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bgeigies4ukraineが集めた30万以上のデータポイント !

In Air Quality, featured, Hardware, センサーネットワーク, ニュース, マップ, 主要記事, 放射線, 測定, 論説 by azby

パートナー機関であるチェルノブイリ放射線・生態系生物圏保護区のスタッフがチェルノブイリで使用しているbGeigie

 

#bgeigies4ukraineプロジェクトは、3ヶ月あまりの間に、ウクライナで新たに30万件以上の放射線データを蓄積しました。私たちは、この顕著な成果を誇りに思っています。データセット全体はこちらの地図で見ることができます。

Areas covered by the #bgeigies4ukraine dataset as of Sept. 17, 2022.

昨年7月にこのプロジェクト発表時に説明したように、Safecastは、20222月のロシアの無謀で残忍なウクライナ侵攻が始まった直後から、侵攻後の新しいオープンな放射線データセットを組み立てるために、現地ボランティアにbGeigiesを提供し、高いモチベーションの国際チームの結成を開始しました。プロジェクトメンバーは、5月からウクライナでbGeigiesを使って定期的かつ一貫してデータ収集を行っています。また、環境放射線の専門家からは、「赤い森」を含むチェルノブイリ排除地域(CEZ)内の膨大な量の新しいデータが提供されています。
また、いくつかの主要都市はすでに調査が完了しており、その他多くの重要な町や主要な連絡道路からの代表的なデータも得られています。世界的に懸念されているザポリジャー原子力発電所の北東約50kmにあるザポリジャー町のデータは得られていますが、発電所そのものに近いデータはまだ得られていません。また、東部や南部など、常に砲撃を受けている地域のデータもありません。ボランティアの安全を第一に考え、データ収集のために不必要な危険を冒すことは控えています。しかし、以前はアクセスできなかった地域が安全になり、地図上のウクライナの地理的範囲が徐々に広がっていくことが予想されます。

The #bgeigies4ukraine dataset coverage

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「信号機は放射性がないんだ!」―Safecastのフィールドトリップで東京インターナショナルプログレッシブスクールの生徒達が発見したクールなこと

In Events, ニュース by marc_prosser

2022年3月16日午後1時半~午後3時半 東京、渋谷のSafecastオフィスおよびFabCafe MTRLにて

写真提供: Kelsie Stewart

すべての人にオープンな環境データを

Safecastは環境に関するデータで人々の生活に寄与することを目的としたボランティア中心のグロバールな市民科学プロジェクトです。私たちは、より多くの利用可能なオープンデータを提供することは、すべての人にとって良いことだと信じています。私たちの活動は、データやデータ収集のノウハウを世界中の人々に提供することを目的としています。

― Safecastのウェブサイトより

Safecast は、有益でアクセスしやすい粒度の環境データを作成することを目的とした、グローバルなボランティア主導の非営利団体です。SafecastのデータはすべてCC0によってパブリックドメインとして無料で公開されています。

市民科学とは何か?オープン・ソース、あるいはオープン・データとは?コミュニティ主導の環境データ構築が私たちの未来にとって必要な理由は何か?―東京インターナショナルプログレッシブスクール(TIPS)の生徒たちがSafecastのフィールドトリップでこうした疑問の解明に取り組みました。

TIPSの生徒達によるSafecast x 市民科学 x 環境正義に関するブレインストーミング・セッション Photo credit: Kelsie Stewart

フィールドトリップは三部構成で、第二部と第三部で生徒たちは2つのグループに分けられました。第一部ではSafecastメンバーのAzby BrownとJoe Moross、Kelsie Stewartが全生徒を対象にブレインストーミング・セッションを行い市民科学と環境正義の公開性の重要性について掘り下げました。

Safecast x 市民科学 x 環境正義 ブレインストーミング・シェアリングセッション Photo credit: Kelsie Stewart

SafecastリードリサーチャーAzby BrownがSafecastを紹介している様子- “Yes, We’re

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戦争と断片的なデータ

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

昨年のちょうどこの頃、Safecast設立10周年を記念して、福島の現状を伝えるべく生放送で16時間に及ぶ世界配信を行いました。大地震、津波そして福島第一原発事故という2011年3月の多重災害からも10年の節目でした。それからたった一年、これほど状況が変わるとは誰にも予想できなかったことでしょう。

