福島復興に向けたキャラクター「ラッキー」.

情報透明性、 オリンピック、悩ましい汚染水. PART 2

In ニュース by azby

 

Part 1 はこちら

2020年東京オリンピックに関して耳にする懸念は、汚染水タンクの問題よりも漠然としています。ある人たちは、日本に来るのは本当に安全か?と尋ねてきます。他のある人たちは、福島県に絞って聞いてきます。
何人かのジャーナリスト達は、福島県の福島あずま球場で開催される競技を観戦する人々の潜在的なリスクについて詳しく調査するよう、私たちに求めてきます。

東京在住ビジネスマン・Roy Tomizawa氏の質問に対しては、彼にbGeigieを作り、スタジアムを自分で調査することを提案しました。
彼は実際にbGeigie製作に挑み、調査を行い、結果をレポートにまとめました

人々が自分達の手で調査できるようにすることは、私たちが一般の人々と関り、情報公開するために好む方法です。放射線リスクに関しては、「安全」の枠組み全体に問題があるとしばしば指摘しています。食品、環境、およびその他の場所で許容される放射線制限のガイドラインは、実際には「安全」の制限ではなく、それを超えることは「安全ではない」という意味ではありません。これらは、実際に「安全でない」被ばくを防ぐことを目的として、保護措置の行動を起こすための警告レベルです。
いずれの場合も、重要な質問は次のとおりです。このリスクを理解していますか?そのリスクは受け入れられますか?
これが人々にとって必要なことであり、政府がこれまでのところ、情報を提供するという使命をほぼ実行できていない点です。
繰り返しますが、最も大事な点は透明性にかかっていると思います。

Googleで”福島 オリンピック”と検索すれば、来年、福島を訪れる競技者および訪問者が、生命のリスクに関する懸念を持っていることがよくわかります。
韓国政府は、現地の製品を食べることで健康上のリスクが生じないように、チームが自分用の食品を持ち込むことを発表しました。多くの人々は、日本政府が福島でオリンピックのイベントを開催して、災害の影響を隠し、福島県を正常に装おうとしていると、疑っています。政府がずっと前からこの”シナリオ“のコントロールを失い、2020年のオリンピック開始前に回復することはできず、その悪影響はその後何年も続く可能性があることは明らかに見えます。
世界中の人々が懸念しているリスクに対して、わかりやすい形の適切なメッセージや情報はありません。これまでに見てきたメッセージは、不器用で、何かすべてが順調であるように意図した、笑顔の幸せな人のイメージ作りに重きを置いています。その人々が政府自体に不信感を持っているため、誰もそういった心からの安心感を信頼していません。

日本政府機関は、このような問題に対する権威が、一般にはまだ損なわれていないという前提の下で行動しているようです。彼らのメッセージは、必要な透明性を実証せず、かつ適切な説明をすることなく、「委員会の調査結果、安全だと判断しました。」と単に発言するだけの仮定の下に形成されているようです。
政府のやり方をこれ以上簡素化することは望んでいませんが、私たちは福島の人々を大切にしているので、政府には福島の状況について明確かつ正確な情報を提示していただきたいのです。
福島の状況は、Googleの検索結果で現れる、警告されるような内容ほど悪いものではありませんが、間違いなく最高の状態というわけでもありません。正直なメッセージには真実が反映されます。私たちも、なぜ世界の人々の既存の恐怖と懐疑心を無視して、政府が福島でオリンピックを開催にこぎつけたのだろう?と思います。多くの福島県民は競技開催を支持しており、2011年の災害以降の県の進捗状況に前向きなスポットを当てることを望んでいます。それは地元の経済にも良いかもしれません。
一方で、それは別の回避すべきPR災害になる可能性があります。

今日、人々は、過度の恐れなしに福島を訪れています。公共のデータ同様、私たちの独立したデータの優位性というのは、通常、立ち入り禁止されている汚染エリアへの侵入以外にも、一般的な訪問者が、外部放射線被ばくが自然の放射線レベルよりも高いエリアへ立ち入ることを防ぐ効果があります。人々が通常の自然放射線レベルを「安全」と考えているなら、福島の大部分はこのレベルに適合します。ただし、多くの注意事項があります。外部線量率が正常範囲内にある場所であっても、地中にセシウム汚染がある可能性があります(Minnanodsは独立した測定による、土壌汚染に関する非常に良いマップを公開しています)。
福島で生産された食品は、公的機関と独立した研究機関の双方で厳重に監視されていて、どちらも圧倒的に「安全」であることが示されている一方、野生のキノコや野生野菜、野生の狩猟動物、そして生産管理された農業施設や管理されたスーパーマーケット流通経路を通していない食品を食べることは避けるべきです。例外はほとんどなく森林は除染処理されておらず、放射能レベルはかなり高い可能性があるため、見知らぬ森林への侵入を避けることが賢明です。

またこの件に関しては多くの反論がありますが、福島や近辺の数年間にわたるセーフキャストによる放射線測定では、福島を訪れる短期滞在者は、滞在期間に受ける放射線量より、日本に来るフライト中に受ける放射線の方が、確実に高い放射線量であることがわかっています(こちらで航空移動時のセーフキャストの測定がわかります)。ただし、これらの被ばく量は完全に比較できるわけではなく、何十年にも及ぶ高い放射線量を被る可能性が高い福島の一部に住んでいる人々にとっては、計算は異なります。
しかし、私たちは全体的な結論を支持しますが、確実な唯一の方法は、あなたが行く場所の良いデータを入手することであり、セーフキャストはその提供に努めています。

私たちは、韓国政府がその主張を裏付ける測定データを提示していないにもかかわらず、福島の食品に対する不安を政治的な動機で操作したことに対して、非常に批判的です。

一方、韓国は来年のオリンピックの放射線リスクを独立した第三者が検証することを要求しており、この点については私たちも強く推奨します。

日本政府とオリンピック委員会は、聖火リレーが20以上の福島県内市町村を走ることを発表しましたが、これらのルートに沿った現在の放射線レベルを示す調査データを一般に公開していません。セーフキャストボランティアはこれらのルートを測定する準備ができており、実際にはほとんどの時点ですでに測定されていると思います。
このことは、ほとんどの場所において参加者と視聴者に特定のリスクがないことをデータが示す一方で、懸念となる地域を明らかにする可能性があります。
私たちが憤慨させられることは、実際のリレー・ルート情報を取得できず、イベントのルート情報がいつになったら利用可能になるか?がわからないことです。

最終的には、福島2020オリンピックのイベントに関する公式なメッセージは、放射線リスクの真摯な議論を避け続け、「幸福」に焦点を合わせ続けると予想しています。現在の情報の無効化とアマチュアによるメッセージは、「幸福」に焦点を当てた価値重視の、市場に向けた大規模で高額な資金をつぎ込んだPRによって、来年初めにも打ち砕かれそうです。放射線に関する情報がそのように扱われれば、それは表面的かつ誤解を招くような方法になる可能性があります。
そのようになる必要はありません。

(翻訳:吉山 潔)

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Azby Brownは、Safecastのリードリサーチアであり、Safecast Reportの主要著者です。デザイン、建築、環境の分野で広く出版された権威である彼は、30年以上日本に住んでおり、2003年にKIT Future Design Instituteを設立しました。2011年夏からSafecastに参加し、国際専門家会議で頻繁にグループを代表しています。