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Plan to discharge Fukushima plant water into sea sets a dangerous precedent (福島第一原子力発電所汚染水の海洋放出は危険な前例を作る

著:アズビー・ブラウン、イアン・ダービー 2021年4月24日

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/24/commentary/japan-commentary/fukushima-radiation-3-11-nuclear-energy-radioactive-water-iaea/

4月13日日本政府は、現在福島第一原子力発電所に貯蔵されている処理水を太平洋に放出するという東京電力ホールディングス株式会社(東電)による計画を承認したことを発表しました。(1)

Safecastはこの決定に伴う懸念を分析し、全ての関係者の権利が守られるための方法を提示することが重要と考えます。今回の件において我々が最も懸念していることは、このような一方的な決定が、国際社会において危険な前例となってしまうことです。

被害を受けた原発を管理している電力会社である東電は、当初から汚染水、処理水問題に関して(説明責任を果たさず)透明性と誠実さに欠ける対応を行ってきました。国際社会において事故対応の過程が適切だと承認されるためには、完全に透明で独立したモニタリング及び環境への影響評価が、処理水の放出前、放出中及び放出後の全ての段階において行われなければなりません。

2011年に福島第一原子力発電所で発生した事故は環境、経済および社会すべてに多大な苦難を与えました。これらの課題解決に向けて建設的かつ勤勉な取り組みが行われてきましたが、10年たった今も大きな課題が数多く残されており、今後も数十年にわたって取り組み続けなければならないでしょう。

現場に貯蔵されている汚染水の処理は技術面に加え、社会面、経済面においても大きな課題となっています。現時点で120万トン以上の汚染水が原発内に設置された1,000以上のタンクに貯蔵されており、その量は日々増加しています。(2)

東電はトリチウム(人体への影響がもっと低いと考えられている水素の放射性同位体)以外の全放射性同位体を除去した処理水を海水によって非常に低濃度まで希釈すれば、太平洋に放出しても問題ないと主張しています。この「希釈して海洋に放出」という案は、2013年に国際原子力機関(IAEA)および日本原子力規制委員会の両者によって推進されたものであり、技術面での実現可能性、時間、コストおよび安全性に基づいて日本の公式委員会によって評価された複数の選択肢のうちの一つでした。(3)

海洋放出は2年後に開始され、完了までに30年かかると見込まれています。この案が他の複数の選択肢の中で最も問題点が少ないものである可能性は否定できませんが、判断基準となっている根拠には疑わしい点があります。(4)

IAEAおよび米国は海洋放出案への支持を表明しています。しかし現段階においても未だに技術面での明確な計画や環境への影響の調査内容は公表されていません。さらにこれらの決断は、近隣諸国、国際社会さらに日本国内の関係者とさえ十分な協議が行われないまま下されました。(5)

このため中国や韓国をはじめとする複数の国々は反対意見を表明しました。(6)福島のみならず日本全国の水産物が世界市場において取り返しのつかない損害を被ることを恐れた水産業界もまた、強い反発を示しています。既存のIAEAの合意では、放射性物質の国境を跨いだ放出は影響を受けうる関連国と評議する必要がある、規定されており、今回の案件はこの「放射性物質の国境を跨いだ放出」に該当します。(7)

さらに、IAEAの規定には放射性物質の影響が発生国の領域外に及ぶ可能性がある場合は特別な対応が必要であると明記されています。(8)今回の福島第一原子力発電所からの処理水の放出が、他国に影響を及ぼさず、検出可能で懸念を生じさせないことは証明されていません。

それどころか、環太平洋地域の国々は推定される影響が低いとされていても、評議を要求する権利を有します。また、今回の放出は1974年に締結された国際海洋機関の協定に違反する可能性があるという指摘もされています。(9)

これらの議論の正当性は法廷で裁かれることになるかもしれませんが、今回のような一方的な行動が非倫理的であることは間違いありません。様々な懸念を引き起こし、世界的に注目される出来事であるからこそ東電および日本政府は、世界中の関係者や有識者の議論への参加や意見の共有を積極的に推進し、課題に真摯に向き合い誠意をもって解決に取り組んでいることを示す必要があります。

国際的な協議や関与なしに独断で処理水の放流を許可すれば、国際的に影響のおよぶ可能性のある事柄に関する判断は国際的な合意に基づいて行われなければならないという現在の社会システムに損害を与え、危険な前例となってしまうでしょう。もし日本が自国の安全のみを考慮し、今回のような大規模な放出を実行すれば、他国が同様に周辺諸国に影響を与えるような判断を下した場合に反対する権利を失ってしまいます。

国際社会も危機感を持つべきです。福島の放流計画が実現すれば、世界中の様々な国の原子力発電所がこれを前例として挙げ、周辺諸国の同意を得ないまま放射性物質を海洋に放出することが可能になります。つまり、ロシアが北極海または日本海へ、中国が日本海や南シナ海に、アラブ首長国連邦がペルシャ湾に放射性液体廃棄物の放出を決断した場合、反対することも止めることもできなくなるのです。(10)

核兵器不拡散規約とは異なり、IAEAの参加で行われている放射性物質の放出モニタリングは信頼関係に基づいた自己申告制であるため、悪用することは容易です。国家に対して正しいことをするように強制することはできません。外交圧力や世論は十分な影響力を持たないこともありますが、最良の抑止方法であることは間違いありません。そしてこのような抑止力を正常に機能させるためには、国際的な検証の判断基準を明確にし、情報開示(透明性)を行うことが重要です。

