで東京インターナショナルプログレッシブスクールの生徒達が発見したクールなこと

In Events, ニュース by marc_prosser

2022年3月16日午後1時半~午後3時半 東京、渋谷のSafecastオフィスおよびFabCafe MTRLにて

写真提供: Kelsie Stewart

すべての人にオープンな環境データを

Safecastは環境に関するデータで人々の生活に寄与することを目的としたボランティア中心のグロバールな市民科学プロジェクトです。私たちは、より多くの利用可能なオープンデータを提供することは、すべての人にとって良いことだと信じています。私たちの活動は、データやデータ収集のノウハウを世界中の人々に提供することを目的としています。

― Safecastのウェブサイトより

Safecast は、有益でアクセスしやすい粒度の環境データを作成することを目的とした、グローバルなボランティア主導の非営利団体です。SafecastのデータはすべてCC0によってパブリックドメインとして無料で公開されています。

市民科学とは何か?オープン・ソース、あるいはオープン・データとは?コミュニティ主導の環境データ構築が私たちの未来にとって必要な理由は何か?―東京インターナショナルプログレッシブスクール(TIPS)の生徒たちがSafecastのフィールドトリップでこうした疑問の解明に取り組みました。

TIPSの生徒達によるSafecast x 市民科学 x 環境正義に関するブレインストーミング・セッション Photo credit: Kelsie Stewart

フィールドトリップは三部構成で、第二部と第三部で生徒たちは2つのグループに分けられました。第一部ではSafecastメンバーのAzby BrownとJoe Moross、Kelsie Stewartが全生徒を対象にブレインストーミング・セッションを行い市民科学と環境正義の公開性の重要性について掘り下げました。

Safecast x 市民科学 x 環境正義 ブレインストーミング・シェアリングセッション Photo credit: Kelsie Stewart

SafecastリードリサーチャーAzby BrownがSafecastを紹介している様子- “Yes, We’re

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戦争と断片的なデータ

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

昨年のちょうどこの頃、Safecast設立10周年を記念して、福島の現状を伝えるべく生放送で16時間に及ぶ世界配信を行いました。大地震、津波そして福島第一原発事故という2011年3月の多重災害からも10年の節目でした。それからたった一年、これほど状況が変わるとは誰にも予想できなかったことでしょう。

福島において原発事故後の緊急事態であるという感覚は数年前に無くなり、代わりにこの大規模災害の長期的な環境および社会影響に対する理解が深まりました。言わば緊急事態に対する応急処置から、Safecastおよび社会全体の姿勢も長期的な視点へと移行していたのです。しかしロシアによる一方的なウクライナ侵攻により、情報の収集、信頼度の検証、再発信という、原発事故後のような「迅速な対応」が必要な態勢に引き戻されてしまいました。

壊滅的な戦争により、再びこの様な対応が必要になってしまったことは大変残念です。現時点で既に原子力施設の安全性や核の保安を脅かす事象が数件が起きており、世界的に注目を集めています。チェルノブイリが占領されたときに放射線量の増加はあったのか、電力供給が止まってしまったら放射線量が増加するのか、原発がミサイルなどによって攻撃を受けたらどうなってしまうのか、など多くの不安や疑問が呈されました。

福島原発事故後に示されたように、信頼できる情報源から一貫したデータを自由に入手できることは、人々の無力感を和らげ、多少なりとも安心感につながります。Safecastは設立当初より、人々に信頼され活用できるデータを提供するためには、特定の政府や企業に影響を受けていない独立した情報源であること、誰もが活用できるオープンソースであること、また全ての人に行きわたるよう情報の一点集中を避けることを重視してきました(「DeDa」参照)。この原則は、現在のような危機的な状況下で特に重要だと考えます。

現在もSafecastではTwitterやブログを通して、現状の分析を逐次発信しています。我々のこの活動は、一般に公開されている情報を活用し、最前線で何が起こっているかを明らかにしようとする多くの人々の活動と重なります。放射線分場におけるモニタリングネットワークおよび情報発信の経験を生かして貢献をしてきましたが、残念ながら我々でも断片的な情報しか得られていないのが現状です。

2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所および立ち入り禁止区域を占拠したとの情報を受け、Safecastでは直ちに入手可能な放射線量に関するデータの収集を開始しました。我々のデータベースの大部分はボランティアの方々がbGeigieを使って自ら測定したものです。そのため、特定の時点でのデータはあっても、現場からリアルタイムで放射線量の変化を感知できる定点センサーはありません。

予想通りウクライナの公式放射線量データは、インターネットで情報を公開し続けることが困難な状況に陥っていますが、その中でも得られた情報はあります。例えば、欧州委員会共同研究センター(JRC)の放射能環境モニタリング(REM)グループのホームページには、ウクライナ水文気象センターからの測定値が掲載されており、ウクライナの非営利団体SaveEcoBotでは、多くの政府システムから入手可能なデータを集約し、発信しています。

しかしながらロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナにおける多くの有用なモニタリングネットワークは断続的で不安定な状態に陥っています。また時間が経つにつれ、ウクライナ政府の公式ホームページの全ての放射線量データもアクセス不能になってしまいました。さらにはロシアによるサイバー攻撃(DDOSなど)、電力網破壊によるサーバーの停電、電波塔の破壊による通信回線の切断なども報告されています。

ウクライナ当局は、猛烈な攻撃を受けながらも、懸命に情報提供活動を行っています。ウクライナのエネルギー省は、安全確保のためにシステムをオフラインにするという苦渋の決断を迫られ、現在も続行中です。戦争によって国民への公的な情報供給の手段は阻まれ、現在は政府が収集した情報を、NPO法人SaveEcoBotが提供しています。これは歴史的な出来事であり、SaveEcoBotは非常に重要な役割を果たしています。

当然ながら、ウクライナにおけるモニタリングおよび情報公開システムは戦争を想定していなかったため、ロシアの攻撃は直接公式情報の消失を引き起こしています。しかしながら今回の経験が、モニタリングシステムの過度な一極集中化や、チョークポイントおよび単一障害点など、緊急時に簡単に不能化されてしまうリスクを避けた、より強固なシステム設計に活かされることを願っています。政府などが人為的なミス、あるいは故意に公共なモニタリングデータへのアクセスを遮断することは、あってはならない事態です。特に現在のウクライナのように国民がこのような情報を必要としている状態においては、武力行使が行われる戦争下においても耐久可能な強靭なシステムが必要です。

Safecastのシステムは初めから冗長性およびオープンデータであることを重視して設計されています。我々のデータベースは全て特別な許可なしにダウンロードが可能です。サーバーの損失やインターネットアクセスの拒否が発生した場合でも迅速にデータを再構築できるよう、世界中に複数のコピーを保存することを可能にしています。放射線量のリアルタイムモニタリングデータは2つのデータベースに保存され、スタンバイ状態のクラウドサーバーも必要に応じて数分で立ち上げられる状態になっています。またSafecast内部でも、数年分のデータを保存するためのキャパシティーが確保されています。データの通信手段としてはWiFi、LoRa、携帯回線など、様々な方式を試験的に導入してきましたが、コストと汎用性から現在は携帯回線を採用しています。ウクライナで発生した公共データの損失は、携帯電話回線の混乱が大きな要因であるため、現在は我々のシステムの生存率およびデータの取得を最大化することに注力しています。

いつもながら、多くのボランティアの方々や専門家の方々の支えがあってこそ我々はこのような活動を続けることができています。福島とウクライナには多くの共通点があり、ウクライナの方の多くは、チェルノブイリのグループと長期にわたって協力してきました。現地の人々は彼らが直接見聞きしている現状を訴えています。我々は彼らの安全を非常に心配しており、これらの情報を公開し、発信していくことにより少しでも支援できることを願っています。

何百万人もの人々が生存を懸けて必死になっているこのような戦時下が、公共の放射線モニタリングシステムの脆弱性について議論するのに適切であるのかという疑問はあるかもしれません。残念ながら喫緊の戦況により核の使用の可能性が否定できなくなってきているため、放射線量のモニタリングデータが、現在進行中の情報戦の一部になってしまっているという状況なのです。ロシアによるウクライナの原子力施設に対する躊躇ない攻撃は、大規模な放射線放出の恐怖を世界に広めました。ロシアはこの「恐怖」そのものを武器として展開しており、我々は信頼できる情報をリアルタイムで必要とするすべての人々に届けることがこの状況下における唯一の対抗策だと考えます。

現在ウクライナの人々は、世界が信頼できる情報を入手し、それに基づいて行動できるよう、情報のオンライン共有を維持するために奮闘しています。幸いなことに、いくつかの原子力施設が攻撃されたにもかかわらず、これまでのところ大規模な放射能放出は回避されています。 我々はオープンデータを武器に、真実によって勝利すべき情報戦の中にいるのです。

— SAFECAST チーム…

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福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

2021424

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー

翻訳:長岡英美, 宮下(オースターマン) 絵夢フェリチタス, 為本 晃弘 


以下内容の主要部分はJapan Timesの署名入り記事に掲載されました。英語による注釈付きの記事は2021年5月6日Safecast Blogで公開されました:  

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

 



政策の分析

413日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。20

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10

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In ニュース by exporter

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent (福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー 2021年4月24日

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

4月13日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。(1)

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10年たった今も大きな課題が数多く残されており、今後も数十年にわたって取り組み続けなければならないでしょう。

現場に貯蔵されている汚染水の処理は技術面に加え、社会面、経済面においても大きな課題となっています。現時点で120万トン以上の汚染水が原発内に設置された1,000以上のタンクに貯蔵されており、その量は日々増加しています。(2)

東電はトリチウム(人体への影響がもっと低いと考えられている水素の放射性同位体)以外の全放射性同位体を除去した処理水を海水によって非常に低濃度まで希釈すれば、太平洋に放出しても問題ないと主張しています。この「希釈して海洋に放出」という案は、2013年に国際原子力機関(IAEA)および日本原子力規制委員会の両者によって推進されたものであり、技術面での実現可能性、時間、コストおよび安全性に基づいて日本の公式委員会によって評価された複数の選択肢のうちの一つでした。(3)

海洋放出は2年後に開始され、完了までに30年かかると見込まれています。この案が他の複数の選択肢の中で最も問題点が少ないものである可能性は否定できませんが、判断基準となっている根拠には疑わしい点があります。(4)

IAEAおよび米国は海洋放出案への支持を表明しています。しかし現段階においても未だに技術面での明確な計画や環境への影響の調査内容は公表されていません。さらにこれらの決断は、近隣諸国、国際社会さらに日本国内の関係者とさえ十分な協議が行われないまま下されました。(5)

このため中国や韓国をはじめとする複数の国々は反対意見を表明しました。(6)福島のみならず日本全国の水産物が世界市場において取り返しのつかない損害を被ることを恐れた水産業界もまた、強い反発を示しています。既存のIAEAの合意では、放射性物質の国境を跨いだ放出は影響を受けうる関連国と評議する必要がある、規定されており、今回の案件はこの「放射性物質の国境を跨いだ放出」に該当します。(7)

さらに、IAEAの規定には放射性物質の影響が発生国の領域外に及ぶ可能性がある場合は特別な対応が必要であると明記されています。(8)今回の福島第一原子力発電所からの処理水の放出が、他国に影響を及ぼさず、検出可能で懸念を生じさせないことは証明されていません。

それどころか、環太平洋地域の国々は推定される影響が低いとされていても、評議を要求する権利を有します。また、今回の放出は1974年に締結された国際海洋機関の協定に違反する可能性があるという指摘もされています。(9)

これらの議論の正当性は法廷で裁かれることになるかもしれませんが、今回のような一方的な行動が非倫理的であることは間違いありません。様々な懸念を引き起こし、世界的に注目される出来事であるからこそ東電および日本政府は、世界中の関係者や有識者の議論への参加や意見の共有を積極的に推進し、課題に真摯に向き合い誠意をもって解決に取り組んでいることを示す必要があります。

国際的な協議や関与なしに独断で処理水の放流を許可すれば、国際的に影響のおよぶ可能性のある事柄に関する判断は国際的な合意に基づいて行われなければならないという現在の社会システムに損害を与え、危険な前例となってしまうでしょう。もし日本が自国の安全のみを考慮し、今回のような大規模な放出を実行すれば、他国が同様に周辺諸国に影響を与えるような判断を下した場合に反対する権利を失ってしまいます。

国際社会も危機感を持つべきです。福島の放流計画が実現すれば、世界中の様々な国の原子力発電所がこれを前例として挙げ、周辺諸国の同意を得ないまま放射性物質を海洋に放出することが可能になります。つまり、ロシアが北極海または日本海へ、中国が日本海や南シナ海に、アラブ首長国連邦がペルシャ湾に放射性液体廃棄物の放出を決断した場合、反対することも止めることもできなくなるのです。(10)

核兵器不拡散規約とは異なり、IAEAの参加で行われている放射性物質の放出モニタリングは信頼関係に基づいた自己申告制であるため、悪用することは容易です。国家に対して正しいことをするように強制することはできません。外交圧力や世論は十分な影響力を持たないこともありますが、最良の抑止方法であることは間違いありません。そしてこのような抑止力を正常に機能させるためには、国際的な検証の判断基準を明確にし、情報開示(透明性)を行うことが重要です。

現在日本政府は公式発表にて、原子力施設からの海洋放出は「一般的」または「正常」であると主張し、今回の計画の安全性を強調しています。(11)これは不誠実かつ、信頼のおける主張ではありません。一方の東電も高額な費用をかけて長期間にわたって行われたALPS放射性核種システムによる処理後の水は、他の制御された放出水と同様の濃度であり、最小限の規制で十分であるとしています。

しかし通常の原子力発電や燃料処理過程では、生成されるトリチウムの量は予想可能な範囲内であり、それらを考慮したうえで計画的に一定量が放出されます。福島第一原子力発電所における今回の放出は、過負荷によるタンクやパイプの破裂によって起こりうるより大きな損害を防ぐための緊急措置であり、同時にスペース不足のためにこれ以上のタンクの貯蔵場所が確保できないという事情にも対応できる好都合な解決策なのです。つまり「正常」な点は何一つなく、綿密な計画及びモニタリング、さらに厳重な規制制度が必要となります。

ALPSシステムを最高の状態で稼働すれば、トリチウム以外の全ての放射性核種の除去が可能であるように思われるかもしれません。(12)しかし実際のところは、現在貯蔵されている120万トンおよび今後生成される同容量の汚染水を数十年にわたって処理していかなければならないことを考えると、そのすべてが厳密な基準を満たす精度で処理されるであろうと考えるのは危険です。

ポンプの摩耗、フィルターの目詰まり、ガスケットの劣化、レバーの引き間違いや作業環境に対する不満によるミスコミュニケーションなど、数多くの技術的ミスおよび人的ミスが予想されます。東電はこのようなミスやそれらによって引き起こされる事態をきちんと公表するのでしょうか。例えばストロンチウム90の10%が太平洋に誤って放出されてしまうようなことがあった場合、我々はその情報を得ることができるのでしょうか。(13) 特に水問題における今までの東電の透明性や誠意に欠ける対応は記録に残されており、国際社会からの信用は残念ながら無いに等しいと言えます。

2012年後半に導入されたALPSシステムの試験的な活用当初から、東電は処理後に水中に残留している放射性核種はトリチウムのみであると国際社会に保証してきました。この発言に基づいて「希釈後に放出」という今回の計画が社会に対して大々的に宣伝され、推進されてきました。(14)

しかしながら同社は2018年後半に、システムが十分に除去することができなかったことから、全体の約80%(110万トンの汚染水のうち89万トン以上)にあたる処理水に、ストロンチウム90、コバルト60、ルテニウム106やその他多くの基準値を超える放射性核種が含まれていることを認めました。この事実が東電によって故意に隠蔽されていたことを知った世論は大きく反発しました。放出計画の支持者はこの国民の信頼を大きく裏切った出来事が忘れられることを望んでいるかのようです。…

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Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表

In Air Quality, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, 測定 by Pieter

Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表
– これまでで最もシンプルな空気質モニター
セーフキャストが10周年記念イベントのライブストリーミングで
Airnoteデバイスを福島に設置

マサチューセッツ州ボストン & 東京 – 2021年3月9日 –
オープンな環境データの世界的リーダーであるセーフキャストと、IoTクラウドセルラーソリューションのリーディングカンパニーであるBlues Wirelessは、
本日、これまでで最もシンプルで費用対効果の高い空気質デバイスであるAirnoteを発表しました。Airnoteは、複雑さと使用の障壁を取り除くことで、市場に出回っている他の製品に比べて約半分のコストで、空気質センサーの大量導入を簡素化します。これにより、個人、企業、自治体は正確な粒子状物質データを収集し、より健康的な環境のためのより良い意思決定を行うことができます。

“10年前の福島の危機を契機に世界中から多くの有能な人材が集まり、共通の目的を果たすこととなりました。”
非営利団体Safecast、Blues Wireless、そして最終的にAirnoteデバイスは、すべてこのコラボレーションの結果として生まれました。

これまでのところ、空気の質、水質、放射線などの環境面では、高額な機器の費用面や、デバイスを配置するための慎重な設置、信頼性の高い屋外ネットワーク接続といった課題がありました。Airnoteは、日当たりの良い窓の外側に簡単に取り付けることができる、完全に統合されたゼロセットアップの太陽光発電装置です。Airnoteは、130カ国以上のセルラーネットワークを使用して、定期的に空気質データを自動的にアップロードします。Airnoteには、Bluesのノートカード通信モジュールが搭載されており、プリペイド/プリアクティベートデータプランが含まれています。
Airnoteは、ディスプレイに情報を表示したり、ユーザーがQRコードをスキャンしてオンラインでチャートやグラフを表示したりすることができます。
PM1、PM2.5、PM10の粒子状物質の温度、湿度、気圧、密度を測定できます。

Airnote_Rear

The Airnote rear features a display showing the air quality, viewable from the inside

Airnoteデバイスがアップロードしたデータは、はじめからパブリックドメインに指定されており、全ての人に利益をもたらします。BlueのリアルタイムデータルータであるNotehubやセーフキャストのデータベースや地図を介して、データは世界中で分析、教育、さらには商業利用のために利用できます。
データはデフォルトでは匿名ですが、デバイスの所有者はオプションでデバイスを主張し、データのアップロードのためにクレジットされることができます。

“福島は紛れもなく災害でしたが、このイベントは私たちの環境の将来と安全性をより良く計画する機会を与えてくれました“
と、Safecastの共同創設者であり日本のディレクターでもあるピーテル・フランケン氏は述べています。
“私たちがAirnoteから受け取るグローバルデータは、市民主導のオープンデータのペースを加速させ、より健康的な地球環境に向けて私たちを前進させると同時に、将来の危機へのより迅速で効率的な対応を可能にしてくれます。…

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SAFECAST 10 – 世界中から考えるフクシマの現在

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SAFECAST 10周年記念イベント 2021313日(土)

本年は2011311日の福島原発事故から10年目であると同時に、SAFECAST設立から10周年を迎えます。この節目を機に、SAFECAST2021313日および14日に過去10年間でのプロジェクトの活動を振り返り、福島の最新情報を提供するとともに、オープンデータの重要性、新たな挑戦および過去10年間の経験で得られた学びについて発信するオンラインイベントの開催を計画しています。

このイベントはSAFECAST…

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日本のCOVID-19のデータの不正確さについて

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2020年4月28日、アズビー・ブラウンによって公開

以前の記事(こちらこちら)で、COVID-19の検査に関して日本で実際に決められている方針を整理しようと試みました。私たちはデータに一貫性がなく他の公式データにも問題があり、実際に検査が行われた数と感染の可能性がある人数を一般の人がうまく把握できなくなっていることを指摘しました。このデータ問題について私たちが記事を公開してから4週間が経ちました。4週間前の当時は、20,340件の検査が日本で報告され、全国で1214名が陽性、そのうち東京都の陽性患者が171名でした。国内の新しい陽性患者数は1日100名以下でした。(この記事を書く)現在では、一番最近のデータによれば、150,692名の方が検査を行い、国内で13,448名の方が陽性、そのうち東京都だけで3,908名となっています。新規に陽性判定された人数は1日平均で現在約400名ですが、最高値は4月11日に記録され、700名の方が陽性判定されました。

これらの数値は、もちろん、2月から3月にかけての明らかな感染の増加を示しており、日本はすでにコロナウイルスを「克服」したと主張する声を抑えたに違いありません。当時、感染者の増加割合は大きく、医療機関も過剰負荷に対する混乱のサインを既に示していましたが、我が国では、指数関数的に患者数が増えるフェーズにはまだ到達していなかったように見えます。私達が何度も指摘しているように、日本では症状の発生している方々さえ検査を受けるのは非常に困難です。私たちはこの問題に皆さんが非常に感心を持たれていると気づいたので、自分達で感染に関する実態を報告できるオンラインマップを作成しました。検査が行われた人口比率(約0.008%)を調べた通り、少数の検査しか行われていないことを考えると、より大規模な感染拡大についてどれだけ早く知ることが出来るのでしょうか。私たちは3月にしたのと同じ質問をしなくてはいけません。意図的に検査を絞る現状の「クラスター対策」のアプローチで見落としている感染者はどれくらいいるのでしょうか。特に無症候または発症前(そして現状のガイドラインでは検査対象外とされる人)の方を中心に、もっと多くのCOVID-19陽性の人達がいるにも関わらず、彼らが特定されず速やかに隔離されず、ウイルスの感染拡大を抑えられない場合、どれだけ危険な状況になりそうでしょうか。

