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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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戦争と断片的なデータ

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

昨年のちょうどこの頃、Safecast設立10周年を記念して、福島の現状を伝えるべく生放送で16時間に及ぶ世界配信を行いました。大地震、津波そして福島第一原発事故という2011年3月の多重災害からも10年の節目でした。それからたった一年、これほど状況が変わるとは誰にも予想できなかったことでしょう。

福島において原発事故後の緊急事態であるという感覚は数年前に無くなり、代わりにこの大規模災害の長期的な環境および社会影響に対する理解が深まりました。言わば緊急事態に対する応急処置から、Safecastおよび社会全体の姿勢も長期的な視点へと移行していたのです。しかしロシアによる一方的なウクライナ侵攻により、情報の収集、信頼度の検証、再発信という、原発事故後のような「迅速な対応」が必要な態勢に引き戻されてしまいました。

壊滅的な戦争により、再びこの様な対応が必要になってしまったことは大変残念です。現時点で既に原子力施設の安全性や核の保安を脅かす事象が数件が起きており、世界的に注目を集めています。チェルノブイリが占領されたときに放射線量の増加はあったのか、電力供給が止まってしまったら放射線量が増加するのか、原発がミサイルなどによって攻撃を受けたらどうなってしまうのか、など多くの不安や疑問が呈されました。

福島原発事故後に示されたように、信頼できる情報源から一貫したデータを自由に入手できることは、人々の無力感を和らげ、多少なりとも安心感につながります。Safecastは設立当初より、人々に信頼され活用できるデータを提供するためには、特定の政府や企業に影響を受けていない独立した情報源であること、誰もが活用できるオープンソースであること、また全ての人に行きわたるよう情報の一点集中を避けることを重視してきました(「DeDa」参照)。この原則は、現在のような危機的な状況下で特に重要だと考えます。

現在もSafecastではTwitterやブログを通して、現状の分析を逐次発信しています。我々のこの活動は、一般に公開されている情報を活用し、最前線で何が起こっているかを明らかにしようとする多くの人々の活動と重なります。放射線分場におけるモニタリングネットワークおよび情報発信の経験を生かして貢献をしてきましたが、残念ながら我々でも断片的な情報しか得られていないのが現状です。

2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所および立ち入り禁止区域を占拠したとの情報を受け、Safecastでは直ちに入手可能な放射線量に関するデータの収集を開始しました。我々のデータベースの大部分はボランティアの方々がbGeigieを使って自ら測定したものです。そのため、特定の時点でのデータはあっても、現場からリアルタイムで放射線量の変化を感知できる定点センサーはありません。

予想通りウクライナの公式放射線量データは、インターネットで情報を公開し続けることが困難な状況に陥っていますが、その中でも得られた情報はあります。例えば、欧州委員会共同研究センター(JRC)の放射能環境モニタリング(REM)グループのホームページには、ウクライナ水文気象センターからの測定値が掲載されており、ウクライナの非営利団体SaveEcoBotでは、多くの政府システムから入手可能なデータを集約し、発信しています。

しかしながらロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナにおける多くの有用なモニタリングネットワークは断続的で不安定な状態に陥っています。また時間が経つにつれ、ウクライナ政府の公式ホームページの全ての放射線量データもアクセス不能になってしまいました。さらにはロシアによるサイバー攻撃(DDOSなど)、電力網破壊によるサーバーの停電、電波塔の破壊による通信回線の切断なども報告されています。

ウクライナ当局は、猛烈な攻撃を受けながらも、懸命に情報提供活動を行っています。ウクライナのエネルギー省は、安全確保のためにシステムをオフラインにするという苦渋の決断を迫られ、現在も続行中です。戦争によって国民への公的な情報供給の手段は阻まれ、現在は政府が収集した情報を、NPO法人SaveEcoBotが提供しています。これは歴史的な出来事であり、SaveEcoBotは非常に重要な役割を果たしています。

