「信号機は放射性がないんだ!」―Safecastのフィールドトリップで東京インターナショナルプログレッシブスクールの生徒達が発見したクールなこと

In Events, ニュース by marc_prosser

2022年3月16日午後1時半~午後3時半 東京、渋谷のSafecastオフィスおよびFabCafe MTRLにて

写真提供: Kelsie Stewart

すべての人にオープンな環境データを

Safecastは環境に関するデータで人々の生活に寄与することを目的としたボランティア中心のグロバールな市民科学プロジェクトです。私たちは、より多くの利用可能なオープンデータを提供することは、すべての人にとって良いことだと信じています。私たちの活動は、データやデータ収集のノウハウを世界中の人々に提供することを目的としています。

― Safecastのウェブサイトより

Safecast は、有益でアクセスしやすい粒度の環境データを作成することを目的とした、グローバルなボランティア主導の非営利団体です。SafecastのデータはすべてCC0によってパブリックドメインとして無料で公開されています。

市民科学とは何か?オープン・ソース、あるいはオープン・データとは?コミュニティ主導の環境データ構築が私たちの未来にとって必要な理由は何か?―東京インターナショナルプログレッシブスクール(TIPS)の生徒たちがSafecastのフィールドトリップでこうした疑問の解明に取り組みました。

TIPSの生徒達によるSafecast x 市民科学 x 環境正義に関するブレインストーミング・セッション Photo credit: Kelsie Stewart

フィールドトリップは三部構成で、第二部と第三部で生徒たちは2つのグループに分けられました。第一部ではSafecastメンバーのAzby BrownとJoe Moross、Kelsie Stewartが全生徒を対象にブレインストーミング・セッションを行い市民科学と環境正義の公開性の重要性について掘り下げました。

Safecast x 市民科学 x 環境正義 ブレインストーミング・シェアリングセッション Photo credit: Kelsie Stewart

SafecastリードリサーチャーAzby BrownがSafecastを紹介している様子- “Yes, We’re OPEN”  Photo credit: Kelsie Stewart

Safecastの主要理念について紹介するリードリサーチャーのAzby Brown。生徒の中にはオープンソースについて既に知っている人もいました。このセッションでは環境データがクラウドソースであること、独立性、客観性、ボランティアベースの重要性についても強調されました。 Photo credit: Kelsie Stewart

Safecastのマップについての説明の様子. Photo credit: Kelsie Stewart

ブレインストーミング・セッションと Safecast のミッションおよび活動内容の紹介の後、学生たちは2つのグループに分けられました。一方のグループはSafecastのオフィスを訪れ、クールなガジェットを見た後Safecastのストーリーを聞く一方で、もう一方のグループは 「bGeigie 」として知られる実物のSafecastガイガーカウンターを使い、渋谷周辺の放射線レベルを測定しました。各グループとも、合計1時間半ほどの間に両方のアクティビティを行うことができました。

TIPSの生徒たちはJoe Morossと渋谷周辺の放射線の測定をするとともに放射線量モニタリングについて学びました。Joeが bGeigie の使い方とこの後行う渋谷周辺の放射線測定について説明をする様子。 Photo credit: Kelsie Stewart 

そして、いざ出発!bGeigiesを手に、まずは渋谷駅から渋谷・南平台町界隈をぐるりと一周。 Photo credit: Kelsie Stewart

生徒たちが何を選んでスキャンするかは、いつも興味深いものです。「この昆虫は放射能に汚染されているのか?」「この木は放
射能に汚染されているのか?」「自分はどうだろう?」 Photo credit: Tokyo International Progressive School, by Kelsie Stewart

ここでは、建築材料としてよく使われる赤御影石が、実は天然の微弱な放射性物質であることを、生徒たちは自分の目で確かめました。 Joe Morossによると、「赤御影石の放射線量は、飛行中の飛行機の中で人体が浴びる放射線量よりもはるかに少ないが、それでもガイガーカウンターの数値が跳ね上がるのを見ることができる」とのこと。ガイガーカウンターの数値が正確かどうかは、どうすれば分かるのでしょうか。Joe Morossは、レベルが上がったり下がったりしている時は測定値が矛盾している可能性を示唆しているということだけでなく、一貫して上昇していることを確認するためのアナログなコツ(写真に写っている彼の指に注目)を示しました。 Photo credit: Kelsie Stewart