英国キングスカレッジのPopulation Health研究所長を務める渋谷健司教授(以下、渋谷氏)が先週、東京の外国人記者クラブ(FCCJ)向けにオンラインの記者発表を行ないましたが、公開データを踏まえて考えを述べ、気がかりな地域を明らかにしました。私達が先述した通り、渋谷氏は「クラスター対策」のアプローチのみに委ねることのリスクについて警鐘を鳴らしており、日本でさらに検査数が急増する危険があると警告しました。皆さんには、彼の記者発表ビデオをご覧いただきたいと思います。具体的には、多くの理由を元に、日本の実際の感染者数は、公的機関を介して発表されている現在の人数の少なくとも10倍はいるだろうと渋谷氏は試算しました。翌日、厚生労働省の主要メンバーの一人である北海道大学の西浦博教授(以下、西浦氏)は、東京で記者会見を行い、渋谷氏の試算と同じ見解を示し、実際は10倍以上かも知れないと付け加えました。同時に、西浦氏は、データは現在、全国の感染者は減少傾向を示していることを何度か繰り返し述べました。直近のグラフデータも同様の傾向を示しているようです。

22020年4月27日付の日本全国の感染者件数(参照:https://covid19japan.com/)

2020年4月27日付の東京都内のCOVID-19感染者データ
(参照:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/en/)

渋谷氏が彼の記者発表で指摘したように、日本政府の資料から報告された件数を見る際には注意しなければいけない点が沢山あります。いくつかの理由から、確認できるデータを元にしっかりとした疫学的な結論を導くことは難しいはずだと渋谷氏は考えています。COVID-19に感染してから、重症化し、日本の厳しいPCR検査の基準を満たすまでには約2週間かかることが非常に重要で、理解しなくてはいけません。私達が目にする一日の陽性患者数は、数週間の間にすでに存在していた感染者をデータを編集した日時に報告しているに過ぎません。これらの件数は、時差のある指標であり、2週間前の感染拡大のごく狭い一部を捉えたものです。渋谷氏によれば、仮に、特に発症前、無症候の感染者に対して、さらに広範囲に検査の実施を行えるなら、最新の感染拡大の全体像をより捉えることが出来るだろうとのことです。

もう1つ注意しなくてはいけない点としては、報告の遅れとデータの一貫性の無さから、民間の研究所で実施された検査結果が完全には公開されていないということです。例えば、東京都が提供する二か国語対応のwebサイトは、公に行われている取り組みの中でも良いものの1つですが、公的機関の報告は毎日更新しているのに対して、民間の研究所からのデータは毎週金曜日に週ごとのデータが更新されるだけになっています。その結果、サイトに公開されている感染者数が、毎週金曜日に不思議な増え方を見せています。似たような増え方が検査数の合計グラフにも影響しています。これに関する説明は東京都のwebサイトのどこにも明らかになっていません。

日本の検査システム、感染者報告システムのほとんどは自動化あるいは完全なオンライン化がなされていません。信じられないことですが、全てのデータはまだファックスで送られており、手入力で転記し、編集しなければなりません。このことが不要な遅延を招き、データ入力エラーの可能性を高めています。非効率なデータ編集プロセスや、実際にデータのカテゴリーが表しているものが元の印象に対して違うこと、そして、報告されている検査数が引き続き一致しないことを考えると、これらの数値のみに基づいて実際に何が起きているのか評価することは難しいのです。最も気がかりなことは、このデータがどれも一般利用が出来ないので、外部の研究者が独自に検証し、複製し、評価する方法が無いことです。渋谷氏は、国立感染症研究所(NIID)からCOVID-19に関するデータを取得し、分析しようと試みた経験について語りましたが、特に彼の立場と評判であれば、非常に簡潔なプロセスであったに違いありません。渋谷氏は特定の申請書類を記入する必要があり、申請プロセスは数ヶ月かかると言われたそうです。国立感染症研究所(NIID)が持っている背景データにアクセス出来ない限り、私たちは一般利用のデータからはほとんど何も述べることが出来ません。

(イタリア)ロンバルディア州からの大規模なイタリア人データサンプルに基づく最近の研究によれば、現地で見られたCOVID-19の感染の43%は無症候感染から由来するものでした。さらに、新規の感染のほとんどはロックダウンの前に発生し、同じ家庭内の無症候感染に由来していました。他の研究は、人口内に無症候感染者が優勢であることに関する似たような結論に至りました。最近の日本の感染者数のグラフは安心するようなカーブの描き方をしていますが、現在の国の疾病監視システムではまだ検出出来ていないCOVID-19の感染拡大のフェーズに日本が既に入ってしまっている可能性が強く残っています。無症候感染や発症前の件数が大半を占める中で、検査の基準からほぼ全て除外されているからです。COVID-19のスクリーニングを受けた呼吸器と関係ない理由で来院した67名の患者のうち4名(6%)が陽性であることが判明したという慶應大学病院の最近の報告はこの考えを裏付けています。渋谷氏やその他の関係者は、この慶應大学病院の件は大きいサンプルにも代表的なサンプルにもなり得ないが、有病率は非常に高く無視すべきではないと指摘しました。

既に知られている他国における無症候/症候ありの比率を元に、渋谷氏と西浦氏は二人とも、他国では20~50倍になっていると指摘した上で、実際の感染者数を少なく見積もっても日本で報告されている感染者数の10倍になると考えています。慶應大学病院での6%の有病率は過大評価だが、他のエビデンスから東京の人口の3~4%の感染率がもっともらしいと想定して、渋谷氏は「単純計算すればちょうど今何人感染しているか分かる」と述べています。1300万人を東京都の人口とした場合、3%は39万人です。ここでの述語は「もっともらしい」です。2週間前に報告された西浦教授によるモデリング結果では、厳しい対策を行わない場合、日本におけるCOVID-19の重症患者の人数は85万人、死者合計で40万人に上る可能性があると見積もっています。これら2つの見積もりは、アウトブレイクの可能性に関して一般的に認められていることです。自発的にソーシャルディスタンスを行ったり、これまで取られてきたその他の対策の効果は、相対的には不確定要素のままです。

しかし、大多数の死者はまだ明らかになっていないように見えます。検査の実施が足りないことで、関心を持っている多くの方が、単に肺炎と報告されている死が実はCOVID-19によるもので、その結果適切にカウントするのを「隠している」のではないかと疑っていると以前私達は指摘しました。沢山の疾患の種類、合併症、その他の関係要因から、インフルエンザの死亡率は通常の状況でさえ定量化することは難しいと渋谷氏は指摘します。様々な理由から、またそのどれも重複しないことから、伝染病による死はしばしば過小評価されています。インフルエンザの場合、全員に検査をすることは不可能なため、私達は代わりに死亡率の過剰分がどの程度か見積もるプロセスにしばしば頼らなくてはなりません。東京大学の研究者による最近の論文

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日本に於けるCOVID-19コロナ・ウィルス患者数が表す意味

In COVID19, featured, ニュース, 主要記事 by exporter

2020年3月24日Azby Brown著

Reiko Mori, Yoshida Suzuka, Tatsumi Baba, Ryuichi Anbo, Mami Yahiro, Momoha Koya (Furuhashi Lab., Aoyama Gakuin Univ.) 翻訳

 

先週、私はセーフキャストの一員として日本のCOVID-19コロナ・ウィルスの検査についての記事を書きました。

さて、ここCOVID-19コロナ・ウィルスに関する正確な情報の伝達が乏しく、最近では検査基準を満たしている人が検査を断られる事例が増加し、国民の間で不満や疑惑の声が挙がっています。これは政府による政策が原因ですが、検査することを重要視している韓国、台湾やシンガポールなどの国は感染者の数値が緩和し始めたのに対し、日本ではそれらの国と大幅に異なり検査数が少ない状況です。

今後一体どういうことが起こるのでしょうか?

日本国内では、普段の生活に於いて肉体的な距離を保つ傾向を筆頭に、マスクの着用や優れた衛生環境、握手による挨拶が少ない、などの要因を基にCOVID-19コロナ・ウイルスに打ち勝ったという話が最近様々な所広まってきています。セーフキャストでは「マスクの着用」や「規則正しい手洗い」は、肌の接触を減らすのと同等に重要視しており、ここまでの接触感染率の低さを保っているのは恐らくそのお陰なのではないかと思います。

しかし、学校の閉鎖や開催予定であった大きなイベントのキャンセル、そしてなるべく多くの人々が在宅ワークを行っているにも関わらず、文化的背景に基づいた日々の社会的な距離だけでは強制力がとても弱い可能性も出てきています。例えば、公園では毎日のように花見をしに来た人々で埋め尽くされ、電車も常に満員です。バーなどの飲み屋、またレストランなどの飲食店も同じ状況です。私達は今までラッキーだったのでしょうか。

その一方、感染者数は国民全般に於ける検査の不足、そして、誤った分類による単純肺炎で亡くなった方と、COVID-19コロナ・ウイルスで亡くなった方との区別が曖昧で、疑いが晴れないでいる現状も存在します。

日本の各都道府県や地方自治体は、緊急事態時には自主的に対応を行える権限を保持しています。例えば、最近のニュースでは

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

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パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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戦争と断片的なデータ

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昨年のちょうどこの頃、Safecast設立10周年を記念して、福島の現状を伝えるべく生放送で16時間に及ぶ世界配信を行いました。大地震、津波そして福島第一原発事故という2011年3月の多重災害からも10年の節目でした。それからたった一年、これほど状況が変わるとは誰にも予想できなかったことでしょう。

福島において原発事故後の緊急事態であるという感覚は数年前に無くなり、代わりにこの大規模災害の長期的な環境および社会影響に対する理解が深まりました。言わば緊急事態に対する応急処置から、Safecastおよび社会全体の姿勢も長期的な視点へと移行していたのです。しかしロシアによる一方的なウクライナ侵攻により、情報の収集、信頼度の検証、再発信という、原発事故後のような「迅速な対応」が必要な態勢に引き戻されてしまいました。

壊滅的な戦争により、再びこの様な対応が必要になってしまったことは大変残念です。現時点で既に原子力施設の安全性や核の保安を脅かす事象が数件が起きており、世界的に注目を集めています。チェルノブイリが占領されたときに放射線量の増加はあったのか、電力供給が止まってしまったら放射線量が増加するのか、原発がミサイルなどによって攻撃を受けたらどうなってしまうのか、など多くの不安や疑問が呈されました。

福島原発事故後に示されたように、信頼できる情報源から一貫したデータを自由に入手できることは、人々の無力感を和らげ、多少なりとも安心感につながります。Safecastは設立当初より、人々に信頼され活用できるデータを提供するためには、特定の政府や企業に影響を受けていない独立した情報源であること、誰もが活用できるオープンソースであること、また全ての人に行きわたるよう情報の一点集中を避けることを重視してきました(「DeDa」参照)。この原則は、現在のような危機的な状況下で特に重要だと考えます。

現在もSafecastではTwitterやブログを通して、現状の分析を逐次発信しています。我々のこの活動は、一般に公開されている情報を活用し、最前線で何が起こっているかを明らかにしようとする多くの人々の活動と重なります。放射線分場におけるモニタリングネットワークおよび情報発信の経験を生かして貢献をしてきましたが、残念ながら我々でも断片的な情報しか得られていないのが現状です。

2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所および立ち入り禁止区域を占拠したとの情報を受け、Safecastでは直ちに入手可能な放射線量に関するデータの収集を開始しました。我々のデータベースの大部分はボランティアの方々がbGeigieを使って自ら測定したものです。そのため、特定の時点でのデータはあっても、現場からリアルタイムで放射線量の変化を感知できる定点センサーはありません。

予想通りウクライナの公式放射線量データは、インターネットで情報を公開し続けることが困難な状況に陥っていますが、その中でも得られた情報はあります。例えば、欧州委員会共同研究センター(JRC)の放射能環境モニタリング(REM)グループのホームページには、ウクライナ水文気象センターからの測定値が掲載されており、ウクライナの非営利団体SaveEcoBotでは、多くの政府システムから入手可能なデータを集約し、発信しています。

しかしながらロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナにおける多くの有用なモニタリングネットワークは断続的で不安定な状態に陥っています。また時間が経つにつれ、ウクライナ政府の公式ホームページの全ての放射線量データもアクセス不能になってしまいました。さらにはロシアによるサイバー攻撃(DDOSなど)、電力網破壊によるサーバーの停電、電波塔の破壊による通信回線の切断なども報告されています。

ウクライナ当局は、猛烈な攻撃を受けながらも、懸命に情報提供活動を行っています。ウクライナのエネルギー省は、安全確保のためにシステムをオフラインにするという苦渋の決断を迫られ、現在も続行中です。戦争によって国民への公的な情報供給の手段は阻まれ、現在は政府が収集した情報を、NPO法人SaveEcoBotが提供しています。これは歴史的な出来事であり、SaveEcoBotは非常に重要な役割を果たしています。

当然ながら、ウクライナにおけるモニタリングおよび情報公開システムは戦争を想定していなかったため、ロシアの攻撃は直接公式情報の消失を引き起こしています。しかしながら今回の経験が、モニタリングシステムの過度な一極集中化や、チョークポイントおよび単一障害点など、緊急時に簡単に不能化されてしまうリスクを避けた、より強固なシステム設計に活かされることを願っています。政府などが人為的なミス、あるいは故意に公共なモニタリングデータへのアクセスを遮断することは、あってはならない事態です。特に現在のウクライナのように国民がこのような情報を必要としている状態においては、武力行使が行われる戦争下においても耐久可能な強靭なシステムが必要です。

Safecastのシステムは初めから冗長性およびオープンデータであることを重視して設計されています。我々のデータベースは全て特別な許可なしにダウンロードが可能です。サーバーの損失やインターネットアクセスの拒否が発生した場合でも迅速にデータを再構築できるよう、世界中に複数のコピーを保存することを可能にしています。放射線量のリアルタイムモニタリングデータは2つのデータベースに保存され、スタンバイ状態のクラウドサーバーも必要に応じて数分で立ち上げられる状態になっています。またSafecast内部でも、数年分のデータを保存するためのキャパシティーが確保されています。データの通信手段としてはWiFi、LoRa、携帯回線など、様々な方式を試験的に導入してきましたが、コストと汎用性から現在は携帯回線を採用しています。ウクライナで発生した公共データの損失は、携帯電話回線の混乱が大きな要因であるため、現在は我々のシステムの生存率およびデータの取得を最大化することに注力しています。

いつもながら、多くのボランティアの方々や専門家の方々の支えがあってこそ我々はこのような活動を続けることができています。福島とウクライナには多くの共通点があり、ウクライナの方の多くは、チェルノブイリのグループと長期にわたって協力してきました。現地の人々は彼らが直接見聞きしている現状を訴えています。我々は彼らの安全を非常に心配しており、これらの情報を公開し、発信していくことにより少しでも支援できることを願っています。

何百万人もの人々が生存を懸けて必死になっているこのような戦時下が、公共の放射線モニタリングシステムの脆弱性について議論するのに適切であるのかという疑問はあるかもしれません。残念ながら喫緊の戦況により核の使用の可能性が否定できなくなってきているため、放射線量のモニタリングデータが、現在進行中の情報戦の一部になってしまっているという状況なのです。ロシアによるウクライナの原子力施設に対する躊躇ない攻撃は、大規模な放射線放出の恐怖を世界に広めました。ロシアはこの「恐怖」そのものを武器として展開しており、我々は信頼できる情報をリアルタイムで必要とするすべての人々に届けることがこの状況下における唯一の対抗策だと考えます。

現在ウクライナの人々は、世界が信頼できる情報を入手し、それに基づいて行動できるよう、情報のオンライン共有を維持するために奮闘しています。幸いなことに、いくつかの原子力施設が攻撃されたにもかかわらず、これまでのところ大規模な放射能放出は回避されています。 我々はオープンデータを武器に、真実によって勝利すべき情報戦の中にいるのです。

— SAFECAST チーム…

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福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

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2021424

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー

翻訳:長岡英美, 宮下(オースターマン) 絵夢フェリチタス, 為本 晃弘 


以下内容の主要部分はJapan Timesの署名入り記事に掲載されました。英語による注釈付きの記事は2021年5月6日Safecast Blogで公開されました:  

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

 



政策の分析

413日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。39

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10

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日本のCOVID-19のデータの不正確さについて

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2020年4月28日、アズビー・ブラウンによって公開

以前の記事(こちらこちら)で、COVID-19の検査に関して日本で実際に決められている方針を整理しようと試みました。私たちはデータに一貫性がなく他の公式データにも問題があり、実際に検査が行われた数と感染の可能性がある人数を一般の人がうまく把握できなくなっていることを指摘しました。このデータ問題について私たちが記事を公開してから4週間が経ちました。4週間前の当時は、20,340件の検査が日本で報告され、全国で1214名が陽性、そのうち東京都の陽性患者が171名でした。国内の新しい陽性患者数は1日100名以下でした。(この記事を書く)現在では、一番最近のデータによれば、150,692名の方が検査を行い、国内で13,448名の方が陽性、そのうち東京都だけで3,908名となっています。新規に陽性判定された人数は1日平均で現在約400名ですが、最高値は4月11日に記録され、700名の方が陽性判定されました。

これらの数値は、もちろん、2月から3月にかけての明らかな感染の増加を示しており、日本はすでにコロナウイルスを「克服」したと主張する声を抑えたに違いありません。当時、感染者の増加割合は大きく、医療機関も過剰負荷に対する混乱のサインを既に示していましたが、我が国では、指数関数的に患者数が増えるフェーズにはまだ到達していなかったように見えます。私達が何度も指摘しているように、日本では症状の発生している方々さえ検査を受けるのは非常に困難です。私たちはこの問題に皆さんが非常に感心を持たれていると気づいたので、自分達で感染に関する実態を報告できるオンラインマップを作成しました。検査が行われた人口比率(約0.008%)を調べた通り、少数の検査しか行われていないことを考えると、より大規模な感染拡大についてどれだけ早く知ることが出来るのでしょうか。私たちは3月にしたのと同じ質問をしなくてはいけません。意図的に検査を絞る現状の「クラスター対策」のアプローチで見落としている感染者はどれくらいいるのでしょうか。特に無症候または発症前(そして現状のガイドラインでは検査対象外とされる人)の方を中心に、もっと多くのCOVID-19陽性の人達がいるにも関わらず、彼らが特定されず速やかに隔離されず、ウイルスの感染拡大を抑えられない場合、どれだけ危険な状況になりそうでしょうか。

英国キングスカレッジのPopulation Health研究所長を務める渋谷健司教授(以下、渋谷氏)が先週、東京の外国人記者クラブ(FCCJ)向けにオンラインの記者発表を行ないましたが、公開データを踏まえて考えを述べ、気がかりな地域を明らかにしました。私達が先述した通り、渋谷氏は「クラスター対策」のアプローチのみに委ねることのリスクについて警鐘を鳴らしており、日本でさらに検査数が急増する危険があると警告しました。皆さんには、彼の記者発表ビデオをご覧いただきたいと思います。具体的には、多くの理由を元に、日本の実際の感染者数は、公的機関を介して発表されている現在の人数の少なくとも10倍はいるだろうと渋谷氏は試算しました。翌日、厚生労働省の主要メンバーの一人である北海道大学の西浦博教授(以下、西浦氏)は、東京で記者会見を行い、渋谷氏の試算と同じ見解を示し、実際は10倍以上かも知れないと付け加えました。同時に、西浦氏は、データは現在、全国の感染者は減少傾向を示していることを何度か繰り返し述べました。直近のグラフデータも同様の傾向を示しているようです。

22020年4月27日付の日本全国の感染者件数(参照:https://covid19japan.com/)

2020年4月27日付の東京都内のCOVID-19感染者データ
(参照:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/en/)

渋谷氏が彼の記者発表で指摘したように、日本政府の資料から報告された件数を見る際には注意しなければいけない点が沢山あります。いくつかの理由から、確認できるデータを元にしっかりとした疫学的な結論を導くことは難しいはずだと渋谷氏は考えています。COVID-19に感染してから、重症化し、日本の厳しいPCR検査の基準を満たすまでには約2週間かかることが非常に重要で、理解しなくてはいけません。私達が目にする一日の陽性患者数は、数週間の間にすでに存在していた感染者をデータを編集した日時に報告しているに過ぎません。これらの件数は、時差のある指標であり、2週間前の感染拡大のごく狭い一部を捉えたものです。渋谷氏によれば、仮に、特に発症前、無症候の感染者に対して、さらに広範囲に検査の実施を行えるなら、最新の感染拡大の全体像をより捉えることが出来るだろうとのことです。

もう1つ注意しなくてはいけない点としては、報告の遅れとデータの一貫性の無さから、民間の研究所で実施された検査結果が完全には公開されていないということです。例えば、東京都が提供する二か国語対応のwebサイトは、公に行われている取り組みの中でも良いものの1つですが、公的機関の報告は毎日更新しているのに対して、民間の研究所からのデータは毎週金曜日に週ごとのデータが更新されるだけになっています。その結果、サイトに公開されている感染者数が、毎週金曜日に不思議な増え方を見せています。似たような増え方が検査数の合計グラフにも影響しています。これに関する説明は東京都のwebサイトのどこにも明らかになっていません。

日本の検査システム、感染者報告システムのほとんどは自動化あるいは完全なオンライン化がなされていません。信じられないことですが、全てのデータはまだファックスで送られており、手入力で転記し、編集しなければなりません。このことが不要な遅延を招き、データ入力エラーの可能性を高めています。非効率なデータ編集プロセスや、実際にデータのカテゴリーが表しているものが元の印象に対して違うこと、そして、報告されている検査数が引き続き一致しないことを考えると、これらの数値のみに基づいて実際に何が起きているのか評価することは難しいのです。最も気がかりなことは、このデータがどれも一般利用が出来ないので、外部の研究者が独自に検証し、複製し、評価する方法が無いことです。渋谷氏は、国立感染症研究所(NIID)からCOVID-19に関するデータを取得し、分析しようと試みた経験について語りましたが、特に彼の立場と評判であれば、非常に簡潔なプロセスであったに違いありません。渋谷氏は特定の申請書類を記入する必要があり、申請プロセスは数ヶ月かかると言われたそうです。国立感染症研究所(NIID)が持っている背景データにアクセス出来ない限り、私たちは一般利用のデータからはほとんど何も述べることが出来ません。