当然ながら、ウクライナにおけるモニタリングおよび情報公開システムは戦争を想定していなかったため、ロシアの攻撃は直接公式情報の消失を引き起こしています。しかしながら今回の経験が、モニタリングシステムの過度な一極集中化や、チョークポイントおよび単一障害点など、緊急時に簡単に不能化されてしまうリスクを避けた、より強固なシステム設計に活かされることを願っています。政府などが人為的なミス、あるいは故意に公共なモニタリングデータへのアクセスを遮断することは、あってはならない事態です。特に現在のウクライナのように国民がこのような情報を必要としている状態においては、武力行使が行われる戦争下においても耐久可能な強靭なシステムが必要です。

Safecastのシステムは初めから冗長性およびオープンデータであることを重視して設計されています。我々のデータベースは全て特別な許可なしにダウンロードが可能です。サーバーの損失やインターネットアクセスの拒否が発生した場合でも迅速にデータを再構築できるよう、世界中に複数のコピーを保存することを可能にしています。放射線量のリアルタイムモニタリングデータは2つのデータベースに保存され、スタンバイ状態のクラウドサーバーも必要に応じて数分で立ち上げられる状態になっています。またSafecast内部でも、数年分のデータを保存するためのキャパシティーが確保されています。データの通信手段としてはWiFi、LoRa、携帯回線など、様々な方式を試験的に導入してきましたが、コストと汎用性から現在は携帯回線を採用しています。ウクライナで発生した公共データの損失は、携帯電話回線の混乱が大きな要因であるため、現在は我々のシステムの生存率およびデータの取得を最大化することに注力しています。

いつもながら、多くのボランティアの方々や専門家の方々の支えがあってこそ我々はこのような活動を続けることができています。福島とウクライナには多くの共通点があり、ウクライナの方の多くは、チェルノブイリのグループと長期にわたって協力してきました。現地の人々は彼らが直接見聞きしている現状を訴えています。我々は彼らの安全を非常に心配しており、これらの情報を公開し、発信していくことにより少しでも支援できることを願っています。

何百万人もの人々が生存を懸けて必死になっているこのような戦時下が、公共の放射線モニタリングシステムの脆弱性について議論するのに適切であるのかという疑問はあるかもしれません。残念ながら喫緊の戦況により核の使用の可能性が否定できなくなってきているため、放射線量のモニタリングデータが、現在進行中の情報戦の一部になってしまっているという状況なのです。ロシアによるウクライナの原子力施設に対する躊躇ない攻撃は、大規模な放射線放出の恐怖を世界に広めました。ロシアはこの「恐怖」そのものを武器として展開しており、我々は信頼できる情報をリアルタイムで必要とするすべての人々に届けることがこの状況下における唯一の対抗策だと考えます。

現在ウクライナの人々は、世界が信頼できる情報を入手し、それに基づいて行動できるよう、情報のオンライン共有を維持するために奮闘しています。幸いなことに、いくつかの原子力施設が攻撃されたにもかかわらず、これまでのところ大規模な放射能放出は回避されています。 我々はオープンデータを武器に、真実によって勝利すべき情報戦の中にいるのです。

— SAFECAST チーム…

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福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

2021424

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー

翻訳:長岡英美, 宮下(オースターマン) 絵夢フェリチタス, 為本 晃弘 


以下内容の主要部分はJapan Timesの署名入り記事に掲載されました。英語による注釈付きの記事は2021年5月6日Safecast Blogで公開されました:  

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

 



政策の分析

413日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。1

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10

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日本の緊急事態に関する解説

In COVID19, ニュース, マップ, 論説 by exporter

2020年4月8日、アズビー・ブラウンによって公開

昨日(4月7日)、ようやく安部総理大臣によって、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡を対象とした緊急事態宣言が出され、日本のCOVID-19パンデミックへの対応は新たな局面に入りました。多くの人が指摘するように、この新たな「封鎖(ロックダウン)」は諸外国で実施されているような法的強制力を持ったものではなく、自宅待機の要請に従わなくても罰則が課せられることはありません。

