
私達のもとにはinfo@safecast.org宛やセーフキャストグループを通じてつながりを持った人達からたくさんの質問が寄せられます。みんな放射線のあらゆる面について理解しようとしています。
そして、もちろん、多くの人が似たような質問をしますが、疑いなく最も頻繁に聞かれる質問は「~~は大丈夫?(安全ですか?)」 といった類のものです。 信じられないかもしれませんが、私たちの放射線FAQのページには答えが準備されているにもかかわらず みんな質問し続けるのです。
最近、九州で数ヶ月過ごす予定だった人から当地での汚染について質問がありました。彼は放射線レベルについての情報を得、現在の放射線レベルは3.11以前よりも高いと最終的に結論づけました。
彼はそれがセシウムやストロンチウム汚染によるものなのか質問しました。実際、彼は別々に収集された異なるデータセットを比較していました。 私は彼にユーザが矛盾のない測定データを全国にわたって自由にダウンロードでき、時間の経過に伴い変化を比較することができる DPNSNNEを教えてあげました。そのデータによると九州における空間線量レベルは(原発)事故の前後で全く同じであることが示されています。 フォーラムやメーリングリストでしばしばあることですが、いったん質問に対する返答があると、議論は(自然に発生している)ラドンと(人口の)セシウムやストロンチウムの危険性の違いにシフトします。
そして、すぐにラドン、セシウム137、ストロンチウム90の半減期(一定量の放射性同位体が半減するのにかかる時間)についてのデータが“証拠”として俎上に載せられ、半減期と生物学的な半減期の違いについて議論がされ、その結果、質問は以下のことに形を変えてしまうのです。
- セシウム134/137は生物学的半減期(70日で体内から半分が消滅する)、ストロンチウムは18年間であるのに対してラドンの半減期はたったの4日であるため、ラドンは他とくらべて危険が少ないのではないか?
私はこれについてよく考えてみましたが、次のような例を上げることで説明できるのではと考えました。その例とはこのブログポストにまとめられた例のことです。(ここで私のとりとめのない書き物を外に出すように促してくれたアズビー、ジョー(JAM)、そしてみんなに感謝したいと思います。)
ラドンが体内に蓄積しないというのは確かに事実ですが、その場を去らない限り自分の中に留まるのだ、という理解にいずれ行き着くことでしょう。いわば、その場に10年いるなら10年間放射線を浴びることになるのです。また、短い半減期というのは 単に比較的速く消滅するというだけで、それゆえマシだとか、より安全だという意味ではありません。それが消え去るというのは他の放射性同位体に変容するからであって、アルファ波(と/または)ベータ波(と/または)ガンマ波放射線を(放射性同位体にもよるが)を放出しながら変容するのです。つまり、短い半減期というのはこの放射線の照射が迅速でより高い値で行われるということを意味しているのです。
例え私達の身体が不運にも一定量の放射線にさらされてしまったとしても、(”LNTモデル”でWebを検索してもらえればわかりますが)誰かの個人的なしきい値については未だ広く論議されるべきことであり、またしきい値があるという仮定についても別の論議があります。 ただ、量的に少ない(が、持続的である)といって何がしかの被曝を割り引いて考えるというのは間違ったアプローチです。
例1:
もし銀行があなたの口座に一日あたり1セント課金したとしたら、充分長い時間をかけてあなたの口座は最終的には赤字(ゼロ以下)になります。この理屈はわかりますね?