(イタリア)ロンバルディア州からの大規模なイタリア人データサンプルに基づく最近の研究によれば、現地で見られたCOVID-19の感染の43%は無症候感染から由来するものでした。さらに、新規の感染のほとんどはロックダウンの前に発生し、同じ家庭内の無症候感染に由来していました。他の研究は、人口内に無症候感染者が優勢であることに関する似たような結論に至りました。最近の日本の感染者数のグラフは安心するようなカーブの描き方をしていますが、現在の国の疾病監視システムではまだ検出出来ていないCOVID-19の感染拡大のフェーズに日本が既に入ってしまっている可能性が強く残っています。無症候感染や発症前の件数が大半を占める中で、検査の基準からほぼ全て除外されているからです。COVID-19のスクリーニングを受けた呼吸器と関係ない理由で来院した67名の患者のうち4名(6%)が陽性であることが判明したという慶應大学病院の最近の報告はこの考えを裏付けています。渋谷氏やその他の関係者は、この慶應大学病院の件は大きいサンプルにも代表的なサンプルにもなり得ないが、有病率は非常に高く無視すべきではないと指摘しました。

既に知られている他国における無症候/症候ありの比率を元に、渋谷氏と西浦氏は二人とも、他国では20~50倍になっていると指摘した上で、実際の感染者数を少なく見積もっても日本で報告されている感染者数の10倍になると考えています。慶應大学病院での6%の有病率は過大評価だが、他のエビデンスから東京の人口の3~4%の感染率がもっともらしいと想定して、渋谷氏は「単純計算すればちょうど今何人感染しているか分かる」と述べています。1300万人を東京都の人口とした場合、3%は39万人です。ここでの述語は「もっともらしい」です。2週間前に報告された西浦教授によるモデリング結果では、厳しい対策を行わない場合、日本におけるCOVID-19の重症患者の人数は85万人、死者合計で40万人に上る可能性があると見積もっています。これら2つの見積もりは、アウトブレイクの可能性に関して一般的に認められていることです。自発的にソーシャルディスタンスを行ったり、これまで取られてきたその他の対策の効果は、相対的には不確定要素のままです。

しかし、大多数の死者はまだ明らかになっていないように見えます。検査の実施が足りないことで、関心を持っている多くの方が、単に肺炎と報告されている死が実はCOVID-19によるもので、その結果適切にカウントするのを「隠している」のではないかと疑っていると以前私達は指摘しました。沢山の疾患の種類、合併症、その他の関係要因から、インフルエンザの死亡率は通常の状況でさえ定量化することは難しいと渋谷氏は指摘します。様々な理由から、またそのどれも重複しないことから、伝染病による死はしばしば過小評価されています。インフルエンザの場合、全員に検査をすることは不可能なため、私達は代わりに死亡率の過剰分がどの程度か見積もるプロセスにしばしば頼らなくてはなりません。東京大学の研究者による最近の論文

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COVID-19 testing, putting a face to the numbers

In COVID19, ニュース, マップ by exporter

SAFECASTでは先日、新型コロナ・ウイルスのテスト・マップを発行し、ウィルスの現状と猛威を示す情報がアジア、北アメリカ、そしてヨーロッパから寄せられました。

2011311日。

今回の対応について語る前に、2011/3/11について多少触れさせて下さい。

SAFECAST放射能や空気汚染などのテーマを扱い、各地域に携わる地元市民が自分達の生活、即ち「ストーリー」に密着することにより、地域独自にコントロールできるプラットフォーム作りをしてきました。

例えば原子力発電による放射能被害が深刻な福島では、現地で生活する方々に情報を提供とストーリーを提供頂くことにより、メディアが目玉集めのために誘導しがちな放射能の捨て場所ではなく、地元の方々が実際に元気に生活し、彼らの未来を描く現状を提供することを提示できました。

地元の方々が自分の土地の放射能を計測してそれを公表することにより、他人やメディア任せでストーリーを展開させるのではなく、地元の現状を素直にコントロールできるようになりましたまた、福島県と同様の現象世界中の他地域でも見られますが、同様に他地元

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日本の緊急事態に関する解説

In COVID19, ニュース, マップ, 論説 by exporter

2020年4月8日、アズビー・ブラウンによって公開

昨日(4月7日)、ようやく安部総理大臣によって、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡を対象とした緊急事態宣言が出され、日本のCOVID-19パンデミックへの対応は新たな局面に入りました。多くの人が指摘するように、この新たな「封鎖(ロックダウン)」は諸外国で実施されているような法的強制力を持ったものではなく、自宅待機の要請に従わなくても罰則が課せられることはありません。

現在の日本の法制度では、そのような強制的な指令を施行することはほぼ不可能なのです(第二次世界大戦前、および戦時中に国全体が非常に無意味な自己犠牲を強いられたからなのですが)。その代わり、政府は来月に向けて、これまでの要請よりも広範囲にわたる社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンス)を自主的にとるよう求めています。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、診療所や病院、ホテル、製造業などの「必要不可欠」と見なされるサービス業は、引き続き営業するように求めていますが、バーやクラブ、ライブハウス、カラオケなど大人数が集まる場所は避け、外食しなければならない場合は大人数での利用を避けるよう、引き続き呼び掛けています。奇しくも、公衆浴場は営業を継続するよう求められているようです。都内の映画館、博物館、図書館、デパートなどの多くの公共施設は、先に受けたソーシャル・ディスタンスの要請に応じて、すでに一時的に閉鎖されており、今後も営業停止を継続するよう求められるかもしれません。そうは言っても、誰かに何かを強制することはできず、また、要請を拒否することもできるのが現状です。現在のところ、この命令が適用されるのは国内43都道府県のうち7県(正確には1都1府5県)にのみ限定されています。憂慮すべきことに、緊急規制を回避するために東京から多くの人が圏外に脱出したとの報告も多数受けています。中国やイタリアなどでは、部分的な閉鎖を行ったものの旅行者を効率的に監視しなかったため、感染者たちが国内外に新たな集団感染の種を拡散させる結果となり、事態を計り知れないほど悪化させました。

新たな非常事態宣言に含まれる7つの都道府県。出典:NHK

安倍総理大臣は、「私たち全員が努力して人と人との接触を70%、できれば80%減らすようにすれば、感染症の増加は2週間後にピークを迎え、その後減少に転じるだろう」と言及しています。この発言内容に関しては不確かな部分も多く、特に自主的に要請に応えるというのは、今までのところ日本でもちらほら見受けられました。数週間前に、もっと強力で拘束力のある措置が講じられ、より強制力のあるメッセージを訴えてくれていたならば、と私たちは思うのです。

Agence France Presseの編集者リチャード・カーター氏がツイートしました:

一方、2011年3月の大震災後、日本人は必要なことと判断すれば、不便な緊急措置であっても容易に協力してきました。 2011年には、店舗の照明を半減させたり、駅やビルの外壁のイルミネーション広告を消し、エスカレーターを停止させたり、家庭での消費電力を抑えたりなど、全国的に広がった自主的な省エネ(節電)のおかげで、全体の電力消費量は約2割減少しました。自主規制(自粛)は、お祝いごと、その他の大規模な懇親会、一般的な贅沢などを自粛するよう求められ、人々はそれに従ったのです。

これはある意味、緩やかな犠牲が求められたという最近の前例と言えるでしょう。数日前、TBSが発表した世論調査の結果によると、約80%が緊急宣言の発令に賛成していました。しかし、実際に人々は従うのでしょうか? 一週間後には分かることですが、政府は足固めに必要な準備を整えていないようですし、国民とのコミュニケーションも図れていないように思います。これには追加として、無料託児所の提供や自宅待機しなければならない従業員とその雇用者への助成金、オンラインでの書類提出を困難にする官僚的規制の緩和などが含まれます。多くの企業、大学などでは、今でも大半の従業員は、紙の書類に印鑑を押すために現場に立ち会う必要があります。現在、健康への危機が懸念される中、このような行為は野蛮とも言えます。諸々の関連支援策について話し合いが持たれ、約束されていますが、どれも実施されるに至っていません。先週の日曜日、シンガポール政府は、感染症の「第二の波」(現在、香港でも経験していること)に対応するため、非常に強力な拘束力のある対策を発表しまました。これらのガイドラインは、メディアだけでなく、政府による広報チャネルを使って明確に伝えられており、ベストプラクティスと捉えるべきでしょう。

4月6日現在の日本の症例データ。出典:NHK

3月下旬以降、東京を筆頭に日本全体でCOVID-19の感染者数は明らかに増加しています。これは、3週間前にさかのぼりますが、中途半端な形でソーシャル・ディスタンスを公式に要請したにもかかわらず、お花見で大勢の人が公園に集まり、お互いに感染したのが原因ではないかと大かた意見が一致しています。重要な点が不明確なままで、中央政府によるコミュニケーションへの取り組みは依然としてお粗末ですが、日本でのデータの公開状況はここ数週間で全体的に改善しています。東京都の多言語版COVID-19 ウェブサイトは、政府が提供してきたものよりもはるかに明確で有益な公式情報源となっています。今日現在(4月8日)、東京都の陽性者数は1196人で、2週間前から急激な増加傾向にあり、先週末には1日あたり100人を超える新規感染が発生しました。その後2日間でやや減少し、今日は144例に達しています。現在、全国で累積陽性者数が4480人を超えました。4月6日の感染者数は241人でしたが、4月3日以降は、連日300人を超える感染者数が報告されています。非常によく運営されている独立型のバイリンガルサイト、Japan COVID-19 Coronavirus Tracker,(日本新型コロナウィルス・トラッカー)は、都道府県ごとの詳細なオープンデータベースを提供しており、日本での検査済み症例数データに関して信頼できる情報源になっています。

出典:Japan COVID-19 Coronavirus Tracker (日本新型コロナウィルス・ストラッカー)

以前の記事で述べたように、多くの人々は日本での大規模な検査が行われていないために、COVID-19の実際の症例数や感染率が著しく過小評価されていると結論づけています。昨日のワシントン・ポスト紙に引用されていた、ロンドンのキングスカレッジ・ポピュレーションヘルス研究所所長の渋谷健司教授によると、「遅すぎる・・・。東京はすでに爆発的な感染者数増加の段階に入っており、医療崩壊を止めるためには一日も早く首都封鎖を実施しなければならない」と語っています。渋谷教授は、この1週間での急激な感染者数の増加は、日本の限られた検査戦略が失敗していたことを示す明らかな証拠であり、検査と発見の規模が大きくなればなるほど、そのことがより明白になるとの見解を示しています。

日本での検査数は増加していますが、発生曲線の平坦化に成功したどの国よりもはるかに遅れをとっています。数日前、首相は検査能力を1日あたり7,500人から2万人に拡大すると発表しましたが、いつ頃から実施可能となるかに関しては言及しませんでした。4月7日現在、日本では合計5万5311人が検査を受けていますが、ほぼ毎日検査が実施されていることを考慮すると、現在公表されている1日7,500人の検査能力の半分以下しかないことになります。これとは対照的に、ドイツでは週に50万人が検査を受けています。

日本では他の国と同様、肺炎のような呼吸不全による死亡者全員に対し検査を実施していないため、COVID-19の症例数が過少報告されている可能性があります。逆に、すべての死亡症例がCOVID-19に起因するという分類法は、世界的に広く行われているのですが、これはCOVID-19に起因する死の過大評価につながりうるとして批判されています。しかし、多くの国では、通常の季節性インフルエンザに罹患している間に死亡した人々は、健康上、他に問題があったとしても、インフルエンザによる死亡として記録されていることが指摘されています。特に問題視されるような慣行ではないのかもしれませんが、感染症例の重症度を追跡する上で、この意味合いを念頭に入れておく必要があります。全体として、パンデミックの規模や拡大を過小評価することの方が、過大評価することよりも公衆衛生上のリスクははるかに大きいことは明らかです。

日本のCOVID-19症例の重症度内訳。出典:NHK

日本政府や医療専門家の間では、現在のペースで重症患者数が増え続けると、集中治療室の病床が十分に確保できなくなるのではないかという深刻な懸念が上がってきています。人口10万人当たりのICU病床数の割合は、他の多くの先進国に比べてはるかに低いからです(日本は10万人当たり5床、イタリアは12床、ドイツは約30床)。この単独サイトでは、各都道府県のICUベッドの空き状況の現状を示しています。東京都を含む、少なくとも5つの都道府県では、COVID-19の症例数はすでにICU病床数を上回っています。 NHKによると、COVID-19感染者のうち、ICUでの治療が必要なほど重症化した症例は4%程度にとどまっていますが、重症化した症例がICUのベッド数を上回る可能性が出てきているとのことです。

これを受けて、政府は軽症患者が利用できるよう、東京に約10,000室、関西に3,000室、東京オリンピック村に800室を提供するとの協力をホテルから得たと報告されています。昨日から東京都中央区のホテルに患者の移動が始まりました。 3月24日にお伝えしたように、それまでCOVID-19の数値が比較的低く抑えられていたのは、マスク着用や手洗いなど日本人の様々な生活習慣のおかげだと多くの人が信じていますが、単純に運も一役買っていたのではないかと感じます。では、今後どうなるのでしょうか? 日本は引き続き幸運に恵まれ続けるかもしれません。現在の陽性患者の急増は異常だと分かってくるかもしれないですし、新たな自主的措置は、感染者急増の芽を摘み取るのに十分なほど受け入れられ、広がっていくかもしれません。しかしながら、現在の緊急事態宣言発表に影響を与えたとされる最近の調査では、無視してはならない悲惨な最悪のシナリオも想定されています。自主的措置を要請しても、自宅からの外出を60%以上を削減できなかった場合、ICUのキャパシティ不足によって、4月26日頃に医療システムが崩壊し、50万人が死亡すると著者は結論付けていました。 その一方で、3月2日以降の学校閉鎖により、子どもの接触頻度が40%減少し、2月27日以降の自主的なイベント中止により、大人の接触頻度が50%減少したことを示す未発表の研究に言及しており、外出を60%を減少させることができると期待しています。

あらゆる研究に言えることですが、全てが正確ということはありえませんし、不確実性が内在する中国のデータを基にしているので、このモデルはあくまでも基本的な想定をしているだけに過ぎません。首相は来月から1ヶ月間、ソーシャル・ディスタンスを7、8割減らすように国民に要請しています。しかし、企業が経済的苦境に陥ることなく、従業員が自宅に留まることを認める明確な補償がなければ、これらの目標を達成するのは難しいと言えるでしょう。世界の他の地域で実施されているように、日本でも数週間前から、もっと強制力、拘束力のある措置を講じて、より強力なメッセージを投げかけていたならば、もう少し効果をあげることができたのではないでしょうか。今のところ、私たちは運に頼り過ぎてしまっているようです。…

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COVID-19 検査マップ」発表

In COVID19, ニュース, マップ by sean

 

2020323日 by Sean Bonner

本日、私達はCOVID-19検査状況を見つける際に、その状況を文書化できるようなクラウドソース・マップを立ち上げました。
セーフキャスト設立の信念の1つは、人々が自分自身と友人や家族の安全性について判断を下すために、信頼できる正確な情報にアクセスできる必要があるということです。 これらのリスクに関する独立した信頼できる情報源を提供するために、クラウドソーシングされた放射線と大気質のデータを公開し始めました。

COVID-19はすでに世界中のコミュニティに壊滅的な影響を及ぼしています。
人々は今後の準備をする必要があり、そのためには良い情報が必要です。 また、検査に関する情報を簡単に入手でき、自分の健康と安全性について安心感を与え、この世界的な緊急事態の際により良い判断を下せるようにする必要があると考えています。

しかしながら、現在、世界中の多くの場所で、COVID-19の公式の検査情報はあいまい、かつ不完全であり、人々は関連性も信頼性もない公式情報源に依存しています。必要な場所に検査キットが届かなかった、不完全な検査キットの配達、過度に複雑な承認プロセス、あるいは不公平な優先順位のために、政府が発表する検査の有効性と実際の検査受診の可能性の間に一部の地域でギャップがあることが明らかになりました。
この状況は、3/11以降に私たちが見てきたものを不穏なまでに思い起こさせます。これについては、ここで詳しく説明しました。世界中の人々の助けや意見により、このマップは、さまざまな地域での検査受信の難易度状況に関する情報を提供できることを期待します。信頼できるクラウドソーシングされた情報を提供することにより、このマップが情報をより的確にターゲティングし、政府や当局の説明責任を果たすのに役立つツールになることを願っています。

地図は covid19map.safecast.orgで利用できます。

地図の利用方法:

  • 1.左側のメニュー/ナビゲーションに、マップ上の色付きのマーカーに対応する「無症状で検査拒否された(黄色
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SAFECASTの福島第一原発訪問

In ニュース, マップ, 放射線, 測定, 移動測定報告 by sean

ショーン・ボナー

過去7年間にどれだけ福島第一原発の原子炉建屋の画像を見てきたでしょうか、それは100枚、いえ1000枚にも及ぶでしょう。これまでに写真、イラスト、地図、図面、そしてありとあらゆる角度と視点から詳細をとらえた動画も見てきましたが、実際に実物を目の前にした時、これまでと全く異なった畏怖の念を持ちました。

これこそがセーフキャストにとってのグランドゼロであり、そこにある建物、そして2011年3月に起こった出来事が私の、私たち全員の人生を永遠に変えたものでした。

東京電力がセーフキャストの存在意義の対局となる組織と考える方がいるとすれば、この12月の寒い午後、どうして私を含むセーフキャストの主要メンバーがここに立つことができたでしょうか。ここまでの道のりは決して簡単なものではありませんでした。

 

福島第一原発 原子炉建屋 2号機、3号機、4号機

私たちのリードエンジニアであるジョー・モロス(愛称:ジャム)が、メディアが提供する情報の正否を判断するためのテクニカルスペシャリストとして、これまで度々、メディアクルーとして同行をしてくれたため、過去にも何度かbガイギー(bGeigie:セーフキャストオリジナルの移動型放射線計測器)を福島第一原発内に持ち込んだことはあります。これまで福島第一原発での調査を隠してきたわけではなく、セーフキャストの地図を見ていただければ、数値は確認していただけます。しかし、セーフキャストとしても、特別な形での発表はしてきませんでした。

東京電力は、今、難局に立たされています。自分たちが悪の根源のように見られていることを知っていると同時に、インターネット上では、発電所の従業員の死体が隠されて死体保管所に積み上げられているといったような噂に溢れていることも知っています。虚偽の報告などせずとも、既にかなり難しい立ち位置にいます。

東京電力は巨大エネルギー企業であり、環境的略奪行為を経てなお、状況改善のための自らの努力によって、信頼を取り戻す期待は捨てていないようです。その努力の一例が、第一原発をより多くの人に対して公開する取り組みです。過去1年間に、1万人以上が第一原発を訪問し、2020年東京オリンピックまでには年間2万人の訪問を可能にすることを目指しています。

セーフキャストのメンバーが福島第一原発を訪問した際に計測した放射線の数値。セーフキャストの地図に掲載されている。http://safecast.org/tilemap/

セーフキャストの最優先の使命は、特に環境に影響のある政府や民間産業の活動に関する透明性と公開性の確保です。私たちは誰とでも対話をする用意があり、私たちの観念主義的でないスタンスが、より多くの人・組織と関わることを可能にしています。

この夏、私たちのヘッド・リサーチャーであるアズビー・ブラウンが、東京電力の代表者数名と共にウィーンでIAEA (国際原子力機関)の会議に参加しました。東京電力のプレゼンテーションはお世辞にも素晴らしいものとは言えなかったそうです。アズビーは夕食の際、率直な感想を彼らに伝えました。すると「どうしたら良いプレゼンテーションができるだろうか?」と彼らから尋ねられたそうです。「とにかく、もっと透明性をもつことだ」とアズビーは答えました。彼らは、本当にオープンであることが何を意味するかというセーフキャストの考え、そして東京電力がその基準に届くまでにどれだけの長い道のりがあるか、というアズビーの説明に長時間耳を傾けたそうです。

ここで鍵となるのは、東京電力が、自分たちがオープンであると考え続けており、たとえ2011年以後、同社の公開性が大幅に向上されていたとしても、一般市民が期待をするレベルにははるかに届かず、セーフキャストのような他の情報源から得られる情報より、その公開性の程度が低かったということなのです。

多くの例において、歴史的に透明性の確保に抵抗を続けてきた組織は、結局のところ、情報の扉を開け放ったところで大きな影響はない、ということに気付くのです。東京電力は、バスに乗ったセーフキャストの一行を第一原発に招待してくれ、私たちがセーフキャストの公開データセットと地図に測定結果をアップロードすることを承知の上でbガイギーを持ち込むことを奨励し、一部始終を収めるためのカメラの持ち込みも許可してくれました。

公正な立場で第一原発内の放射線検査結果を公開する独立した第三者機関としてセーフキャストを招待することにより、公開性を確保する機会を得るという決断がされたのです。これは彼らにとって初めてのことでした。しかし私たちも素人ではありません。これが彼らのPRになることも理解しています。それでもなお、私たちは、災害のあのグラウンドゼロにおいて、独立した放射線測定を行うというポジティブな側面を認識した、大変重要な、転機となる瞬間であったと考えています。