現在の日本の法制度では、そのような強制的な指令を施行することはほぼ不可能なのです(第二次世界大戦前、および戦時中に国全体が非常に無意味な自己犠牲を強いられたからなのですが)。その代わり、政府は来月に向けて、これまでの要請よりも広範囲にわたる社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンス)を自主的にとるよう求めています。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、診療所や病院、ホテル、製造業などの「必要不可欠」と見なされるサービス業は、引き続き営業するように求めていますが、バーやクラブ、ライブハウス、カラオケなど大人数が集まる場所は避け、外食しなければならない場合は大人数での利用を避けるよう、引き続き呼び掛けています。奇しくも、公衆浴場は営業を継続するよう求められているようです。都内の映画館、博物館、図書館、デパートなどの多くの公共施設は、先に受けたソーシャル・ディスタンスの要請に応じて、すでに一時的に閉鎖されており、今後も営業停止を継続するよう求められるかもしれません。そうは言っても、誰かに何かを強制することはできず、また、要請を拒否することもできるのが現状です。現在のところ、この命令が適用されるのは国内43都道府県のうち7県(正確には1都1府5県)にのみ限定されています。憂慮すべきことに、緊急規制を回避するために東京から多くの人が圏外に脱出したとの報告も多数受けています。中国やイタリアなどでは、部分的な閉鎖を行ったものの旅行者を効率的に監視しなかったため、感染者たちが国内外に新たな集団感染の種を拡散させる結果となり、事態を計り知れないほど悪化させました。

新たな非常事態宣言に含まれる7つの都道府県。出典:NHK

安倍総理大臣は、「私たち全員が努力して人と人との接触を70%、できれば80%減らすようにすれば、感染症の増加は2週間後にピークを迎え、その後減少に転じるだろう」と言及しています。この発言内容に関しては不確かな部分も多く、特に自主的に要請に応えるというのは、今までのところ日本でもちらほら見受けられました。数週間前に、もっと強力で拘束力のある措置が講じられ、より強制力のあるメッセージを訴えてくれていたならば、と私たちは思うのです。

Agence France Presseの編集者リチャード・カーター氏がツイートしました:

一方、2011年3月の大震災後、日本人は必要なことと判断すれば、不便な緊急措置であっても容易に協力してきました。 2011年には、店舗の照明を半減させたり、駅やビルの外壁のイルミネーション広告を消し、エスカレーターを停止させたり、家庭での消費電力を抑えたりなど、全国的に広がった自主的な省エネ(節電)のおかげで、全体の電力消費量は約2割減少しました。自主規制(自粛)は、お祝いごと、その他の大規模な懇親会、一般的な贅沢などを自粛するよう求められ、人々はそれに従ったのです。

これはある意味、緩やかな犠牲が求められたという最近の前例と言えるでしょう。数日前、TBSが発表した世論調査の結果によると、約80%が緊急宣言の発令に賛成していました。しかし、実際に人々は従うのでしょうか? 一週間後には分かることですが、政府は足固めに必要な準備を整えていないようですし、国民とのコミュニケーションも図れていないように思います。これには追加として、無料託児所の提供や自宅待機しなければならない従業員とその雇用者への助成金、オンラインでの書類提出を困難にする官僚的規制の緩和などが含まれます。多くの企業、大学などでは、今でも大半の従業員は、紙の書類に印鑑を押すために現場に立ち会う必要があります。現在、健康への危機が懸念される中、このような行為は野蛮とも言えます。諸々の関連支援策について話し合いが持たれ、約束されていますが、どれも実施されるに至っていません。先週の日曜日、シンガポール政府は、感染症の「第二の波」(現在、香港でも経験していること)に対応するため、非常に強力な拘束力のある対策を発表しまました。これらのガイドラインは、メディアだけでなく、政府による広報チャネルを使って明確に伝えられており、ベストプラクティスと捉えるべきでしょう。