福島において原発事故後の緊急事態であるという感覚は数年前に無くなり、代わりにこの大規模災害の長期的な環境および社会影響に対する理解が深まりました。言わば緊急事態に対する応急処置から、Safecastおよび社会全体の姿勢も長期的な視点へと移行していたのです。しかしロシアによる一方的なウクライナ侵攻により、情報の収集、信頼度の検証、再発信という、原発事故後のような「迅速な対応」が必要な態勢に引き戻されてしまいました。

壊滅的な戦争により、再びこの様な対応が必要になってしまったことは大変残念です。現時点で既に原子力施設の安全性や核の保安を脅かす事象が数件が起きており、世界的に注目を集めています。チェルノブイリが占領されたときに放射線量の増加はあったのか、電力供給が止まってしまったら放射線量が増加するのか、原発がミサイルなどによって攻撃を受けたらどうなってしまうのか、など多くの不安や疑問が呈されました。

福島原発事故後に示されたように、信頼できる情報源から一貫したデータを自由に入手できることは、人々の無力感を和らげ、多少なりとも安心感につながります。Safecastは設立当初より、人々に信頼され活用できるデータを提供するためには、特定の政府や企業に影響を受けていない独立した情報源であること、誰もが活用できるオープンソースであること、また全ての人に行きわたるよう情報の一点集中を避けることを重視してきました(「DeDa」参照)。この原則は、現在のような危機的な状況下で特に重要だと考えます。

現在もSafecastではTwitterやブログを通して、現状の分析を逐次発信しています。我々のこの活動は、一般に公開されている情報を活用し、最前線で何が起こっているかを明らかにしようとする多くの人々の活動と重なります。放射線分場におけるモニタリングネットワークおよび情報発信の経験を生かして貢献をしてきましたが、残念ながら我々でも断片的な情報しか得られていないのが現状です。

2月24日にロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所および立ち入り禁止区域を占拠したとの情報を受け、Safecastでは直ちに入手可能な放射線量に関するデータの収集を開始しました。我々のデータベースの大部分はボランティアの方々がbGeigieを使って自ら測定したものです。そのため、特定の時点でのデータはあっても、現場からリアルタイムで放射線量の変化を感知できる定点センサーはありません。

予想通りウクライナの公式放射線量データは、インターネットで情報を公開し続けることが困難な状況に陥っていますが、その中でも得られた情報はあります。例えば、欧州委員会共同研究センター(JRC)の放射能環境モニタリング(REM)グループのホームページには、ウクライナ水文気象センターからの測定値が掲載されており、ウクライナの非営利団体SaveEcoBotでは、多くの政府システムから入手可能なデータを集約し、発信しています。

しかしながらロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナにおける多くの有用なモニタリングネットワークは断続的で不安定な状態に陥っています。また時間が経つにつれ、ウクライナ政府の公式ホームページの全ての放射線量データもアクセス不能になってしまいました。さらにはロシアによるサイバー攻撃(DDOSなど)、電力網破壊によるサーバーの停電、電波塔の破壊による通信回線の切断なども報告されています。

ウクライナ当局は、猛烈な攻撃を受けながらも、懸命に情報提供活動を行っています。ウクライナのエネルギー省は、安全確保のためにシステムをオフラインにするという苦渋の決断を迫られ、現在も続行中です。戦争によって国民への公的な情報供給の手段は阻まれ、現在は政府が収集した情報を、NPO法人SaveEcoBotが提供しています。これは歴史的な出来事であり、SaveEcoBotは非常に重要な役割を果たしています。

当然ながら、ウクライナにおけるモニタリングおよび情報公開システムは戦争を想定していなかったため、ロシアの攻撃は直接公式情報の消失を引き起こしています。しかしながら今回の経験が、モニタリングシステムの過度な一極集中化や、チョークポイントおよび単一障害点など、緊急時に簡単に不能化されてしまうリスクを避けた、より強固なシステム設計に活かされることを願っています。政府などが人為的なミス、あるいは故意に公共なモニタリングデータへのアクセスを遮断することは、あってはならない事態です。特に現在のウクライナのように国民がこのような情報を必要としている状態においては、武力行使が行われる戦争下においても耐久可能な強靭なシステムが必要です。