撮影した写真の一部(撮影:撮影者未記載のものは筆者、ショーン・ボナーによるもの)

 

視察ツアー開始前、案内者が全行程を紹介。

通常、ほとんどの訪問者が視察中にバスを離れることを許可されないが、私たちはバスを出て歩き回り空気中の放射線測定をすることを許可された。そのため、追加の安全服の着用が義務付けられた。写真は安全服を着こむジョーとピーター。

案内者は、写真だけではわからない多くのことを説明してくれた。

第一原発バスツアー中の私たち。全ての表面がビニールで覆われている。

視察では原子炉建屋の様子がよく確認できた。

福島第一原発原子炉建屋1号機

原子炉建屋1号機前のbガイギー

私たちのbガイギー(右上)と、東京電力による放射線測定数値

集合写真。bガイギ―は10機持ち込んだ。(写真:セーフキャスト)

タンクと袋に入れられ、廃棄を待つ汚染水と汚染土壌

東京電力は、放射線モニターをいたるところに設置し、現状の数値を表示している。今後、これらの数値を入手し、また一部についてはセーフキャストのセンサーとの同時設置をしたいと考えている。

残りの写真については、整理でき次第、近日中に投稿する予定です。そして、また近いうちに再訪問をすべく計画中です。直近の目標は、第一原発内に東京電力のセンサーのチェック機能を果たす独立したセンサーを設置する場所を確保することです。より詳細な情報が得られ次第ご報告します。幸運を祈ってください。

私たちのほとんどの活動はボランティアによって支えられており、サーバーを稼働させ続け、センサーを設置し、セーフキャストの日々の運営を行うコストは決して安くありません。定期的(毎月)な寄付、ワンタイム寄付、またはPatreonを通じての寄付をいただけると、より活発な活動が可能となり、心から感謝いたします。

翻訳:岩本愛

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オープンデータ:未だかつてない重要性

In ニュース, マップ by sean

今、世界で何が起きているのか?ご存知の皆さんへ。
現在、実に嫌なニュースが流れ続けています。
全ての米国環境保護庁(EPA)の権限は凍結され、社員は”変化”に対して話し合いや外部に向かって口外することを禁じられています。
この禁止令は全ての新しい契約を停止し、同庁のウェブサイトから情報を削除することを告げられています。
EPAだけでなく保健福祉省を含む他の政府機関も外部とのコンタクトをやめるよう命令されていて、疾病予防管理センターは予定されていた気候変動に関する大きなイベントを説明もなしに急遽中止しました。
アメリカ合衆国農務省も直ちに公的文書の公開を停止しました。EPAの内部メモは、この新しい静粛令がいかに素早く広がったか?を示しています。

私たちは過去において、確かにEPAを批判してきましたが、一方で情報公開や人々が情報に対して興味を持つために、高いモチベーションを維持して努力を行ってきたことに対しては常に称賛していました。
本日のニュースはそのことに終止符を打ちました。これは完全に晴天の霹靂(へきれき)ではなく、この数か月の間、科学者達は米国新政権が今までの成果を破壊する恐れを予期し、警戒し合いながらできるだけデータの退避を行ってきました。
情報公開を求めることですら、米国情報公開法は現在、難しくなってきています。そしてこれらは米国内の出来事ですが、前出各機関より提供されたデータと情報は世界中の科学者たちに利用されています。今月上旬には、“グローバルな空気情報提供者”を謳うAir Mattersが中国政府よりデータ表示の制限を求められ、直ちに従いました。

こういった行動は、セーフキャストが支持する全てに反するものです。

私たちは、すべての人たちが環境に関してのデータ- 特に健康に関するデータ- が信頼でき、正確かつ自由にアクセス可能なものだと信じています。
今日の問題 – 私たちがセーフキャストを作る前までは - …

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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日本のCOVID-19のデータの不正確さについて

In featured, ニュース, マップ, 主要記事 by azby

2020年4月28日、アズビー・ブラウンによって公開

以前の記事(こちらこちら)で、COVID-19の検査に関して日本で実際に決められている方針を整理しようと試みました。私たちはデータに一貫性がなく他の公式データにも問題があり、実際に検査が行われた数と感染の可能性がある人数を一般の人がうまく把握できなくなっていることを指摘しました。このデータ問題について私たちが記事を公開してから4週間が経ちました。4週間前の当時は、20,340件の検査が日本で報告され、全国で1214名が陽性、そのうち東京都の陽性患者が171名でした。国内の新しい陽性患者数は1日100名以下でした。(この記事を書く)現在では、一番最近のデータによれば、150,692名の方が検査を行い、国内で13,448名の方が陽性、そのうち東京都だけで3,908名となっています。新規に陽性判定された人数は1日平均で現在約400名ですが、最高値は4月11日に記録され、700名の方が陽性判定されました。

これらの数値は、もちろん、2月から3月にかけての明らかな感染の増加を示しており、日本はすでにコロナウイルスを「克服」したと主張する声を抑えたに違いありません。当時、感染者の増加割合は大きく、医療機関も過剰負荷に対する混乱のサインを既に示していましたが、我が国では、指数関数的に患者数が増えるフェーズにはまだ到達していなかったように見えます。私達が何度も指摘しているように、日本では症状の発生している方々さえ検査を受けるのは非常に困難です。私たちはこの問題に皆さんが非常に感心を持たれていると気づいたので、自分達で感染に関する実態を報告できるオンラインマップを作成しました。検査が行われた人口比率(約0.008%)を調べた通り、少数の検査しか行われていないことを考えると、より大規模な感染拡大についてどれだけ早く知ることが出来るのでしょうか。私たちは3月にしたのと同じ質問をしなくてはいけません。意図的に検査を絞る現状の「クラスター対策」のアプローチで見落としている感染者はどれくらいいるのでしょうか。特に無症候または発症前(そして現状のガイドラインでは検査対象外とされる人)の方を中心に、もっと多くのCOVID-19陽性の人達がいるにも関わらず、彼らが特定されず速やかに隔離されず、ウイルスの感染拡大を抑えられない場合、どれだけ危険な状況になりそうでしょうか。

英国キングスカレッジのPopulation Health研究所長を務める渋谷健司教授(以下、渋谷氏)が先週、東京の外国人記者クラブ(FCCJ)向けにオンラインの記者発表を行ないましたが、公開データを踏まえて考えを述べ、気がかりな地域を明らかにしました。私達が先述した通り、渋谷氏は「クラスター対策」のアプローチのみに委ねることのリスクについて警鐘を鳴らしており、日本でさらに検査数が急増する危険があると警告しました。皆さんには、彼の記者発表ビデオをご覧いただきたいと思います。具体的には、多くの理由を元に、日本の実際の感染者数は、公的機関を介して発表されている現在の人数の少なくとも10倍はいるだろうと渋谷氏は試算しました。翌日、厚生労働省の主要メンバーの一人である北海道大学の西浦博教授(以下、西浦氏)は、東京で記者会見を行い、渋谷氏の試算と同じ見解を示し、実際は10倍以上かも知れないと付け加えました。同時に、西浦氏は、データは現在、全国の感染者は減少傾向を示していることを何度か繰り返し述べました。直近のグラフデータも同様の傾向を示しているようです。

22020年4月27日付の日本全国の感染者件数(参照:https://covid19japan.com/)

2020年4月27日付の東京都内のCOVID-19感染者データ
(参照:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/en/)

渋谷氏が彼の記者発表で指摘したように、日本政府の資料から報告された件数を見る際には注意しなければいけない点が沢山あります。いくつかの理由から、確認できるデータを元にしっかりとした疫学的な結論を導くことは難しいはずだと渋谷氏は考えています。COVID-19に感染してから、重症化し、日本の厳しいPCR検査の基準を満たすまでには約2週間かかることが非常に重要で、理解しなくてはいけません。私達が目にする一日の陽性患者数は、数週間の間にすでに存在していた感染者をデータを編集した日時に報告しているに過ぎません。これらの件数は、時差のある指標であり、2週間前の感染拡大のごく狭い一部を捉えたものです。渋谷氏によれば、仮に、特に発症前、無症候の感染者に対して、さらに広範囲に検査の実施を行えるなら、最新の感染拡大の全体像をより捉えることが出来るだろうとのことです。

もう1つ注意しなくてはいけない点としては、報告の遅れとデータの一貫性の無さから、民間の研究所で実施された検査結果が完全には公開されていないということです。例えば、東京都が提供する二か国語対応のwebサイトは、公に行われている取り組みの中でも良いものの1つですが、公的機関の報告は毎日更新しているのに対して、民間の研究所からのデータは毎週金曜日に週ごとのデータが更新されるだけになっています。その結果、サイトに公開されている感染者数が、毎週金曜日に不思議な増え方を見せています。似たような増え方が検査数の合計グラフにも影響しています。これに関する説明は東京都のwebサイトのどこにも明らかになっていません。

日本の検査システム、感染者報告システムのほとんどは自動化あるいは完全なオンライン化がなされていません。信じられないことですが、全てのデータはまだファックスで送られており、手入力で転記し、編集しなければなりません。このことが不要な遅延を招き、データ入力エラーの可能性を高めています。非効率なデータ編集プロセスや、実際にデータのカテゴリーが表しているものが元の印象に対して違うこと、そして、報告されている検査数が引き続き一致しないことを考えると、これらの数値のみに基づいて実際に何が起きているのか評価することは難しいのです。最も気がかりなことは、このデータがどれも一般利用が出来ないので、外部の研究者が独自に検証し、複製し、評価する方法が無いことです。渋谷氏は、国立感染症研究所(NIID)からCOVID-19に関するデータを取得し、分析しようと試みた経験について語りましたが、特に彼の立場と評判であれば、非常に簡潔なプロセスであったに違いありません。渋谷氏は特定の申請書類を記入する必要があり、申請プロセスは数ヶ月かかると言われたそうです。国立感染症研究所(NIID)が持っている背景データにアクセス出来ない限り、私たちは一般利用のデータからはほとんど何も述べることが出来ません。

(イタリア)ロンバルディア州からの大規模なイタリア人データサンプルに基づく最近の研究によれば、現地で見られたCOVID-19の感染の43%は無症候感染から由来するものでした。さらに、新規の感染のほとんどはロックダウンの前に発生し、同じ家庭内の無症候感染に由来していました。他の研究は、人口内に無症候感染者が優勢であることに関する似たような結論に至りました。最近の日本の感染者数のグラフは安心するようなカーブの描き方をしていますが、現在の国の疾病監視システムではまだ検出出来ていないCOVID-19の感染拡大のフェーズに日本が既に入ってしまっている可能性が強く残っています。無症候感染や発症前の件数が大半を占める中で、検査の基準からほぼ全て除外されているからです。COVID-19のスクリーニングを受けた呼吸器と関係ない理由で来院した67名の患者のうち4名(6%)が陽性であることが判明したという慶應大学病院の最近の報告はこの考えを裏付けています。渋谷氏やその他の関係者は、この慶應大学病院の件は大きいサンプルにも代表的なサンプルにもなり得ないが、有病率は非常に高く無視すべきではないと指摘しました。

既に知られている他国における無症候/症候ありの比率を元に、渋谷氏と西浦氏は二人とも、他国では20~50倍になっていると指摘した上で、実際の感染者数を少なく見積もっても日本で報告されている感染者数の10倍になると考えています。慶應大学病院での6%の有病率は過大評価だが、他のエビデンスから東京の人口の3~4%の感染率がもっともらしいと想定して、渋谷氏は「単純計算すればちょうど今何人感染しているか分かる」と述べています。1300万人を東京都の人口とした場合、3%は39万人です。ここでの述語は「もっともらしい」です。2週間前に報告された西浦教授によるモデリング結果では、厳しい対策を行わない場合、日本におけるCOVID-19の重症患者の人数は85万人、死者合計で40万人に上る可能性があると見積もっています。これら2つの見積もりは、アウトブレイクの可能性に関して一般的に認められていることです。自発的にソーシャルディスタンスを行ったり、これまで取られてきたその他の対策の効果は、相対的には不確定要素のままです。

しかし、大多数の死者はまだ明らかになっていないように見えます。検査の実施が足りないことで、関心を持っている多くの方が、単に肺炎と報告されている死が実はCOVID-19によるもので、その結果適切にカウントするのを「隠している」のではないかと疑っていると以前私達は指摘しました。沢山の疾患の種類、合併症、その他の関係要因から、インフルエンザの死亡率は通常の状況でさえ定量化することは難しいと渋谷氏は指摘します。様々な理由から、またそのどれも重複しないことから、伝染病による死はしばしば過小評価されています。インフルエンザの場合、全員に検査をすることは不可能なため、私達は代わりに死亡率の過剰分がどの程度か見積もるプロセスにしばしば頼らなくてはなりません。東京大学の研究者による最近の論文

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日本に於けるCOVID-19コロナ・ウィルス患者数が表す意味

In COVID19, featured, ニュース, 主要記事 by exporter

2020年3月24日Azby Brown著

Reiko Mori, Yoshida Suzuka, Tatsumi Baba, Ryuichi Anbo, Mami Yahiro, Momoha Koya (Furuhashi Lab., Aoyama Gakuin Univ.) 翻訳

 

先週、私はセーフキャストの一員として日本のCOVID-19コロナ・ウィルスの検査についての記事を書きました。

さて、ここCOVID-19コロナ・ウィルスに関する正確な情報の伝達が乏しく、最近では検査基準を満たしている人が検査を断られる事例が増加し、国民の間で不満や疑惑の声が挙がっています。これは政府による政策が原因ですが、検査することを重要視している韓国、台湾やシンガポールなどの国は感染者の数値が緩和し始めたのに対し、日本ではそれらの国と大幅に異なり検査数が少ない状況です。

今後一体どういうことが起こるのでしょうか?

日本国内では、普段の生活に於いて肉体的な距離を保つ傾向を筆頭に、マスクの着用や優れた衛生環境、握手による挨拶が少ない、などの要因を基にCOVID-19コロナ・ウイルスに打ち勝ったという話が最近様々な所広まってきています。セーフキャストでは「マスクの着用」や「規則正しい手洗い」は、肌の接触を減らすのと同等に重要視しており、ここまでの接触感染率の低さを保っているのは恐らくそのお陰なのではないかと思います。

しかし、学校の閉鎖や開催予定であった大きなイベントのキャンセル、そしてなるべく多くの人々が在宅ワークを行っているにも関わらず、文化的背景に基づいた日々の社会的な距離だけでは強制力がとても弱い可能性も出てきています。例えば、公園では毎日のように花見をしに来た人々で埋め尽くされ、電車も常に満員です。バーなどの飲み屋、またレストランなどの飲食店も同じ状況です。私達は今までラッキーだったのでしょうか。

その一方、感染者数は国民全般に於ける検査の不足、そして、誤った分類による単純肺炎で亡くなった方と、COVID-19コロナ・ウイルスで亡くなった方との区別が曖昧で、疑いが晴れないでいる現状も存在します。

日本の各都道府県や地方自治体は、緊急事態時には自主的に対応を行える権限を保持しています。例えば、最近のニュースでは

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COVID-19

In ニュース, 主要記事 by exporter

2020年のコロナウイルスの大発生は、9年前にセーフキャストが結成されるきっかけとなった東北地方太平洋沖地震/福島第一原子力発電所のメルトダウンと多くの点で類似しています。

私たちは今、何が起きているのか?よく理解しようと努めています。 一部は状況が非常に急速に変化しているだけでなく、透明性の欠如も原因であるため、相反する報告、政治的な情報操作、および意図的な誤情報が状況を理解するのを難しくしています。 セーフキャストは、この新しい状況で経験と努力が役立つ方法を特定しようとしています。 継続的な評価の共有に役立つ新しいニュースレターを作成しています。 毎日、いくつかの重要ポイント、COVID-19に関連する当日のハイレベルなニュース、および私たちが重要だと思うことを発信します。

セーフキャストの立場と一貫して、この複雑で急速に変化する状況をよりよく理解することを目標にアプローチするよう努めます。

セーフキャストでさらに措置を講じる際には、こちらでも発表していきます。

 …

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セーフキャストとシャトルワース財団

In センサーネットワーク, ニュース, 主要記事, 測定 by sean

[:ja]ご存知の方もいるとは思いますが、南アフリカを拠点とするシャトルワース財団 がセーフキャストを支援してくれていて、私たちの4周年イベントの開催も可能にしてくれました。シャトルワースの特別研究員の一人として(ショーン・ボナーはシャトルワース財団の一員である)、セーフキャストと同じように透明性を重んじ、世界を変える可能性を秘めたプロジェクトに取り組んでいる世界各地の素晴らしい人々と出会い、一緒に働いていることを幸せに感じています。
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Development: Real-Time Interpolation

In マップ, 主要記事 by Nick Dolezal

[:en]

Real-Time Interpolation:
A Powerful and Unique Tool
 – Overview and Upcoming Improvements – 


idw1

Above: Measurements vs. Interpolation. Left: Actual measurement data points. Right: Interpolation of those points using the Safecast app.

idw2

Above: Enabling IDW in the Safecast app for

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Safecast OS X アプリ提供開始

In ニュース, マップ, 主要記事, 測定 by sean

Mac OS Xユーザお待ちかねの、PCアプリリリースです。App Storeにてダウロードできます。SafecasterのNick Dolezalが心を込めて開発した公式Safecastアプリがをもたらす豊富なデータセット(2100万以上のデータポイント!)あなたのMacへ放射線測定機能を、そしてSafecastデータの強力かつ迅速な方法を提供します。

Safecastのフルデータセットに加えて、以下を含むさまざまなソースからのデータを閲覧することができます。

•The US Department of Energy / NNSA

(アメリカ合衆国エネルギー省/ 国家核安全保障局)

•USGS and Canadian Geological Survey

(アメリカ地質調査所 および カナダ地質調査所)

•US EPA

(アメリカ環境保護庁)

これらのデータは、福島原発事故後の福島を中心とした広範囲にわたる国内測定結果と、北米大陸のほぼすべてにわたる空間線量データやそれ以外の世界中のデータも含まれています。専用データベースには、日本ではセシウム同位体分布、米国では、天然に存在するウラン濃度分布が含まれます。

視覚化ツールを使用することにより、地図の背景や色を変更でき、複数の測定値をコントラストをつけてみることができます。ビュー(表示)をカスタマイズすることが可能で、あなたの周りで自然放射線や人工由来の放射線がどこでどれくらいの数値なのかを可視化することができるようになっています。

その他の機能:

• クエリレチクルツール:測定値の正確な数値を表示します。

• カスタムレイヤー:個別の層を組み合わせてることにより、カスタム比較を作成します。

• リアルタイムIDW補間:GIS補間スクリプトで時間(または日)を費やすことなく、測定していない地域で短時間に予測値を視覚化します。

• 高パフォーマンス:超高速のSIMDベクトル化、マルチスレッドのコードは、ほぼ瞬時にデータをレンダリングします。

• オフライン機能:データを100%オフラインで使用できます。 (注:これはベースマップには適用されません)…

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セーフキャストのウェブマップが更新されました!

