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新しいデバイス「ソーラーキャストナノ」を紹介します

In Hardware, センサーネットワーク, ニュース by sean

By ショーン・ボナー

セーフキャストは2017年の初め、新しいソーラーキャスト(Solarcast)デバイスの製作をすすめることお知らせしました。

そもそもソーラーキャストは大気汚染を測定できる機能を搭載した最初の、そして3G接続およびソーラー電源という機能も持ったデバイスでしたが、その機能の特性から外部の電源や、マニュアルでのデータ取得が不要になり、いわゆる“置いたらほったらかし”での測定が可能となりました。

このことはセーフキャストにとって非常に重要な進歩であり、今後このような方法が主要な測定方法になっていくことは間違いありません。その後アメリカワシントン州ハンフォードの核施設トンネル崩壊の事故が発生し、まさに開発したデバイスがこのような状況に最適であることを強く認識させられました。

しかし、ソーラーキャストにはその利点はありながらも、そのコストおよび制作に時間がかかってしまうという欠点がありました。それに加え、大気汚染センサーの搭載は私たちが時間をかけて取り組んできたものではありましたが、実はハンフォードのような緊急性の高い放射線測定を必要とする状況のモニタリングでは、それほど必要性は高くないこともわかりました。

その反面、セーフキャストが広く利用しているデバイスであるbGeigie Nano(ビーガイギーナノ)は上記のような迅速に行う測定にすぐれていますが、実際にデバイスを持ち歩き、データをアップデートする必要があり、コンパクトかつ自動で動作するデバイスがやはり必要となっていました。

そこで、私たちはそのようなデバイスをデザインし、なんとか2017年末にソーラーキャストナノの完成を発表することができたわけです。このことを大変うれしく思っています。

ソーラーキャストナノを誇らしげに見せるショーン(写真:ピーター・フランケン)

 

ソーラーキャストナノ(Solarcast Nano)は、絶え間ないデバイスのニーズについての議論や技術的な可能性を検討し続けた結果生まれたものです。前モデルのソーラーキャストはレイ・オジー氏がデザイン面をリードし、ソフトウェアの作成を行いました。

ソーラーキャストの大気汚染センサーパーツは多くの電力を必要とするので、それらを取り外し、ビーガイギーに似たより小さいケースに小さいサイズのソーラーパネルを設置しすることで、必要な機能を搭載したソーラーキャストナノを作ることができるようになりました。

トイビルダーラボのジョセフ・チューを3Dモデリングおよびボードデザインのために迎え、ペリカンケース1040(ビーガイギーナノに試用された1010の二倍のサイズでありながら、ソーラーキャストよりかなり小型化されたサイズ)にすべてが収まるようその製作を依頼し、2017年12月19日、ついにソーラーキャストナノが完成したのです。

ソーラーキャストナノのディスプレイはビーガイギーのデザインを引き継いだものとなっています。

ソーラーキャストナノはビーガイギーのDNAを受け継いでいることがうかがえる

スペック詳細は下記の通りです。

  • “置いたらほったらかし”の測定 : ソーラーキャストナノはコンパクト、ワイヤレス、持ち歩き可能で自動で動作するため、3Gさえあれば世界中どこでも簡単に設置可能
  • 自動設定: 自動でセーフキャストのクラウドサービスに接続
  • 低消費電力:ソーラーバッテリーを使い、長期にわたって自動運転ができるよう最適化済み
  • 放射線測定機能: 二つの放射線センサーによってアイソトープを検知・測定
  • 耐性: 長期にわたった屋外での使用にも耐えられるデザイン
  • 小型でカバンにも収まるサイズ
  • 通信: 3G セルラー
  • 位置測定:加速度計つきGPS搭載、これによって測定器が動いた場合位置を再計測可能
  • 電源: ソーラーパネル、バッテリー、内蔵タイプのマイクロUSBチャージャー、リモート・クラウドでの電圧・電流の計測可能
  • バッテリーは着脱可能、18650サイズを標準としているためシッピングが可能
  • 内蔵型SWD“ドラッグ&ドロップ”ファームウェア、その他のソフトウェアは動作に不要
  • 無線アップデート
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ソーラーキャストナノ、福島第一原子力発電所近くに設置完了

In ニュース by azby

1月半ば、セーフキャストはリアルタイムでの放射線測定が可能な新しいデバイス、ソーラーキャストナノを福島県大熊町の立入禁止区域内に取り付けました。この場所は事故のあった原子炉から2kmしか離れていない場所にあります。