現在日本政府は公式発表にて、原子力施設からの海洋放出は「一般的」または「正常」であると主張し、今回の計画の安全性を強調しています。(11)これは不誠実かつ、信頼のおける主張ではありません。一方の東電も高額な費用をかけて長期間にわたって行われたALPS放射性核種システムによる処理後の水は、他の制御された放出水と同様の濃度であり、最小限の規制で十分であるとしています。

しかし通常の原子力発電や燃料処理過程では、生成されるトリチウムの量は予想可能な範囲内であり、それらを考慮したうえで計画的に一定量が放出されます。福島第一原子力発電所における今回の放出は、過負荷によるタンクやパイプの破裂によって起こりうるより大きな損害を防ぐための緊急措置であり、同時にスペース不足のためにこれ以上のタンクの貯蔵場所が確保できないという事情にも対応できる好都合な解決策なのです。つまり「正常」な点は何一つなく、綿密な計画及びモニタリング、さらに厳重な規制制度が必要となります。

ALPSシステムを最高の状態で稼働すれば、トリチウム以外の全ての放射性核種の除去が可能であるように思われるかもしれません。(12)しかし実際のところは、現在貯蔵されている120万トンおよび今後生成される同容量の汚染水を数十年にわたって処理していかなければならないことを考えると、そのすべてが厳密な基準を満たす精度で処理されるであろうと考えるのは危険です。

ポンプの摩耗、フィルターの目詰まり、ガスケットの劣化、レバーの引き間違いや作業環境に対する不満によるミスコミュニケーションなど、数多くの技術的ミスおよび人的ミスが予想されます。東電はこのようなミスやそれらによって引き起こされる事態をきちんと公表するのでしょうか。例えばストロンチウム90の10%が太平洋に誤って放出されてしまうようなことがあった場合、我々はその情報を得ることができるのでしょうか。(13) 特に水問題における今までの東電の透明性や誠意に欠ける対応は記録に残されており、国際社会からの信用は残念ながら無いに等しいと言えます。

2012年後半に導入されたALPSシステムの試験的な活用当初から、東電は処理後に水中に残留している放射性核種はトリチウムのみであると国際社会に保証してきました。この発言に基づいて「希釈後に放出」という今回の計画が社会に対して大々的に宣伝され、推進されてきました。(14)

しかしながら同社は2018年後半に、システムが十分に除去することができなかったことから、全体の約80%(110万トンの汚染水のうち89万トン以上)にあたる処理水に、ストロンチウム90、コバルト60、ルテニウム106やその他多くの基準値を超える放射性核種が含まれていることを認めました。この事実が東電によって故意に隠蔽されていたことを知った世論は大きく反発しました。放出計画の支持者はこの国民の信頼を大きく裏切った出来事が忘れられることを望んでいるかのようです。

以上の背景から、本計画が理論的には海洋生態系や人体に及ぼす影響やリスクが少ないと専門家の意見が一致したとしても、厳密な環境影響の評価および検証プロセスなしにして進められることは許されるべきではありません。国民はどのようなモニタリングや透明性を重視した計画が誰によって実施されるかを知る権利があります。(16)

国境を跨いだ影響が懸念されるため、モニタリング体制は国際的な協力に基づくものでなくてはなりません。国内外の全ての関係者の参加および協議によって構築されるべきであり、(17)現在までの東電の不誠実な対応を考慮して、独立した第三者機関によって検証が行われる必要があります。

東電は各貯蔵タンクに存在する放射性核種の濃度や一覧をこれまで公表したことはありません。これは直ちに行われるべきであり、海洋放出を行う前にも同様に、汚染水に含まれる放射性核種についても独立した第三者機関によって検証するべきです。(18)

海洋環境による放射性物質の拡がり及び海洋生物への影響は詳細にモニタリングする必要があります。また専門の研究者を含む独立した検証委員会の設立およびそのための資金調達が急務となっています。この委員会は放出計画完了までの期間に加え、事後経過を監視するために30年以上存続しなければなりません。

IAEAは、国際社会における建設的な調整役を果たすことができ、本計画におけるモニタリングの技術的支援も申し出ています。しかしながら、私たちはIAEAが情報にアクセスするために完全に日本政府に依存しなければならないことや、国際社会への不利益に関しても過度に懐柔的な姿勢をとることを危惧しています。(19)

福島第一原子力発電所の事故の被害の大分部は日本社会に発生しており、この対応の決定は日本社会に委ねられています。しかしながら、同事故の影響は日本の国境を越えたところでも発生しており、処理水の太平洋への放出に関する懸念は日本のみにとどまらないことは明らかです。

この放水計画に関して「正常」なことは何一つありません。国際的に強化されたモニタリンおよび検証体制の設立は、正当、合理的かつ妥当だと考えます。

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Safecastはこれまでに福島第一原発の処理水に関する問題についての情報や分析結果について発表してきました。

以下の二部構成の記事は、ALPSによって処理水が多くの懸念される放射性核種を含んでいたことが発覚する前に執筆し、トリチウムの科学的および健康面でのリスクのほか、処理水の放出に関する政策や透明性に関する問題について言及しています。

PART 1: Radioactive water at Fukushima Daiichi: What should be done?

Azby Brown, June 5, 2018

https://safecast.org/2018/06/part-1-radioactive-water-at-fukushima-daiichi-what-should-be-done/

PART 2: Radioactive water at Fukushima Daiichi: What should be done?