In マップ, 主要記事, 放射線, 測定 by sean

私たちのGeoSenseマップのプラットフォームの不幸な活動終焉以来、ウェブユーザーが利用可能なセーフキャストデータの新しい視覚化をしていませんでした。先週、セーフキャストボランティアのNick Dozel( Safecast iOSアプリの立案者 )は、ある実験を試み、素晴らしいことにそしてそれが上手くいきました。いよいよセーフキャストデータの最新版ウェブマップを紹介できることに、胸が高鳴っています 。セーフキャストのデータを表示する際に直面した第一の問題は、データが大量であることと、データが常にアップデートされるので、それを同時に地図に反映させることがとても困難であるということでした。Nickはその問題も解決しました。ただし、これは正確な意味では「ライブビュー」ではなく、2014年5月25日時点でのセーフキャストのデータを用いて作成されています。ですから、5月25日以降に追加された新しいデータは含まれていません。このウェブマップは定期的に更新することはありませんが、現状から効率的に随時更新することになるでしょう。これは、2013年の初めにマップを作って以来の飛躍的な進歩です。

念のために。セーフキャストのiOSアプリ(無料ソフト)では、4時間前までのデータを読み込んでいますので、こちらでは常時最新のマップを見ることができます。
翻訳:Kohei Watanabe…

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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SAFECASTの福島第一原発訪問

In ニュース, マップ, 放射線, 測定, 移動測定報告 by sean

ショーン・ボナー

過去7年間にどれだけ福島第一原発の原子炉建屋の画像を見てきたでしょうか、それは100枚、いえ1000枚にも及ぶでしょう。これまでに写真、イラスト、地図、図面、そしてありとあらゆる角度と視点から詳細をとらえた動画も見てきましたが、実際に実物を目の前にした時、これまでと全く異なった畏怖の念を持ちました。

これこそがセーフキャストにとってのグランドゼロであり、そこにある建物、そして2011年3月に起こった出来事が私の、私たち全員の人生を永遠に変えたものでした。

東京電力がセーフキャストの存在意義の対局となる組織と考える方がいるとすれば、この12月の寒い午後、どうして私を含むセーフキャストの主要メンバーがここに立つことができたでしょうか。ここまでの道のりは決して簡単なものではありませんでした。

 

福島第一原発 原子炉建屋 2号機、3号機、4号機

私たちのリードエンジニアであるジョー・モロス(愛称:ジャム)が、メディアが提供する情報の正否を判断するためのテクニカルスペシャリストとして、これまで度々、メディアクルーとして同行をしてくれたため、過去にも何度かbガイギー(bGeigie:セーフキャストオリジナルの移動型放射線計測器)を福島第一原発内に持ち込んだことはあります。これまで福島第一原発での調査を隠してきたわけではなく、セーフキャストの地図を見ていただければ、数値は確認していただけます。しかし、セーフキャストとしても、特別な形での発表はしてきませんでした。

東京電力は、今、難局に立たされています。自分たちが悪の根源のように見られていることを知っていると同時に、インターネット上では、発電所の従業員の死体が隠されて死体保管所に積み上げられているといったような噂に溢れていることも知っています。虚偽の報告などせずとも、既にかなり難しい立ち位置にいます。

東京電力は巨大エネルギー企業であり、環境的略奪行為を経てなお、状況改善のための自らの努力によって、信頼を取り戻す期待は捨てていないようです。その努力の一例が、第一原発をより多くの人に対して公開する取り組みです。過去1年間に、1万人以上が第一原発を訪問し、2020年東京オリンピックまでには年間2万人の訪問を可能にすることを目指しています。

セーフキャストのメンバーが福島第一原発を訪問した際に計測した放射線の数値。セーフキャストの地図に掲載されている。http://safecast.org/tilemap/

セーフキャストの最優先の使命は、特に環境に影響のある政府や民間産業の活動に関する透明性と公開性の確保です。私たちは誰とでも対話をする用意があり、私たちの観念主義的でないスタンスが、より多くの人・組織と関わることを可能にしています。

この夏、私たちのヘッド・リサーチャーであるアズビー・ブラウンが、東京電力の代表者数名と共にウィーンでIAEA (国際原子力機関)の会議に参加しました。東京電力のプレゼンテーションはお世辞にも素晴らしいものとは言えなかったそうです。アズビーは夕食の際、率直な感想を彼らに伝えました。すると「どうしたら良いプレゼンテーションができるだろうか?」と彼らから尋ねられたそうです。「とにかく、もっと透明性をもつことだ」とアズビーは答えました。彼らは、本当にオープンであることが何を意味するかというセーフキャストの考え、そして東京電力がその基準に届くまでにどれだけの長い道のりがあるか、というアズビーの説明に長時間耳を傾けたそうです。

ここで鍵となるのは、東京電力が、自分たちがオープンであると考え続けており、たとえ2011年以後、同社の公開性が大幅に向上されていたとしても、一般市民が期待をするレベルにははるかに届かず、セーフキャストのような他の情報源から得られる情報より、その公開性の程度が低かったということなのです。

多くの例において、歴史的に透明性の確保に抵抗を続けてきた組織は、結局のところ、情報の扉を開け放ったところで大きな影響はない、ということに気付くのです。東京電力は、バスに乗ったセーフキャストの一行を第一原発に招待してくれ、私たちがセーフキャストの公開データセットと地図に測定結果をアップロードすることを承知の上でbガイギーを持ち込むことを奨励し、一部始終を収めるためのカメラの持ち込みも許可してくれました。

公正な立場で第一原発内の放射線検査結果を公開する独立した第三者機関としてセーフキャストを招待することにより、公開性を確保する機会を得るという決断がされたのです。これは彼らにとって初めてのことでした。しかし私たちも素人ではありません。これが彼らのPRになることも理解しています。それでもなお、私たちは、災害のあのグラウンドゼロにおいて、独立した放射線測定を行うというポジティブな側面を認識した、大変重要な、転機となる瞬間であったと考えています。

撮影した写真の一部(撮影:撮影者未記載のものは筆者、ショーン・ボナーによるもの)

 

視察ツアー開始前、案内者が全行程を紹介。

通常、ほとんどの訪問者が視察中にバスを離れることを許可されないが、私たちはバスを出て歩き回り空気中の放射線測定をすることを許可された。そのため、追加の安全服の着用が義務付けられた。写真は安全服を着こむジョーとピーター。

案内者は、写真だけではわからない多くのことを説明してくれた。

第一原発バスツアー中の私たち。全ての表面がビニールで覆われている。

視察では原子炉建屋の様子がよく確認できた。

福島第一原発原子炉建屋1号機

原子炉建屋1号機前のbガイギー

私たちのbガイギー(右上)と、東京電力による放射線測定数値

集合写真。bガイギ―は10機持ち込んだ。(写真:セーフキャスト)

タンクと袋に入れられ、廃棄を待つ汚染水と汚染土壌

東京電力は、放射線モニターをいたるところに設置し、現状の数値を表示している。今後、これらの数値を入手し、また一部についてはセーフキャストのセンサーとの同時設置をしたいと考えている。

残りの写真については、整理でき次第、近日中に投稿する予定です。そして、また近いうちに再訪問をすべく計画中です。直近の目標は、第一原発内に東京電力のセンサーのチェック機能を果たす独立したセンサーを設置する場所を確保することです。より詳細な情報が得られ次第ご報告します。幸運を祈ってください。

私たちのほとんどの活動はボランティアによって支えられており、サーバーを稼働させ続け、センサーを設置し、セーフキャストの日々の運営を行うコストは決して安くありません。定期的(毎月)な寄付、ワンタイム寄付、またはPatreonを通じての寄付をいただけると、より活発な活動が可能となり、心から感謝いたします。

翻訳:岩本愛

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bGeigie Nanoの使用説明-YouTube動画

In Hardware, 放射線, 測定 by kiki

セーフキャストが開発した組立式放射線計測機器 bGeigie Nano(ビーガイギーナノ) の使い方が簡単にわかるよう、ビデオで説明しました。
bGeigie Nano 基本説明
計測の仕方
充電の方法
付属品を使っての計測

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セーフキャストのウェブマップが更新されました!

In マップ, 主要記事, 放射線, 測定 by sean

私たちのGeoSenseマップのプラットフォームの不幸な活動終焉以来、ウェブユーザーが利用可能なセーフキャストデータの新しい視覚化をしていませんでした。先週、セーフキャストボランティアのNick Dozel( Safecast iOSアプリの立案者 )は、ある実験を試み、素晴らしいことにそしてそれが上手くいきました。いよいよセーフキャストデータの最新版ウェブマップを紹介できることに、胸が高鳴っています 。セーフキャストのデータを表示する際に直面した第一の問題は、データが大量であることと、データが常にアップデートされるので、それを同時に地図に反映させることがとても困難であるということでした。Nickはその問題も解決しました。ただし、これは正確な意味では「ライブビュー」ではなく、2014年5月25日時点でのセーフキャストのデータを用いて作成されています。ですから、5月25日以降に追加された新しいデータは含まれていません。このウェブマップは定期的に更新することはありませんが、現状から効率的に随時更新することになるでしょう。これは、2013年の初めにマップを作って以来の飛躍的な進歩です。

念のために。セーフキャストのiOSアプリ(無料ソフト)では、4時間前までのデータを読み込んでいますので、こちらでは常時最新のマップを見ることができます。
翻訳:Kohei Watanabe…

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イラクでセーフキャスティング:オープンデータは扉を開く

In ニュース, マップ, 主要記事, 放射線 by Bilal Ghalib

先月、イラクのエルビルで行われたピース・テックキャンプでのデータ視覚化のワークショップに誘われました。私が働いていたNGOの一つは、イラクでの劣化ウラン問題についての意識を高めるために研究を視覚化しようとしていました。幸いにも私はケンブリッジで飛行機に搭乗する前に、セーフキャストのショーン・ボナーに偶然に遭って、bGeigie(ビーガイギー)のデバイスを貸してもらっていたのです。私は、ピース・テック・キャンプ、イラク南部のNGOの聴衆に、この新しいツールと機能がどういうものなのか、どうやって動くのかを説明しました。このことが、イラクのバスラで癌に罹患した子供たちを支援する組織を運営する Layth Al-Salihi の目にとまったのです。

Layth at PeaceTech in Iraq

Layth、イラクのピース・テックにて

彼の息子は、数年前に癌と診断されましたが、勇敢にも病と闘い、回復しました。Laythはその経験から得た学びとエネルギーをバスラ地区内で癌を患う子供を抱える他の家族を助けるために使うことに向けたのです。彼は、病院の近くにプレイセンター(遊び場としての集会所)を設置することに貢献し、被災した子どもを持つ親のためのトレーニングセッションを行っています。そして、治療の余裕がない子供のために薬の提供もしています。

Laythは、彼の息子の癌やバスラで増えている先天性障害の原因は、湾岸戦争とイラク戦争でイラクに投下された放射性弾薬(ウラン弾)によるものだと確信しています。
劣化ウランは徹甲弾薬を作成するために使用されていた重金属で、アメリカはその戦時下に、イラク全土、350ヶ所以上に合計約1.4トンの劣化ウラン弾を落としています。劣化ウランが、がんの発生や出生異常率を上昇させたのかどうかをめぐる論争があります。近年発表された世界保健機関(WHO)による研究、「イラク特定18地区内における先天性異常の有病率の概要」では、次のように結論づけています。

「…調査で明らかになった自然流産、死産や先天性障害の発生率は、国際的な推定値と同等か、それ以下である。調査では、イラクでの出生異常の比率が高いことを示唆する明確な証拠は示されていない。」

「劣化ウランによるイラクでの環境汚染 -モースル市におけるがんと先天性障害発生率への影響の可能性について (原題は Environmental pollution by depleted uranium in Iraq with special reference to Mosul and possible effects on cancer and birth defect rates) 」という論文が国際学術誌「Medicine, Conflict and Survival」に掲載され、次のように要約されています。

「1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争では、イラクの多くの地域に劣化ウラン弾による環境汚染という負の遺産を残した。このような兵器の使用がイラク市民の健康に影響を与えた可能性があり、実際にがんや先天性異常発生率が増加していることも明らかになりつつある。汚染は、すでに大気、土壌や水といった広範囲に及び、特に暴風下では粉塵となって拡散している。」

このような見解の相違は、イラクの公衆衛生を援助するプロジェクトにおいて混乱と停滞をもたらしました。だからこそ、ビーガイギーを渡した後、Laythは私のところに来て、がんの発生率やイラクでの劣化ウランの矛盾した報告について話してくれたのです。Laythは、オープンデータのプロジェクトを作ることを提案しました。そのプロジェクトでは、その地域での入院患者の調査結果と罹患者の居住地域情報を、SAFECASTのAPIで作った地図に重ね合わせることで、劣化ウランとがん、出生異常発生率との関連性を地図上で確認することができるようになるかもしれません。

私たちは、試しにバスラでビーガイギーの活用を支援する「Fikraスペース」と呼ばれるイラクのハッカースペースと、LaythのNGOを繋ぐ計画を立て始めました。私はイラクで「Fikraスペース」と呼ばれるハッカースペースの仲間と協力しています。ハッカースペースからチームをつくり、バスラで今後活動をするために彼らを養成することを提案しました。そしてPeaceTechキャンプが終了した後、私はバグダッドへ向い、放射線マッピングのワークショップを運営するFikra …

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IAEAでセーフキャスティング

In ニュース, 主要記事, 放射線 by azby

1日目、2014年2月16日

ジョーと私、アズビーは、今週月曜日にウィーンで始まる国際原子力機関(IAEA)の専門家会議に出席します。

この国際会議に関する情報(英語のみ)は、以下のリンクから見ることができます。
福島第一原子力発電所事故(IEM6)後の放射線防護に関するIAEA国際専門家会議、2014年2月17日〜21日、オーストリア、ウィーンにて

私たちが会議に参加すべきかどうか、かなり議論を重ねてきたのですが、それには様々な理由がありました。セーフキャストがこの会議に参加することで、何ら建設的な対話を交わさなくとも、IAEAがどの団体に対しても「受容的」で「公平」であるかのように見えてしまう可能性があるのではないかと考えたからです。また、私たちが会議への参加に同意することで、私たちセーフキャストの独立性が危うくなると人々に思われることがあれば、会議への参加は私たちにとって逆効果になりうることも認識していました。
しかし、私たちに連絡をくれたIAEAの職員とのやりとりは驚くほど率直で、IAEA内部の職員の多くがセーフキャストの実施してきた活動に深い興味を持っていることを知ったので、セーフキャストの方法論や調査結果を知らないIAEAの専門家たちがいれば、セーフキャストから学び得ることがあるのではないか、という印象を受けたのです。IAEAの職員も、セーフキャストが批判的なことを沢山述べてくれるのでは期待していたようでした。その一方で、会議の主催者は、私たちセーフキャストを招聘することで、主催者自身、批判の矢面に立たされることにもなったのです。というのも、私たちは原子力の分野では正当な専門家として「認められていない」からです。

会議はあと数時間のうちに始まります。セーフキャストがこの会議に参加したからと言って、何かが速やかに、一気に変わるとは思っていません。しかし、これは高レベルの専門家達に自分たちの批判的な見解を聞いてもらえる貴重な機会であり、こうして参加すれば、独立した第三者的団体の意見も受け入れられたという前例のないケースになると思うのです。

Vienna as a whole has very normal levels of ambient radioactivity, but the granite base of the statue of Goethe is a bit hot.
[ウィーンは全域に渡って環境放射能は極めて正常なレベルですが、花こう岩で作られたゲーテ像の土台部分の放射線量値は若干高めです。]

2014年2月17日 第2日目

会議は午後から始まりました。登録手続では、かなり厳重なセキュリティを通るようになっており、その後、写真付きのIDバッジが渡されるようになっていました。今日のプレゼンテーションの大半は、これまでの政府や規制機関の活動概要の説明、環境、除染、健康等の現状について、人々に最新情報を伝えることを主目的としていました。原子力規制委員会(NRA)、日本原子力研究開発機構(JAEA)、そして放射線医学総合研究所(NIRS)から来た日本の代表者たちによる発表もありましたが、すべて英語で行われたので、大変だと感じた人もいたかもしれません。今までの成り行きを間近で追い続けてきた私たちには、彼らのこれまでの展開の基本的な概要に関するプレゼンテーションを聞いても、目新しい発見は特にありませんでした。

第二部のセッションでは、世界保健機関(WHO)、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、国際連合食糧農業機関(FAO)、経済開発協力機構(OECD)の代表者による発表がありました。 WHO の Emile van Deventer氏と、UNSCEAR の Malcolm Crick氏は、各々が所属する機関がリリースした報告書(あるいは間もなく発表する予定)について概要を説明し、長時間を掛けて、どのようにして WHO や UNSCEAR が外部の人たちと関わりながらも任務を遂行し、内部で情報収集するのか説明していました。目新しい内容の発表はなく、WHO の福島に関する追加的な報告書の発表もありませんでした。UNSCEAR による長いこと先送りになっていた健康の影響に関する報告書は、最終的に2014年の4月2日に公表されるとのこと、また、IAEA による報告書は2014年度末にまとめられ、2015年半ばに公表されることが明らかになりました。

繰り返しになりますが、その発表内容のほとんどは組織についてであったり、回顧的なものであり、重要な部分はほんの少ししか明らかにされませんでした。国際原子力機関(IAEA)の Miroslav Pinak氏は自らのプレゼンテーションで、IAEA がしきい値無し直線(LNT)仮説(モデル)の原則を使っており、わずかな被ばくであっても健康面にリスクがあると明確に述べていました。発表後に、私は UNSCEAR の Malcolm Crick氏に、これらの報告書が実際に集団線量推定値を支持すると捉えていいのか、また、線量・線量率効果係数(DDREF、ここでは、DDREFの1を採用している)を放棄すると見ていいのかと尋ねると、彼はその二点について、「そうだ」と明言しました。また、何人かの発表者は、全体として線量評価、リスク評価法が一般市民にとって非常に紛らわしく分かりづらくなっており、積極的な見直し、あるいは何か他のものと置き換えられる必要があるのではというコンセンサスが大きくなっていることに触れていました。私たちがこういった問題点をはっきりと認識できるようになれば、事態解決への大きな第一歩に繋がるのでは、と思っています。

こういった会議では、参加者同士が既に長年の知り合いであることが多く、そのため、あるクラブ会員のような排他的な雰囲気が若干感じられました。同時に、そういった雰囲気であるからこそ、外交的ではありますが、率直な意見交換が可能でもあるのです。一方で、複数の発表者が、福島の事故後、(人々への放射線量を最小化するという意味で)放射線防護に関しては功を奏している一方で、事故を未然に防ぐための規制防護は情けないほどに失敗してきたと話していました。その上、事故関係者、当事者間による連絡などの意思疎通がうまく取れていないことも複数の発表者によって示唆されました。もちろんこれは、私たちセーフキャストのプレゼンテーションにとって明らかな推進力にも繋がります。自画自賛はさておき、誰一人として、(原発事故後の)風向きがほとんど海方面だったので日本人は本当にラッキーだった、そして、だからこそ防御法が何であれ、良い結果に繋がったのだ、などと言う人はいなかったように記憶しています。

この日は、歓迎会で締めくくられ、大勢の人々と言葉を交わす機会に恵まれました。Malcolm Crick氏は、UNSCEAR内にもセーフキャストのファンが多くいること、そして彼らは公式データを照合検査するために、セーフキャストのデータセットが便利であることに気付いている、と私たちに話してくれました。甲状腺疫学者、Peter Jacob教授と話をする機会もありました。彼は、どのぐらい多くの甲状腺癌の症例が最終的に福島県で発見されることになりそうかを推測し、その解釈の仕方を説明した論文を最近発表しています。
私たちは伊達市の仁志田昇司市長にもお会いすることが出来ました。仁志田市長は、個人線量計とホールボディーカウンター(WBC)スクリーニングを通して、伊達市民全員の線量測定をとても積極的に時宜にかなった形で実施した方です。仁志田市長も他の日本人出席者も、ジョーと私が日本語を話すことに驚いていました。このような会議で日本語を話す人に出会うというのは、ほとんど皆無なのでしょう。…

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カリフォルニアビーチにおける放射線量

In ニュース, 放射線, 測定 by sean

[2014年3月に更新:CDPH(カリフォルニア州公衆衛生局)は、自ら研究を行い、下記のようにセーフキャストの調査結果を確認しています。その調査結果の報告書はここで見ることができます]

今年12月、YouTubeに「福島の放射線がサンフランシスコを襲う!(2013年12月)」という衝撃的なタイトルの動画が投稿されました。

現在までに、その動画は約50万回以上閲覧され、無数の記事がその動画を証拠や情報ソースとして書かれています。しかし、動画で述べられた主張は正しくありません。
カリフォルニアのビーチが放射性ではないというのではなく、実際にはそうなのですが、これはカリフォルニアでは50年以上にわたって記録されている自然現象なのであり、これは関心さえあれば誰でも容易にグーグルなどの検索で見つけることのできる事実なのです。残念ながら、その動画のクリエイターや、その話題を面白がるメディアは、少しの時間を割いて調査をすることに、それほど関心を示さないようです。

2008年、Redenkovic氏らによる論文「いくつかの名高い公共ビーチの砂浜の放射線と付随する環境リスクの評価(未翻訳)」には、高い濃度のラジウム226、トリウム232、カリウム40がロサンゼルス地区の浜辺で発見されたとセルビアの化学会誌に掲載されています(表1参照)。
さらに1959年にまで話を戻すと、自然放射性鉱物による海岸堆積物の運動の透写図(未翻訳)は、バークレーのKamel氏とJohnson氏による報告書であり、その報告書には「この放射性トリウムは、トリウムを豊富に含む花崗岩を流れる河川の水が海岸に到達したり、トリウムの豊富な花崗岩そのものが海岸で露出していて、海岸沿いの別々の場所で自然と増えたのだ」と述べています。

これらのビーチは、近接する周辺地域よりも放射能レベルが高いのは当然であろうという情報は容易に入手できるので、外的要因や外的影響に関するいくつかの主張は、まずこれらの文書化された放射性同位元素(ラジオアイソトープ)情報を排除しているのでしょう。インターナショナル・メドコム社(同社のインスペクターが動画内で登場している)の最高経営責任者であり、「真実に取り憑かれた者」と自称するダン・サイス(Dan Sythe)氏は、これらの報告書について関心を持ち、すぐさま、この高い数値の原因を特定するために、動画が作成されたハーフムーンベイのビーチから土壌サンプルを検出しました。サイス氏が見つけだした SAM 940「マルチチャンネルアナライザー」を使用することによって、ラジウム226とトリウム232というNORM(天然起源放射性物質)が含まれている砂を発見しました。それは、過去に発表された関連の論文から予測していたことでした。Hサイス氏は、福島からの汚染を示すいかなるセシウムも発見しませんでした。彼は、カリフォルニアビーチの放射線は福島からではない というタイトルの投稿を、ガイガーカウンターブルテン(Geiger Counter Bulletin)にしました。実際の測定写真は、以下の通りになります。


ハーフムーンベイのビーチの砂、
ラジウム226とトリウム232のレベルを表示。

福島のビーチの砂、
セシウム137のレベルを表示。

 

カリフォルニア周辺の通常の環境放射線はだいたい30〜60CPMの間であり、測定はそれ以上の200CPMのハーフムーンベイや西海岸沿いの他のスポットでも行われました。それでも、この線量は、人が標準的な民間航空飛行機の飛行時間にさらされる数値、800CPMよりも、はるかに少ないものです。200CPMという数値は、花崗岩のカウンター甲板やレンガが露出した建物から測定されているのだろうという、予測範囲内の数値です。

ですから、実際の科学では、福島から検出可能な数値の放射線がカリフォルニアビーチへ到達するなどという話はただちに誤りであると証明できます。しかし、ひとつの重要な特徴として、多くの既存の科学的モデル は、検出可能な数値は今後数年間でこのカリフォルニアの海岸に到達するだろうという証拠を示しており、そのトピックこそ、私たちが今後の取り組んでいくものです。

また、このビデオに登場した、このことが多くの人に多大なストレスを与えたという点にも議論の余地があります。この動画は実際に、数値がビーチで上昇し、水位線に向かって減少していることを示しています。つまり、これは水そのものが数値の原因ではないことを示しているにもかかわらず、ガイガーカウンターを水に近づけて持っていくと数値が上がり続けるようになっています。加えて、その数値の原因は空気ではありません。なぜなら、そのような状況であれば、その周辺一体のエリアは高い数値であるはずです。 ビーチ、車道、歩道の全てにおいて高い数値がでるはずです。上昇する測定値が特定の領域に限定されているということはとても明確ですので、その原因が表面上あるいは下に存在しているという証拠になります。

