福島「地下核の爆発」デマ
ここのところ、私たちは福島関連のデマが相次いで流布されるのを見てきましたが、その一つに、ロシア海軍が12月31日に福島で2回の地下での原子爆発を検出し、ロシア政府に保護措置の発令を促したと主張しているものがあります。私たちは、それについて心配している人々や、その他の驚くべき (そして真実でない)物語を聞いた人々から、メールをたくさんもらいました。
これは、よく知られた 陰謀寓話作者、 古代の終末論的な宗派の指導者の完全な作り話と、誰もが言うことができるでしょう。この話の作者はユーモア作家と考えた方が良いと思います。
「機能不全の日本原子力発電所での地下核爆発が世界を震撼する」 という物語は、1月2日に現れ、すぐに広く閲覧されているニュースサイト にまとめられました。そのサイト自体、白人至上主義者とつながりを持っているHatewatchブログであると南部貧困法律センターが主張しています。同じソースから他にも 「米国の地震兵器テストが再び失敗、ニュージーランドの市を破壊」といった意図しないにせよ楽しい記事を発表しています。
この「地下爆発」の記事には、その主張を裏付ける実際の引用や情報ソースが含まれていません。「爆発」の写真が含まれていますが、これは実は2011年3月の3号機のものです。「死の灰マップ」も含まれていますが、それ自体が2011年の以前に登場した際に直ちにデマとして暴かれたものです。その他にも私たちが以前に見たことがない、想定される「福島メルトスルーのポイント」を示すアルゼンチン沖大西洋の地図が含まれています。著者にユーモアのセンスがあることを証明している、と考える人もいるかもしれません。
この話はそこから、多くの人たちから読まれているサイトに広がりました。証拠が全く存在しないにも関わらず、全くもって真剣に取り上げられたのです。その中には、昨年 The Onionというデジタルメディア に 叩かれた、FARS通信社 という半官的なイランの組織も含まれています。
一部のサイトでは話を少し 再加工 して 、他の根拠のない噂をいくつか組み合わせ 、または話をエスカレートして、「プーチンが地図から福島を一掃することを命令」 という記事を流布しています。
Snopes.com は、最終的に1月5日、この話を ナンセンス と呼び、プロの陰謀サイトがこのような全く根拠のない話を繰り返していることを鑑みて、 「このような題材が、複数の合法的なニュースソースによって報告されていることが誤解を招く印象を作る」とコメントしました。
ここに皆さんに心に留めておいて欲しいとても重要な教訓があります。Webサイトが正当なニュースを報じているように見えるからといって、それが実際にそうだと意味するものではない、ということです。それらの多くは事実確認を全くしていませんし、クリックしてもらえるものなら何でも公開します。すなわちトンデモないものほど世に出るのです。Caveat Lector―読者の皆さんご注意ください。(翻訳:Mikiya Inoue)…
カリフォルニアビーチにおける放射線量
[2014年3月に更新:CDPH(カリフォルニア州公衆衛生局)は、自ら研究を行い、下記のようにセーフキャストの調査結果を確認しています。その調査結果の報告書はここで見ることができます]
今年12月、YouTubeに「福島の放射線がサンフランシスコを襲う!(2013年12月)」という衝撃的なタイトルの動画が投稿されました。
現在までに、その動画は約50万回以上閲覧され、無数の記事がその動画を証拠や情報ソースとして書かれています。しかし、動画で述べられた主張は正しくありません。
カリフォルニアのビーチが放射性ではないというのではなく、実際にはそうなのですが、これはカリフォルニアでは50年以上にわたって記録されている自然現象なのであり、これは関心さえあれば誰でも容易にグーグルなどの検索で見つけることのできる事実なのです。残念ながら、その動画のクリエイターや、その話題を面白がるメディアは、少しの時間を割いて調査をすることに、それほど関心を示さないようです。
2008年、Redenkovic氏らによる論文「いくつかの名高い公共ビーチの砂浜の放射線と付随する環境リスクの評価(未翻訳)」には、高い濃度のラジウム226、トリウム232、カリウム40がロサンゼルス地区の浜辺で発見されたとセルビアの化学会誌に掲載されています(表1参照)。
さらに1959年にまで話を戻すと、自然放射性鉱物による海岸堆積物の運動の透写図(未翻訳)は、バークレーのKamel氏とJohnson氏による報告書であり、その報告書には「この放射性トリウムは、トリウムを豊富に含む花崗岩を流れる河川の水が海岸に到達したり、トリウムの豊富な花崗岩そのものが海岸で露出していて、海岸沿いの別々の場所で自然と増えたのだ」と述べています。