公式に発表されているデータの精度を検証するため、もともとセーフキャストは15台の固定式放射線センサーを福島に設置していましたが、今回新しいデバイスを取り付けたことで、この1台が福島第一原子力発電所にもっとも近い距離に設置されたリアルタイムセンサーとなりました。以前こちらのブログでもご紹介した通り、ソーラーキャストナノは太陽電池で動作し、自動でかつリアルタイムにモニタリングできるデバイスで、私たちが開発済みだったポイントキャストとソーラーキャストのデザインを引き継いだデバイスです。12月東京のセーフキャストオフィスで、10台のソーラーキャストナノのプロトタイプをテストセッションで製作し、その後動作テストを行ってきました。そんな折、私たちは福島第一原子力発電所ツアーに参加し、この大熊町の敷地も併せて訪れた際、すぐにこの場所にソーラーキャスト設置の許可を申請しました。ありがたいことに福島県の関係者の皆様の協力により、この情報透明性が非常に重要であると即時に理解していただき、設置実現に尽力していただきました。

大熊町に設置されたソーラーキャストナノはフェンスに針金で固定する形で設置されています。

セーフキャストのタイルマップのスクリーンショット:今回設置したソーラーキャストナノの設置場所は赤字の矢印の位置

ソーラキャストナノを設置した場所は、事故前は「特別養護老人ホームサンライトおおくま」として知られていた場所で、海抜100mの丘の上にあり、福島第一原子力発電所を見下ろすことができます。「サンライトおおくま」は福島第一の3キロ圏内にあるため、2011年3月11日午後9時に避難指示が出されました。幸いに避難活動は順調に行われ、ほかの病院や老人ホーム同様、入居者の中で亡くなった方はいらっしゃいませんでした。現在「サンライトおおくま」を見ると、運営されていた当時はすばらしい施設だったことがわかり、とても残念な気持ちになります。いまだにストレッチャーが施設の入り口をふさぐように放置され、ロビーも人々があわただしく立ち去らざるを得なかっただろう当時の瞬間を6年半たった今も残しています。大熊町のこの丘周辺の地域は、除染のための中期的保管場所として指定されました。私たちが「セーフキャストレポート」に記載したとおり、現在数年のプランの遅れはありながらも、ここは最終的には埋立地および放射性廃棄物関連する施設を見渡す場所に位置することになります。

 

「サンライトおおくま」自体も環境省の管理地域であるため、今回のプランは30年間有効でその後は破棄されることになっています。

「サンライトおおくま」は立入禁止区域内にあり、おそらく長期にわたって避難者が戻ることはないと思われ、周辺地域は30年間放射性廃棄物の保管地域として使われることになっています。

「サンライトおおくま」の入り口の風景は、2011年3月11日の夜のあわただしい避難の様子をうかがい知ることができます。

ソーラーキャストシステムはレイ・オジー氏のアイデアをベースにして、電源の供給やインターネット接続のできない場所での使用を想定しており、設置後は自動で動作すます。福島の現場にいられる時間は非常に限られていた上に、その場所へのアクセスには事前の許可が必要なので、ジョーとアズビーは設置用デバイスを何種類か持ち込み、突然の変更に備えました。いくつか設置の方法と場所の可能性を話し合った後、最終的にとてもシンプルな方法を選びました。ジョーは太陽光を最大限活用できるように角度を調整して、アルミのワイヤーでソーラーキャストナノをフェンスに設置しました。設置自体には20分を要し、動作の確認を待っている間、ジョーはドローンを現場で飛ばして、下の写真を撮影しました。

大熊町のソーラーキャストナノ設置現場近くからドローンで撮影した福島第一発電所の様子

福島に設置される前にこのデバイスは数週間ほど横浜に設定されていましたが、下記のデータグラフで直近30日のデータを見ると、横浜と大熊町の放射線レベルの違いが0.1 毎時シーベルトと5.5毎時シーベルトではっきりと見て取れます。

大熊町に設置されたソーラーキャストナノの時系列データのスクリーンショット。設置場所である大熊町の放射線レベルが 横浜の約10倍であることがわかります。

このデバイスはプロトタイプであることから、私たちはこの設置もテストの一環と考えていますが、ソーラーキャストナノは現在問題なく動作しています。しかし、私たちはさらなる福島第一原子力発電所近くへのデバイス設置を近い将来実現できることを楽しみにしています。

 

 

翻訳:Shoko Hagiya…