この件についてレポートするため、セーフキャストのチームは…

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FAQ: 日本の食品汚染について

In 放射線 by sean

セーフキャストでは日本に渡航するという人達から、福島(原発)からの汚染で日本の食べ物は安全なのか、という問い合わせを頻繁に受けます。そこで、ここで我々の返答を掲載しておくのが有益なのではないかという考えに至りました。

明確にしておきたいことがあります。それは、どこに住んでいようとも、誰しもに汚染していない食品を選択する権利があるのだということです。セシウムや他の汚染物質が含まれていない食品の供給が完全に安全であるということ、そして、保護システムがしっかりと働き、市民を支えてこその正当性だといえるでしょう。これはしっかりとした食品検査システムを持つ第三者機関が十分に見張りとして機能し、政府が発表したことを自由かつオープンに情報照合をしているということを意味します。が、残念なことに、実のところまだ日本では実現されていません。おそらく、他のどこでもまだ行われていないでしょう。

セーフキャストでは独自の食料測定器はまだ備えていませんが、いくつかの独立した食品検査の研究所と協力したり、公式あるは非公式に発表されている結果を定期的にモニタリングしています。どれくらいの頻度で、誰によって、どのように食品が検査されているかについて、混乱状態です。これは主にもともと食品検査システムが、生産者や地方の農業関係の役人達にガイダンスを配布するなどいった、公に情報を開示することを目的とされていなかったためだと思われます。ですので、測定結果が何百ページにも及ぶわかりにくいデータとなってしまっているのです。

にもかかわらず、この計測システムは市場に出回っている食品の汚染量を法的許容レベルである1キログラムあたり100ベクレル以下に抑えるのには効果的のようです。「効果的」と言っているわけであって、決して「完璧」と言っているわけではありません。そして、1キログラムあたり100ベクレルのレベルは世界で最も厳しいものです。もっと厳しくあるべきだと主張する人もいるくらいです。その土地の食品を食べるかどうかはに、この1キロあたり100ベクレル以下というのがひとつの基準になり得るでしょう。

私たちの多くが日本の食品検査システムがもっと一般に対してわかりやすく改善されることを望んでいます。そして、人々も食品汚染の問題は何十年にもわたって私たちと共にあるのだということを理解すべきだと考え、常に注意し準備すべきです。単に今が大丈夫だからといって、永遠に大丈夫というわけではないのですから。

日本で消費される食品の多くは海外から輸入されているという点で、ある意味幸運です。一方で福島の家族は地元で生産された食品だけを食べていると考えられています。実際に地産食品を消費している人達はほんの一握りです。これは汚染の影響下にある人を限定できる効果があります。 コープふくしまによって独自に行われた調査では、福島の家族が実際に何を食べているのかが調べられました。調査は2011年の終わりに始まり、300世帯の内ほとんどが実際に食事の中でセシウムが見つかりました。発見された数値は10ベクレルかそれ以下という低い値でした。K40(自然放射線であるカリウム)のレベルはもっと高くなります。日本人の食事には相当高い量の自然放射線であるポロニアム210がしばしば貝類や他の海産物から見つかっています。これらの小型生物からの放射線量は(福島原発事故で飛散された)セシウムよりもずっと高いレベルです。

最も注意深く行っている独立系及び政府系の食品テスト、内部被ばくのスクリーニング、実際の食事のテストはすべて実際のセシウムや他の放射性物質による汚染量を結論付けることを強化しました。それは、供給される食品は恐れられていたよりもずっと低い汚染レベルであったということです。土壌は除染されており、さらに食品検査も行われ、世間の注意喚起もこれに貢献しました。今でも汚染された農作物が収穫されることも時々はありますが、内部被ばくのスクリーニングの結果は、まだ測定されていないセシウムがあるという意味で100%ではなく、改善の余地があります。

技術的な点について:

体内にセシウムが残る期間は約70日(子どもはさらに短い)です。そして体は定期的な間隔で体外に排出します。もしセシウムを一度吸収したならば、例えば、半分は70日で排出されます。そして最終的にはすべてが自然の過程で除外されていきます。とはいえ、体内に残っている間はセシウムの効果はあるわけですが。通常の摂取では、体内に摂取する量と排出する量が一定のペースになり、最終的にプラトー(=水平域)に達します。これは摂取を止めるまで続きます。

例えば、1キロあたり100ベクレルのセシウムを含む魚を食べたとしましょう。一般的に言って、人が一日に魚を1キロも食べることはまずありませんが、ここでは仮定とします。10歳の子どもが毎日100ベクレルを食べ続けたら、彼らの一年後の体内のセシウムのプラトーは約5200ベクレルです。大人の場合だと1万4000ベクレルになります。1歳児の場合は2000ベクレルです。
ここから1歳児に影響のある放射線量は年間0.08ミリシーベルトで、他の年齢グループでは比例して(しかし直線的ではありません)高くなります。この放射線量の計算は、内部被ばくからより大きな影響を受け、子どもの年齢によって新陳代謝が大人のものとは異なります。現在の日本のガイドラインは年間の総摂取量を1ミリシーベルト以下に定めています。これが世界的な基準に近いものです。

現行の日本のガイドラインは、食品から年間1ミリシーベルト以下を保つように記されています。私たちが考えるには、出来る限り多くの人が、完璧とはいえないまでも十分に守られるべきものです。上記の1才児の年間0.08ミリシーベルトは年間1ミリシーベルトの100分の1以下です。これでも十分に低い設定ではないという人もいるでしょう。そしてその考えは当然考慮に値するものです。特に独立の検査機関が十分でないことからも、このような懸念を無視はできません。

もし福島の家族が、1キロあたり11.7ベクレルのセシウムが検出された食事を毎日食べたとしましょう。大人の場合、年間0.14ミリシーベルトの総摂取量となり、子どもの場合はそれ以下です。

ここにさらに具体的な例があります。70歳の南相馬の男性は、事故から140日後に内部被ばくが見つかりました。セシウム137と134、合わせて2万ベクレルが発見されました。彼の体重は67キロで、彼のセシウムの「身体負荷量」は1キロ当たり約300ベクレルでした。これは福島でこれまでに検出された数値で最も高いものです。医師はその男性の食料庫を確認し、彼が汚染されたシイタケや野生の野菜など、市場でチェック機能が果たされていないものを定期的に食べていたことをつきとめました(1キロあたり14万2000ベクレル以上)。彼が食べていた品目のいくつかは、シダ類や栗などキロ当たり500~1000ベクレルにもなるものでした。彼は一日に140ベクレルのセシウム137と134を摂取していました。彼の1年間の有効量は0.8ミリシーベルトで、年間1ミリシーベルト以下のレベルです。医師は彼に品目を食べるのをやめるよう注意しまし、彼は言われた通りにしました。その結果、予測されていたように生物学的半減期により、彼の体の負担は減りました。

比較をすると、東京からアメリカ間の北側ルートの飛行機に12時間乗ると、片道で0.04ミリシーベルトの被ばくとなります。ですから、往復で0.08ミリシーベルトの被ばくとなります。これは1歳児が一年間、毎日100ベクレルを摂取しているのと同じ量になります。この手の比較を難しくする変数は多くあります。そして多くは年齢にもよります。しかし、内部被ばくが標準指数よりも何倍も損傷させると仮定して、人一人は、飛行機旅行で受ける放射線の被害と同等にするためには、セシウム含有量の多い食べ物をたくさん食べる必要があります。しかし、前述のように、汚染食品の問題は何年にもわたって記録される必要がありますし、通常、飛行機搭乗は個人の選択です。市場における食品汚染はそうではなく、強いられたものですから、もちろん、油断しないよう、注意し続ける必要があります。しかし、同時に我々は秩序だってリスクを考えるのがベストだと考えています。

上記で言いましたが、これは科学についてだけではなく、政府が社会に対して食品中に何が含まれているのか、適切な情報提供を約束してこなかったゆえに起こった問題でもあります。空の旅を選択するかどうかは私たちの選択ですが、供給される汚染食品は私たちには選べません。汚染食品の問題は今後何年にもわたって監視される必要があるでしょう。もちろん、情報は用心深く提供され続けるべきです。同時に、我々はリスクに注意を払い続けることが大切だと考えます。

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bGeigie、福島第一原発敷地内へ

In 放射線, 測定 by sean

もう一つのマイルストーンがついに遂行されました。これはとても意味のあることです。これまでセーフキャストは福島第一原子力発電所周辺の立入り禁止区域内で測定することはできていましたが、実際の敷地内では測定できていませんでした。まさに文字通り、施設周辺のゲートにぶつかってきたのです。

今週、私たちのボランディアの数名がbガイギーを持って、ゲート内と発電所周辺の巡回することができました。ご覧いただければわかるように、ここでの高い数値を予想していましたが、まさにその通りでした。いくつかの場所では、38000cpm/116μSvを越えており、本当に高濃度です。

 

測定値は建物の外で測定されたことを念頭においてください。建物内部は、外部よりも測定値が桁違いに高く、ロボットを除いて誰一人完全に立入禁止の場所がたくさんあるのです。私たちは、建物内部からのより多くの測定値が得られることを期待しています。引き続きご注目ください。

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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戦争と断片的なデータ

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

昨年のちょうどこの頃、Safecast設立10周年を記念して、福島の現状を伝えるべく生放送で16時間に及ぶ世界配信を行いました。大地震、津波そして福島第一原発事故という2011年3月の多重災害からも10年の節目でした。それからたった一年、これほど状況が変わるとは誰にも予想できなかったことでしょう。

福島において原発事故後の緊急事態であるという感覚は数年前に無くなり、代わりにこの大規模災害の長期的な環境および社会影響に対する理解が深まりました。言わば緊急事態に対する応急処置から、Safecastおよび社会全体の姿勢も長期的な視点へと移行していたのです。しかしロシアによる一方的なウクライナ侵攻により、情報の収集、信頼度の検証、再発信という、原発事故後のような「迅速な対応」が必要な態勢に引き戻されてしまいました。

壊滅的な戦争により、再びこの様な対応が必要になってしまったことは大変残念です。現時点で既に原子力施設の安全性や核の保安を脅かす事象が数件が起きており、世界的に注目を集めています。チェルノブイリが占領されたときに放射線量の増加はあったのか、電力供給が止まってしまったら放射線量が増加するのか、原発がミサイルなどによって攻撃を受けたらどうなってしまうのか、など多くの不安や疑問が呈されました。

福島原発事故後に示されたように、信頼できる情報源から一貫したデータを自由に入手できることは、人々の無力感を和らげ、多少なりとも安心感につながります。Safecastは設立当初より、人々に信頼され活用できるデータを提供するためには、特定の政府や企業に影響を受けていない独立した情報源であること、誰もが活用できるオープンソースであること、また全ての人に行きわたるよう情報の一点集中を避けることを重視してきました(「DeDa」参照)。この原則は、現在のような危機的な状況下で特に重要だと考えます。

現在もSafecastではTwitterやブログを通して、現状の分析を逐次発信しています。我々のこの活動は、一般に公開されている情報を活用し、最前線で何が起こっているかを明らかにしようとする多くの人々の活動と重なります。放射線分場におけるモニタリングネットワークおよび情報発信の経験を生かして貢献をしてきましたが、残念ながら我々でも断片的な情報しか得られていないのが現状です。

2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所および立ち入り禁止区域を占拠したとの情報を受け、Safecastでは直ちに入手可能な放射線量に関するデータの収集を開始しました。我々のデータベースの大部分はボランティアの方々がbGeigieを使って自ら測定したものです。そのため、特定の時点でのデータはあっても、現場からリアルタイムで放射線量の変化を感知できる定点センサーはありません。

予想通りウクライナの公式放射線量データは、インターネットで情報を公開し続けることが困難な状況に陥っていますが、その中でも得られた情報はあります。例えば、欧州委員会共同研究センター(JRC)の放射能環境モニタリング(REM)グループのホームページには、ウクライナ水文気象センターからの測定値が掲載されており、ウクライナの非営利団体SaveEcoBotでは、多くの政府システムから入手可能なデータを集約し、発信しています。

しかしながらロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナにおける多くの有用なモニタリングネットワークは断続的で不安定な状態に陥っています。また時間が経つにつれ、ウクライナ政府の公式ホームページの全ての放射線量データもアクセス不能になってしまいました。さらにはロシアによるサイバー攻撃(DDOSなど)、電力網破壊によるサーバーの停電、電波塔の破壊による通信回線の切断なども報告されています。

ウクライナ当局は、猛烈な攻撃を受けながらも、懸命に情報提供活動を行っています。ウクライナのエネルギー省は、安全確保のためにシステムをオフラインにするという苦渋の決断を迫られ、現在も続行中です。戦争によって国民への公的な情報供給の手段は阻まれ、現在は政府が収集した情報を、NPO法人SaveEcoBotが提供しています。これは歴史的な出来事であり、SaveEcoBotは非常に重要な役割を果たしています。

当然ながら、ウクライナにおけるモニタリングおよび情報公開システムは戦争を想定していなかったため、ロシアの攻撃は直接公式情報の消失を引き起こしています。しかしながら今回の経験が、モニタリングシステムの過度な一極集中化や、チョークポイントおよび単一障害点など、緊急時に簡単に不能化されてしまうリスクを避けた、より強固なシステム設計に活かされることを願っています。政府などが人為的なミス、あるいは故意に公共なモニタリングデータへのアクセスを遮断することは、あってはならない事態です。特に現在のウクライナのように国民がこのような情報を必要としている状態においては、武力行使が行われる戦争下においても耐久可能な強靭なシステムが必要です。

Safecastのシステムは初めから冗長性およびオープンデータであることを重視して設計されています。我々のデータベースは全て特別な許可なしにダウンロードが可能です。サーバーの損失やインターネットアクセスの拒否が発生した場合でも迅速にデータを再構築できるよう、世界中に複数のコピーを保存することを可能にしています。放射線量のリアルタイムモニタリングデータは2つのデータベースに保存され、スタンバイ状態のクラウドサーバーも必要に応じて数分で立ち上げられる状態になっています。またSafecast内部でも、数年分のデータを保存するためのキャパシティーが確保されています。データの通信手段としてはWiFi、LoRa、携帯回線など、様々な方式を試験的に導入してきましたが、コストと汎用性から現在は携帯回線を採用しています。ウクライナで発生した公共データの損失は、携帯電話回線の混乱が大きな要因であるため、現在は我々のシステムの生存率およびデータの取得を最大化することに注力しています。

いつもながら、多くのボランティアの方々や専門家の方々の支えがあってこそ我々はこのような活動を続けることができています。福島とウクライナには多くの共通点があり、ウクライナの方の多くは、チェルノブイリのグループと長期にわたって協力してきました。現地の人々は彼らが直接見聞きしている現状を訴えています。我々は彼らの安全を非常に心配しており、これらの情報を公開し、発信していくことにより少しでも支援できることを願っています。

何百万人もの人々が生存を懸けて必死になっているこのような戦時下が、公共の放射線モニタリングシステムの脆弱性について議論するのに適切であるのかという疑問はあるかもしれません。残念ながら喫緊の戦況により核の使用の可能性が否定できなくなってきているため、放射線量のモニタリングデータが、現在進行中の情報戦の一部になってしまっているという状況なのです。ロシアによるウクライナの原子力施設に対する躊躇ない攻撃は、大規模な放射線放出の恐怖を世界に広めました。ロシアはこの「恐怖」そのものを武器として展開しており、我々は信頼できる情報をリアルタイムで必要とするすべての人々に届けることがこの状況下における唯一の対抗策だと考えます。

現在ウクライナの人々は、世界が信頼できる情報を入手し、それに基づいて行動できるよう、情報のオンライン共有を維持するために奮闘しています。幸いなことに、いくつかの原子力施設が攻撃されたにもかかわらず、これまでのところ大規模な放射能放出は回避されています。 我々はオープンデータを武器に、真実によって勝利すべき情報戦の中にいるのです。

— SAFECAST チーム…

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福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

2021424

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー

翻訳:長岡英美, 宮下(オースターマン) 絵夢フェリチタス, 為本 晃弘 


以下内容の主要部分はJapan Timesの署名入り記事に掲載されました。英語による注釈付きの記事は2021年5月6日Safecast Blogで公開されました:  

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

 



政策の分析

413日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。58

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10

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Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表

In Air Quality, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, 測定 by Pieter

Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表
– これまでで最もシンプルな空気質モニター
セーフキャストが10周年記念イベントのライブストリーミングで
Airnoteデバイスを福島に設置

マサチューセッツ州ボストン & 東京 – 2021年3月9日 –
オープンな環境データの世界的リーダーであるセーフキャストと、IoTクラウドセルラーソリューションのリーディングカンパニーであるBlues Wirelessは、
本日、これまでで最もシンプルで費用対効果の高い空気質デバイスであるAirnoteを発表しました。Airnoteは、複雑さと使用の障壁を取り除くことで、市場に出回っている他の製品に比べて約半分のコストで、空気質センサーの大量導入を簡素化します。これにより、個人、企業、自治体は正確な粒子状物質データを収集し、より健康的な環境のためのより良い意思決定を行うことができます。

“10年前の福島の危機を契機に世界中から多くの有能な人材が集まり、共通の目的を果たすこととなりました。”
非営利団体Safecast、Blues Wireless、そして最終的にAirnoteデバイスは、すべてこのコラボレーションの結果として生まれました。

これまでのところ、空気の質、水質、放射線などの環境面では、高額な機器の費用面や、デバイスを配置するための慎重な設置、信頼性の高い屋外ネットワーク接続といった課題がありました。Airnoteは、日当たりの良い窓の外側に簡単に取り付けることができる、完全に統合されたゼロセットアップの太陽光発電装置です。Airnoteは、130カ国以上のセルラーネットワークを使用して、定期的に空気質データを自動的にアップロードします。Airnoteには、Bluesのノートカード通信モジュールが搭載されており、プリペイド/プリアクティベートデータプランが含まれています。
Airnoteは、ディスプレイに情報を表示したり、ユーザーがQRコードをスキャンしてオンラインでチャートやグラフを表示したりすることができます。
PM1、PM2.5、PM10の粒子状物質の温度、湿度、気圧、密度を測定できます。

Airnote_Rear

The Airnote rear features a display showing the air quality, viewable from the inside

Airnoteデバイスがアップロードしたデータは、はじめからパブリックドメインに指定されており、全ての人に利益をもたらします。BlueのリアルタイムデータルータであるNotehubやセーフキャストのデータベースや地図を介して、データは世界中で分析、教育、さらには商業利用のために利用できます。
データはデフォルトでは匿名ですが、デバイスの所有者はオプションでデバイスを主張し、データのアップロードのためにクレジットされることができます。

“福島は紛れもなく災害でしたが、このイベントは私たちの環境の将来と安全性をより良く計画する機会を与えてくれました“
と、Safecastの共同創設者であり日本のディレクターでもあるピーテル・フランケン氏は述べています。
“私たちがAirnoteから受け取るグローバルデータは、市民主導のオープンデータのペースを加速させ、より健康的な地球環境に向けて私たちを前進させると同時に、将来の危機へのより迅速で効率的な対応を可能にしてくれます。…

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SAFECASTの福島第一原発訪問

In ニュース, マップ, 放射線, 測定, 移動測定報告 by sean

ショーン・ボナー

過去7年間にどれだけ福島第一原発の原子炉建屋の画像を見てきたでしょうか、それは100枚、いえ1000枚にも及ぶでしょう。これまでに写真、イラスト、地図、図面、そしてありとあらゆる角度と視点から詳細をとらえた動画も見てきましたが、実際に実物を目の前にした時、これまでと全く異なった畏怖の念を持ちました。

これこそがセーフキャストにとってのグランドゼロであり、そこにある建物、そして2011年3月に起こった出来事が私の、私たち全員の人生を永遠に変えたものでした。

東京電力がセーフキャストの存在意義の対局となる組織と考える方がいるとすれば、この12月の寒い午後、どうして私を含むセーフキャストの主要メンバーがここに立つことができたでしょうか。ここまでの道のりは決して簡単なものではありませんでした。

 

福島第一原発 原子炉建屋 2号機、3号機、4号機

私たちのリードエンジニアであるジョー・モロス(愛称:ジャム)が、メディアが提供する情報の正否を判断するためのテクニカルスペシャリストとして、これまで度々、メディアクルーとして同行をしてくれたため、過去にも何度かbガイギー(bGeigie:セーフキャストオリジナルの移動型放射線計測器)を福島第一原発内に持ち込んだことはあります。これまで福島第一原発での調査を隠してきたわけではなく、セーフキャストの地図を見ていただければ、数値は確認していただけます。しかし、セーフキャストとしても、特別な形での発表はしてきませんでした。

東京電力は、今、難局に立たされています。自分たちが悪の根源のように見られていることを知っていると同時に、インターネット上では、発電所の従業員の死体が隠されて死体保管所に積み上げられているといったような噂に溢れていることも知っています。虚偽の報告などせずとも、既にかなり難しい立ち位置にいます。

東京電力は巨大エネルギー企業であり、環境的略奪行為を経てなお、状況改善のための自らの努力によって、信頼を取り戻す期待は捨てていないようです。その努力の一例が、第一原発をより多くの人に対して公開する取り組みです。過去1年間に、1万人以上が第一原発を訪問し、2020年東京オリンピックまでには年間2万人の訪問を可能にすることを目指しています。