これらのビーチは、近接する周辺地域よりも放射能レベルが高いのは当然であろうという情報は容易に入手できるので、外的要因や外的影響に関するいくつかの主張は、まずこれらの文書化された放射性同位元素(ラジオアイソトープ)情報を排除しているのでしょう。インターナショナル・メドコム社(同社のインスペクターが動画内で登場している)の最高経営責任者であり、「真実に取り憑かれた者」と自称するダン・サイス(Dan Sythe)氏は、これらの報告書について関心を持ち、すぐさま、この高い数値の原因を特定するために、動画が作成されたハーフムーンベイのビーチから土壌サンプルを検出しました。サイス氏が見つけだした SAM 940「マルチチャンネルアナライザー」を使用することによって、ラジウム226とトリウム232というNORM(天然起源放射性物質)が含まれている砂を発見しました。それは、過去に発表された関連の論文から予測していたことでした。Hサイス氏は、福島からの汚染を示すいかなるセシウムも発見しませんでした。彼は、カリフォルニアビーチの放射線は福島からではない というタイトルの投稿を、ガイガーカウンターブルテン(Geiger Counter Bulletin)にしました。実際の測定写真は、以下の通りになります。
ハーフムーンベイのビーチの砂、 ラジウム226とトリウム232のレベルを表示。 |
福島のビーチの砂、 セシウム137のレベルを表示。 |
カリフォルニア周辺の通常の環境放射線はだいたい30〜60CPMの間であり、測定はそれ以上の200CPMのハーフムーンベイや西海岸沿いの他のスポットでも行われました。それでも、この線量は、人が標準的な民間航空飛行機の飛行時間にさらされる数値、800CPMよりも、はるかに少ないものです。200CPMという数値は、花崗岩のカウンター甲板やレンガが露出した建物から測定されているのだろうという、予測範囲内の数値です。
ですから、実際の科学では、福島から検出可能な数値の放射線がカリフォルニアビーチへ到達するなどという話はただちに誤りであると証明できます。しかし、ひとつの重要な特徴として、多くの既存の科学的モデル は、検出可能な数値は今後数年間でこのカリフォルニアの海岸に到達するだろうという証拠を示しており、そのトピックこそ、私たちが今後の取り組んでいくものです。
また、このビデオに登場した、このことが多くの人に多大なストレスを与えたという点にも議論の余地があります。この動画は実際に、数値がビーチで上昇し、水位線に向かって減少していることを示しています。つまり、これは水そのものが数値の原因ではないことを示しているにもかかわらず、ガイガーカウンターを水に近づけて持っていくと数値が上がり続けるようになっています。加えて、その数値の原因は空気ではありません。なぜなら、そのような状況であれば、その周辺一体のエリアは高い数値であるはずです。 ビーチ、車道、歩道の全てにおいて高い数値がでるはずです。上昇する測定値が特定の領域に限定されているということはとても明確ですので、その原因が表面上あるいは下に存在しているという証拠になります。
この件についてレポートするため、セーフキャストのチームは…
Vice Japan がbGeigie のイベントに!
SAFECAST は、10月、DIYタイプのガイガーカウンター bGeigie Nano のワークショップを、東京・渋谷で行いました。
イベントの模様は、YouTubeリンクからご覧いただけます。…
ビーガイギーナノの組立ワークショップ体験レポート
10月19日の渋谷でのワークショップの体験レポートを参加者であるFabCafeのフジムラさんが書いてくださいました。
フジムラさんはハンダコテを使うのも初めてだったということで、初心者の視点から書かれた、とてもわかりやすい内容に仕上がっています。…
SAFECASTがグッドデザイン賞受賞パーティ及びbGeigie Nano(ビーガイギーナノ) ワークショップを開催
このたび、セーフキャストは、2013年グッドデザイン賞(主催:公益財団法人)を「公共のためのサービス・システム」の部門で受賞しました。
http://www.g-mark.org/award/describe/40575
セーフキャストは、東日本大震災およびそれに伴う福島第一原発事故が発生して以来、人々が入手できる量異常のデータを入手できるよう、慶應義塾大学やMITメディアラボらの研究機関や企業、地方自治体などと協働し、警戒区域周辺を含む日本全国に配置された固定センサーおよび移動センサーからなる放射線センサーネットワークを世界中で構築してきました。今日までに、1300万点以上のデータポイントが集まっています。
今回の受賞を記念して、10月19日(土)、ロフトワーク10階で、SAFECASTが開発した最新版の移動式放射線測定器 bGeigie Nano(ビーガイギーナノ)の組立ワークショップ、その後に、受賞の感謝会(パーティー)を開きます。是非、ご参加ください。(要予約)
【スケジュール】
10時 開場
10時30分 ワークショップ 開始
17時 ワークショップ 終了
18時―21時 パーティー
参加費:ワークショップ 45,000円(Nano kit代)、パーティ1000円
前回のワークショップの様子はセーフキャストのブログにも出ています。
https://safecast.jp/ja/2013/06/safecast-workshop-bgeigie-nano-in-aizu/
