2020年4月28日、アズビー・ブラウンによって公開
以前の記事(こちらとこちら)で、COVID-19の検査に関して日本で実際に決められている方針を整理しようと試みました。私たちはデータに一貫性がなく他の公式データにも問題があり、実際に検査が行われた数と感染の可能性がある人数を一般の人がうまく把握できなくなっていることを指摘しました。このデータ問題について私たちが記事を公開してから4週間が経ちました。4週間前の当時は、20,340件の検査が日本で報告され、全国で1214名が陽性、そのうち東京都の陽性患者が171名でした。国内の新しい陽性患者数は1日100名以下でした。(この記事を書く)現在では、一番最近のデータによれば、150,692名の方が検査を行い、国内で13,448名の方が陽性、そのうち東京都だけで3,908名となっています。新規に陽性判定された人数は1日平均で現在約400名ですが、最高値は4月11日に記録され、700名の方が陽性判定されました。
これらの数値は、もちろん、2月から3月にかけての明らかな感染の増加を示しており、日本はすでにコロナウイルスを「克服」したと主張する声を抑えたに違いありません。当時、感染者の増加割合は大きく、医療機関も過剰負荷に対する混乱のサインを既に示していましたが、我が国では、指数関数的に患者数が増えるフェーズにはまだ到達していなかったように見えます。私達が何度も指摘しているように、日本では症状の発生している方々さえ検査を受けるのは非常に困難です。私たちはこの問題に皆さんが非常に感心を持たれていると気づいたので、自分達で感染に関する実態を報告できるオンラインマップを作成しました。検査が行われた人口比率(約0.008%)を調べた通り、少数の検査しか行われていないことを考えると、より大規模な感染拡大についてどれだけ早く知ることが出来るのでしょうか。私たちは3月にしたのと同じ質問をしなくてはいけません。意図的に検査を絞る現状の「クラスター対策」のアプローチで見落としている感染者はどれくらいいるのでしょうか。特に無症候または発症前(そして現状のガイドラインでは検査対象外とされる人)の方を中心に、もっと多くのCOVID-19陽性の人達がいるにも関わらず、彼らが特定されず速やかに隔離されず、ウイルスの感染拡大を抑えられない場合、どれだけ危険な状況になりそうでしょうか。
英国キングスカレッジのPopulation Health研究所長を務める渋谷健司教授(以下、渋谷氏)が先週、東京の外国人記者クラブ(FCCJ)向けにオンラインの記者発表を行ないましたが、公開データを踏まえて考えを述べ、気がかりな地域を明らかにしました。私達が先述した通り、渋谷氏は「クラスター対策」のアプローチのみに委ねることのリスクについて警鐘を鳴らしており、日本でさらに検査数が急増する危険があると警告しました。皆さんには、彼の記者発表ビデオをご覧いただきたいと思います。具体的には、多くの理由を元に、日本の実際の感染者数は、公的機関を介して発表されている現在の人数の少なくとも10倍はいるだろうと渋谷氏は試算しました。翌日、厚生労働省の主要メンバーの一人である北海道大学の西浦博教授(以下、西浦氏)は、東京で記者会見を行い、渋谷氏の試算と同じ見解を示し、実際は10倍以上かも知れないと付け加えました。同時に、西浦氏は、データは現在、全国の感染者は減少傾向を示していることを何度か繰り返し述べました。直近のグラフデータも同様の傾向を示しているようです。

22020年4月27日付の日本全国の感染者件数(参照:https://covid19japan.com/)

2020年4月27日付の東京都内のCOVID-19感染者データ
(参照:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/en/)
渋谷氏が彼の記者発表で指摘したように、日本政府の資料から報告された件数を見る際には注意しなければいけない点が沢山あります。いくつかの理由から、確認できるデータを元にしっかりとした疫学的な結論を導くことは難しいはずだと渋谷氏は考えています。COVID-19に感染してから、重症化し、日本の厳しいPCR検査の基準を満たすまでには約2週間かかることが非常に重要で、理解しなくてはいけません。私達が目にする一日の陽性患者数は、数週間の間にすでに存在していた感染者をデータを編集した日時に報告しているに過ぎません。これらの件数は、時差のある指標であり、2週間前の感染拡大のごく狭い一部を捉えたものです。渋谷氏によれば、仮に、特に発症前、無症候の感染者に対して、さらに広範囲に検査の実施を行えるなら、最新の感染拡大の全体像をより捉えることが出来るだろうとのことです。