セーフキャストのメンバーが福島第一原発を訪問した際に計測した放射線の数値。セーフキャストの地図に掲載されている。http://safecast.org/tilemap/

セーフキャストの最優先の使命は、特に環境に影響のある政府や民間産業の活動に関する透明性と公開性の確保です。私たちは誰とでも対話をする用意があり、私たちの観念主義的でないスタンスが、より多くの人・組織と関わることを可能にしています。

この夏、私たちのヘッド・リサーチャーであるアズビー・ブラウンが、東京電力の代表者数名と共にウィーンでIAEA (国際原子力機関)の会議に参加しました。東京電力のプレゼンテーションはお世辞にも素晴らしいものとは言えなかったそうです。アズビーは夕食の際、率直な感想を彼らに伝えました。すると「どうしたら良いプレゼンテーションができるだろうか?」と彼らから尋ねられたそうです。「とにかく、もっと透明性をもつことだ」とアズビーは答えました。彼らは、本当にオープンであることが何を意味するかというセーフキャストの考え、そして東京電力がその基準に届くまでにどれだけの長い道のりがあるか、というアズビーの説明に長時間耳を傾けたそうです。

ここで鍵となるのは、東京電力が、自分たちがオープンであると考え続けており、たとえ2011年以後、同社の公開性が大幅に向上されていたとしても、一般市民が期待をするレベルにははるかに届かず、セーフキャストのような他の情報源から得られる情報より、その公開性の程度が低かったということなのです。

多くの例において、歴史的に透明性の確保に抵抗を続けてきた組織は、結局のところ、情報の扉を開け放ったところで大きな影響はない、ということに気付くのです。東京電力は、バスに乗ったセーフキャストの一行を第一原発に招待してくれ、私たちがセーフキャストの公開データセットと地図に測定結果をアップロードすることを承知の上でbガイギーを持ち込むことを奨励し、一部始終を収めるためのカメラの持ち込みも許可してくれました。

公正な立場で第一原発内の放射線検査結果を公開する独立した第三者機関としてセーフキャストを招待することにより、公開性を確保する機会を得るという決断がされたのです。これは彼らにとって初めてのことでした。しかし私たちも素人ではありません。これが彼らのPRになることも理解しています。それでもなお、私たちは、災害のあのグラウンドゼロにおいて、独立した放射線測定を行うというポジティブな側面を認識した、大変重要な、転機となる瞬間であったと考えています。

撮影した写真の一部(撮影:撮影者未記載のものは筆者、ショーン・ボナーによるもの)

 

視察ツアー開始前、案内者が全行程を紹介。

通常、ほとんどの訪問者が視察中にバスを離れることを許可されないが、私たちはバスを出て歩き回り空気中の放射線測定をすることを許可された。そのため、追加の安全服の着用が義務付けられた。写真は安全服を着こむジョーとピーター。

案内者は、写真だけではわからない多くのことを説明してくれた。

第一原発バスツアー中の私たち。全ての表面がビニールで覆われている。

視察では原子炉建屋の様子がよく確認できた。

福島第一原発原子炉建屋1号機

原子炉建屋1号機前のbガイギー

私たちのbガイギー(右上)と、東京電力による放射線測定数値

集合写真。bガイギ―は10機持ち込んだ。(写真:セーフキャスト)

タンクと袋に入れられ、廃棄を待つ汚染水と汚染土壌

東京電力は、放射線モニターをいたるところに設置し、現状の数値を表示している。今後、これらの数値を入手し、また一部についてはセーフキャストのセンサーとの同時設置をしたいと考えている。

残りの写真については、整理でき次第、近日中に投稿する予定です。そして、また近いうちに再訪問をすべく計画中です。直近の目標は、第一原発内に東京電力のセンサーのチェック機能を果たす独立したセンサーを設置する場所を確保することです。より詳細な情報が得られ次第ご報告します。幸運を祈ってください。

私たちのほとんどの活動はボランティアによって支えられており、サーバーを稼働させ続け、センサーを設置し、セーフキャストの日々の運営を行うコストは決して安くありません。定期的(毎月)な寄付、ワンタイム寄付、またはPatreonを通じての寄付をいただけると、より活発な活動が可能となり、心から感謝いたします。

翻訳:岩本愛

 …

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セーフキャストとシャトルワース財団

In センサーネットワーク, ニュース, 主要記事, 測定 by sean

[:ja]ご存知の方もいるとは思いますが、南アフリカを拠点とするシャトルワース財団 がセーフキャストを支援してくれていて、私たちの4周年イベントの開催も可能にしてくれました。シャトルワースの特別研究員の一人として(ショーン・ボナーはシャトルワース財団の一員である)、セーフキャストと同じように透明性を重んじ、世界を変える可能性を秘めたプロジェクトに取り組んでいる世界各地の素晴らしい人々と出会い、一緒に働いていることを幸せに感じています。
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bGeigie Nanoの使用説明-YouTube動画

In Hardware, 放射線, 測定 by kiki

セーフキャストが開発した組立式放射線計測機器 bGeigie Nano(ビーガイギーナノ) の使い方が簡単にわかるよう、ビデオで説明しました。
bGeigie Nano 基本説明
計測の仕方
充電の方法
付属品を使っての計測

 …

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Safecast OS X アプリ提供開始

In ニュース, マップ, 主要記事, 測定 by sean

Mac OS Xユーザお待ちかねの、PCアプリリリースです。App Storeにてダウロードできます。SafecasterのNick Dolezalが心を込めて開発した公式Safecastアプリがをもたらす豊富なデータセット(2100万以上のデータポイント!)あなたのMacへ放射線測定機能を、そしてSafecastデータの強力かつ迅速な方法を提供します。

Safecastのフルデータセットに加えて、以下を含むさまざまなソースからのデータを閲覧することができます。

•The US Department of Energy / NNSA

(アメリカ合衆国エネルギー省/ 国家核安全保障局)

•USGS and Canadian Geological Survey

(アメリカ地質調査所 および カナダ地質調査所)

•US EPA

(アメリカ環境保護庁)

これらのデータは、福島原発事故後の福島を中心とした広範囲にわたる国内測定結果と、北米大陸のほぼすべてにわたる空間線量データやそれ以外の世界中のデータも含まれています。専用データベースには、日本ではセシウム同位体分布、米国では、天然に存在するウラン濃度分布が含まれます。

視覚化ツールを使用することにより、地図の背景や色を変更でき、複数の測定値をコントラストをつけてみることができます。ビュー(表示)をカスタマイズすることが可能で、あなたの周りで自然放射線や人工由来の放射線がどこでどれくらいの数値なのかを可視化することができるようになっています。

その他の機能:

• クエリレチクルツール:測定値の正確な数値を表示します。

• カスタムレイヤー:個別の層を組み合わせてることにより、カスタム比較を作成します。

• リアルタイムIDW補間:GIS補間スクリプトで時間(または日)を費やすことなく、測定していない地域で短時間に予測値を視覚化します。

• 高パフォーマンス:超高速のSIMDベクトル化、マルチスレッドのコードは、ほぼ瞬時にデータをレンダリングします。

• オフライン機能:データを100%オフラインで使用できます。 (注:これはベースマップには適用されません)…

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SAFECASTの福島第一原発訪問

In ニュース, マップ, 放射線, 測定, 移動測定報告 by sean

ショーン・ボナー

過去7年間にどれだけ福島第一原発の原子炉建屋の画像を見てきたでしょうか、それは100枚、いえ1000枚にも及ぶでしょう。これまでに写真、イラスト、地図、図面、そしてありとあらゆる角度と視点から詳細をとらえた動画も見てきましたが、実際に実物を目の前にした時、これまでと全く異なった畏怖の念を持ちました。

これこそがセーフキャストにとってのグランドゼロであり、そこにある建物、そして2011年3月に起こった出来事が私の、私たち全員の人生を永遠に変えたものでした。

東京電力がセーフキャストの存在意義の対局となる組織と考える方がいるとすれば、この12月の寒い午後、どうして私を含むセーフキャストの主要メンバーがここに立つことができたでしょうか。ここまでの道のりは決して簡単なものではありませんでした。

 

福島第一原発 原子炉建屋 2号機、3号機、4号機

私たちのリードエンジニアであるジョー・モロス(愛称:ジャム)が、メディアが提供する情報の正否を判断するためのテクニカルスペシャリストとして、これまで度々、メディアクルーとして同行をしてくれたため、過去にも何度かbガイギー(bGeigie:セーフキャストオリジナルの移動型放射線計測器)を福島第一原発内に持ち込んだことはあります。これまで福島第一原発での調査を隠してきたわけではなく、セーフキャストの地図を見ていただければ、数値は確認していただけます。しかし、セーフキャストとしても、特別な形での発表はしてきませんでした。

東京電力は、今、難局に立たされています。自分たちが悪の根源のように見られていることを知っていると同時に、インターネット上では、発電所の従業員の死体が隠されて死体保管所に積み上げられているといったような噂に溢れていることも知っています。虚偽の報告などせずとも、既にかなり難しい立ち位置にいます。

東京電力は巨大エネルギー企業であり、環境的略奪行為を経てなお、状況改善のための自らの努力によって、信頼を取り戻す期待は捨てていないようです。その努力の一例が、第一原発をより多くの人に対して公開する取り組みです。過去1年間に、1万人以上が第一原発を訪問し、2020年東京オリンピックまでには年間2万人の訪問を可能にすることを目指しています。

セーフキャストのメンバーが福島第一原発を訪問した際に計測した放射線の数値。セーフキャストの地図に掲載されている。http://safecast.org/tilemap/

セーフキャストの最優先の使命は、特に環境に影響のある政府や民間産業の活動に関する透明性と公開性の確保です。私たちは誰とでも対話をする用意があり、私たちの観念主義的でないスタンスが、より多くの人・組織と関わることを可能にしています。

この夏、私たちのヘッド・リサーチャーであるアズビー・ブラウンが、東京電力の代表者数名と共にウィーンでIAEA (国際原子力機関)の会議に参加しました。東京電力のプレゼンテーションはお世辞にも素晴らしいものとは言えなかったそうです。アズビーは夕食の際、率直な感想を彼らに伝えました。すると「どうしたら良いプレゼンテーションができるだろうか?」と彼らから尋ねられたそうです。「とにかく、もっと透明性をもつことだ」とアズビーは答えました。彼らは、本当にオープンであることが何を意味するかというセーフキャストの考え、そして東京電力がその基準に届くまでにどれだけの長い道のりがあるか、というアズビーの説明に長時間耳を傾けたそうです。

ここで鍵となるのは、東京電力が、自分たちがオープンであると考え続けており、たとえ2011年以後、同社の公開性が大幅に向上されていたとしても、一般市民が期待をするレベルにははるかに届かず、セーフキャストのような他の情報源から得られる情報より、その公開性の程度が低かったということなのです。

多くの例において、歴史的に透明性の確保に抵抗を続けてきた組織は、結局のところ、情報の扉を開け放ったところで大きな影響はない、ということに気付くのです。東京電力は、バスに乗ったセーフキャストの一行を第一原発に招待してくれ、私たちがセーフキャストの公開データセットと地図に測定結果をアップロードすることを承知の上でbガイギーを持ち込むことを奨励し、一部始終を収めるためのカメラの持ち込みも許可してくれました。

公正な立場で第一原発内の放射線検査結果を公開する独立した第三者機関としてセーフキャストを招待することにより、公開性を確保する機会を得るという決断がされたのです。これは彼らにとって初めてのことでした。しかし私たちも素人ではありません。これが彼らのPRになることも理解しています。それでもなお、私たちは、災害のあのグラウンドゼロにおいて、独立した放射線測定を行うというポジティブな側面を認識した、大変重要な、転機となる瞬間であったと考えています。

撮影した写真の一部(撮影:撮影者未記載のものは筆者、ショーン・ボナーによるもの)

 

視察ツアー開始前、案内者が全行程を紹介。

通常、ほとんどの訪問者が視察中にバスを離れることを許可されないが、私たちはバスを出て歩き回り空気中の放射線測定をすることを許可された。そのため、追加の安全服の着用が義務付けられた。写真は安全服を着こむジョーとピーター。

案内者は、写真だけではわからない多くのことを説明してくれた。

第一原発バスツアー中の私たち。全ての表面がビニールで覆われている。

視察では原子炉建屋の様子がよく確認できた。

福島第一原発原子炉建屋1号機

原子炉建屋1号機前のbガイギー

私たちのbガイギー(右上)と、東京電力による放射線測定数値

集合写真。bガイギ―は10機持ち込んだ。(写真:セーフキャスト)

タンクと袋に入れられ、廃棄を待つ汚染水と汚染土壌

東京電力は、放射線モニターをいたるところに設置し、現状の数値を表示している。今後、これらの数値を入手し、また一部についてはセーフキャストのセンサーとの同時設置をしたいと考えている。

残りの写真については、整理でき次第、近日中に投稿する予定です。そして、また近いうちに再訪問をすべく計画中です。直近の目標は、第一原発内に東京電力のセンサーのチェック機能を果たす独立したセンサーを設置する場所を確保することです。より詳細な情報が得られ次第ご報告します。幸運を祈ってください。

私たちのほとんどの活動はボランティアによって支えられており、サーバーを稼働させ続け、センサーを設置し、セーフキャストの日々の運営を行うコストは決して安くありません。定期的(毎月)な寄付、ワンタイム寄付、またはPatreonを通じての寄付をいただけると、より活発な活動が可能となり、心から感謝いたします。

翻訳:岩本愛

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放射性下降物の減衰を測定

In センサーネットワーク, 主要記事, 測定, 移動測定報告 by levi

セーフキャストプロジェクトの素晴らしい利用法の一つは、前例のない規模で環境データを収集し分析できることです。セーフキャストでは、2年間にわたって日本における放射線データを収集してきました。今こそ日本の異なる地域横断での放射線変化を振り返ることができます。

Radioactivity in Inzai, Japan

Radioactivity in Inzai, Japan. 18 months worth of data.

Safecast data from Iitate, Japan.

Radioactivity in Iitate, Japan. 24 months worth of data.

2つの街での計測

福島第一原発の事故が日本全国で放射線について共通の認識をするようにいたった間、私達は国内の広い範囲にわたって十分な計測を続けてきました。国内のほとんどの場所は、311以前と背景の放射線量があまり変わっていません。(一分間に約30~40カウント)。 この事の一例として印西市があります。印西市は東京と成田空港の間に位置し、メルトダウン地点から193km南西の場所に位置します。最初のグラフはバックグラウンドレベルがわずかに通常考えられるよりも高いことを示していますが、放射線の観点では、2011年の半ばから2012年の終わりまであまり変化はありません。

次の研究対象の街は、福島第一原発から北西に約38kmのところに位置する飯舘市です。かなりの被ばくと顕著な減衰曲線を示しています。減衰曲線で注目に値する点は、半減期が指数関数的減衰関数に適合して妥当な精度で推定できていることです。この方法により私たちは表面放射能の減衰半減期が2011年半ばに始めた2年間からわずかに1年であることを推定することができました。これは2つの主要な放射性同位元素であるCs134とCS137の減衰半減期が、それぞれ2年と30年なので、注目に値するのです。このことは、追加のメカニズムが飯館村には作用していて、放射性物質が表面から離れていることを示しています。たとえば、侵食や新しい表土の堆積といったものにより表面の測定可能な放射線減衰を加速させているのです。

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bGeigie Nano Kit(bガイギー・ナノ・キット)発売開始

In Hardware, センサーネットワーク, 主要記事, 放射線, 移動測定報告 by Pieter


Safecast(セーフキャスト)が常に直面していた問題は、デバイスに限りがあるため、計測値の収集に制限があることでした。bガイギーのデザインは素晴らしいのですが、1つにかかるコストが1000ドルもする上、作るのに相当の時間も必要です。(1つのデバイスを作るのに丸々1週間はかかる。)そのため、限られた台数しか使えないという状況が続いていました。また、今や私達の周囲には、bガイギーを使いたいという人は数多くいて、その数は実際の台数をずっと上回っていました。
この問題を解決するために、私達はbガイギー・ナノを作り、さらにbガイギー・ナノ・キットを開発しました。ご想像の通り、ナノとは小さいバージョンで、持ち運びが便利にな上、従来のbガイギー以上の機能を搭載しています。
多くのSafecastのチームメンバーもナノを持ち、持ち運んでいます。コンパクトサイズなので、移動の負担にもなりません。

さらに重要なのは、ナノが自分で組み立てられるキットだということです。
もしはんだ付けの方法を知っていれば、ナノ・キットを一晩で作り(はんだ付けは10分で習えます。)、翌日からセーフキャスティング(Safecastの造語で、放射線計測をし、データをアップロードすること)することもできます。bガイギー・ナノ・キットを使って個々のポイントの計測もできますし、車に搭載して運転しながらジオタグ付きの放射線データを収集し、セーフキャストサイト内にあるアップロードページからデータアップすることもできます。使用法は通常のbガイギーと全く同じです。
ハードウェアもソフトウェアもデザインは通常のセーフキャストの方針通り、オープンソースですので、皆さんが自分で部品を買って作ることもできます。
しかし、今回、皆さんが自分で簡単に組み立てられるよう、キットとしてインターナショナル・メドコム社と共同で開発しました。bガイギー・ナノ・キットは1台450ドル(日本販売価格未設定で発売。)で、先着順で販売となります。
ご希望の方は、フォームにご記入ください。

他の写真や技術詳細はジャンプ後

[写真は Pieter Franken 撮影]

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南相馬市へ放射線データを提供することになりました

In Events, ニュース, 放射線, 測定, 移動測定報告 by Pieter

2月21日に南相馬市の市民生活部環境衛生課を訪問しました。

南相馬市は最近メディアに登場することも多く、放射線測定の要望も高い原発に近い市町村の1つです。市民レベルでも放射線の状況を知りたいとの要求は高いと思われます。

今回はSAFECASTの活動に協力いただける団体から提供を受けた

bGeigieの測定データをWeb上に公開した上でデータを利用いただけるように協力することを申し出て快諾されました。南相馬市のWebページからSAFECASTのページをリンクいただくことになりました。

3月から数週間にわたり、SAFECASTのボランティアでその団体をサポートしながら南相馬市のほぼ全域についてデータを順次公開していきます。

会談の終了後、関係者で記念撮影をさせていただきました。

前列は南相馬市の松本課長中央と課のメンバーの皆様です。後列は訪問したSAFECASTメンバー左側からyukaさん、Robさん、渡邉さん一番右は今回のサポートを担当していただける鷲山さん.