お問い合わせ先: Contact:
SAFECAST 広報担当:田中響子 Email:kiki@safecast.org
…セーフキャスト、グッドデザイン賞を受賞
この度、セーフキャストが2013年度グッドデザイン賞を受賞したことを喜んでご報告します。受賞を記念して、bガイギーナノの限定版を生産予定です。詳細については別途お伝え致します。…
会津若松でのワークショップ 2013年6月15日~16日
文:norio watanabe
セーフキャスト 郡山ボランティア
初夏の曇り空の会津若松にSafecastのメンバーとボランティアが集結して、bGeigie Nanoの組立ワークショップが開催されました。会場はIT企業のEyes JAPAN、山寺社長の会社を会場に提供していただきました。ありがとうございます。
福島県の放射線マップは2011年にsafecastの手により自動車による第1回目の測定はほぼ完了し、Safecast.orgのサイトにマップが公開されています。現在までに1000万ポイントのデータが集積され、日々、更新されています。またボランティアの方々の協力により、自転車や徒歩による自動車の入れない箇所の測定も行われており、放射線マップが綿密になりつつあります。
今回のbGeigie Nanoは、小型軽量で操作も初期のb-Geigieに比べて段違いに簡単になりました。測定モードと、記録モードがあり、測定モードではケースからbGeigie Nanoを取り出し、表面汚染をベクレル/平方mでも換算表示できるようになりました。記録モードではCPM単位をベースにGPSの位置情報と時刻、測定者(bGeigie Nanoには個体ごとに所持者の名前が記録されています)が、microSDカードに記録され、Safecastのサイトにアップロードするとデータの共有とデータのマップ表示が可能になります。
組立は半田ごての経験があれば比較的簡単に製作が可能です。(老眼の私にはルーペなどがないときつい箇所も一部あります)部品の大半は市販のシールドという回路として提供されているので、ICなどの線蜜は半田づけの作業はなく、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、スイッチ類、コネクタ類、配線の半田付けだけです。(たまに、部品が間違っている場合がありますが、そこはキット化されていますから愛嬌と思って、近くの部品屋さんに部品を購入にいくことも楽しみの一つ。もしくは、製作したことのあるSafecastのメンバーかボランティアの人に相談するのもコミュニケーションの楽しみにもなります。)
製作は慣れれば1時間ほどです。初心者は指導を受けながらだと半日でしょうか。完成品として市販はしていませんからbGeigie Nanoは組立ながら構造を理解する楽しみがあります。その分、性能のわりに安価で提供されています。…
異業種へセーフキャストの取り組みを紹介 - 日本医療政策機構 クロス・ディスカッション
3月14日、日本医療政策機構主催の『他領域と医療のCross Discussion シリーズ』として、SAFECASTの取り組みをディレクターである、ピーター・フランケンが講演しました。
東京駅近くのカフェを会場にした朝8時スタートのイベントに、日本医療政策機構代表理事の黒川清先生をはじめ、大学生や出勤前の会社員等数多くの方々がピーターの話を聞きに集まりました。
ピーターは、当初、測定デバイスがなく自分たちでデバイスを作ることにしたことや、国や放送局が測定データに著作権をもっていてデータを活用出来ないといった、苦労話を交えながら、今日までのSAFECASTの取り組みについて語りました。
作成したデバイス用いてボランティアや協力してくださる方々に放射線量を測定してもらい500万箇所を超える測定データを収集できており、今なお測定データが増えています。また、収集したデータをCC0(クリエイティブ・コモンズ)のパブリック・ドメインの下、インターネット上で公開し誰もがアクセスできるようにしているのも特長のひとつです。世界で唯一成功し運営されている放射線センサーネットワーク構築のリアルな経験談に、参加者達は熱心にメモを取りながら耳を傾けていました。
また、今後の取り組みのひとつとして、放射線測定と同様に、大気の品質測定にも取り組み始めていることにも触れました。講演会前の日曜日、東京をはじめ関東地方の一部では煙霧(乾いた微粒子により視程が10km未満となっている状態)が発生したこと、また、海外でのPM2.5による大気汚染報道等により、出席者の中でも放射線以外の環境データについての関心も高かったようです。
質疑応答において、SAFECASTの経験から、プロジェクトの進め方へのアドバイスを求められた際、ピーターの「考えているばかりでなく、方向性を決めて行動をおこすこと。修正などはあるかもしれないが、まず、行動をおこすことが大事」という言葉は、参加者の心に強く残ったのではないでしょうか。
今後も、ひとりでも多くの方々にSAFECASTの活動を知っていただけるよう、様々な機会を通じて情報発信していきたいと思います。
新井利幸…