イラクでセーフキャスティング:オープンデータは扉を開く

In ニュース, マップ, 主要記事, 放射線 by Bilal Ghalib

先月、イラクのエルビルで行われたピース・テックキャンプでのデータ視覚化のワークショップに誘われました。私が働いていたNGOの一つは、イラクでの劣化ウラン問題についての意識を高めるために研究を視覚化しようとしていました。幸いにも私はケンブリッジで飛行機に搭乗する前に、セーフキャストのショーン・ボナーに偶然に遭って、bGeigie(ビーガイギー)のデバイスを貸してもらっていたのです。私は、ピース・テック・キャンプ、イラク南部のNGOの聴衆に、この新しいツールと機能がどういうものなのか、どうやって動くのかを説明しました。このことが、イラクのバスラで癌に罹患した子供たちを支援する組織を運営する Layth Al-Salihi の目にとまったのです。

Layth at PeaceTech in Iraq

Layth、イラクのピース・テックにて

彼の息子は、数年前に癌と診断されましたが、勇敢にも病と闘い、回復しました。Laythはその経験から得た学びとエネルギーをバスラ地区内で癌を患う子供を抱える他の家族を助けるために使うことに向けたのです。彼は、病院の近くにプレイセンター(遊び場としての集会所)を設置することに貢献し、被災した子どもを持つ親のためのトレーニングセッションを行っています。そして、治療の余裕がない子供のために薬の提供もしています。

Laythは、彼の息子の癌やバスラで増えている先天性障害の原因は、湾岸戦争とイラク戦争でイラクに投下された放射性弾薬(ウラン弾)によるものだと確信しています。
劣化ウランは徹甲弾薬を作成するために使用されていた重金属で、アメリカはその戦時下に、イラク全土、350ヶ所以上に合計約1.4トンの劣化ウラン弾を落としています。劣化ウランが、がんの発生や出生異常率を上昇させたのかどうかをめぐる論争があります。近年発表された世界保健機関(WHO)による研究、「イラク特定18地区内における先天性異常の有病率の概要」では、次のように結論づけています。

「…調査で明らかになった自然流産、死産や先天性障害の発生率は、国際的な推定値と同等か、それ以下である。調査では、イラクでの出生異常の比率が高いことを示唆する明確な証拠は示されていない。」

「劣化ウランによるイラクでの環境汚染 -モースル市におけるがんと先天性障害発生率への影響の可能性について (原題は Environmental pollution by depleted uranium in Iraq with special reference to Mosul and possible effects on cancer and birth defect rates) 」という論文が国際学術誌「Medicine, Conflict and Survival」に掲載され、次のように要約されています。

「1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争では、イラクの多くの地域に劣化ウラン弾による環境汚染という負の遺産を残した。このような兵器の使用がイラク市民の健康に影響を与えた可能性があり、実際にがんや先天性異常発生率が増加していることも明らかになりつつある。汚染は、すでに大気、土壌や水といった広範囲に及び、特に暴風下では粉塵となって拡散している。」

このような見解の相違は、イラクの公衆衛生を援助するプロジェクトにおいて混乱と停滞をもたらしました。だからこそ、ビーガイギーを渡した後、Laythは私のところに来て、がんの発生率やイラクでの劣化ウランの矛盾した報告について話してくれたのです。Laythは、オープンデータのプロジェクトを作ることを提案しました。そのプロジェクトでは、その地域での入院患者の調査結果と罹患者の居住地域情報を、SAFECASTのAPIで作った地図に重ね合わせることで、劣化ウランとがん、出生異常発生率との関連性を地図上で確認することができるようになるかもしれません。

私たちは、試しにバスラでビーガイギーの活用を支援する「Fikraスペース」と呼ばれるイラクのハッカースペースと、LaythのNGOを繋ぐ計画を立て始めました。私はイラクで「Fikraスペース」と呼ばれるハッカースペースの仲間と協力しています。ハッカースペースからチームをつくり、バスラで今後活動をするために彼らを養成することを提案しました。そしてPeaceTechキャンプが終了した後、私はバグダッドへ向い、放射線マッピングのワークショップを運営するFikra Spaceの人たちと会ったのです。

Some of the core team at Fikra Space: Nael, Jeff & Ahmed

次の日、私たちは仲間と集合し、Fikraスペース メンバーのAhmedのクライスラーに乗り、バグダッド郊外にあるいくつかの放棄された軍事ゾーンを含む劣化ウランがあると疑われる様々な場所を運転しながら一日を過ごしました。

Radiation levels at abandoned vehicles

一日ドライブした後、私たちは、デバイスを家に持ち帰り、このデータをアップロードして視覚化するためにSafecast APIを使用しました。私たちが通った道と測定値をこの地図上で確認することができます。

Map of radiation levels in Baghdad

JFikraスペースのJeffとSalihが、Laythのバスラでの罹患者の地図化をする計画に関心を示してくれているので、今夏には彼らと合流してこの地図化プロジェクトを進めたいと考えています。これからサポートを得ながら、調査プランを立て、資金調達し、適切なデータ形式を見つけ、データ分析していくことが必要となってくるでしょう。

みなさんに宿題を残しておきます。英国新聞のガーディアン紙に掲載されたある記事 が私の目に留まりました。「ウラン兵器禁止を求める国際連合(ICBUW)が、WHOが発表した調査報告書のプロジェクト・データセットの開示を要求した。そうすることで、そのデータを用いて、外圧を受けることなく中立性を保った、透明性の高い分析を行うことが可能となる。しかしながら、国連機関はこれらの声を無視し、この研究に問題は無いと擁護している。」

このことからもお分かりのように、データの開示が対応策として求められています。私からのお願いです。WHOが調査に使用したデータを見つけて公表して欲しいのです。他の研究機関が行った調査で使用したデータをまとめたものでも構いません。
そうして集まったデータは最初の公開データセットになります。一連の公開データセットがあれば、イラクにおける放射線や公衆衛生問題への理解が深まりますし、私たちの探求心も育ててくれます。

Sean、Joi、Ethan、Pieterのお力添えに感謝しています。

H私がこの記事を考える中で参考になったいくつかの調査についての記事や論文は、以下の通りになります。

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