Safecastのシステムは初めから冗長性およびオープンデータであることを重視して設計されています。我々のデータベースは全て特別な許可なしにダウンロードが可能です。サーバーの損失やインターネットアクセスの拒否が発生した場合でも迅速にデータを再構築できるよう、世界中に複数のコピーを保存することを可能にしています。放射線量のリアルタイムモニタリングデータは2つのデータベースに保存され、スタンバイ状態のクラウドサーバーも必要に応じて数分で立ち上げられる状態になっています。またSafecast内部でも、数年分のデータを保存するためのキャパシティーが確保されています。データの通信手段としてはWiFi、LoRa、携帯回線など、様々な方式を試験的に導入してきましたが、コストと汎用性から現在は携帯回線を採用しています。ウクライナで発生した公共データの損失は、携帯電話回線の混乱が大きな要因であるため、現在は我々のシステムの生存率およびデータの取得を最大化することに注力しています。

いつもながら、多くのボランティアの方々や専門家の方々の支えがあってこそ我々はこのような活動を続けることができています。福島とウクライナには多くの共通点があり、ウクライナの方の多くは、チェルノブイリのグループと長期にわたって協力してきました。現地の人々は彼らが直接見聞きしている現状を訴えています。我々は彼らの安全を非常に心配しており、これらの情報を公開し、発信していくことにより少しでも支援できることを願っています。

何百万人もの人々が生存を懸けて必死になっているこのような戦時下が、公共の放射線モニタリングシステムの脆弱性について議論するのに適切であるのかという疑問はあるかもしれません。残念ながら喫緊の戦況により核の使用の可能性が否定できなくなってきているため、放射線量のモニタリングデータが、現在進行中の情報戦の一部になってしまっているという状況なのです。ロシアによるウクライナの原子力施設に対する躊躇ない攻撃は、大規模な放射線放出の恐怖を世界に広めました。ロシアはこの「恐怖」そのものを武器として展開しており、我々は信頼できる情報をリアルタイムで必要とするすべての人々に届けることがこの状況下における唯一の対抗策だと考えます。

現在ウクライナの人々は、世界が信頼できる情報を入手し、それに基づいて行動できるよう、情報のオンライン共有を維持するために奮闘しています。幸いなことに、いくつかの原子力施設が攻撃されたにもかかわらず、これまでのところ大規模な放射能放出は回避されています。 我々はオープンデータを武器に、真実によって勝利すべき情報戦の中にいるのです。

— SAFECAST チーム…

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福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

In featured, ニュース, マップ, 測定, 論説 by azby

2021424

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー

翻訳:長岡英美, 宮下(オースターマン) 絵夢フェリチタス, 為本 晃弘 


以下内容の主要部分はJapan Timesの署名入り記事に掲載されました。英語による注釈付きの記事は2021年5月6日Safecast Blogで公開されました:  

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

 



政策の分析

413日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。1

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10

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In ニュース by exporter

Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent (福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー 2021年4月24日

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

4月13日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。(1)

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10年たった今も大きな課題が数多く残されており、今後も数十年にわたって取り組み続けなければならないでしょう。

現場に貯蔵されている汚染水の処理は技術面に加え、社会面、経済面においても大きな課題となっています。現時点で120万トン以上の汚染水が原発内に設置された1,000以上のタンクに貯蔵されており、その量は日々増加しています。(2)

東電はトリチウム(人体への影響がもっと低いと考えられている水素の放射性同位体)以外の全放射性同位体を除去した処理水を海水によって非常に低濃度まで希釈すれば、太平洋に放出しても問題ないと主張しています。この「希釈して海洋に放出」という案は、2013年に国際原子力機関(IAEA)および日本原子力規制委員会の両者によって推進されたものであり、技術面での実現可能性、時間、コストおよび安全性に基づいて日本の公式委員会によって評価された複数の選択肢のうちの一つでした。(3)

海洋放出は2年後に開始され、完了までに30年かかると見込まれています。この案が他の複数の選択肢の中で最も問題点が少ないものである可能性は否定できませんが、判断基準となっている根拠には疑わしい点があります。(4)

