情報透明性、 オリンピック、悩ましい汚染水. PART 1

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Part 2 はこちら.

疑問の山

2020年東京オリンピックが近づき、福島第一原発で保管している汚染処理水を太平洋に放出する計画に関して、最近、我々の元に質問が多く寄せられますが、言及することは容易ではありません。なぜならそれは公共の安全問題が関わっているからです。
来年の東京オリンピックを観戦に来る人達、特に福島会場を訪れる人たちにとって、放射線はどの程度安全なのか?
東京電力が福島第一原発に何百ものタンクに現在貯蔵しているトリチウムおよび他の放射性核種を含む水を放出することはどれくらい安全なのか?
この2つの疑問はもちろん別の問題ですが、どちらも、答えは透明性にかかっています。ジャーナリストと一般市民の両方からこれらの問題について非常に多くの疑問を受け取っているという事実は、福島第一原発に関して日本政府と東京電力が述べていることに対する信頼の欠如が未だ続いていることを表しています。
透明性なしで信頼はあり得ないということが、私たちの信条のひとつとなっており、あらゆる機会があるごとに繰り返し発言しています。疑問がオリンピックや水、食品の安全性、環境、あるいは健康に関するものであれ、利用可能な科学データのみが全体像の一定部分を明らかにします。
科学が政策をサポートしている場合でも、一般市民が正確さを評価するのに十分な透明性のある情報が提供されていないことは何回もあります。
そして、私たち自身が公式の主張を確信を持って検証または反論するのに十分な信頼できる情報を得ていないと結論せざるを得ない場合が多々あります。

Part 1: 汚染処理水はどうなっているのか?

タンクの汚染処理水については、昨年、詳細な2部構成のブログ記事と、この問題に関する新聞の記事を書きました。政府と東京電力の両方のコミュニケーションと透明性に関する問題を指摘し、汚染処理水を放出するリスクについて専門家の意見を伝えました。
当時、東京電力と政府が提供したタンクに保管された汚染処理水に関する全ての情報は、トリチウム含有量のみで他の放射性核種への言及はありませんでした。

記事執筆の調査の一環で、私は東京電力の専門家に何度か相談しました。タンクの実際の放射性核種含有量を示すデータがあるかどうか、そしてトリチウムのみを示す要約データが公開される度に、本当に心配しているのはトリチウムだけなのか?と直接、何度も尋ねました。
数か月経った20189月、東京電力は突然、トリチウムに加えて、タンクにもストロンチウム、アメリシウム、およびその他の放射性核種の顕著なレベルが含まれていることを発表しました。私たちと同様、世界中の人々はこの不正直さに激怒しました。

それでは、20191121日の経済産業省からの発表(国際報道機関で広く(そして漠然と)発表された)のうち、諮問委員会が汚染水放出計画は「安全」であると判断したとしたらどうでしょうか。
政治とプロセスに関して、経済産業省、原子力規制委員会、またはその他の政府機関から東京電力への水放出の命令はまだ発表されていないことを指摘したいと思います。同様に、東京電力から許可を求める要求もまだ発表されていません。
公式には、まだ決定は下されていません。
しかし私たちは、それが実際には完了した取引であり、既に数年前から成立していると考えています。私たちが注視しているのは、政治的影響を最小限に抑えるために十分な情報公開をする継続的な努力です。
誰かが率先して行わなければならず、それは必ず政治的にコストがかかります。

確かに、この「危機」自体は、東京電力が12年で現地のタンク置き場のスペースが満杯になってしまう、という主張に基づいていますが、東京電力または経済産業省が福島第一に隣接する、現在、除染廃棄物の保管のために環境省の管轄下にある長期保管用のタンク増設のための土地利用を真剣に評価したという証拠は見当たりません。
この案は、公開会議等でいくつかのグループや個人によって提唱されましたが、詳細な調査なしに却下されたようです。

このアプローチの、タンクが破裂した場合の潜在的なリスクを認識していますが、トリチウムの半減期が約12.3年であることを考えると、水の放射能が低下する数十年間、安全な貯蔵を行うことはもっとな案だと考えられ、少なくとも真剣に検討されるべきであり、もし却下するのであれば、なぜそれが行われるべきではないかについての妥当な証拠が提示されるべきです。

1121日の経済産業省の文書では、「1)放出時の安全性と2)周辺環境の安全性の両方を確認するための効果的なモニタリング」と「不安を払拭するための透明性の高いモニタリング結果の共有」の必要性を認めています。この認知自体は歓迎されますが、私たちはこれらを不合理な点が明白にあると考えています。
福島の辛い経験から、本当の透明性の必要というものは、堅牢で独立した第三者の監視によってのみ満たされるということが明らかになっています。
公共機関はこれに対する権利があり、セーフキャストが証明しているように、私たちは自分達で情報公開を行うことができます。

私たちは東京電力と政府関係者に対し長年にわたり話し合い、彼らに対して真に独立した研究者や市民が運営する放射線モニタリング研究所による水質測定の許可を強く推奨しています。
私たちは、なぜこれを促進できないのかについての説明を得たことはありませんでした。しかし、最近のニュース記事で、東京電力のスポークスマン八木秀樹は、“我々が必要な安全プロトコルを行えば、外部の独立したテストは必要ない”という発言が引用されています。

東京電力が、タンク内の水に対して真の第三者監視をどのように実施できるかを真剣に調査したという証拠はありません。現場での他の水を第三者がテストするための適切なプロトコルは整っているようです。東京電力は、クリーンになり、技術的に適格な組織に適切にアクセスできるようにし、リリースの決定が行われる前に彼らに発見事項を伝えるようにさせるべきです。

最近の経済産業省の報告要旨の8ページ目には、水が放出された場合の人間の服用線量推定値が含まれており、それは2016年のUNSCEAR文書「電離放射線の線源、影響およびリスク, 付録A」に基づいた、と述べています。
「…排出からの放射線の影響は十分に小さい…」これはもちろん最も重要なデータですが、非常に紛らわしく大雑把な表現で記載されています。
一般の人々には、異なる複数の地点での海水、および影響を受ける海洋生物の線量率と放射性核種濃度の推定値も開示されるべきでしょう。
我々は1年以上前にこの情報を求めましたが、METIは情報開示できませんでした。
さらに、計算の基として引用されたUNSCEAR文書は、実際には要約された概要文書であり、それ自体が詳細な線量推定の十分な基礎として扱うべきか、を疑問視しています。
経済産業省委員会は算出内容や、特にその前提を示すべきであり、それまでは誰も推定値が正しいと仮定するべきではないと警告します。
真の透明性を確保するために、国民は、放出された水の詳細な監視計画の作成、放射性核種の拡散とその濃度の追跡、および食物連鎖とより広い環境でのその後の濃度を監視することを求め続ける必要があります。
こういった監視に参加する資格があり、かつ意欲がある個人や組織はセーフキャストを含み、多く存在します。

このような参加型の計画と監視が明確になるまで、一般の人々は汚染水の放出計画の受け入れを拒否すべきです。
単に“信頼してください”というレベルで済まされない地点に我々は来ています。

Part 2:オリンピックはどうなのか?

(翻訳:吉山 潔)

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About the Author

azby

Azby Brownは、Safecastのリードリサーチアであり、Safecast Reportの主要著者です。デザイン、建築、環境の分野で広く出版された権威である彼は、30年以上日本に住んでおり、2003年にKIT Future Design Instituteを設立しました。2011年夏からSafecastに参加し、国際専門家会議で頻繁にグループを代表しています。