 一方のグループが屋外で渋谷周辺の放射線量を測定している間、もう一方のグループは放射線全般、特にSafecast設立のきっかけとなった福島原発事故後の日本の状況について短い講義を受けました。SafecastのリードリサーチャーのAzby Brownは、2011年の福島第一原子力発電所の事故後、一般に公開された放射線データなどが、そもそも存在しなかったり、信頼のおけないものだった、あるいは不足していたり、不正確なものだったことを紹介しました。Safecastはこうした課題に取り組むべく誕生したのです。

TIPS の生徒たちは、以前のバージョンのbGeigieや、収集品としても知られるウランガラスでできた緑色の皿などSafecastチームが10年以上かけて収集した様々な放射性物質について学びました。Photo credit: Kelsie Stewart

ガイガーカウンターで様々なものの放射線を測定するTIPSの生徒たち Photo credit: Kelsie Stewart

TIPSの生徒たちの感想:

「共通の目標 を持った人たちと協力することで、当時(2011年)のものより優れたガイガーカウンターを作ることができるのはとてもおもしろいことだと思いました。」 -TIPS 高校生

「信号機は放射性物質ではないことなど、放射性元素について学ぶことができ、とても興味深かったです」 -TIPS高校生

「 オープンソースの熱心なサポーターですが、このプロジェクトは素晴らしいと思います。自分でもいつかbGeigieを作ってみたいです。」 -TIPS高校生

私達はまたTIPSの学生がSafecastでkGeigieを作り、DIYのハンズオンワークショップを体験してくれることを楽しみにしています。

TIPSの生徒たちがSafecastへの愛を表現してくれました。 Photo credit: Kelsie Stewart

Safecastについて:
Safecast は、有益でアクセスしやすい粒度の環境データを作成することを目的とした、グローバルなボランティア主導の非営利団体です。SafecastのデータはすべてCC0によってパブリックドメインとして無料で公開されています。

2011年3月11日に東日本を襲った大地震と津波、そしてそれに続く福島第一原子力発電所のメルトダウン以降、正確で信頼のおける放射線に関する情報は一般には公開されなくなりました。Safecast はこうした事態に対応すべく設立され、すぐに環境放射線に関する情報のモニタリング、収集、公開を開始し、規模、活動内容、地理的範囲を急速に拡大しました。やがて私たちは大気質のモニタリングも開始しました。私たちのミッションは、正確な環境データを収集し、オープンで参加型の方法で共有することにより、世界中の市民が自分たちの情報を得るために必要な手段を提供することです。

Safecast は、ハードウェアデザイン、ソフトウェアデザイン、エンジニアリングとサイエンス、ビジュアルデザインとコミュニケーション、そしてソーシャルデザイン要素について、迅速で統合的な開発を行うために革新的なモデルを導入しています。設立当初からオープンソースやオープンデータの手法を取り入れ、3Dプリントやレーザーカッター、部品のオンデマンド製造などの新しい製造技術も導入してきました。私たちは、迅速でアジャイル、そして反復的な開発を推進し、世界中の技術力に長けた協力者たちの協力を得ています。

Safecast のデータの価値と信頼性は、世界的に認められています。私たちのコミュニティは、あらゆる年齢層、職業の人々からなる、包括的で中立的なものです。精力的なアウトリーチ活動により、私たちは頻繁にワークショップや講演、教育プログラムを通じて、世界中の個人やグループと経験を共有しています。

しかし最も重要なことは、Safecast は人々が自宅や環境を簡単にモニタリングすることを可能にし、こうした非常に重要な情報を政府やその他の機関に依存することから解放していることです。技術的に有能な市民科学の取り組みが世界のいたるところで生まれているなか、主要かつ継続的な役割を担うことができることは私たちにとって大変喜ばしいことです。

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