IAEAおよび米国は海洋放出案への支持を表明しています。しかし現段階においても未だに技術面での明確な計画や環境への影響の調査内容は公表されていません。さらにこれらの決断は、近隣諸国、国際社会さらに日本国内の関係者とさえ十分な協議が行われないまま下されました。(5)

このため中国や韓国をはじめとする複数の国々は反対意見を表明しました。(6)福島のみならず日本全国の水産物が世界市場において取り返しのつかない損害を被ることを恐れた水産業界もまた、強い反発を示しています。既存のIAEAの合意では、放射性物質の国境を跨いだ放出は影響を受けうる関連国と評議する必要がある、規定されており、今回の案件はこの「放射性物質の国境を跨いだ放出」に該当します。(7)

さらに、IAEAの規定には放射性物質の影響が発生国の領域外に及ぶ可能性がある場合は特別な対応が必要であると明記されています。(8)今回の福島第一原子力発電所からの処理水の放出が、他国に影響を及ぼさず、検出可能で懸念を生じさせないことは証明されていません。

それどころか、環太平洋地域の国々は推定される影響が低いとされていても、評議を要求する権利を有します。また、今回の放出は1974年に締結された国際海洋機関の協定に違反する可能性があるという指摘もされています。(9)

これらの議論の正当性は法廷で裁かれることになるかもしれませんが、今回のような一方的な行動が非倫理的であることは間違いありません。様々な懸念を引き起こし、世界的に注目される出来事であるからこそ東電および日本政府は、世界中の関係者や有識者の議論への参加や意見の共有を積極的に推進し、課題に真摯に向き合い誠意をもって解決に取り組んでいることを示す必要があります。

国際的な協議や関与なしに独断で処理水の放流を許可すれば、国際的に影響のおよぶ可能性のある事柄に関する判断は国際的な合意に基づいて行われなければならないという現在の社会システムに損害を与え、危険な前例となってしまうでしょう。もし日本が自国の安全のみを考慮し、今回のような大規模な放出を実行すれば、他国が同様に周辺諸国に影響を与えるような判断を下した場合に反対する権利を失ってしまいます。

国際社会も危機感を持つべきです。福島の放流計画が実現すれば、世界中の様々な国の原子力発電所がこれを前例として挙げ、周辺諸国の同意を得ないまま放射性物質を海洋に放出することが可能になります。つまり、ロシアが北極海または日本海へ、中国が日本海や南シナ海に、アラブ首長国連邦がペルシャ湾に放射性液体廃棄物の放出を決断した場合、反対することも止めることもできなくなるのです。(10)

核兵器不拡散規約とは異なり、IAEAの参加で行われている放射性物質の放出モニタリングは信頼関係に基づいた自己申告制であるため、悪用することは容易です。国家に対して正しいことをするように強制することはできません。外交圧力や世論は十分な影響力を持たないこともありますが、最良の抑止方法であることは間違いありません。そしてこのような抑止力を正常に機能させるためには、国際的な検証の判断基準を明確にし、情報開示(透明性)を行うことが重要です。

現在日本政府は公式発表にて、原子力施設からの海洋放出は「一般的」または「正常」であると主張し、今回の計画の安全性を強調しています。(11)これは不誠実かつ、信頼のおける主張ではありません。一方の東電も高額な費用をかけて長期間にわたって行われたALPS放射性核種システムによる処理後の水は、他の制御された放出水と同様の濃度であり、最小限の規制で十分であるとしています。

しかし通常の原子力発電や燃料処理過程では、生成されるトリチウムの量は予想可能な範囲内であり、それらを考慮したうえで計画的に一定量が放出されます。福島第一原子力発電所における今回の放出は、過負荷によるタンクやパイプの破裂によって起こりうるより大きな損害を防ぐための緊急措置であり、同時にスペース不足のためにこれ以上のタンクの貯蔵場所が確保できないという事情にも対応できる好都合な解決策なのです。つまり「正常」な点は何一つなく、綿密な計画及びモニタリング、さらに厳重な規制制度が必要となります。