Azby Brown, June 5, 2018

https://safecast.org/2018/06/part-2-radioactive-water-at-fukushima-daiichi-what-should-be-done/

関連するJapan Times署名記事

About that tritiated water: Who will decide and when?

Azby Brown, Japan Times, Jun 5, 2018

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2018/06/05/commentary/japan-commentary/tritiated-water-will-decide/#.WxcTSlOFPGL

Followup in 2019:

Transparency, the olympics, and that damned water, Part 1

Azby Brown, November 26, 2019

https://safecast.org/2019/11/transparency-the-olympics-and-that-damned-water-part-1/

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脚注:

1.2021年4月13日に開催された処理水対策関係閣僚等会議に関する情報は以下の通り:

廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議(第5回)配付資料一覧

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hairo_osensui/dai5/index.html

英語文献:

METI: Basic Policy on handling of ALPS treated water at the Tokyo Electric Power Company Holdings’ Fukushima Daiichi Nuclear Power Station

The Inter-Ministerial Council for Contaminated Water, Treated Water and Decommissioning issues, 13 April, 2021

https://www.meti.go.jp/english/earthquake/nuclear/decommissioning/pdf/bp_alps.pdf

東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における 多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針(案)

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/hairo_osensui/dai5/siryou1.pdf

海外メディアにおいても以下のように大きく取り上げられました。

Government OKs discharge of Fukushima nuclear plant water into sea

Japan Times, April 13, 2021

https://www.japantimes.co.jp/news/2021/04/13/national/fukushima-water-release/

Fukushima Wastewater Will Be Released Into the Ocean, Japan Says

New York Times, April 13, 2021

https://www.nytimes.com/2021/04/13/world/asia/japan-fukushima-wastewater-ocean.html

2. 東電は2021年4月1日時点で、約125万m3の処理水が1047基のタンクに貯蔵されていると発表しました。トリチウムの濃度は約62万ベクレル/リットルで、トリチウムの総量は約780兆ベクレルでした。

東京電力:多核種除去設備等処理水の定義見直し 及びタンクに保管されているトリチウム量について、2021年4月27日

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/osensuitaisakuteam/2021/04/1-6.pdf

「汚染された」の定義

IAEA安全用語集の最新版では以下のように定義されています。

「1.物質の表面、個体、液体または気体(人体を含む)状態における放射性物質の存在量が意図せぬもの、または望ましくない場合。さらに、そのような場所での放射性物質の存在量の増加を引き起こす過程。(中略)汚染という用語は、放射性物質の存在を示すものであり、それによって引き起こされる危険性の強度を示すものではありません。」(原文直訳)

大半の定義で「汚染」は、(超過されることで危険を引き起こす)一定量の放射線量を示しますが、上記の科学的定義では、特定の放射性物質の量や濃度に関係なく適用されることに注意しなければなりません。「汚染」という用語が危険性を強調するために使用可能であることは認識していますが、我々はこの用語を客観的に使用しています。

ALPSシステムによって現在までに処理された水の70%以上が、懸念される放射線量によって汚染されたままであると東京電力自ら認めています。例えトリチウム以外の全ての放射性核種を除去することが可能であったとしても、福島第一原発のように初期濃度が高い場合、トリチウム水もIAEAの「汚染」の定義を満たします。さらには、トリチウム水を規制放出限度を下回る濃度になるように希釈したとしても、依然としてIAEAの「汚染」の定義を満たすと考えます。この議論はリスク評価に関するものではありません。

2020年6月の国連特別報告者国際連合への書面回答分で日本政府は以下のように主張しています。「(前略)貯蔵タンクのALPS処理水は汚染水ではない。」2021年3月13日の、福島第一原子力発電所敷地内に貯蔵されているALPSシステムによる処理済み水の70%を再処理するとともに、希釈して海洋に放出するという決定と同時に、経産省は「ALPS処理済み水」の定義を変更しました。経産省は「このような誤解による信頼の低下を防ぐために、今後は『トリチウム以外の放射性核種が環境排出に関する基準値を下回る濃度の水』のみ『ALPS処理水』と定義する」と公表しています。これは、問題を議論する際に使用できる用語を制限することで、問題に対する世間の認識を変えようとする(作家のジョージ・)オーウェルの手法のように感じられます。

外務省:国連特別報告者4名からの情報提供要請に対する回答(東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page4_005162.html

経済産業省:東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の定義を変更しました

https://www.meti.go.jp/press/2021/04/20210413001/20210413001.html

3. IAEA: Tepco Should Consider Controlled Discharge

Wall Street Journal, Mari Iwata, Dec 4, 2013

https://www.wsj.com/articles/SB10001424052702303722104579237573776706970

WSJ : Fukushima Watch: Regulator Calls on Tepco to Discharge Tritium Water

Mari Iwata, Jan 21, 2015

https://www.wsj.com/articles/BL-JRTB-18991

2015年2月、汚染水問題に関してIAEAは以下のように言及しました。

「しかしながら、汚染水の貯蔵は一時的な措置であるため、東京電力はより持続可能な解決策を探す必要がある。このため、東京電力は、すべての選択肢を考慮に入れるべきであり、前回の調査で指摘されたように、処理水をコントロール可能な状態で海洋放出することも含めて、すべての選択肢を考慮すべきです。IAEA調査団の意見では、処理水の制御放出は、この決定により何らかの影響を受ける全ての利害関係者と協議した上で、公衆衛生、環境保全、社会経済的条件への潜在的な影響を含むすべての関連する観点を慎重に検討して、決定する必要があるとのことだ。」