4月6日現在の日本の症例データ。出典:NHK

3月下旬以降、東京を筆頭に日本全体でCOVID-19の感染者数は明らかに増加しています。これは、3週間前にさかのぼりますが、中途半端な形でソーシャル・ディスタンスを公式に要請したにもかかわらず、お花見で大勢の人が公園に集まり、お互いに感染したのが原因ではないかと大かた意見が一致しています。重要な点が不明確なままで、中央政府によるコミュニケーションへの取り組みは依然としてお粗末ですが、日本でのデータの公開状況はここ数週間で全体的に改善しています。東京都の多言語版COVID-19 ウェブサイトは、政府が提供してきたものよりもはるかに明確で有益な公式情報源となっています。今日現在(4月8日)、東京都の陽性者数は1196人で、2週間前から急激な増加傾向にあり、先週末には1日あたり100人を超える新規感染が発生しました。その後2日間でやや減少し、今日は144例に達しています。現在、全国で累積陽性者数が4480人を超えました。4月6日の感染者数は241人でしたが、4月3日以降は、連日300人を超える感染者数が報告されています。非常によく運営されている独立型のバイリンガルサイト、Japan COVID-19 Coronavirus Tracker,(日本新型コロナウィルス・トラッカー)は、都道府県ごとの詳細なオープンデータベースを提供しており、日本での検査済み症例数データに関して信頼できる情報源になっています。

出典:Japan COVID-19 Coronavirus Tracker (日本新型コロナウィルス・ストラッカー)

以前の記事で述べたように、多くの人々は日本での大規模な検査が行われていないために、COVID-19の実際の症例数や感染率が著しく過小評価されていると結論づけています。昨日のワシントン・ポスト紙に引用されていた、ロンドンのキングスカレッジ・ポピュレーションヘルス研究所所長の渋谷健司教授によると、「遅すぎる・・・。東京はすでに爆発的な感染者数増加の段階に入っており、医療崩壊を止めるためには一日も早く首都封鎖を実施しなければならない」と語っています。渋谷教授は、この1週間での急激な感染者数の増加は、日本の限られた検査戦略が失敗していたことを示す明らかな証拠であり、検査と発見の規模が大きくなればなるほど、そのことがより明白になるとの見解を示しています。

日本での検査数は増加していますが、発生曲線の平坦化に成功したどの国よりもはるかに遅れをとっています。数日前、首相は検査能力を1日あたり7,500人から2万人に拡大すると発表しましたが、いつ頃から実施可能となるかに関しては言及しませんでした。4月7日現在、日本では合計5万5311人が検査を受けていますが、ほぼ毎日検査が実施されていることを考慮すると、現在公表されている1日7,500人の検査能力の半分以下しかないことになります。これとは対照的に、ドイツでは週に50万人が検査を受けています。

日本では他の国と同様、肺炎のような呼吸不全による死亡者全員に対し検査を実施していないため、COVID-19の症例数が過少報告されている可能性があります。逆に、すべての死亡症例がCOVID-19に起因するという分類法は、世界的に広く行われているのですが、これはCOVID-19に起因する死の過大評価につながりうるとして批判されています。しかし、多くの国では、通常の季節性インフルエンザに罹患している間に死亡した人々は、健康上、他に問題があったとしても、インフルエンザによる死亡として記録されていることが指摘されています。特に問題視されるような慣行ではないのかもしれませんが、感染症例の重症度を追跡する上で、この意味合いを念頭に入れておく必要があります。全体として、パンデミックの規模や拡大を過小評価することの方が、過大評価することよりも公衆衛生上のリスクははるかに大きいことは明らかです。

日本のCOVID-19症例の重症度内訳。出典:NHK

日本政府や医療専門家の間では、現在のペースで重症患者数が増え続けると、集中治療室の病床が十分に確保できなくなるのではないかという深刻な懸念が上がってきています。人口10万人当たりのICU病床数の割合は、他の多くの先進国に比べてはるかに低いからです(日本は10万人当たり5床、イタリアは12床、ドイツは約30床)。この単独サイトでは、各都道府県のICUベッドの空き状況の現状を示しています。東京都を含む、少なくとも5つの都道府県では、COVID-19の症例数はすでにICU病床数を上回っています。 NHKによると、COVID-19感染者のうち、ICUでの治療が必要なほど重症化した症例は4%程度にとどまっていますが、重症化した症例がICUのベッド数を上回る可能性が出てきているとのことです。