ALPSシステムを最高の状態で稼働すれば、トリチウム以外の全ての放射性核種の除去が可能であるように思われるかもしれません。(12)しかし実際のところは、現在貯蔵されている120万トンおよび今後生成される同容量の汚染水を数十年にわたって処理していかなければならないことを考えると、そのすべてが厳密な基準を満たす精度で処理されるであろうと考えるのは危険です。

ポンプの摩耗、フィルターの目詰まり、ガスケットの劣化、レバーの引き間違いや作業環境に対する不満によるミスコミュニケーションなど、数多くの技術的ミスおよび人的ミスが予想されます。東電はこのようなミスやそれらによって引き起こされる事態をきちんと公表するのでしょうか。例えばストロンチウム90の10%が太平洋に誤って放出されてしまうようなことがあった場合、我々はその情報を得ることができるのでしょうか。(13) 特に水問題における今までの東電の透明性や誠意に欠ける対応は記録に残されており、国際社会からの信用は残念ながら無いに等しいと言えます。

2012年後半に導入されたALPSシステムの試験的な活用当初から、東電は処理後に水中に残留している放射性核種はトリチウムのみであると国際社会に保証してきました。この発言に基づいて「希釈後に放出」という今回の計画が社会に対して大々的に宣伝され、推進されてきました。(14)

しかしながら同社は2018年後半に、システムが十分に除去することができなかったことから、全体の約80%(110万トンの汚染水のうち89万トン以上)にあたる処理水に、ストロンチウム90、コバルト60、ルテニウム106やその他多くの基準値を超える放射性核種が含まれていることを認めました。この事実が東電によって故意に隠蔽されていたことを知った世論は大きく反発しました。放出計画の支持者はこの国民の信頼を大きく裏切った出来事が忘れられることを望んでいるかのようです。…

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Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表

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Blues WirelessとSafecastがAirnoteを発表
– これまでで最もシンプルな空気質モニター
セーフキャストが10周年記念イベントのライブストリーミングで
Airnoteデバイスを福島に設置

マサチューセッツ州ボストン & 東京 – 2021年3月9日 –
オープンな環境データの世界的リーダーであるセーフキャストと、IoTクラウドセルラーソリューションのリーディングカンパニーであるBlues Wirelessは、
本日、これまでで最もシンプルで費用対効果の高い空気質デバイスであるAirnoteを発表しました。Airnoteは、複雑さと使用の障壁を取り除くことで、市場に出回っている他の製品に比べて約半分のコストで、空気質センサーの大量導入を簡素化します。これにより、個人、企業、自治体は正確な粒子状物質データを収集し、より健康的な環境のためのより良い意思決定を行うことができます。

“10年前の福島の危機を契機に世界中から多くの有能な人材が集まり、共通の目的を果たすこととなりました。”
非営利団体Safecast、Blues Wireless、そして最終的にAirnoteデバイスは、すべてこのコラボレーションの結果として生まれました。

これまでのところ、空気の質、水質、放射線などの環境面では、高額な機器の費用面や、デバイスを配置するための慎重な設置、信頼性の高い屋外ネットワーク接続といった課題がありました。Airnoteは、日当たりの良い窓の外側に簡単に取り付けることができる、完全に統合されたゼロセットアップの太陽光発電装置です。Airnoteは、130カ国以上のセルラーネットワークを使用して、定期的に空気質データを自動的にアップロードします。Airnoteには、Bluesのノートカード通信モジュールが搭載されており、プリペイド/プリアクティベートデータプランが含まれています。
Airnoteは、ディスプレイに情報を表示したり、ユーザーがQRコードをスキャンしてオンラインでチャートやグラフを表示したりすることができます。
PM1、PM2.5、PM10の粒子状物質の温度、湿度、気圧、密度を測定できます。

Airnote_Rear

The Airnote rear features a display showing the air quality, viewable from the inside

Airnoteデバイスがアップロードしたデータは、はじめからパブリックドメインに指定されており、全ての人に利益をもたらします。BlueのリアルタイムデータルータであるNotehubやセーフキャストのデータベースや地図を介して、データは世界中で分析、教育、さらには商業利用のために利用できます。
データはデフォルトでは匿名ですが、デバイスの所有者はオプションでデバイスを主張し、データのアップロードのためにクレジットされることができます。