南相馬市市役所で放射線モニターの前にて。今回のアレンジをしていただいた郡山の渡邉さん(右)と西川(筆者)

Reported by Eiji Nishikawa…

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福島第一原発付近でのセーフキャスティング

In マップ, 測定, 移動測定報告 by sean

セーフキャストでは、今月初めの避難指示区域内で初の測定結果から、必ずしも原発に近いほど測定値が高いわけではないことが分かったとお知らせしました。

この点についてさらに検証するため、セーフキャストのボランティアである杉山明さんと児玉龍彦さんがbGeigieで測定を行いました。福島第一原発の正門付近を含む立ち入り禁止区域での測定をすることが出来ました。

この測定マップからいくつかの事実がわかります。まず第一に、最大値として12,000CPM近い測定値が観測されていることです。

次に、レベルの変化を見ると、原発より数キロ離れた場所から、さらに数キロ離れただけで100CPMに減少しているということです。

わずか数分間、車で移動しただけで11,900CPMもの低下が起こるということは、非常に注目すべきことです。

またこの地図では、測定値の目盛りや色付けの方法に限界があることも示しており、早急に何らかの対応をする予定です。…

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富士山からのセーフキャスト

In 主要記事, 移動測定報告, 論説 by the_STIG

8月25日から28日まで、富士山周辺へ車で家族旅行へ出かけて来ました。泊まりは富士山の周りの富士五湖や箱根の近くのペンションです。
東京の世田谷区下北沢の自宅から出発する際に、セーフキャストのbGeigieを装備していきました。bGeigieには、MedComのInspector(ガイガーカウンター)、GPS、データを記録するSDカードなどが内蔵されています。
つまり、このbGeigieでは、別途PCを用意する必要はなく、ほとんどの作業は自動で行われれるのです。(ただし、データを記録したSDカード内のファイルをセーフキャストにメールで送ることは別ですが・・・)

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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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戦争と断片的なデータ

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

昨年のちょうどこの頃、Safecast設立10周年を記念して、福島の現状を伝えるべく生放送で16時間に及ぶ世界配信を行いました。大地震、津波そして福島第一原発事故という2011年3月の多重災害からも10年の節目でした。それからたった一年、これほど状況が変わるとは誰にも予想できなかったことでしょう。

福島において原発事故後の緊急事態であるという感覚は数年前に無くなり、代わりにこの大規模災害の長期的な環境および社会影響に対する理解が深まりました。言わば緊急事態に対する応急処置から、Safecastおよび社会全体の姿勢も長期的な視点へと移行していたのです。しかしロシアによる一方的なウクライナ侵攻により、情報の収集、信頼度の検証、再発信という、原発事故後のような「迅速な対応」が必要な態勢に引き戻されてしまいました。

壊滅的な戦争により、再びこの様な対応が必要になってしまったことは大変残念です。現時点で既に原子力施設の安全性や核の保安を脅かす事象が数件が起きており、世界的に注目を集めています。チェルノブイリが占領されたときに放射線量の増加はあったのか、電力供給が止まってしまったら放射線量が増加するのか、原発がミサイルなどによって攻撃を受けたらどうなってしまうのか、など多くの不安や疑問が呈されました。

福島原発事故後に示されたように、信頼できる情報源から一貫したデータを自由に入手できることは、人々の無力感を和らげ、多少なりとも安心感につながります。Safecastは設立当初より、人々に信頼され活用できるデータを提供するためには、特定の政府や企業に影響を受けていない独立した情報源であること、誰もが活用できるオープンソースであること、また全ての人に行きわたるよう情報の一点集中を避けることを重視してきました(「DeDa」参照)。この原則は、現在のような危機的な状況下で特に重要だと考えます。

現在もSafecastではTwitterやブログを通して、現状の分析を逐次発信しています。我々のこの活動は、一般に公開されている情報を活用し、最前線で何が起こっているかを明らかにしようとする多くの人々の活動と重なります。放射線分場におけるモニタリングネットワークおよび情報発信の経験を生かして貢献をしてきましたが、残念ながら我々でも断片的な情報しか得られていないのが現状です。

2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所および立ち入り禁止区域を占拠したとの情報を受け、Safecastでは直ちに入手可能な放射線量に関するデータの収集を開始しました。我々のデータベースの大部分はボランティアの方々がbGeigieを使って自ら測定したものです。そのため、特定の時点でのデータはあっても、現場からリアルタイムで放射線量の変化を感知できる定点センサーはありません。

予想通りウクライナの公式放射線量データは、インターネットで情報を公開し続けることが困難な状況に陥っていますが、その中でも得られた情報はあります。例えば、欧州委員会共同研究センター(JRC)の放射能環境モニタリング(REM)グループのホームページには、ウクライナ水文気象センターからの測定値が掲載されており、ウクライナの非営利団体SaveEcoBotでは、多くの政府システムから入手可能なデータを集約し、発信しています。

しかしながらロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナにおける多くの有用なモニタリングネットワークは断続的で不安定な状態に陥っています。また時間が経つにつれ、ウクライナ政府の公式ホームページの全ての放射線量データもアクセス不能になってしまいました。さらにはロシアによるサイバー攻撃(DDOSなど)、電力網破壊によるサーバーの停電、電波塔の破壊による通信回線の切断なども報告されています。

ウクライナ当局は、猛烈な攻撃を受けながらも、懸命に情報提供活動を行っています。ウクライナのエネルギー省は、安全確保のためにシステムをオフラインにするという苦渋の決断を迫られ、現在も続行中です。戦争によって国民への公的な情報供給の手段は阻まれ、現在は政府が収集した情報を、NPO法人SaveEcoBotが提供しています。これは歴史的な出来事であり、SaveEcoBotは非常に重要な役割を果たしています。

当然ながら、ウクライナにおけるモニタリングおよび情報公開システムは戦争を想定していなかったため、ロシアの攻撃は直接公式情報の消失を引き起こしています。しかしながら今回の経験が、モニタリングシステムの過度な一極集中化や、チョークポイントおよび単一障害点など、緊急時に簡単に不能化されてしまうリスクを避けた、より強固なシステム設計に活かされることを願っています。政府などが人為的なミス、あるいは故意に公共なモニタリングデータへのアクセスを遮断することは、あってはならない事態です。特に現在のウクライナのように国民がこのような情報を必要としている状態においては、武力行使が行われる戦争下においても耐久可能な強靭なシステムが必要です。

Safecastのシステムは初めから冗長性およびオープンデータであることを重視して設計されています。我々のデータベースは全て特別な許可なしにダウンロードが可能です。サーバーの損失やインターネットアクセスの拒否が発生した場合でも迅速にデータを再構築できるよう、世界中に複数のコピーを保存することを可能にしています。放射線量のリアルタイムモニタリングデータは2つのデータベースに保存され、スタンバイ状態のクラウドサーバーも必要に応じて数分で立ち上げられる状態になっています。またSafecast内部でも、数年分のデータを保存するためのキャパシティーが確保されています。データの通信手段としてはWiFi、LoRa、携帯回線など、様々な方式を試験的に導入してきましたが、コストと汎用性から現在は携帯回線を採用しています。ウクライナで発生した公共データの損失は、携帯電話回線の混乱が大きな要因であるため、現在は我々のシステムの生存率およびデータの取得を最大化することに注力しています。

いつもながら、多くのボランティアの方々や専門家の方々の支えがあってこそ我々はこのような活動を続けることができています。福島とウクライナには多くの共通点があり、ウクライナの方の多くは、チェルノブイリのグループと長期にわたって協力してきました。現地の人々は彼らが直接見聞きしている現状を訴えています。我々は彼らの安全を非常に心配しており、これらの情報を公開し、発信していくことにより少しでも支援できることを願っています。

何百万人もの人々が生存を懸けて必死になっているこのような戦時下が、公共の放射線モニタリングシステムの脆弱性について議論するのに適切であるのかという疑問はあるかもしれません。残念ながら喫緊の戦況により核の使用の可能性が否定できなくなってきているため、放射線量のモニタリングデータが、現在進行中の情報戦の一部になってしまっているという状況なのです。ロシアによるウクライナの原子力施設に対する躊躇ない攻撃は、大規模な放射線放出の恐怖を世界に広めました。ロシアはこの「恐怖」そのものを武器として展開しており、我々は信頼できる情報をリアルタイムで必要とするすべての人々に届けることがこの状況下における唯一の対抗策だと考えます。

現在ウクライナの人々は、世界が信頼できる情報を入手し、それに基づいて行動できるよう、情報のオンライン共有を維持するために奮闘しています。幸いなことに、いくつかの原子力施設が攻撃されたにもかかわらず、これまでのところ大規模な放射能放出は回避されています。 我々はオープンデータを武器に、真実によって勝利すべき情報戦の中にいるのです。

— SAFECAST チーム…

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福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

2021424

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー

翻訳:長岡英美, 宮下(オースターマン) 絵夢フェリチタス, 為本 晃弘 


以下内容の主要部分はJapan Timesの署名入り記事に掲載されました。英語による注釈付きの記事は2021年5月6日Safecast Blogで公開されました:  

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

 



政策の分析

413日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。77

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10

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日本の緊急事態に関する解説

In COVID19, ニュース, マップ, 論説 by exporter

2020年4月8日、アズビー・ブラウンによって公開

昨日(4月7日)、ようやく安部総理大臣によって、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡を対象とした緊急事態宣言が出され、日本のCOVID-19パンデミックへの対応は新たな局面に入りました。多くの人が指摘するように、この新たな「封鎖(ロックダウン)」は諸外国で実施されているような法的強制力を持ったものではなく、自宅待機の要請に従わなくても罰則が課せられることはありません。

現在の日本の法制度では、そのような強制的な指令を施行することはほぼ不可能なのです(第二次世界大戦前、および戦時中に国全体が非常に無意味な自己犠牲を強いられたからなのですが)。その代わり、政府は来月に向けて、これまでの要請よりも広範囲にわたる社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンス)を自主的にとるよう求めています。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、診療所や病院、ホテル、製造業などの「必要不可欠」と見なされるサービス業は、引き続き営業するように求めていますが、バーやクラブ、ライブハウス、カラオケなど大人数が集まる場所は避け、外食しなければならない場合は大人数での利用を避けるよう、引き続き呼び掛けています。奇しくも、公衆浴場は営業を継続するよう求められているようです。都内の映画館、博物館、図書館、デパートなどの多くの公共施設は、先に受けたソーシャル・ディスタンスの要請に応じて、すでに一時的に閉鎖されており、今後も営業停止を継続するよう求められるかもしれません。そうは言っても、誰かに何かを強制することはできず、また、要請を拒否することもできるのが現状です。現在のところ、この命令が適用されるのは国内43都道府県のうち7県(正確には1都1府5県)にのみ限定されています。憂慮すべきことに、緊急規制を回避するために東京から多くの人が圏外に脱出したとの報告も多数受けています。中国やイタリアなどでは、部分的な閉鎖を行ったものの旅行者を効率的に監視しなかったため、感染者たちが国内外に新たな集団感染の種を拡散させる結果となり、事態を計り知れないほど悪化させました。

新たな非常事態宣言に含まれる7つの都道府県。出典:NHK

安倍総理大臣は、「私たち全員が努力して人と人との接触を70%、できれば80%減らすようにすれば、感染症の増加は2週間後にピークを迎え、その後減少に転じるだろう」と言及しています。この発言内容に関しては不確かな部分も多く、特に自主的に要請に応えるというのは、今までのところ日本でもちらほら見受けられました。数週間前に、もっと強力で拘束力のある措置が講じられ、より強制力のあるメッセージを訴えてくれていたならば、と私たちは思うのです。

Agence France Presseの編集者リチャード・カーター氏がツイートしました:

一方、2011年3月の大震災後、日本人は必要なことと判断すれば、不便な緊急措置であっても容易に協力してきました。 2011年には、店舗の照明を半減させたり、駅やビルの外壁のイルミネーション広告を消し、エスカレーターを停止させたり、家庭での消費電力を抑えたりなど、全国的に広がった自主的な省エネ(節電)のおかげで、全体の電力消費量は約2割減少しました。自主規制(自粛)は、お祝いごと、その他の大規模な懇親会、一般的な贅沢などを自粛するよう求められ、人々はそれに従ったのです。

これはある意味、緩やかな犠牲が求められたという最近の前例と言えるでしょう。数日前、TBSが発表した世論調査の結果によると、約80%が緊急宣言の発令に賛成していました。しかし、実際に人々は従うのでしょうか? 一週間後には分かることですが、政府は足固めに必要な準備を整えていないようですし、国民とのコミュニケーションも図れていないように思います。これには追加として、無料託児所の提供や自宅待機しなければならない従業員とその雇用者への助成金、オンラインでの書類提出を困難にする官僚的規制の緩和などが含まれます。多くの企業、大学などでは、今でも大半の従業員は、紙の書類に印鑑を押すために現場に立ち会う必要があります。現在、健康への危機が懸念される中、このような行為は野蛮とも言えます。諸々の関連支援策について話し合いが持たれ、約束されていますが、どれも実施されるに至っていません。先週の日曜日、シンガポール政府は、感染症の「第二の波」(現在、香港でも経験していること)に対応するため、非常に強力な拘束力のある対策を発表しまました。これらのガイドラインは、メディアだけでなく、政府による広報チャネルを使って明確に伝えられており、ベストプラクティスと捉えるべきでしょう。

4月6日現在の日本の症例データ。出典:NHK

3月下旬以降、東京を筆頭に日本全体でCOVID-19の感染者数は明らかに増加しています。これは、3週間前にさかのぼりますが、中途半端な形でソーシャル・ディスタンスを公式に要請したにもかかわらず、お花見で大勢の人が公園に集まり、お互いに感染したのが原因ではないかと大かた意見が一致しています。重要な点が不明確なままで、中央政府によるコミュニケーションへの取り組みは依然としてお粗末ですが、日本でのデータの公開状況はここ数週間で全体的に改善しています。東京都の多言語版COVID-19 ウェブサイトは、政府が提供してきたものよりもはるかに明確で有益な公式情報源となっています。今日現在(4月8日)、東京都の陽性者数は1196人で、2週間前から急激な増加傾向にあり、先週末には1日あたり100人を超える新規感染が発生しました。その後2日間でやや減少し、今日は144例に達しています。現在、全国で累積陽性者数が4480人を超えました。4月6日の感染者数は241人でしたが、4月3日以降は、連日300人を超える感染者数が報告されています。非常によく運営されている独立型のバイリンガルサイト、Japan COVID-19 Coronavirus Tracker,(日本新型コロナウィルス・トラッカー)は、都道府県ごとの詳細なオープンデータベースを提供しており、日本での検査済み症例数データに関して信頼できる情報源になっています。

出典:Japan COVID-19 Coronavirus Tracker (日本新型コロナウィルス・ストラッカー)

以前の記事で述べたように、多くの人々は日本での大規模な検査が行われていないために、COVID-19の実際の症例数や感染率が著しく過小評価されていると結論づけています。昨日のワシントン・ポスト紙に引用されていた、ロンドンのキングスカレッジ・ポピュレーションヘルス研究所所長の渋谷健司教授によると、「遅すぎる・・・。東京はすでに爆発的な感染者数増加の段階に入っており、医療崩壊を止めるためには一日も早く首都封鎖を実施しなければならない」と語っています。渋谷教授は、この1週間での急激な感染者数の増加は、日本の限られた検査戦略が失敗していたことを示す明らかな証拠であり、検査と発見の規模が大きくなればなるほど、そのことがより明白になるとの見解を示しています。

日本での検査数は増加していますが、発生曲線の平坦化に成功したどの国よりもはるかに遅れをとっています。数日前、首相は検査能力を1日あたり7,500人から2万人に拡大すると発表しましたが、いつ頃から実施可能となるかに関しては言及しませんでした。4月7日現在、日本では合計5万5311人が検査を受けていますが、ほぼ毎日検査が実施されていることを考慮すると、現在公表されている1日7,500人の検査能力の半分以下しかないことになります。これとは対照的に、ドイツでは週に50万人が検査を受けています。

日本では他の国と同様、肺炎のような呼吸不全による死亡者全員に対し検査を実施していないため、COVID-19の症例数が過少報告されている可能性があります。逆に、すべての死亡症例がCOVID-19に起因するという分類法は、世界的に広く行われているのですが、これはCOVID-19に起因する死の過大評価につながりうるとして批判されています。しかし、多くの国では、通常の季節性インフルエンザに罹患している間に死亡した人々は、健康上、他に問題があったとしても、インフルエンザによる死亡として記録されていることが指摘されています。特に問題視されるような慣行ではないのかもしれませんが、感染症例の重症度を追跡する上で、この意味合いを念頭に入れておく必要があります。全体として、パンデミックの規模や拡大を過小評価することの方が、過大評価することよりも公衆衛生上のリスクははるかに大きいことは明らかです。

日本のCOVID-19症例の重症度内訳。出典:NHK

日本政府や医療専門家の間では、現在のペースで重症患者数が増え続けると、集中治療室の病床が十分に確保できなくなるのではないかという深刻な懸念が上がってきています。人口10万人当たりのICU病床数の割合は、他の多くの先進国に比べてはるかに低いからです(日本は10万人当たり5床、イタリアは12床、ドイツは約30床)。この単独サイトでは、各都道府県のICUベッドの空き状況の現状を示しています。東京都を含む、少なくとも5つの都道府県では、COVID-19の症例数はすでにICU病床数を上回っています。 NHKによると、COVID-19感染者のうち、ICUでの治療が必要なほど重症化した症例は4%程度にとどまっていますが、重症化した症例がICUのベッド数を上回る可能性が出てきているとのことです。

これを受けて、政府は軽症患者が利用できるよう、東京に約10,000室、関西に3,000室、東京オリンピック村に800室を提供するとの協力をホテルから得たと報告されています。昨日から東京都中央区のホテルに患者の移動が始まりました。 3月24日にお伝えしたように、それまでCOVID-19の数値が比較的低く抑えられていたのは、マスク着用や手洗いなど日本人の様々な生活習慣のおかげだと多くの人が信じていますが、単純に運も一役買っていたのではないかと感じます。では、今後どうなるのでしょうか? 日本は引き続き幸運に恵まれ続けるかもしれません。現在の陽性患者の急増は異常だと分かってくるかもしれないですし、新たな自主的措置は、感染者急増の芽を摘み取るのに十分なほど受け入れられ、広がっていくかもしれません。しかしながら、現在の緊急事態宣言発表に影響を与えたとされる最近の調査では、無視してはならない悲惨な最悪のシナリオも想定されています。自主的措置を要請しても、自宅からの外出を60%以上を削減できなかった場合、ICUのキャパシティ不足によって、4月26日頃に医療システムが崩壊し、50万人が死亡すると著者は結論付けていました。 その一方で、3月2日以降の学校閉鎖により、子どもの接触頻度が40%減少し、2月27日以降の自主的なイベント中止により、大人の接触頻度が50%減少したことを示す未発表の研究に言及しており、外出を60%を減少させることができると期待しています。

あらゆる研究に言えることですが、全てが正確ということはありえませんし、不確実性が内在する中国のデータを基にしているので、このモデルはあくまでも基本的な想定をしているだけに過ぎません。首相は来月から1ヶ月間、ソーシャル・ディスタンスを7、8割減らすように国民に要請しています。しかし、企業が経済的苦境に陥ることなく、従業員が自宅に留まることを認める明確な補償がなければ、これらの目標を達成するのは難しいと言えるでしょう。世界の他の地域で実施されているように、日本でも数週間前から、もっと強制力、拘束力のある措置を講じて、より強力なメッセージを投げかけていたならば、もう少し効果をあげることができたのではないでしょうか。今のところ、私たちは運に頼り過ぎてしまっているようです。…

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Safecast Code

In FAQ, ニュース, 論説 by sean

We’ve been thinking about what describes the Safecast project as a whole, and came up with a list of 10 things that we try to incorporate into all of our efforts. This is something like our code of conduct, what …

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「安全ですか?」は、そんなに難しい質問でしょうか?

In FAQ, 主要記事, 放射線, 論説 by kalin

Top or bottom? Safe or not?

私達のもとにはinfo@safecast.org宛やセーフキャストグループを通じてつながりを持った人達からたくさんの質問が寄せられます。みんな放射線のあらゆる面について理解しようとしています。
そして、もちろん、多くの人が似たような質問をしますが、疑いなく最も頻繁に聞かれる質問は「~~は大丈夫?(安全ですか?)」 といった類のものです。 信じられないかもしれませんが、私たちの放射線FAQのページには答えが準備されているにもかかわらず みんな質問し続けるのです。

最近、九州で数ヶ月過ごす予定だった人から当地での汚染について質問がありました。彼は放射線レベルについての情報を得、現在の放射線レベルは3.11以前よりも高いと最終的に結論づけました。
彼はそれがセシウムやストロンチウム汚染によるものなのか質問しました。実際、彼は別々に収集された異なるデータセットを比較していました。 私は彼にユーザが矛盾のない測定データを全国にわたって自由にダウンロードでき、時間の経過に伴い変化を比較することができる DPNSNNEを教えてあげました。そのデータによると九州における空間線量レベルは(原発)事故の前後で全く同じであることが示されています。 フォーラムやメーリングリストでしばしばあることですが、いったん質問に対する返答があると、議論は(自然に発生している)ラドンと(人口の)セシウムやストロンチウムの危険性の違いにシフトします。

そして、すぐにラドン、セシウム137、ストロンチウム90の半減期(一定量の放射性同位体が半減するのにかかる時間)についてのデータが“証拠”として俎上に載せられ、半減期と生物学的な半減期の違いについて議論がされ、その結果、質問は以下のことに形を変えてしまうのです。

  • セシウム134/137は生物学的半減期(70日で体内から半分が消滅する)、ストロンチウムは18年間であるのに対してラドンの半減期はたったの4日であるため、ラドンは他とくらべて危険が少ないのではないか?

私はこれについてよく考えてみましたが、次のような例を上げることで説明できるのではと考えました。その例とはこのブログポストにまとめられた例のことです。(ここで私のとりとめのない書き物を外に出すように促してくれたアズビー、ジョー(JAM)、そしてみんなに感謝したいと思います。)…

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グローバルサーベイ株式会社による観測、100万地点を突破!!

In ニュース, 主要記事, 論説 by azby

Safecasters Joe Moross (far left) and Pieter Franken (far right), flanking GLC’s bGeigie team.

グローバル・サーベイ株式会社(略称「GLC」)は、2005年より日本の道路の地図化をおこなってきました。彼らのデータは相当数の特別なアプリケーションと同様、多くのカーナビゲーションシステムにも使われています。例えば、2009年より、同社は電磁波の強さを測定し、地図化することで、顧客がラジオ放送用アンテナやワイヤレスLANの最適配置できるように、また、携帯電話事業者の位置の正確性を改善してきました。つまり、GLC社にはすでに不可視の環境データの収集経験があったというわけです。

GLC website

きっかけは、幸運にも、2011年8月にプロジェクトへの物質的な援助もしてくださった慶応大学の村井純教授チームメンバーの古谷知之教授が、セーフキャストにGLCに紹介してくれたことです。その年の9月初めまでにGLCはbGeigieを道路地図化に着手し、すぐにもう2台を依頼されました。1年間の間、3台のbGeigieで得た結果は非常に素晴らしく、私たちは2012年12月にもう10台を提供しました。GLCは最近、100万地点の測定記録を突破し、セーフキャストの中でもダントツに豊富なデータ収集ボランティアとなりました。私たちは彼らが放射線データを収集にかけてくれた時間と努力にとても感謝しています。

このプロジェクトのGLCの窓口である、中島栄則さんは「3/11以降、日本のとても多くの人が窮地に陥り、私たちの会社でも、何かをしたいと思っていました。私たちがセーフキャストのbGeigieシステムのことを聞いた時、非常に感銘を受けました。誰でも車に搭載するだけで使えるのです。私たちは支援できたことをとても嬉しく思っています。」

bGeigieを搭載したGLCの計測車両

GLCによれば、日本の主要道路全てを年に3回計測しようとしており、残りの道路についても少なくとも年に1回は計測しようとしているとのことです。所有車14台のうち、7~8台は常に走行しています。多くのbGeigie装備の車が絶えず縦横無尽に走っていれば、GLCはじきにセーフキャストに対して、月間50万ポイントの測定値を提供できると想定しています。
そうなったら、私たちは皆「ヤッター!!!」と言います。…

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スタンフォード大学での Medicine X カンファレンスにてSafecastのプレゼンテーションを実施

In Events, 論説 by sean


本日9/30、スタンフォード大学で開催された Medicine Xカンファレンス(9/28-30開催)にて、Safecastについてプレゼンテーションを行いました。スライドを取り違えたり、言いたかったことを全て伝えられたかはわかりませんが、講演後に数名の方からプレゼンテーション資料をオンラインで見れないかとの要望をいただいたので、参考資料として投稿したいと思いました。

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