これが例です。かといって、そのまますべてをうのみにしないでください。ざっと読んで状況を想像しながら質問にすばやく答えるようにしてみてください。構造はシンプルなものです、では、状況の中に入ってみてください。
例2:
あなたは薄暗いパーティールームにたくさんの人と一緒に居ます。全員、新しいカメラを取り出して写真を撮り始めます。殆どのカメラからフラッシュがたかれます。パシャ、パシャ、パシャパシャパシャ… バシャバシャバシャッ
さて、ここで、観察できることがいくつかあります。
- フラッシュはカメラによって、また設定によって様々な強さで発光します。
- フラッシュはランダムに発光される(みんな自由に時間をとって構えているため。)
- フラッシュはあらゆる角度で(あなたに向かって)発光され、(壁や鏡などで)反射したものもあれば、(ボトルや彩られたガラスの壁などで)屈折して届くものもあります。
- 写真の何枚かはフラッシュなしで(最新型のデジタル一眼レフカメラなどで)撮影されます。
- 時に2つ、もしくはそれ以上のフラッシュがほとんど同時にたかれ、あなたの感じる光の強さはそのフラッシュの合計となります。
パーティは続きます。
- はじめの何ショットかはあなたも(奇妙な光のパターンに見とれながら)楽しんでいます。
- しかし、そのうち居心地が悪くなって来て、ある時点からすべてのフラッシュが止んだとき、ほとんど何も見えなくなってしまいます。(誰かがあなたの顔から13~14センチの至近距離で写真を撮ったからです。)
- その後、あなたは頭が痛くなりはじめます。(あまりにもたくさんのフラッシュを浴びたからか、それともアルコールを摂り過ぎたからかもしれません。)
パーティは終わりました。
- あなたは眠りにつき(暗い部屋で、幸いにももうフラッシュはありません)、翌朝、何の問題もありません。(二日酔いが残っているだけです。)
- 翌日の晩、同じようなパーティに出かけます。
- そして、次の夜もその次の夜も。
さて、パーティを感じている間 いくつか簡単な質問をします。
- あなたの顔の一番近くで撮影されたのは何だったのでしょうか?(あなたをちょっと起こしてあげただけです。(ほんの小手調べです)次の質問にすすんでください。)
- あなたが副作用なしに浴びることのできる1照射(最強のフラッシュ)は何でしょうか。
- あなたが副作用(二日酔い)なしに浴びる(飲む)ことのできる1照射(ワイルドなパーティ)は何でしょうか。
- どうやってそれを測ったり証明することができますか?ところで、何をもって「副作用」とみなしますか。
- もしそれが友達だったらどうでしょう。あなたは上記について友達に説明できますか。
- あなたと友達のしきい値は同じものでしょうか。
- では、あなたの子供や親、祖父母についてはどうでしょうか。
- それ(しきい値)を会ったことも話したこともない人に対しても検討することができますか?その人が盲目の場合はどうでしょうか。
- 一定の間に、何度、副作用なしで“1照射”を何回浴びることができますか。
- どれくらい“浴びる”と両目に永久的なダメージを負うことになるのでしょうか。
- どれくらい“浴びる”と耳に永久的なダメージを負うことになるのでしょうか。(フラッシュ音による騒音もありますので。)
- あなたの肝臓が(アルコールによって)永久的なダメージを受けるようになるには何度パーティに出ることになるでしょうか。それは、フラッシュによる眼球へのダメージより早く起こるでしょうか?それとも耳へのダメージが先でしょうか。
最後の質問です。
- あなたが足を踏み外し階段から落ちて首の骨を折って死んでしまったとします。
- 仕事に行く途中だったとして、それはフラッシュとは関係があるでしょうか…。
- 全く気づいていなかったにもかかわらず、視覚がダメージを受けていたからでしょうか…。
- それとも二日酔いだったのでしょうか…。
- それとも、昨夜のパーティやフラッシュのことを思い出していて注意不足だったのでしょうか…。
- パーティ会場からの出口に階段があったのでしょうか…。
- 他のパーティ会場への入口に階段があったのでしょうか…。
どうですか?上記の質問にすべて明確に素早く答えることができましたか。難しかったですか。
さて これは非常に単純な(人間が備え付けのセンサーを有している)光にまつわる例でした。ここで放射線を使うことで例を変えてみることにしましょう。
まさに同じスレッドでセシウム/ストロンチウムやラジウムからの内部被曝の違いについて議論されています。議論はセシウム/ストロンチウムがラドンに比べて長い半減期、そしてより長い生物学的な半減期を持っているからでした。セシウム/ストロンチウムはある種の“ボトルネック効果”を生み出しました。私たちの身体は取り除くことができない放射線を蓄積してしまうというのです。
まず、もともと投稿した人は「ほとんどがラドンの0,12 uSv/hと、ほとんどがセシウムとストロンチウムの0,12 uSv/h の等価条件」を提示したのですが、私にはそれは「車を満タンにしないといけないんだけど、3.5メーター分のガソリンでいいと思うか?」と言っているのと同じように感じられました。
その通り。内部被曝というのは通常、毎時マイクロシーベルト(uSv/h)で測定されるようなものではありません。そして、例えそれを脇に置いたとしても、これはりんごをオレンジと比較するようなことなので、答えはYesともNoとも言えます。
- ラドン222は気体、セシウム137/134は固体(通常は粒子)
- セシウム134(半減期2年)とセシウム137(半減期30年)は生物学的には同一の半減期(そして多少異なる実効半減期)を持つ
- どうやって“同量”のセシウムとストロンチウムを測定することができるのか。
- 質量で、容量で、原子の数で?