“福島は紛れもなく災害でしたが、このイベントは私たちの環境の将来と安全性をより良く計画する機会を与えてくれました“
と、Safecastの共同創設者であり日本のディレクターでもあるピーテル・フランケン氏は述べています。
“私たちがAirnoteから受け取るグローバルデータは、市民主導のオープンデータのペースを加速させ、より健康的な地球環境に向けて私たちを前進させると同時に、将来の危機へのより迅速で効率的な対応を可能にしてくれます。…

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SAFECAST 10 – 世界中から考えるフクシマの現在

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SAFECAST 10周年記念イベント 2021313日(土)

本年は2011311日の福島原発事故から10年目であると同時に、SAFECAST設立から10周年を迎えます。この節目を機に、SAFECAST2021313日および14日に過去10年間でのプロジェクトの活動を振り返り、福島の最新情報を提供するとともに、オープンデータの重要性、新たな挑戦および過去10年間の経験で得られた学びについて発信するオンラインイベントの開催を計画しています。

このイベントはSAFECAST…

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日本のCOVID-19のデータの不正確さについて

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2020年4月28日、アズビー・ブラウンによって公開

以前の記事(こちらこちら)で、COVID-19の検査に関して日本で実際に決められている方針を整理しようと試みました。私たちはデータに一貫性がなく他の公式データにも問題があり、実際に検査が行われた数と感染の可能性がある人数を一般の人がうまく把握できなくなっていることを指摘しました。このデータ問題について私たちが記事を公開してから4週間が経ちました。4週間前の当時は、20,340件の検査が日本で報告され、全国で1214名が陽性、そのうち東京都の陽性患者が171名でした。国内の新しい陽性患者数は1日100名以下でした。(この記事を書く)現在では、一番最近のデータによれば、150,692名の方が検査を行い、国内で13,448名の方が陽性、そのうち東京都だけで3,908名となっています。新規に陽性判定された人数は1日平均で現在約400名ですが、最高値は4月11日に記録され、700名の方が陽性判定されました。

これらの数値は、もちろん、2月から3月にかけての明らかな感染の増加を示しており、日本はすでにコロナウイルスを「克服」したと主張する声を抑えたに違いありません。当時、感染者の増加割合は大きく、医療機関も過剰負荷に対する混乱のサインを既に示していましたが、我が国では、指数関数的に患者数が増えるフェーズにはまだ到達していなかったように見えます。私達が何度も指摘しているように、日本では症状の発生している方々さえ検査を受けるのは非常に困難です。私たちはこの問題に皆さんが非常に感心を持たれていると気づいたので、自分達で感染に関する実態を報告できるオンラインマップを作成しました。検査が行われた人口比率(約0.008%)を調べた通り、少数の検査しか行われていないことを考えると、より大規模な感染拡大についてどれだけ早く知ることが出来るのでしょうか。私たちは3月にしたのと同じ質問をしなくてはいけません。意図的に検査を絞る現状の「クラスター対策」のアプローチで見落としている感染者はどれくらいいるのでしょうか。特に無症候または発症前(そして現状のガイドラインでは検査対象外とされる人)の方を中心に、もっと多くのCOVID-19陽性の人達がいるにも関わらず、彼らが特定されず速やかに隔離されず、ウイルスの感染拡大を抑えられない場合、どれだけ危険な状況になりそうでしょうか。

英国キングスカレッジのPopulation Health研究所長を務める渋谷健司教授(以下、渋谷氏)が先週、東京の外国人記者クラブ(FCCJ)向けにオンラインの記者発表を行ないましたが、公開データを踏まえて考えを述べ、気がかりな地域を明らかにしました。私達が先述した通り、渋谷氏は「クラスター対策」のアプローチのみに委ねることのリスクについて警鐘を鳴らしており、日本でさらに検査数が急増する危険があると警告しました。皆さんには、彼の記者発表ビデオをご覧いただきたいと思います。具体的には、多くの理由を元に、日本の実際の感染者数は、公的機関を介して発表されている現在の人数の少なくとも10倍はいるだろうと渋谷氏は試算しました。翌日、厚生労働省の主要メンバーの一人である北海道大学の西浦博教授(以下、西浦氏)は、東京で記者会見を行い、渋谷氏の試算と同じ見解を示し、実際は10倍以上かも知れないと付け加えました。同時に、西浦氏は、データは現在、全国の感染者は減少傾向を示していることを何度か繰り返し述べました。直近のグラフデータも同様の傾向を示しているようです。