これを受けて、政府は軽症患者が利用できるよう、東京に約10,000室、関西に3,000室、東京オリンピック村に800室を提供するとの協力をホテルから得たと報告されています。昨日から東京都中央区のホテルに患者の移動が始まりました。 3月24日にお伝えしたように、それまでCOVID-19の数値が比較的低く抑えられていたのは、マスク着用や手洗いなど日本人の様々な生活習慣のおかげだと多くの人が信じていますが、単純に運も一役買っていたのではないかと感じます。では、今後どうなるのでしょうか? 日本は引き続き幸運に恵まれ続けるかもしれません。現在の陽性患者の急増は異常だと分かってくるかもしれないですし、新たな自主的措置は、感染者急増の芽を摘み取るのに十分なほど受け入れられ、広がっていくかもしれません。しかしながら、現在の緊急事態宣言発表に影響を与えたとされる最近の調査では、無視してはならない悲惨な最悪のシナリオも想定されています。自主的措置を要請しても、自宅からの外出を60%以上を削減できなかった場合、ICUのキャパシティ不足によって、4月26日頃に医療システムが崩壊し、50万人が死亡すると著者は結論付けていました。 その一方で、3月2日以降の学校閉鎖により、子どもの接触頻度が40%減少し、2月27日以降の自主的なイベント中止により、大人の接触頻度が50%減少したことを示す未発表の研究に言及しており、外出を60%を減少させることができると期待しています。

あらゆる研究に言えることですが、全てが正確ということはありえませんし、不確実性が内在する中国のデータを基にしているので、このモデルはあくまでも基本的な想定をしているだけに過ぎません。首相は来月から1ヶ月間、ソーシャル・ディスタンスを7、8割減らすように国民に要請しています。しかし、企業が経済的苦境に陥ることなく、従業員が自宅に留まることを認める明確な補償がなければ、これらの目標を達成するのは難しいと言えるでしょう。世界の他の地域で実施されているように、日本でも数週間前から、もっと強制力、拘束力のある措置を講じて、より強力なメッセージを投げかけていたならば、もう少し効果をあげることができたのではないでしょうか。今のところ、私たちは運に頼り過ぎてしまっているようです。…

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Safecast Code

In FAQ, ニュース, 論説 by sean

We’ve been thinking about what describes the Safecast project as a whole, and came up with a list of 10 things that we try to incorporate into all of our efforts. This is something like our code of conduct, what …

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「安全ですか?」は、そんなに難しい質問でしょうか?

In FAQ, 主要記事, 放射線, 論説 by kalin

Top or bottom? Safe or not?

私達のもとにはinfo@safecast.org宛やセーフキャストグループを通じてつながりを持った人達からたくさんの質問が寄せられます。みんな放射線のあらゆる面について理解しようとしています。
そして、もちろん、多くの人が似たような質問をしますが、疑いなく最も頻繁に聞かれる質問は「~~は大丈夫?(安全ですか?)」 といった類のものです。 信じられないかもしれませんが、私たちの放射線FAQのページには答えが準備されているにもかかわらず みんな質問し続けるのです。

最近、九州で数ヶ月過ごす予定だった人から当地での汚染について質問がありました。彼は放射線レベルについての情報を得、現在の放射線レベルは3.11以前よりも高いと最終的に結論づけました。
彼はそれがセシウムやストロンチウム汚染によるものなのか質問しました。実際、彼は別々に収集された異なるデータセットを比較していました。 私は彼にユーザが矛盾のない測定データを全国にわたって自由にダウンロードでき、時間の経過に伴い変化を比較することができる DPNSNNEを教えてあげました。そのデータによると九州における空間線量レベルは(原発)事故の前後で全く同じであることが示されています。 フォーラムやメーリングリストでしばしばあることですが、いったん質問に対する返答があると、議論は(自然に発生している)ラドンと(人口の)セシウムやストロンチウムの危険性の違いにシフトします。