IAEA International Peer Review Mission On Mid-And-Long-Term Roadmap Towards The Decommissioning of Tepco’s Fukushima Daiichi Nuclear Power Station Units 1-4 (Third Mission) — Preliminary Summary Report to The Government Of Japan, 9 – 17 February 2015

https://www.iaea.org/sites/default/files/missionreport170215.pdf

4.東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/alps_policy.pdf

東京電力ホールディングス株式会社:福島第一現離職発電所における多核種除去設備など処理水の処分に関する政府の基本方針を踏まえた当社の対応について、2021年4月16日

https://www.tepco.co.jp/press/release/2021/1596975_8711.html

5.IAEAと米国政府の声明は、日本の決定を強く支持しています。どちらも、支援の理由として日本の側の透明性を強調しています。 IAEA事務局長のラファエル・マリアーノ・グロッシは、次のように述べています。「(日本)政府は、今日の決定を実行するために、透明でオープンな方法ですべての関係者と意見交換を続けるだろうと確信しています」識者は、この発言は日本政府を賞賛したものではなく、日本政府の対応の透明性を促す警告として認識するでしょう。同様に、米国国務省のネッド・プライス報道官は、「(汚染水に関する)アプローチの有効性を監視するため、日本政府がこれから継続的な調整とコミュニケーションをとることを期待しています」と述べました。繰り返しになりますが、支援の言葉の裏で暗に示されているのは期待の表明です。日本政府も東京電力も、これまでのところ、問題に対する十分な透明性を持っているとは言い難いです。

IAEA Ready to Support Japan on Fukushima Water Disposal, Director General Grossi Says

April 13, 2021

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-ready-to-support-japan-on-fukushima-water-disposal-director-general-grossi-says

Government of Japan’s Announcement on Fukushima Treated Water Release Decision

PRESS STATEMENT

Ned Price, Department Spokesperson, April 12, 2021

https://www.state.gov/government-of-japans-announcement-on-fukushima-treated-water-release-decision/

6. China warns of action over Japan’s decision to dump radioactive Fukushima water into the sea

South China Morning Post, Catherine Wong 13 Apr, 2021

https://www.scmp.com/news/china/diplomacy/article/3129322/china-warns-action-over-japans-decision-dump-radioactive

7.報道を見る限りでは、海洋放出反対の声は福島の地元の漁業協同組合の間でのみ起きているように見えますが、実際は、全国の漁業関係者が合同で反対しています。彼らはこの問題の最大の利害関係者のうちのひとりであり、最大の被害を被っています。それにもかかわらず、彼らの正当な懸念は無視されています。 2021年4月7日、全国水産連盟の岸宏会長ら、水産事業の日本代表が菅首相と会談し、汚染水海洋放出の計画を承認しないよう求めました。朝日新聞によりますと、岸氏は4月13日の決定を受けて、「…非常に遺憾で、まったく受け入れられない…。政府は、関係者の理解を得ずに水処理を進めないという以前の立場を覆した。この決定は、福島県だけでなく、日本の他の地域の漁師の気持ちを踏みにじる。」と述べました。

朝日新聞:福島の原発処理水、政府が海洋放出を決定 近隣国や漁業関係者は懸念、2021年4月13日

https://www.asahi.com/international/reuters/CRWKBN2BZ2TL.html

8.IAEAは、福島第一原子力発電所からの計画的な汚染水の放流が国境を越えたものであり、周知と協議が必要である国際的なガイドラインに従うべきかどうかについて、公式に回答をすることが非常に重要です。もしそうでないならば、そう判断した理由を明確に説明する義務があります。IAEAの規定には放射性物質の影響が発生国の領域外に及ぶ可能性がある場合は特別な対応が必要であると明記されています。特に1986年の原子力安全条約では以下のように規定されています。「早期通知条約は、発生国以外の地域に安全上重大な影響を及ぼす可能性のある放射性物質の国際的な越境放出を伴う原子力事故に関する通知システムとして確立されました。」

IAEA: Convention on Nuclear Safety

Information page:

https://www.iaea.org/topics/nuclear-safety-conventions/convention-nuclear-safety

1994 Convention on Nuclear Safety, text in full:

https://www.iaea.org/sites/default/files/infcirc449.pdf

欧州委員会(EC), 国際連合食糧農業機関(FAO), 国際原子力機関(IAEA), 国際労働機関(ILO), 経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA), PAHO(汎米保健機構), UNEP(国際連合環境計画)およびWHO(世界保健機関)によって採用されているIAEA国際基本安全基準では、国境を越えた放射性物質の影響に関するセクションで以下のように規定しています。

“3.18. 第3.124章 GSR Part 3 [3] ある事象の影響が発生国の領域外に及ぶ場合、発生国の行政及び法的条件に基づいて、放射性物質の影響評価及び放出の調整を以下の通り行わなければならない。

a) 放射性物質の影響評価は、発生国の領域外で影響が見込まれる地域も含むことを保証する。

b) 可能な限り、放出に関する基準を確立する。

c) 必要に応じて、影響を受ける周辺国への情報共有および協議の手段を手配する。

Radiation Protection and Safety of Radiation Sources: International Basic Safety Standards

General Safety Requirements Part 3

https://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1578_web-57265295.pdf