22020年4月27日付の日本全国の感染者件数(参照:https://covid19japan.com/)

2020年4月27日付の東京都内のCOVID-19感染者データ
(参照:https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/en/)

渋谷氏が彼の記者発表で指摘したように、日本政府の資料から報告された件数を見る際には注意しなければいけない点が沢山あります。いくつかの理由から、確認できるデータを元にしっかりとした疫学的な結論を導くことは難しいはずだと渋谷氏は考えています。COVID-19に感染してから、重症化し、日本の厳しいPCR検査の基準を満たすまでには約2週間かかることが非常に重要で、理解しなくてはいけません。私達が目にする一日の陽性患者数は、数週間の間にすでに存在していた感染者をデータを編集した日時に報告しているに過ぎません。これらの件数は、時差のある指標であり、2週間前の感染拡大のごく狭い一部を捉えたものです。渋谷氏によれば、仮に、特に発症前、無症候の感染者に対して、さらに広範囲に検査の実施を行えるなら、最新の感染拡大の全体像をより捉えることが出来るだろうとのことです。

もう1つ注意しなくてはいけない点としては、報告の遅れとデータの一貫性の無さから、民間の研究所で実施された検査結果が完全には公開されていないということです。例えば、東京都が提供する二か国語対応のwebサイトは、公に行われている取り組みの中でも良いものの1つですが、公的機関の報告は毎日更新しているのに対して、民間の研究所からのデータは毎週金曜日に週ごとのデータが更新されるだけになっています。その結果、サイトに公開されている感染者数が、毎週金曜日に不思議な増え方を見せています。似たような増え方が検査数の合計グラフにも影響しています。これに関する説明は東京都のwebサイトのどこにも明らかになっていません。

日本の検査システム、感染者報告システムのほとんどは自動化あるいは完全なオンライン化がなされていません。信じられないことですが、全てのデータはまだファックスで送られており、手入力で転記し、編集しなければなりません。このことが不要な遅延を招き、データ入力エラーの可能性を高めています。非効率なデータ編集プロセスや、実際にデータのカテゴリーが表しているものが元の印象に対して違うこと、そして、報告されている検査数が引き続き一致しないことを考えると、これらの数値のみに基づいて実際に何が起きているのか評価することは難しいのです。最も気がかりなことは、このデータがどれも一般利用が出来ないので、外部の研究者が独自に検証し、複製し、評価する方法が無いことです。渋谷氏は、国立感染症研究所(NIID)からCOVID-19に関するデータを取得し、分析しようと試みた経験について語りましたが、特に彼の立場と評判であれば、非常に簡潔なプロセスであったに違いありません。渋谷氏は特定の申請書類を記入する必要があり、申請プロセスは数ヶ月かかると言われたそうです。国立感染症研究所(NIID)が持っている背景データにアクセス出来ない限り、私たちは一般利用のデータからはほとんど何も述べることが出来ません。

(イタリア)ロンバルディア州からの大規模なイタリア人データサンプルに基づく最近の研究によれば、現地で見られたCOVID-19の感染の43%は無症候感染から由来するものでした。さらに、新規の感染のほとんどはロックダウンの前に発生し、同じ家庭内の無症候感染に由来していました。他の研究は、人口内に無症候感染者が優勢であることに関する似たような結論に至りました。最近の日本の感染者数のグラフは安心するようなカーブの描き方をしていますが、現在の国の疾病監視システムではまだ検出出来ていないCOVID-19の感染拡大のフェーズに日本が既に入ってしまっている可能性が強く残っています。無症候感染や発症前の件数が大半を占める中で、検査の基準からほぼ全て除外されているからです。COVID-19のスクリーニングを受けた呼吸器と関係ない理由で来院した67名の患者のうち4名(6%)が陽性であることが判明したという慶應大学病院の最近の報告はこの考えを裏付けています。渋谷氏やその他の関係者は、この慶應大学病院の件は大きいサンプルにも代表的なサンプルにもなり得ないが、有病率は非常に高く無視すべきではないと指摘しました。