そして、すぐにラドン、セシウム137、ストロンチウム90の半減期(一定量の放射性同位体が半減するのにかかる時間)についてのデータが“証拠”として俎上に載せられ、半減期と生物学的な半減期の違いについて議論がされ、その結果、質問は以下のことに形を変えてしまうのです。

  • セシウム134/137は生物学的半減期(70日で体内から半分が消滅する)、ストロンチウムは18年間であるのに対してラドンの半減期はたったの4日であるため、ラドンは他とくらべて危険が少ないのではないか?

私はこれについてよく考えてみましたが、次のような例を上げることで説明できるのではと考えました。その例とはこのブログポストにまとめられた例のことです。(ここで私のとりとめのない書き物を外に出すように促してくれたアズビー、ジョー(JAM)、そしてみんなに感謝したいと思います。)…

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グローバルサーベイ株式会社による観測、100万地点を突破!!

In ニュース, 主要記事, 論説 by azby

Safecasters Joe Moross (far left) and Pieter Franken (far right), flanking GLC’s bGeigie team.

グローバル・サーベイ株式会社(略称「GLC」)は、2005年より日本の道路の地図化をおこなってきました。彼らのデータは相当数の特別なアプリケーションと同様、多くのカーナビゲーションシステムにも使われています。例えば、2009年より、同社は電磁波の強さを測定し、地図化することで、顧客がラジオ放送用アンテナやワイヤレスLANの最適配置できるように、また、携帯電話事業者の位置の正確性を改善してきました。つまり、GLC社にはすでに不可視の環境データの収集経験があったというわけです。

GLC website

きっかけは、幸運にも、2011年8月にプロジェクトへの物質的な援助もしてくださった慶応大学の村井純教授チームメンバーの古谷知之教授が、セーフキャストにGLCに紹介してくれたことです。その年の9月初めまでにGLCはbGeigieを道路地図化に着手し、すぐにもう2台を依頼されました。1年間の間、3台のbGeigieで得た結果は非常に素晴らしく、私たちは2012年12月にもう10台を提供しました。GLCは最近、100万地点の測定記録を突破し、セーフキャストの中でもダントツに豊富なデータ収集ボランティアとなりました。私たちは彼らが放射線データを収集にかけてくれた時間と努力にとても感謝しています。

このプロジェクトのGLCの窓口である、中島栄則さんは「3/11以降、日本のとても多くの人が窮地に陥り、私たちの会社でも、何かをしたいと思っていました。私たちがセーフキャストのbGeigieシステムのことを聞いた時、非常に感銘を受けました。誰でも車に搭載するだけで使えるのです。私たちは支援できたことをとても嬉しく思っています。」

bGeigieを搭載したGLCの計測車両

GLCによれば、日本の主要道路全てを年に3回計測しようとしており、残りの道路についても少なくとも年に1回は計測しようとしているとのことです。所有車14台のうち、7~8台は常に走行しています。多くのbGeigie装備の車が絶えず縦横無尽に走っていれば、GLCはじきにセーフキャストに対して、月間50万ポイントの測定値を提供できると想定しています。
そうなったら、私たちは皆「ヤッター!!!」と言います。…

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スタンフォード大学での Medicine X カンファレンスにてSafecastのプレゼンテーションを実施

In Events, 論説 by sean


本日9/30、スタンフォード大学で開催された Medicine Xカンファレンス(9/28-30開催)にて、Safecastについてプレゼンテーションを行いました。スライドを取り違えたり、言いたかったことを全て伝えられたかはわかりませんが、講演後に数名の方からプレゼンテーション資料をオンラインで見れないかとの要望をいただいたので、参考資料として投稿したいと思いました。