- 純粋物としてか、それとも粒子(粒状)で?
- どのような物理的な状態で(固形ブロックか、溶液か、粉体か、気体か、エアロゾルか?)
- 粒状だとしたら粒子のサイズは?
- 溶液だとしたら溶剤は何か?
- …
- どの同位体もしくは同位体の混合物か。そしてどのような比率か?
充分に複雑ですよね。それではよりシンプルな半減期について セシウム137(30年)およびセシウム134(2年)について議論してみましょう。
それぞれの2mgの汚染されたものを食べなければいけないと言われたら、どちらが“より安全”だと考えますか?
それぞれ2mgというのは実際には原子の数でいうと異なるということはあえて無視しましょう。そしてそれぞれがN原子であると仮定します。生物学的には両者は同量です。それゆえ生物学的な半減期は同じです。(専門的に言うと、実効半減期というのは若干異なります。)
すると大雑把に言ってセシウム134が半分(1mg)に減るのに2年、セシウム137は30年で半分になります。
そうするとセシウム134がより安全な選択だといえますか?
実際には半減期が半分であるがゆえ、セシウム134はセシウム137よりも単位当り、より多くの放射線を放出し、よってそれだけ早く減少すると想定される(実際にはそうではないのですが。)ため、セシウム134がより活発であり、より速く反応し、一日あたりにより多くの放射線を作り出します。このことから同じ“量”のセシウム134はセシウム137に比べてより高いDRE(外部ガンマ線放出量)であるという結果になります。つまり、単に速く“燃え”て、時間当りより多くのエネルギーを放出するのです。
先ほどのパーティの例を思い出しましたか? それではしきい値について話をしましょう。
あなたの身体は(損傷なしに)2mgのセシウム137が30年かけて“弱火で燃え続ける”のに耐えることができるでしょうか?それとも2mgのセシウム134が2年かけて“強火で燃える”のに対処するほうが楽でしょうか?
では、”2mg” を 0.03 ng(ナノグラム)に置き換えてみましょう。これは、100Bq/kgの食品1kgに相当します。
どうでしょう? 例えば1gのセシウム137(3.21テラベクレルと同等)と言えば何を思いますか?
さて、生物学的な半減期(放射線の半減期と比較して)についてもう一度見てみると、あなたの身体はセシウム137のほとんどとかなりのセシウム134を、それらが半減してトラブルを起こす前に取り除くことができます。ただしそれは、(絶対条件として)“短期被曝”(これは生物学的な半減期の定義の一部分です。)の場合に限ります。 ですから、もしあなたが毎日セシウムを摂取しているとすれば、話はがらっと変わります。つまり摂取する量に比べてどれだけ速く身体がセシウムを流し出すかによるのであり、それによって体内のセシウムは現象したり増加したり均衡を保ったりするのです。
話をラドンに戻すと、(ラドンの4日という半減期に比べて)充分に長くラドンと共にいるとすると、あなたの身体は均衡状態に至ります。もしラドンのない場所に長時間(通常10半減期、人間にとっては10実効半減期)あなたは事実上ある時点でラドンから開放されます。また元の場所に戻ったとすると、あなたの身体はすぐに均衡状態を取り戻すでしょう。
まとめると、ラドンにさらされることと、セシウムにさらされることを比較することは可能かもしれませんが、あまりにもたくさん(幾千もの)の未知の要因のため、科学的な手法でそれを行うことは不可能に近いのです。
しかし大雑把な方法というのはあります。
- 放射線にさらされる時間が長いほど放射線によって起こされるダメージをより多く受ける可能性がある。
- 崩壊率が高くなるほど、より大きなダメージを受ける可能性が高くなる。
- より放射性の高い物質(もしくはより密度の高いもの)はダメージを与える率は高くなる
- 半減期の短いものほどダメージを与える率は高くなる
- 発生源に近づくほど、ダメージを受ける率は高くなる
- 効果的なシールディング(遮蔽)は被曝の時間や割合を減らすことができる。
被曝の時間を短くし、被曝の割合を同時に限定することが一番である理由はそれである。
そうすると次の質問は もし毎時0.12マイクロシーベルト(uSv/h)のほとんどがラドンであるものと、毎時0.12 マイクロシーベルト(uSv/h)のほとんどセシウムとストロンチウムであるものがあるとすると、前者のほうが我々の健康へのダメージが少ないとは言えないのではないかということになる。
あまりに技術的になりすぎないで「毎時0.12マイクロシーベルト(uSv/h)」というのはDRE(外部ガンマ線放出量)を指しているだけで、どれくらいあなたが摂取したり吸入したりしたかとは一切関係がないということがわかります。吸い込んだものはベクレルで測定することができ、ベクレルとマイクロシーベルトとの間に単純な比較など存在しません。(信じてください!)