もう1つ注意しなくてはいけない点としては、報告の遅れとデータの一貫性の無さから、民間の研究所で実施された検査結果が完全には公開されていないということです。例えば、東京都が提供する二か国語対応のwebサイトは、公に行われている取り組みの中でも良いものの1つですが、公的機関の報告は毎日更新しているのに対して、民間の研究所からのデータは毎週金曜日に週ごとのデータが更新されるだけになっています。その結果、サイトに公開されている感染者数が、毎週金曜日に不思議な増え方を見せています。似たような増え方が検査数の合計グラフにも影響しています。これに関する説明は東京都のwebサイトのどこにも明らかになっていません。
日本の検査システム、感染者報告システムのほとんどは自動化あるいは完全なオンライン化がなされていません。信じられないことですが、全てのデータはまだファックスで送られており、手入力で転記し、編集しなければなりません。このことが不要な遅延を招き、データ入力エラーの可能性を高めています。非効率なデータ編集プロセスや、実際にデータのカテゴリーが表しているものが元の印象に対して違うこと、そして、報告されている検査数が引き続き一致しないことを考えると、これらの数値のみに基づいて実際に何が起きているのか評価することは難しいのです。最も気がかりなことは、このデータがどれも一般利用が出来ないので、外部の研究者が独自に検証し、複製し、評価する方法が無いことです。渋谷氏は、国立感染症研究所(NIID)からCOVID-19に関するデータを取得し、分析しようと試みた経験について語りましたが、特に彼の立場と評判であれば、非常に簡潔なプロセスであったに違いありません。渋谷氏は特定の申請書類を記入する必要があり、申請プロセスは数ヶ月かかると言われたそうです。国立感染症研究所(NIID)が持っている背景データにアクセス出来ない限り、私たちは一般利用のデータからはほとんど何も述べることが出来ません。
(イタリア)ロンバルディア州からの大規模なイタリア人データサンプルに基づく最近の研究によれば、現地で見られたCOVID-19の感染の43%は無症候感染から由来するものでした。さらに、新規の感染のほとんどはロックダウンの前に発生し、同じ家庭内の無症候感染に由来していました。他の研究は、人口内に無症候感染者が優勢であることに関する似たような結論に至りました。最近の日本の感染者数のグラフは安心するようなカーブの描き方をしていますが、現在の国の疾病監視システムではまだ検出出来ていないCOVID-19の感染拡大のフェーズに日本が既に入ってしまっている可能性が強く残っています。無症候感染や発症前の件数が大半を占める中で、検査の基準からほぼ全て除外されているからです。COVID-19のスクリーニングを受けた呼吸器と関係ない理由で来院した67名の患者のうち4名(6%)が陽性であることが判明したという慶應大学病院の最近の報告はこの考えを裏付けています。渋谷氏やその他の関係者は、この慶應大学病院の件は大きいサンプルにも代表的なサンプルにもなり得ないが、有病率は非常に高く無視すべきではないと指摘しました。
既に知られている他国における無症候/症候ありの比率を元に、渋谷氏と西浦氏は二人とも、他国では20~50倍になっていると指摘した上で、実際の感染者数を少なく見積もっても日本で報告されている感染者数の10倍になると考えています。慶應大学病院での6%の有病率は過大評価だが、他のエビデンスから東京の人口の3~4%の感染率がもっともらしいと想定して、渋谷氏は「単純計算すればちょうど今何人感染しているか分かる」と述べています。1300万人を東京都の人口とした場合、3%は39万人です。ここでの述語は「もっともらしい」です。2週間前に報告された西浦教授によるモデリング結果では、厳しい対策を行わない場合、日本におけるCOVID-19の重症患者の人数は85万人、死者合計で40万人に上る可能性があると見積もっています。これら2つの見積もりは、アウトブレイクの可能性に関して一般的に認められていることです。自発的にソーシャルディスタンスを行ったり、これまで取られてきたその他の対策の効果は、相対的には不確定要素のままです。
しかし、大多数の死者はまだ明らかになっていないように見えます。検査の実施が足りないことで、関心を持っている多くの方が、単に肺炎と報告されている死が実はCOVID-19によるもので、その結果適切にカウントするのを「隠している」のではないかと疑っていると以前私達は指摘しました。沢山の疾患の種類、合併症、その他の関係要因から、インフルエンザの死亡率は通常の状況でさえ定量化することは難しいと渋谷氏は指摘します。様々な理由から、またそのどれも重複しないことから、伝染病による死はしばしば過小評価されています。インフルエンザの場合、全員に検査をすることは不可能なため、私達は代わりに死亡率の過剰分がどの程度か見積もるプロセスにしばしば頼らなくてはなりません。東京大学の研究者による最近の論文…