9.韓国海洋水産部(MOF)は、2019年のロンドン条約の会議で、福島第一原子力発電所の放水問題を提起しました。韓国政府代表のソン・ミョンダルは次のように述べたと記録されています。「[日本]が原子力発電所から汚染水海洋に放出した場合、国際的に海洋環境に影響を及ぼし、ロンドン議定書に違反する可能性があります。(中略)国際社会が安全と確信できる放射性汚染水の処理方法を考案するためには、ロンドン条約および議定書の締約国の協議会によって継続的に議論されるべきだと思います。」

South Korea Brings Fukushima Wastewater Issue to London Convention Meeting

Cristina Tuser, Water and Wastes Digest, Oct. 11, 2019

https://www.wwdmag.com/waste-treatment-disposal-services/south-korea-brings-fukushima-wastewater-issue-london-convention

2021年4月の放出決定に伴い、韓国は再びこの問題をロンドン条約および議定書科学委員会会議に提起しました。彼らの主張は「最も近い隣国である韓国との事前協議なしに日本が一方的に決定を下した。」というもので、さらに「(福島第一原子力発電所からの汚染水の海洋放出は)近隣諸国の安全と海洋環境に脅威を与える重要な問題である」ことを強調しました。

S. Korea Raises Japan’s Fukushima Water Release at Int’l Conference

KBS WORLD, April 19, 2021

https://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=e&Seq_Code=160925

See also:

Japan’s plan for radioactive water defies international law

By Duncan E. J. Currie and Shaun Burnie, Korea Times, March 3, 2020

https://www.koreatimes.co.kr/www/nation/2020/07/371_285553.html

2021年4月19日、チョン・ウィヨン韓国外相はケリー米大統領特使(気候変動問題担当)との会談後、日本政府に対して韓国の懸念を払しょくするために3つの条件を提示しました。「第一に日本政府が放出の方法が安全であることを科学的根拠を共有すること。第二に詳細な事前協議、第三に韓国の専門家をIAEAの検証プロセスに参加させること」

チョン外相は「日本がIAEAの基準に見合う適合な手続きを踏むなら、韓国はあえて反対しない」と述べました。

さらに、韓国は「日本政府がこうした義務を遂行するか見守っている」としました。

時事通信によると、チョン外相は「日本が十分な行動をとらなければ、韓国は国際的な紛争解決プロセスを開始することを示唆」しました。国際海洋裁判所への提訴は検討中とされています。

NHK:処理水「IAEA基準に従うならあえて反対せず」韓国外相、2021年4月19日

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210419/k10012984241000.html

時事通信:IAEA基準適合なら「反対しない」 原発処理水放出で韓国外相、2021年4月19日

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021041900822&g=int

日本の国際的義務に関する法的議論の多くは、東電が2011年4月に貯蔵スペースを確保するための緊急措置として未処理の水11,500トン、その翌月にさらに300,000トンを太平洋に放出した際に設定された前例をめぐるもので、日本が当時定めた前例についての懸念は計画された希釈と放出が中心でした。高村氏(2014年)は多くの条約や合意事項は海洋放出、特に放射性物質による環境汚染を防ぐものであるとしています。これには、国連海洋条約(UNCLOS)、1972年のロンドン条約、Montreal Guidelines for the Protection of the Marine Environment Against Pollution from Land-based Sources、海洋環境の保護に関する世界行動計画、原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約、原子力事故の早期通知に関する条約(早期通知条約)が含まれます。高村は、これら条約の多くは福島第一原発のような地上からの放射性物質の海洋放出という事態を想定したものではあるものの、法的拘束力はなく、具体的にこうした放出を禁止するような明確な条項は存在しないとしています。

高村はさらに2011年、次のように述べています。「日本政府は、当該放出は国境を越えた他国や管轄を越えた海洋環境に悪影響を及ぼした記録はなく、及ぼす可能性もなかったため通知義務を怠っていないとしています」。私たちは以下に述べる高村の意見に賛同します。「紛争の最中であっても国家は協力し関連情報を共有するための協議や、モニタリング、リスク評価を行う必要があり、相手国が状況や海洋汚染に関して異なった評価を下していたとしても、予防という概念のもとに実施する必要があります。各国政府は、国境を越えた環境汚染を事前に防ぐという義務を果たすために継続的に科学発展の観点から潜在的なリスクの再評価を行う必要があります。」

Release of Radioactive Substances into the Sea and International Law: The Japanese Experience in the Course of Nuclear Disaster

Yukari Takamura The International Law of Disaster Relief: from Part II – The Law of International Disaster Relief: From Local to Global, August 2014

https://www.cambridge.org/core/books/international-law-of-disaster-relief/release-of-radioactive-substances-into-the-sea-and-international-law-the-japanese-experience-in-the-course-of-nuclear-disaster/0C2592E5B75BE69D841EDD722E31A3C0

There’s Something in the Water: The Inadequacy of International Anti-Dumping Laws as Applied to the Fukushima Daiichi Radioactive Water Discharge

Darian Ghorb American University International Law Review, Volume 27 | Issue 2 Article 7, 2012

https://core.ac.uk/download/pdf/235407887.pdf

Convention on the Prevention of Marine Pollution by Dumping of Wastes and Other Matter

aka London Convention 1972; 1992 London Protocol

International Maritime Organization

https://www.imo.org/en/OurWork/Environment/Pages/London-Convention-Protocol.aspx

10. 沿岸の原子力発電所

例えば、「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会説明」において経産省は「全国の原子力発電所からは運転基準に基づく基準内のトリチウムを含む水が40年以上にわたって排出されているが、 近郊の海水の濃度は世界的な飲料水の基準を大幅に下回っている。海外の原子力発電所からも、基準内のトリチウムを含む水が排出されている。」「原子力発電所付近の海水のトリチウム濃縮は世界の飲料水の基準よりはるかに低い。(英語資料のみ)」「原子力発電所から検出されたトリチウムの健康への影響は確認されていない(英語資料のみ)」としています。