もうひとつ例を挙げてみましょう。
例3:
あなたはクルマの車内にいて、外の気温は25℃.です。
車内の気温は以下の様々な要因で大きな差が出るでしょう。
- 窓が開いているか閉まっているか
- 車が動いているか止まっているか
- エアコンがついているか止まっているか(高温・低音・暖房の設定)
- 雨が降っているのか乾燥しているのか
- 風が吹いているのか穏やかなのか
- 晴れているのか曇っているのか
- 日なたにいるのか日陰にいるのか
外の気温が常に25℃であるという事実にもかかわらず、車外がまったく同じ気温でも同じ車内で風邪をひく可能性もあれば熱射病で死んでしまうことだって起こりえます。そのうえ、自動車のタイプ(コンパクトカーかトラックか、白か黒化などなど)を考えるとさらに複雑な結果になります。
よって質問者の論拠というのは部分的に間違っているだけです。人々が放射線の安全について教養のある推論を出そうとする場合はより深く掘り下げるように薦めます。 そしてもしそれを彼らが科学的に行おうとするなら幸運を祈ります。なぜなら人生は(それを成し遂げるには)充分時間があるとは言えそうにないからです。
一日にワインをグラス一杯飲むことが長期的に見て健康に良い事なのか良くないことなのかについて議論する人もいます。 人によっては一日にボトル一本飲むことがもっといいとかもっと悪いとか議論する人も。ほとんどの人は例えば一日10本は悪いということには同意すると思います。 一方で たまに飲むグラス一杯のワインも悪いと力説するひともたくさん居ます。 さらにコーヒーやチョコレート、ステーキ屋やその他なんでも!私たちは議論することができます。
私は多くの人が言うことに耳を傾け、(たいていの場合)私の(非常に込み入った)やり方で分析し、そして、
- 私は毎日ではないが、ワインならボトル一本飲むこともある。でも時々グラス1~3杯を一週間に数日立て続けに飲むこともある。
- コーヒーを1日3~4杯飲むこともある。でも時には日に7~8杯飲むこともあり、また1~2週間まったく飲まないこともある。
- チョコレートか、そうだな。。。
このアプローチは多くの人には適用できないかもしれませんが、私自身が行なっているやり方です。
実際、これが一番大切なことで、いつも人々に享受できたらと思っているのですが、考えて、学んで、理由付け、評価し、そして自分自身の経験、知識、現況、そして要望にも基づいて行動することです。一歩外へ出れば、想像以上の危険が存在しますが、すべてのことについて座って心配するだけであれば何も行動していないことになります。つまり、人生というのは厳しく、ディスクレーマー(免責事項)をすべて読んだ後でもとんでもない(ありえない)ことが起こることもあります。 皆さんに(それをはねのける)力がありますように。
記録として 上記ディスカッションのスレッドはこちらにあります。
- Background radiation in Fukuoka
- Radiation safety: educated guess (Was: Background radiation in Fukuoka)
(非常に長い読み物になりましたが、楽しんでいただけたら幸いです。)
(翻訳:Yoshi Nakayama)