既に知られている他国における無症候/症候ありの比率を元に、渋谷氏と西浦氏は二人とも、他国では20~50倍になっていると指摘した上で、実際の感染者数を少なく見積もっても日本で報告されている感染者数の10倍になると考えています。慶應大学病院での6%の有病率は過大評価だが、他のエビデンスから東京の人口の3~4%の感染率がもっともらしいと想定して、渋谷氏は「単純計算すればちょうど今何人感染しているか分かる」と述べています。1300万人を東京都の人口とした場合、3%は39万人です。ここでの述語は「もっともらしい」です。2週間前に報告された西浦教授によるモデリング結果では、厳しい対策を行わない場合、日本におけるCOVID-19の重症患者の人数は85万人、死者合計で40万人に上る可能性があると見積もっています。これら2つの見積もりは、アウトブレイクの可能性に関して一般的に認められていることです。自発的にソーシャルディスタンスを行ったり、これまで取られてきたその他の対策の効果は、相対的には不確定要素のままです。

しかし、大多数の死者はまだ明らかになっていないように見えます。検査の実施が足りないことで、関心を持っている多くの方が、単に肺炎と報告されている死が実はCOVID-19によるもので、その結果適切にカウントするのを「隠している」のではないかと疑っていると以前私達は指摘しました。沢山の疾患の種類、合併症、その他の関係要因から、インフルエンザの死亡率は通常の状況でさえ定量化することは難しいと渋谷氏は指摘します。様々な理由から、またそのどれも重複しないことから、伝染病による死はしばしば過小評価されています。インフルエンザの場合、全員に検査をすることは不可能なため、私達は代わりに死亡率の過剰分がどの程度か見積もるプロセスにしばしば頼らなくてはなりません。東京大学の研究者による最近の論文

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日本に於けるCOVID-19コロナ・ウィルス患者数が表す意味

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2020年3月24日Azby Brown著

Reiko Mori, Yoshida Suzuka, Tatsumi Baba, Ryuichi Anbo, Mami Yahiro, Momoha Koya (Furuhashi Lab., Aoyama Gakuin Univ.) 翻訳

 

先週、私はセーフキャストの一員として日本のCOVID-19コロナ・ウィルスの検査についての記事を書きました。

さて、ここCOVID-19コロナ・ウィルスに関する正確な情報の伝達が乏しく、最近では検査基準を満たしている人が検査を断られる事例が増加し、国民の間で不満や疑惑の声が挙がっています。これは政府による政策が原因ですが、検査することを重要視している韓国、台湾やシンガポールなどの国は感染者の数値が緩和し始めたのに対し、日本ではそれらの国と大幅に異なり検査数が少ない状況です。

今後一体どういうことが起こるのでしょうか?

日本国内では、普段の生活に於いて肉体的な距離を保つ傾向を筆頭に、マスクの着用や優れた衛生環境、握手による挨拶が少ない、などの要因を基にCOVID-19コロナ・ウイルスに打ち勝ったという話が最近様々な所広まってきています。セーフキャストでは「マスクの着用」や「規則正しい手洗い」は、肌の接触を減らすのと同等に重要視しており、ここまでの接触感染率の低さを保っているのは恐らくそのお陰なのではないかと思います。

しかし、学校の閉鎖や開催予定であった大きなイベントのキャンセル、そしてなるべく多くの人々が在宅ワークを行っているにも関わらず、文化的背景に基づいた日々の社会的な距離だけでは強制力がとても弱い可能性も出てきています。例えば、公園では毎日のように花見をしに来た人々で埋め尽くされ、電車も常に満員です。バーなどの飲み屋、またレストランなどの飲食店も同じ状況です。私達は今までラッキーだったのでしょうか。

その一方、感染者数は国民全般に於ける検査の不足、そして、誤った分類による単純肺炎で亡くなった方と、COVID-19コロナ・ウイルスで亡くなった方との区別が曖昧で、疑いが晴れないでいる現状も存在します。

日本の各都道府県や地方自治体は、緊急事態時には自主的に対応を行える権限を保持しています。例えば、最近のニュースでは