The Outline of the Handling of ALPS Treated Water at Fukushima Daiichi NPS (FDNPS)

METI, February 2020

https://www.meti.go.jp/english/earthquake/nuclear/decommissioning/pdf/20200203_current_status.pdf

経済産業省:多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 説明・公聴会 説明資料(案)

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/009_04_02.pdf

同様に、東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の処分に関する基本方針(2021年4月13日)で、経産省は以下のように述べています。「トリチウムは各国の原子力発電所で排出されています。福島第一原発に貯蔵されている水に含まれているトリチウムの総量を超える量のトリチウムを排出している施設もありますが、これらの発電所においてトリチウム由来の影響に関する例は確認されていません。」

Basic Policy on handling of ALPS treated water at the Tokyo Electric Power Company Holdings’ Fukushima Daiichi Nuclear Power Station

METI: The Inter-Ministerial Council for Contaminated Water, Treated Water and Decommissioning issues, 13 April,

https://www.ca.emb-japan.go.jp/2021_shared_images/Basic_Policy_on_Handling_of_ALPS_treated_water.PDF

国連特別報告者4名からの情報提供要請に対する回答(2020年6月12日)において、外務省は以下のように述べています。

「IAEA調査団は、当初検討されていた5つの当初の方法案から選択された2つの方法(管理された水蒸気放出と管理された海洋放出。後者は、世界中の原子力発電所や核燃料サイクル施設で 日常的に実施されている)が技術的に実施可能であり、時間軸の目 標を達成できると考える。」

外務省:国連人権理事会特別手続による共同コミュニケーションに対する日本政府回答、2020年6月12日

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100064088.pdf

日本政府が計画している処分方法は世界的に実施されている慣例的な方法であるというIAEAの再三の声明が、日本政府が放出は「正常」であると主張する根拠になっています。しかしIAEAは環境影響の評価など、必須条件を満たした場合のみであることを何度も示唆しています。

日本が選択した汚染水の処理方法は、技術的に実現可能であり、国際慣行に沿ったものであると、IAEA事務局長のGrossi氏は述べました。管理された海洋放出は世界中の原子力発電所の運営において日常的に実施されており、特定の規制下の地域では安全性と環境影響評価に基づいておこなわれています

IAEA Ready to Support Japan on Fukushima Water Disposal, Director General Grossi Says

IAEA, April 13, 2021

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/iaea-ready-to-support-japan-on-fukushima-water-disposal-director-general-grossi-says

12.2020年9月から12月にかけて東電はALPSによる二次処理性能確認試験を実施しました。重要な7種類の放射性核種において告示限度濃度を超えた処理済の水2000m3が再処理されました。この東電の報告は励みになるものですが、第三者機関による検証なく事実として受け止るべきではありません。ALPSはトリチウムのみならずCarbon-14 の除去もできないため、二次処理がいかに効果的であったとしても核種が残存してしまうことを覚えておく必要があります。

東京電力:福島第⼀原子力発電所 多核種除去設備等処理水の二次処理性能確認試験結果(終報)、2020年12月24日

https://www.tepco.co.jp/decommission/information/newsrelease/reference/pdf/2020/2h/rf_20201224_1.pdf

13.2019年12月に東電が公表した200基の貯蔵タンク(総量のおよそ5分の1)のデータから、Busseler(2020年)は、現在告示濃度限度の30ベクレル/リットルの2万倍にあたる60万ベクレル/1リットルのストロンチウム90が貯蔵タンクに貯まっているとしています。貯蔵タンクのストロンチウム90の平均濃度は約1ベクレル/リットルで、50%が10ベクレル/リットルとみられます。合計65,000トンの処理水が日本の環境放出規制基準の100倍にあたるストロンチウム90を含んでいることになります。

Opening the floodgates at Fukushima

Ken O. Buesseler, Science, Aug. 7, 2020

https://science.sciencemag.org/content/369/6504/621.full

14.2012年2月、ALPSの初期段階の検査結果を公表し、54放射性核種を検出限界未満に除去することを発表しました。ただしトリチウムについては述べられませんでした。

Multi-nuclide Removal Equipment

TEPCO, Feb. 27, 2012

https://www.tepco.co.jp/en/wp-content/uploads/hd03-02-03-001-m120227_03-e.pdf

アメリカの原子力エネルギー協会(NEI Nuclear Engineering International)は2012年8月に東電からの情報をもとに、ALPSは懸念されている放射性核種のうちトリチウムを除く62核種を検出限界未満に除去できると報じました。

The ultimate water treatment system

NEI Nuclear Engineering International, August 1, 2012

http://www.neimagazine.com/features/featurethe-ultimate-water-treatment-system/

2014年10月、東電は「多核種除去設備(ALPS)(既設/増設/高性能)」は、すべてのバージョンにおいてトリチウムを除く62核種を検出限界未満(ND)にまで除去すると報告しました。

Multi‐nuclide Removal Equipment (“ALPS”) (Existing/ Improved/ High‐performance)

TEPCO, Oct. 21, 2014

https://www.tepco.co.jp/en/decommision/planaction/images/141021_01.pdf

15.しかし、2014年9月の経産省の報告ではALPSは単に「62種類の放射性物質を告示濃度まで、あるいは告示濃度未満まで浄化することを目指す(トリチウムは除去することができない)」としており、核種を検出不可能な基準にまで除去するための措置はとられないことを示唆しています。この明らかな方針変更は静かに行われ、炭素14については言及されませんでした。

Summary of Decommissioning and Contaminated Water Management

Secretariat of the Team for Countermeasures for Decommissioning and Contaminated Water Treatment, September 25, 2014

https://www.meti.go.jp/english/earthquake/nuclear/decommissioning/pdf/20140925_e.pdf

15.東電によると、現在72%の処理水、あるいは78万トンの水が告示濃度限度を超えています。これは2018年以降に処理された水の総量の増加と、ALPSによる処理が非効率的であることの現れです。

東京電力:多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 報告書を受けた当社の検討素案について、2020年3月24日

https://www.tepco.co.jp/decommission/progress/watertreatment/images/200324.pdf

東電の試験結果は2014年6月時点で公表されており、それによるとALPSは初期段階の試験においてCo-60 、Ru-106 、Sb-125、I-129を除去することができず、比較的高い数値が検出されました(ただしSr-90 のALPS処理後の数値は「ND(検出不可)」とのみ表示)。改善策は提示されているものの、その後の結果は公表されていません。第三者からはこれは小さな問題であり、すぐに改善されると受け止められたでしょう。

東京電力:福島第一原子力発電所における 福島第一原子力発電所におけるトリチウム量 及び多核種除去設備処理水化学的水質について、2014年4月24日

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/pdf/140424/140424_02_003.pdf

APLSシステムが他の懸念されている放射性核種の除去ができなかったことは2018年8月に初めて公表されました。:

ALPS system at Fukushima No. 1 plant failing to remove more than tritium from toxic cooling water

Kyodo/Japan Times Aug 19, 2018

https://www.japantimes.co.jp/news/2018/08/19/national/alps-system-fukushima-no-1-plant-failing-remove-tritium-toxic-cooling-water/

ロイター通信によると、2018年9月、東電はこの問題について認め、2018年10月1日経産省に報告しました。

「東電によると、8月上旬時点でタンクに保管されていた多核種除去設備(ALPS)で浄化した89万トンの処理水のうち、84%に当たる75万トンに、基準を超えるトリチウム以外の放射性物質が含まれていた。」「このうち6万5000トンは、法令の100倍を超える放射性物質が含まれていた。また、一部のタンクでは、人体に有害なストロンチウム90などのレベルが、基準の2万倍に当たる1リットル当たり60万ベクレル検出された。」

「東電は、福島第1原発で発生する汚染水からセシウムなど62種の放射性物質をALPSで除去するよう処理した後も、分離できないトリチウムを含む水を同敷地内のタンクに貯蔵してきた。」

ロイター通信:焦点:福島汚染水、基準値超の放射性物質 海洋放出に反対強まる公算、2018年10月12日

https://jp.reuters.com/article/uk-japan-disaster-nuclear-water-idJPKCN1MM0KB

16.日本政府、東電、IAEAが公開した文書の多くは処理水放出前、放出中および放出後の効果的なモニタリングについて言及しています。しかし、数年にわたる計画と処理水の放出開始の直前になっても、これらの声明はモニタリングに参加することができるのは誰で、モニタリングプログラム自体の意思決定権は誰にあるかの詳細に関する情報を欠いています。

例えば、東電は 「ALPS 処理⽔の海洋放出にあたっては、風評影響を最大限抑制するべく、 これまで以上に海域モニタリングを拡充・強化します。そして、農林⽔産業者 のみなさまや専門家の方々のご協力を仰ぎ、モニタリングに関する客観性・透 明性を確保します。」としています。しかしここでいう農林水産業者や専門家はどうやって選ばれるのでしょうか。モニタリングにかかる資金はどこから調達するのでしょうか。モニタリングはどのように運営・監督されるのでしょうか。こうした情報は放射線放出の決定についてリリースされた際に明らかにされるべきでした。また、同声明では以下のように述べられています。

「具体的には、これまでの海域モニタリングに比べ、試料の採取地点や採取頻度を拡 充した強化計画を策定し、放出開始予定の約1年前から同計画に従って海域モニタリングを開始します。モニタリング結果は随時公開するとともに、透明性を確保するために第三者による測定・評価や公開等も実施する予定です。」

前述と同様、計画の内容と詳細は事前に公表されるべきです。また、ここでいう「第三者」がどのようにして選出されるかを明らかにすることも重要です。

東京電力:添付1:多核種除去設備等処理水の処分に関する政府の基本方針を踏まえた 当社の対応について、2021年4月16日

https://www.tepco.co.jp/press/release/2021/pdf2/210416j0201.pdf

2020年4月20日の国連特別報告者からの共同要請で、国連特別報告者は東電および日本政府がこれまでに構築してきた汚染水の放出問題への対処方法に対して地元関係者の間で不満が広がっていることを指摘しました。この例や、これまでの経緯から、関係者は彼らがモニタリングに参加することや彼らの意見が尊重されることを期待していないことが伺えます。

Joint Communication from Special Procedures

April 20, 2020

https://www.mofa.go.jp/files/100064085.pdf

17.これまでの準備不足のため非常に難しいことではありますが、適切で独立した国際的、協力的かつ参加型モニタリングは、重要だと私たちは考えます。また、このプロセスは、日本以外を含む関係者の意向を十分に考慮したものであるべきことも強調します。資金調達および管理も独立機関によって行われるべきであり、全ての関係者の参加が可能であるべきです。さらに、モニタリングのデータはオープンデータとして公表されるべきです。

参加型モニタリングの目標は不安を和らげたり、「不評に対処する」ことではなく、市民に対して情報へのアクセスや、政策決定への参加、環境問題に関する正しい情報へのアクセスが可能であることに気づかせることです。市民のこうした権利や、モニタリングに参加することの意義、市民が要求できることについては2001年10月に発効したオーフス条約に定められています。すべての市民の情報へのアクセスと、意思決定過程への参加は「要請」や「許可」されるものではなく、基本的な権利です。福島第一原発事故が環境に及ぼした影響、特に原発に貯蔵された水の放流といった事例は、まさにオーフス条約の起草の際に想定された事態です。

The Aarhus Convention

https://ec.europa.eu/environment/aarhus/

世界89か国、193の研究機関でつくるIAEAのALMERAネットワークの参加を促すことも一つの策です。同ネットワークに参加している研究機関は、標準化された放射能測定手法の確立と情報共有を行っています。日本でも5機関が同ネットワークのメンバーで、韓国や中国など処理水放出に懸念を表明した近隣諸国からも複数の研究機関が参画しています。こうした機関の参加は、モニタリングプロセスの信用性を高めるものとなるでしょう。

The ALMERA Network

https://nucleus.iaea.org/sites/ReferenceMaterials/Pages/ALMERA.aspx

モニタリングは研究機関やIAEA傘下の組織に限定されるべきではありません。海洋学や海洋科学研究機関の参加を歓迎しすべきです。またし、日本国内外の市民科学団体の参加も非常に重要です。市民科学が今では公的な科学研究機関と同等に寄与可能であることを、Safecastが証明してきました。信頼のおける市民科学の参画は、社会に信頼されるデータ収集の上でも欠かすことができなくなるでしょう。こうした団体は日本国内外に多く存在します。例えば、フランスでは市民団体ACROが、フランスの沿岸部と内陸部の原子力施設の影響で発生した環境トリチウムのモニタリングにおいて中心的な役割を果たしています。

ACRO: Surveillance du littoral

https://www.acro.eu.org/resultats/

ウッズホール海洋研究所のKen Busseler博士は以下のように述べています。「データを公開することは良いスタートだが十分ではない。魚介類や海洋汚染のモニタリングを地元漁業関係者と実施するとともに、サンプリングに一般の方が参加することは社会教育を促進し、サンプリング結果自体を強固なものにする手段となるでしょう。(中略)処理水を放出する際には、海水の汚染物質や、生物相、海底堆積物について放出前、放出中、放出後に独立した海洋研究が行われるべきです。政府はこれらの対応を実施するとしていますが、言葉より行動の方が重要です。」

Opening the floodgates at Fukushima

Ken O. Buesseler Science 07 Aug 2020

https://science.sciencemag.org/content/369/6504/621.full

18.国内外の研究者は長らく福島第一原発のタンクの水サンプル、放射性核種の濃度や一覧の詳細の提供を求めてきました。2019年から東電は各貯蔵タンクに含まれる放射性核種の概要および濃度の割合、一定地点での測定結果を公表しています。しかし各貯蔵タンクに含まれる詳細の一覧は、存在するか明らかではありませんが、公表されていません。

Actual radiation concentration measurements for each tank group (except for repurposed tanks) (as of December 31, 2020)

TEPCO, Dec 31, 2020

https://www4.tepco.co.jp/en/sp/decommission/progress/watertreatment/images/tankarea_en.pdf

Radiation concentrations measured at the multi-nuclide removal equipment (ALPS) outlet (as of December 31, 2020)

TEPCO, Dec. 31, 2020

https://www.tepco.co.jp/en/decommission/progress/watertreatment/images/exit_en.pdf

19.私たちはIAEAが透明で効果的な監視体制を構築し、真の独立した国際的かつ包括的な体制構築を支援することを切に願います。東電と日本政府がデータをコントロールしていると世間が認識すれば信用と信頼は得られないでしょう。これまでIAEAの福島関連の案件は、日本政府の承認を必要としてきましたが、今後はIAEAの監視と諮問機関が、日本政府からの承認なしにIAEA事務局長に直接報告することができる体制づくりが非常に重要です。

日本政府の決定に反対を表明した韓国のような近隣諸国との調整は実直であるべきです。。前述の通り、韓国外相は(1)日本政府が、放水は許容可能かつ安全であることを示す科学的根拠(信頼のおけるデータなど)を提示すること、(2)韓国側からの正当な要請があれば日本政府が計画を変更する準備があることを示す、二国間協議を含む十分な事前協議、(3)IAEAの検証作業に韓国の専門家も参加する、つまりこれら専門家がデータと判明事項を却下する権利を有すること、の3条件を提示しました。私たちはこれらの条件は明らかに包括的なステークホルダーへの対応の一部であり、こうした対応は日本政府が長年討議していた間にも、近隣諸国に積極的に提示されるべきであったと考えます。しかしこうした条件が提案されなかったことは、今後の対応に関する日本政府機関の誠実さの度合いを示唆しています。

NHK:処理水「IAEA基準に従うならあえて反対せず」韓国外相、2021年4月19日

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210419/k10012984241000.html

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